おはようございます。ルーデウス・グレイラットです。
突然ですが、シャリーアでのグレイラット家の様子を突撃取材したいと思います。
グレイラット家の朝は速い。
まず、リーリャさんがキッチンに立ち、ほぼ同時に母様が定位置につく。
おっと、リーリャさんの隣に同じメイド服を来たアイシャが見えますね。
何やら最近は張り切っているようです。
「おはよう、ふわあ」
「おはようございます」
キッチンにいい匂いが立ち込めてから起きてくるのは、我が家の大黒柱、父様です。
といっても稼ぎ頭として見れば、すでに腐り落ちていますが。
その後にラノア魔法学校の制服を着たもう一人の妹、ノルンが続きます。
どうやら夜遅くまで宿題をしていたせいか寝不足のようです。
後は、ペットの聖獣様レオ。
それからアルマジロのジロー。
これで我が家の食卓に全員が揃いました。
おっと忘れていました。
私の妻、いや夫でしょうか。
エリスは今は剣の聖地で修行中でいないのでした。
母様とノルンのミリス教の祈りの後、朝食を皆で食べ始めました。
「ノルン、学校の調子はどうだ?」
「皆とても良くしてくれていますよ。この間もクリフ先輩と……」
父親らしく娘の事が気になる父様。
ノルンは年頃にしては、父親を嫌っていない様だ。
一緒に服を洗濯しても怒らないしさ。
「あ、いけない。早く行かなくちゃいけないのでした」
おお、そういえば生徒会の仕事を手伝っていると言っていたか。
「気を付けて行ってくるのよ!」
「行ってきます、お母さん」
母様が玄関まで送っていった。
何時もの光景だ。
何故か尊い。
「ルディ、最近お前の方はどうだ」
「あ、はい」
おっとモノローグに集中してしまっていた。
「俺もいい感じですよ。学校で魔術もあらかた習得しましたし、オルステッド様にも色々教えて頂いていますから」
「いや、それ以上強くなられたら俺の威厳が……」
「そんなものありました?」
ガクッと肩を落とす父様である。
「であっちの方はどうなんだ」
「あっちとは」
「シルフィちゃんだよ。いい感じなんだろ」
おう、ばれてらっしゃる。
「ゴホン、別にフィッツとは学友として、努めて健全な、妻帯者として、適切で、良好な関係を築いていますよ」
パウロ、てめえ今エリスにばれたらどうする気だ。
今もアイシャの耳がぴょこぴょこと動いているんだぞ。
「ははーん。んじゃロキシーちゃんとはどうだ。先生と生徒としての関係だけか?」
「当たり前じゃないですか」
ロキシーと二人だけの教室。
手取り足取り秘密の授業。
そんなものはないない。
ないったらない。
……いや、あった。
「あなた、何を話しているのかしら」
「げ、母さん」
「父様に世の中の男女の友情は成立するのかというお話を伺っていました」
おお、ゼニスの額に漫画的怒りのマークが浮かんでいるのが見える。
「そういえばまだ聞かせてもらってなかったわよね、この前のオルステッド様のお仕事の結果」
社長の命令でパウロも俺と仕事をしているのだ。
「何故か服に付いていた口紅の跡、どうして付いたのかしら」
「そ、それは……」
見苦しいぞパウロ。
お、リーリャさんとアイシャがそそくさと片付けを始めている。
賢い。
「助けた娘に勝手に感謝の口吻をされただけ、俺は悪くないですって?」
「俺の思考を読むのは反則だ!」
「何か?」
神子としての能力を発揮する母様。
いいね。一生不倫できないねぇ。
隠し事なしだ。
あ、という事は待てよ。俺もか!
「ルディもエリスが悲しむ事はしない事、いいわね」
「……はい」
悲しむというよりは、激怒するかも。
修行でどれだけ強くなってるのやら。
今から身震いがしそうだ。
でも実はすでにやってしまったのだ。
シルフィとロキシー。
どちらとも関係をすでに持ってしまった。
夫が単身赴任してる間に間男を連れ込んだ妻とはまさに私の事だわ。
でもエリスが帰ってきたら正直に言おう。
素っ裸で水を浴びさせられる以上の事が待ってそうだけど。
指、片腕。
なにを斬り落とされるやら。
いやなにをか。
「どうしてこうなったんだか……」
時を戻そう。
あれは確か1万……いや、そんなに昔じゃない。
「好きよ、ルーデウス」
これは初めてのげふん、げふん、違った。
「ぶっ殺してやるわ!」
あ、これも違う。
何でエリスの記憶はこうも百八十度急転直下かね。
ああ、そうか。
あれは、魔術災害のすぐ後から始まったんだった。