投擲手と鎌使い   作:自称暇人

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今回は結構展開を変えてます。


情報屋

その後、広場ではあちこちから悲鳴や怒声が聞こえ始めた。幸いと言っていいのかどうか、周りのその反応を見て俺はかえって冷静になった。

 

なった以上はもうどうしようもない。これからどうするかをまずは考えるべきか。

 

考えを巡らせる。今後のことを考えておくとなるべく人脈を広げておいた方がいいだろう。デスゲームとなったこの世界では攻略情報が値千金になることは想像に難くないので、その伝手は大いに越したことはない。

 

できれば"鼠"との連絡手段を確保したいが……クソッ、ベータテスト時代のフレンド履歴は残ってないか。

 

「ウェル、クライン、ちょっとこい」

 

悩んでいるとキリトから呼びかけられたので、一緒に広場の外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はすぐ次の村へ行こうと思う。お前らもついてこい。」

 

「……理由を聞いてもいいか?」

 

キリトは3人で街を出ようと言ってきた。なんとなく察してはいるが一応理由を尋ねておく。

 

「この世界で生き残るには強くなるしかない。そうなると起こるのはリソースの奪い合いだ。おそらくこの辺の狩場は明日にはもうプレイヤーで埋め尽くされてまともに狩りなんてできなくなると思う。」

 

「なるほどな。となると確かに早いうちに動いた方がよさそうだ。俺は構わないが……クラインはどうだ?」

 

「俺は……申し出はありがてぇが、やめとくよ。このゲーム、ほかのでダチになったやつと一緒に徹夜して買ったんだ。あいつらたぶん、まだ広場の中にいる。置いては行けねぇよ」

 

「ちなみにその知り合いって何人だ?」

 

「5人だ」

 

友達も一緒に連れていけないかと考えたが、そうはいかないか。2~3人であれば俺とキリトでどうにかできると思うが、さすがに計6人となると安全は保証できない。キリトも言葉を発することができずにいる。

 

「お前らにこれ以上世話になるわけにはいかねぇ。だから、二人で次の村に行ってくれ」

 

「クライン…………」

 

「これでも前のゲームじゃクランリーダーだったんだぜ?教わったテクでなんとかするさ」

 

「…………そうか、ならここでお別れだな」

 

「おう」

 

おっと、会話の流れに身を任せてたら別れる雰囲気になってしまった。

 

「ちょっと待った。その前に、済ませておきたい用事がある」

 

「どうしたよ、ウェル」

 

クラインが不思議そうな顔をする。

 

「キリト、一応聞くけど鼠とフレンド登録したりは……まあしてないよな」

 

「アルゴと?してない、というかSAOにログインしてすぐお前と遭遇したからな。……なるほど、用事ってそういうことか」

 

「多分お前の予想通りだ」

 

「お、おい。誰なんだ?その鼠ってやつは」

 

キリトはどうやら目的を察したようだ。クラインはピンと来ていない様子だが、まあビギナーなら知らなくて当然だろう。

 

「ベータテストの時に情報屋をやってたプレイヤーで、結構情報をやりとりしてたんだ。まあ当時は半分遊びみたいなものだったらしいけど。……正式サービスがこんな有様だから、情報はあるに越したことはないだろ?街を出る前に連絡取れるようにしておこうと思ってな」

 

「なるほどなぁ、ソイツは間違いなく頼りになる」

 

「ああ。……とはいえ残念ながらベータ時代の交友関係はリセットされちまったみたいだし、会おうにもどこにいるかわからないんだがな。そもそもアルゴのやつがSAOにログインしているのかどうかす「オレっちがどうかしたカ?ウェル坊」おわっ!……ったく、驚かすなよ」

 

「ニャハハ、わるいわるい」

 

「……えーっと、この人がアルゴか?」

 

「ああ、そうだよ。アルゴ、お前いつの間にここに?」

 

俺がクラインに鼠の説明をしていたところで、後ろから声をかけられた。振り返ると、フード付きのマントを付けた小柄な女が立っていた。建物の影とフードのせいで顔はよく見えないが、ちらっと頬にひげのペイントがあるのが確認できる。

 

ちなみにこいつは人の名前を伸ばして「○ー坊」と呼んでいるようだが、俺の名前は「ウェー坊」という呼び方がしづらいそうで、ウェル坊と呼ばれている。言いやすさではなく親しさで呼び方を変えているのでは、と個人的には疑っている。

 

「アナウンスが終わってすぐに広場の外に出ていくのが見えたから気になってナ。後を追いかけてみたらちょうどオイラの話をしてるのが聞こえて、声をかけてみたのサ。まさかキー坊とウェル坊だとは思わなかったけどナ。それよりどうしたンダ?オイラを探していたようだが」

 

なるほど。普段だったら「その程度で跡をつけるなよ!」と言いたくなるところだが、今回ばかりはファインプレーだろう。あとキリト、お前はキー坊って呼ばれてるのか。さてはベータ時代に相当情報屋利用したな?

