投擲手と鎌使い   作:自称暇人

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ミト達のお話その3。


守れない約束

――――《第1層︎︎︎︎ ネペントの森》――――

 

 

翌日、ミトとアスナの二人は村近くの森を訪れていた。

 

今二人が歩いているところは岩肌を削って作られたような道であるため、幅が狭く足場も悪い。アスナは注意しながら歩いていたが、それでもつまづいてしまった。

 

「アスナ、大丈夫?少し休む?」

 

ミトが気遣って声をかけるが、アスナは大丈夫、と首を縦に振る。

 

「ならいいけど。この辺りは道も悪いけど、モンスターも普通に出てくるからそっちにも気をつけてね」

 

「どんなモンスターが出てくるの?」

 

「《リトルネペント》って言う植物型のモンスターよ。」

 

それを聞いてアスナは首を傾げる。

 

「ネペント?ネペンテスならウツボカズラのことだったと思うけど」

 

「そう、ウツボカズラみたいな姿の肉食植物のモンスター。ツルを伸ばして攻撃してくるけど、落ち着いて対処すれば大丈夫よ。ただ、たまに実付きの個体が出てくるけど、そいつは絶対に攻撃しないでね。周りのネペントが集まってきて囲まれちゃうから」

 

「わかった、気をつける。…………もしかして、アレがそう?」

 

進路の先にある森を見ると、《リトルネペント》がちょうどポップしていた。お互い見合せて、二人はそれぞれ鎌とレイピアを構える。

 

「丁度いいわね、早速実戦といきましょ。アスナ!」

 

「ええ、実付きは攻撃しない、ね!」

 

 

 

 

 

アスナのレイピアから《リニアー》が放たれる。流星と形容されるような洗練された一撃を受け、ネペントは一瞬でポリゴンとなって爆散していく。

 

「今のところ順調ね」

 

「うん!」

 

まだ二人の周囲には何体もネペントがいるが、二人の表情からは余裕が窺える。それもそのはず、ネペントには集団でタイミングを合わせて襲いかかる知能はないのか、今のところ1体ずつしか攻撃を仕掛けてこなかったのだ。加えて、気をつけるべき実付きも出現していない。

 

その時、ミトが少し遠くにいる別のモンスターを発見した。

 

こちらに背中を向けているため顔は確認できないが、白いローブを身にまとっていることはわかった。背も高くなく、ミトの身長の半分程度と思われる。

 

それは、少なくともベータテストでは第1層でめったに遭遇することのなかった《スプリー・シュルーマン》だった。ネズミ系の小型モンスターである。

 

ベータテスト時代の記憶を探り、その正体に気づいたミトは目を輝かせる。このモンスターは非常に強力な武器をドロップするため、ベータテストの時は乱獲目的で狩りに出たプレイヤーも少なくなかったのだ。

 

逃げられる前に倒してしまいたい。そう思ったミトはアスナに声をかける。

 

「アスナ!しはらくここ任せてもいい?」

 

「どうしたの?」

 

「第1層ではめったにお目にかかれないレアモンスターがいたの!強い武器を落とすから倒しておきたい!」

 

言葉の節々から明らかに興奮しているのがわかるほど、ミトの機嫌は良くなっていた。

 

「わかった、ネペント達は任せて!」

 

それを感じ取って、アスナはすぐに了承する。アスナの返事を聞いたミトはすぐさま《スプリー・シュルーマン》のところへ向かった。

 

 

 

 

 

ミトは音を立てないよう、慎重にシュルーマンの背後に位置取る。今のところ気付かれている様子はない。

 

「……ハッ!!」

 

鎌を振り下ろし、奇襲の一撃を仕掛ける。だがシュルーマンに寸前で気付かれ、避けられてしまった。再びミトとの距離が離れる。

 

「……ヤァ!!」

 

ミトは再び接近し、今度は鎌を水平になぎ払う。しかしシュルーマンはあっさりと跳躍で回避した。幸いなことに逃げ出す様子はないが、かといって攻撃を仕掛けてくるわけでもない。完全に弄ばれている。

 

それなら、とミトは連続攻撃を仕掛ける。縦横無尽に振り回し、様々な角度とタイミングで鎌を繰り出す。

 

一撃、二撃、三撃、四撃……!

