投擲手と鎌使い   作:自称暇人

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ようやくここまで来た……。


エンカウント

――――《第1層 ネペントの森》――――

 

 

この日、俺とキリトはアルゴからの依頼を受けてネペントの森を訪れていた。

 

以前俺達で《森の秘薬》クエストをクリアした際、俺はアルゴに《アニールシミター》の存在を報告した。その後、他プレイヤーの調査により、なんと《森の秘薬》クエストを受注したパーティー全員が装備している武器種の《アニール○○》が報酬として手に入ることが判明したのだ。

 

おそらく、片手剣だけ強力な武器が序盤のクエストで手に入るのが不公平ということで、他武器種も追加したのだろう。ひょっとしたらある種の救済クエストのような意味合いもあるのかもしれない。

 

話を戻すが、そのため多くのプレイヤーがこのクエストを受注し、ネペント狩りにこの森を訪れた。そこまではいいのだが、問題だったのはこの森にネペント以外のモンスターが出現することだ。

 

この森は《ネペントの森》と呼ばれるだけあって《リトルネペント》の出現率がとにかく高く、他のモンスターと遭遇する確率はかなり低い。そのため、正式サービスでのネペント以外のモンスター情報がなかなか集まらずにいたのだ。

 

だがだからといってソイツらの存在を無視するわけにはいかない。というわけで、『暇なら森でネペント以外のヤツの攻撃パターンとドロップアイテムを調べてきてクレ』と頼まれ、今に至るわけである。

 

閑話休題(それはともかく)

 

「……マジでネペントばっかりだな。流石に飽きてきたんだが」

 

「まあ気持ちは分かる」

 

森に到着してからしばらく経つが、未だにネペント以外のモンスターは見かけていない。初日と違って俺たちのレベルが上がり余裕もあるため、ネペント狩りはただの作業となってしまっていた。あの時と違って明確な目的(クエスト報酬)が無いのもモチベーションが低い理由の一つではある。

 

「おっと、湧いたか。……またネペントか、ホントそろそろ出てきてくれ」

 

「そうだなあ、こいつら倒したら場所移動するか?」

 

「そうすっか」

 

一旦意識を戦闘に切り替える。楽な戦闘とはいえ回復アイテムを浪費したくはないし、一応真面目に戦うか。

 

「……よっと」

 

ツルによる攻撃を避ける。もはや何回も見ている攻撃なので、不意打ちでなければ怖くもなんともない。

 

そして反撃を仕掛けようとした瞬間、ネペントが()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……?」

 

とりあえず隙を晒してくれたので、攻撃を与えて倒す。キリトが相手していたネペントも同様だったようで、「今のは……」と不思議そうにしている。

 

「あっちの方向に何かあったっけか?」

 

「いや、ネペントが気にするようなものなんて、それこそ実付きの……っ!」

 

キリトの一言で俺とキリトは同時に気づく。まさか……!

 

「誰かが割ったか!?」

 

「勘違いであって欲しいが、その可能性は高い…!」

 

もしそうなら放っておくわけにはいかない。脳内で即座に助けに行くと判断を下す。

 

「行くぞキリト!」

 

「ああ!」

 

 

 

 

 

しばらく走り何体かネペントと遭遇しているが、やはりこの辺の個体は皆同じ方向へ進んでいるようだ。というかしばらく進んでいるがまだ着かないのか。実付きの煙の効果範囲どれだけ広いんだ……!

 

「この感じだと、やっぱ誰かが実付きを攻撃したか。まだ生きてて欲しいが……!」

 

その時、特徴的な咆哮が向かっていた方角から聞こえてきた。

 

「何だったっけかコイツ、名前忘れたけど確かめちゃくちゃ好戦的なヤツ!」

 

「《ジャイアント・アンスロソー》だ、吼えたってことはまだプレイヤーは生きてそうだけど……。急がないとまずいぞ!」

 

「了解……!」

 

確かアイツは青かったから森の中では多少目立つはず……見つけた!

 

「いた、あそこだ」

 

「ああ、俺も見えた。……っ、マズイぞウェル、襲われてる!」

 

クソッ、誤射を考えるとプレイヤーのいる方にはあまり投げたくないけど、仕方ない……!