 

「ああ、その前に確認だが……アルゴ、お前今回も情報屋やるのか?」

 

アルゴはほんの少しの間悩むそぶりを見せたが、すぐ顔を上げて言った。

 

「……もちろんやるサ。人が死んでいくのをただ見てるのはツラいからナ」

 

アルゴがやると言ってくれて内心でひとまず安堵した。1人に重荷を背負わせるようで申し訳なくなるが、アルゴがやらないと言っていたらそれこそ頼みの綱を失うようなものだった。

 

「ならちょうどいい、フレンド登録いいか?またベータと同じくよろしく頼む」

 

「それは構わないガ……今回はオイラからも頼みがある」

 

「なんだ?」

 

「キー坊とウェル坊には、情報の提供も頼みたいンダ。どうせこの後すぐ次の村に行くんダロ?ベータの時となにか変わってることがあったら教えてクレ。あの頃の攻略情報も覚えてはいるケド、その時のが今も正しいとは限らないからナ」

 

「了解、それくらいならお安い御用だ。キリトもいいよな?」

 

「ああ」

 

俺たちは迷わず了承してフレンド登録を済ませる。自分たちだけ得をするというのはこの状況ではよくないだろう。

 

「……あのー、お三方?」

 

おっと、クラインは話についていけてないようだった。

 

「まあクラインはこの件は気にしなくていいさ。とりあえずお前もなにかあったらコイツを頼れ。金はとられるが役に立つ情報を教えてくれるはずだ」

 

「おっと、ひどい言われようダナ。アンタはビギナーさんなんダロ?お安くしとくサ。」

 

「んじゃあなにかあったらよろしく頼むっすわ、えーと、アルゴさん?」

 

「アルゴでいいサ」

 

というわけでクラインとアルゴもフレンド登録した。……なんとなくクラインがそわそわしていたのは俺の気のせいだろうか?

 

「よし、じゃあ用事も済んだし俺たちは行くか、キリト」

 

「ああ。アルゴはどうするんだ?」

 

「オレっちはしばらくここに残るつもりダ。ビギナーに情報が行き渡らなきゃ意味がないしナ。それより2人とも、無茶して死ぬのだけはヤメてくれよナ」

 

「了解、極力気を付けるさ。クラインも、絶対に無理はするなよ」

 

「おう、わかってるっての。……つーかウェル、お前今"極力"って言ったな!?絶対無茶するなよ?いいな、絶対だぞ!」

 

クラインから念を押されてしまった。俺の言い方は確かに悪かったが、そんなに無茶をすると思われているのだろうか。

 

「まあウェル坊はベータの時も無茶しまくってたからナァ。……そういやウェル坊、《投剣》はもうとったのカ?ウェル坊といえば、って感じだケド」

 

「そういえばお前昼間フィールドに出た時使ってなかったな。今回はベータの時みたいにやらないのか?」

 

キリトとアルゴが聞いてくる。ちなみにベータの時というのはおそらく、俺が遠距離にいるエネミーにも片っ端から攻撃を当てて複数体のタゲを取ったことを言っている。その他にもボス戦で微量ながらも遠くからダメージを与えられたりと《投剣》は便利なスキルなのだ。

 

まあベータ時代の知り合いはフレンドリーファイアを恐れてパーティー戦ではほとんど使っていなかったし、俺もそこそこ付き合いのあるやつ以外と組むときは基本的に使わなかったが。逆に言うと付き合いのあるやつと組むときはガンガン使っていたけどな。

 

「昼間は単純に投げナイフを買い忘れただけだ。一応もう《投剣》スキルはとってある。まあベータの時と同じことやるのはハイリスクすぎるから無理だと思うけど」

 

そもそもエネミー複数体を同時に相手するのはハイリスクなため、ベータでもそんなことをやったのはよっぽどピンチの時かテンションが高かった時だけだ。ベータテストと同じ感覚でタゲをとっていたらまず間違いなく死ぬだろうし、これからは迂闊な行動はとれない。

 

「そうか。……アルゴ、クラインのことも含め、頼む」

 

「任せロ、キー坊」

 

「んじゃ、改めて行くか。また会おうぜ、クライン、アルゴ」

 

「ああ、お互い死なずにいこう」

 

「おう、またな!」

 

「じゃあナ、二人とも気をつけろヨ」

 

お互い別れの言葉を告げたあと、俺とキリトの暫定コンビは2人で次の村へ向けて駆け出した。




というわけでアルゴとの関わりを作っておきました。ついでにほんのちょっとタイトル回収です。投擲スキルのうまい魅せ方を考えておかねば……。

追記:劇場版の特典冊子とは異なる設定になっていますが、とりあえずこのままいこうと思います。



それからこれだけの話数にも関わらずお気に入りと評価をくださった方々、ありがとうございます。
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