 

そしてついに、回避で跳躍したシュルーマンに追撃の1発が命中した。

 

「ハァァァ!!!」

 

そこにトドメのソードスキル《スラッシュ》を発動する。一撃をくらって体勢を崩したシュルーマンは避けられるはずもなく、その身をポリゴンに変えて爆散した。

 

ミトの眼前にリザルトが表示される。目的の武器が落ちているのを確認すると、ミトはよし、と頷いてアスナのところに向かった。

 

 

 

 

 

「お待たせー!」

 

「おかえり、こっちもそろそろ終わりそうだよ!」

 

ミトがアスナのところに戻ったときには、ネペントの数はかなり減っていた。心の片隅でアスナを心配していたミトは安堵のため息を漏らす。

 

アスナが次のネペントを仕留めようと《リニアー》の構えをとり、手にしたレイピアにライトエフェクトが宿った。

 

その視線の先を見ると、なんと通常のネペントの陰に隠れて実付きの個体が出現していた。おそらく、アスナのいる位置からは見えていない。

 

「ダメ!アスナ!!」

 

それに気づいたミトはすぐにアスナに呼びかける。が、モーションをシステムに認識されたソードスキルはアスナには止められない。システムに従い、《リニアー》が発動してしまった。

 

「えっ、ちょ、わぁぁぁぁぁ!?」

 

ミトの呼びかけに気を取られたアスナは、システムに引きずられるようにネペントに突進していく。そして無慈悲にも、アスナのレイピアは後ろにいた実付きごとネペントを貫いた。

 

「………!!」

 

周囲を赤い煙が包む。中心付近にいたアスナは、煙越しに100近くものモンスターアイコン(リトルネペント)を視認して、先程までの余裕を一気に失った。

 

 

 

 

 

煙が晴れた時には、既にアスナはたくさんのネペントに囲まれていた。

 

「アスナ!!」

 

ミトは助けに入ろうと、周囲のネペントを1体ずつ確実に仕留めていく。だがネペントもただで殺されるはずがなく、ツルでミトに反撃を仕掛けてくる。

 

(アスナ……!)

 

ネペントの攻撃に気をつけつつ隙間を縫って動くミトは、ちらりとアスナの方を見る。幸いなことに、まだアスナはちゃんと戦えているようだった。HPも半分以上は残っている。

 

だが、その周囲のネペントはアスナが何体も倒しているはずなのに減る気配がない。ミトの周囲のネペントも一向に減らず、ミトの内心にも焦りが生じる。

 

その時、死角にいたネペントからツルによる攻撃が飛んできた。ミトは反射的に大きく跳んで辛くも回避するが、着地した場所が悪かった。あと一歩後方に下がれば落ちてしまうほどの崖際だったのである。

 

「くっ……!……ひゃあ!」

 

ミトが立っている場所が音を立てて崩れ落ちる。咄嗟のことに対応できず、ミトはそのまま崖下に叩きつけられた。

 

「ったぁ……」

 

「ミト、大丈夫!?」

 

「……こっちは大丈夫!すぐ戻るから!」

 

HPバーを見ると体力は危険域(レッド)にまで落ちていた。崖上からのアスナの呼びかけに返事を返し、すぐにポーションを飲んで体力を回復する。体力が安全域(グリーン)になるまで回復したのを確認し、ミトは設置された木の足場を利用して崖を登ろうと試みた。

 

だが、再び足場が崩れ、再度崖下に落ちる。幸い高さがなかったためダメージはほとんど受けていないが、もし高所から落ちていたらたまったものではない。

 

(横の道から戻るしかない……!)

 

多少遠回りになるが、このまま崖登りに挑むよりは早いし安全だろうと判断し、ミトは横道に歩を進める。だが目にしたのは、こちらに近づいてくるネペントの群れだった。

 

「………!!」

 

ミトの表情が絶望に染まる。HPバーを見ると、ミトもアスナもいつの間にか危険域(レッド)にまで突入している。アスナを助けに行くならもはや回復している猶予すらないが、このままネペントの群れに突っ込めばまず間違いなくミト自身がその命を散らすことになる。

 

(ごめん、アスナ……。約束、守れない……!)

 

昨晩、ミトはアスナを危ない目に遭わせないと約束したばかりだった。だが今、アスナは命の危機に瀕してしまっていて、しかもミトは助けに行くことができない。その事実がミトに重くのしかかる。

 

アスナのHPは少しずつ減っていく。このままだとHPバーが完全に真っ黒に染まるまではもはや時間の問題だろう。

 

(いやだ……。アスナが死ぬのなんて、見たくない…………)

 

気づけば、ミトはメニューのパーティー設定を開いていた。ゆっくりと、その手がシステムウィンドウに伸びる。

 

そして――――

 

 

 

 

 

――《ミト》がパーティーから離脱しました――

 

アスナの眼前に、こうメッセージが表示された。

 

「え…………?」




《大鎌》のソードスキルはなるべくオリジナルでいきたい……!
(調べた限り《○○スラッシュ》はあっても《スラッシュ》は見つからなかったので採用しました。もしあれば教えてください。)

次話はウェル視点に戻る予定です。



それから、いつの間にか評価バーに色がついていました……ありがとうございます!
今後も至らぬ点は多々あると思いますが、拙作をよろしくお願いします。
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