 

「間に合え……!」

 

俺は()()()投げナイフを取り出し、《シングルシュート》の発動モーションをとる。

 

これは正式サービスからの変更点なのだが、ピックや投げナイフが《アイテム》扱いになったため、利き手の武器を仕舞わずに反対の手で《投剣》スキルを使えるようになったのである。

 

これに気づいた時は正直めちゃくちゃ嬉しかった。俺だけじゃないだろうが、ベータテストで意見を送った甲斐があった。それはそれとして、利き手じゃない方の手で狙い通りに投擲出来るようになるまでにかなりの練習が必要だったが。

 

「片目潰す(やる)からあとの対処は任せる!」

 

「わかった!」

 

キリトの返事が聞こえると同時、投げナイフを放つ。手から離れたナイフは木々の隙間を通り抜け、狙い通り《ジャイアント・アンスロソー》の()()を貫いた。

 

「グゥォァァァァァァァ!!」

 

大きく叫び声をあげながらのけ反る。その隙をついてキリトが反対側から攻撃を仕掛けたようで、ヤツは完全にこちらから意識を外している。

 

開けたところに出た俺は、その足元に金髪の少女がいるのを確認した。

 

「今だ、下がって!」

 

その子に呼びかけながら駆け寄る。こちらに気づいたその子はキリトの方を時折確認しながらこちらに走ってきた。

 

「あの人は……」

 

「アイツなら大丈夫、1対1ならまず負けない。ひとまず無事でよかった。ポーションはある?」

 

「いえ、さっきリトルネペントと戦ってた時に全部使っちゃって……」

 

「じゃあこれ、はい」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

金髪の少女は申し訳なさそうに手渡したポーションを口にする。そこにあっさりと《ジャイアント・アンスロソー》を倒したらしいキリトが戻って来た。

 

アイツってベータの時もっと体力高くなかったっけ?……まあいいか。

 

「お疲れ、キリト。にしてもよくこの子が襲われてるの気づいたな」

 

「たまたま金色の髪が目に入ってな……。とりあえず助けられたようでよかったよ。これ、君の武器だろ?」

 

キリトがレイピアを少女に渡す。

 

「ありがとうございます。その……助けてくれて」

 

「どういたしまして。……ところで、ここには一人で?」

 

少し気になったので尋ねる。ソロで活動しているプレイヤーもいるにはいるが、彼女がそういうタイプだとはなんとなく思えなかった。

 

「いえ、友達と一緒にここに来たんですけど別れちゃって、パーティーも解散されちゃって……」

 

パーティーを解散された、というところが少し引っかかるがひとまず置いておこう。

 

「なら、フレンドのところからその友達の居場所が確認できないかな?」

 

すると、なぜかその少女はきょとんとして

 

「フレンド……?……パーティーとは違うんですか?」

 

と聞いてきた。パーティーは知ってるけどフレンドは知らないのか。どういうことだ……?

 

「なるほど。多分だけど、今までずっとその友達と一緒に行動してたんだろ?」

 

「はい、そうです」

 

キリトの発言でなんとなく想像がついた。そういうことか、確かにそれならフレンド登録をする必要性はほぼない。ずっと一緒にいたのならメッセージ機能も相手の位置を知る機能も不要だろう。

 

「じゃあ俺が探しに行くよ。その子の名前と特徴、教えてもらってもいいかな。あとどっちの方にいるかわかる?」

 

「はい、名前は《ミト》で、紫の髪で、わたしと同じで三つ編みを後ろで結んでて、……あ、あと鎌を持ってます!それからいそうな方向は……そこの崖から落ちちゃったのは見たんですけど、その後は……」

 

少女はすぐそこの崖を指さして言う。げ、マジか。そこの足場確か崩れやすかったんだよなぁ……。

 

「とりあえず了解。……あ、あと君の名前聞いてもいい?このままだと"なぜか一方的にその子のことを知ってる不審者"になりかねない」

 

「あ、はい、《アスナ》です」

 

「わかった、ありがとう。んじゃキリト、アスナさん連れて先に村まで戻っててくれ。見つけたらメッセージ送る」

 

俺はキリトにそう告げて崖から飛び降りる。崖から落下死なんてシャレにならんから、崩れない足場を選ばないとな……。

 

「了解。…………ちょっと待て、それって俺一人で、ってもう行ったのか……。……あとで覚えてろよ」

 

キリトが何か言おうとしていたようだが気にしないことにする。とりあえず、頑張れ。

 

……どうせなら何があったのか聞くぐらいはしておいてくれないかなぁ。




はい、というわけで次回ミトと会わせます。
当初の予定だとこんなに話数かからないはずだったんだけどな…。

それと投げナイフのアイテム仕様に関しては「いちいち武器と投げナイフ持ち替えるんだったら普通に攻撃した方が強いのでは……?」となったのでこうしました。あと武器を持つ手と反対の手に盾を持っていてもソードスキルは撃てるのでまあええやろ、ということで。原作でもこうなってるのかは知りません。
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