無職転生 ー妄想してみたー   作:ぺこぽん

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回想 冒険者時代 氷結迷宮編2

 さてそんな訳で俺達は旅の準備を始めていた。

 冒険者ギルドに顔を出しつつだ。

 折角Aランクになったんだし、最後は皆でぱーっと依頼を受けたいじゃん。

 

 そして俺とエリスとで依頼の掲示場とにらめっこだ。

 なかなか惹き付けられる依頼はない。

 これは出遅れたかもしれないな。 

 

「ラスターグリズリーの討伐依頼はどう?」

「いやよ。あいつら鈍臭いんだもの。面白くないわ」

「ふーむ」

 

 どうやらエリスは華々しい活躍をご希望の様だ。

 まあ、俺達も結構強くなったしな。

 もっと強い魔獣とかでも行ける気がする。

 

「スノードラゴンとかどっかにいないかしら」

 

 いや、それはさすがに止めとこう。

 いくらギレーヌがいるとはいえ、無理無茶無謀だ。

 

 あーでもないこーでもないと額を突き合わせながらやり取りを交わす。

 そんな感じで悩んでいると冒険者ギルドの入口で騒ぎが起こった。

 

「お願いします!!助けて下さいッ!!」

 

 女性の必死な叫び声だ

 全身雪まみれで、肩で喘ぐように息をしている。

 何か訳ありの様相だ。

 

 疲労の限界がきたのか女性がついに倒れる。

 そこに慌ててギルドの職員や側にいた冒険者が介抱し始めた。

 

「一体何だろう?」

  

 首をすくめたエリスと様子を見に行くことにした。

 

 治癒魔術を掛けてもらい、女性はいくらか落ち着いた様だ。

 何でも彼女は冒険者らしく、もう一人の仲間と採取依頼を受けていた所、突然現れたアサルトドッグの群れに相棒を攫われたらしい。

 

 アサルトドッグはターミネートボアが率いている事が多く、Dランクである彼女ではどうする事も出来なかったらしい。

 

「可哀想になあ。彼女ってオルシア姉妹の妹だろ」

「姉の方も見たことないが結構な美人だって噂だぜ」

「何でも病気の親に頑張って仕送りしてるんだってさ」

 

 事情を知る冒険者らがひそひそと話している。

 

「姉を助けて下さい!出来る限りの報酬は払いますから!」

 

 縋るように彼女は周囲を見渡した。

 だが、大勢の冒険者は気まずそうに目を逸らす。

 仕方がない。

 並の冒険者では手に負えない話なのだ。

 

 彼女の話ではアサルトドッグの群れは数え切れないほど。

 しかもどうやら奴らは、姉を引き摺って棲み処に持って帰ったらしい。 

 なんだろ、非常食にでもするのかね。

 とにかく敵地に乗り込み救出となると難易度がはね上がる。

 

 それに、もう生きているかすらも分からないのだ。

 

 恐らくAランク相当の依頼になるだろう。

 それでもギルドに緊急依頼を出せば、普通はどこかしらの高ランクパーティーが引き受けてくれるはずなのだ。

 でも今はタイミングが悪かった。

 

 丁度他の高ランクパーティーは数日前から別の依頼で出払っているらしいのだ。

 残っているのといったら。

 

「黒狼の牙……」

 

 誰かが呟き、ざっと人の輪が開いた。

 そして彼女の視線と俺の視線が交差する。

 彼女の目に光が宿った気がした。

 

「あいつ、泥沼のルーデウスだ」

 

 自己紹介をわざわざ気の利いたおじさんがしてくれた。 

 なんか無性にむず痒いな。

 どうやら俺は新生黒狼の牙のリーダーに思われている節があるらしい。

 確かに、こういう場に立つのはいつも俺かロキシーだけど。

 

「ルーデウスさん!姉を助けて下さいっ!」

 

 倒れ込む様に近づく彼女を見て、俺は驚いた。

 美人なのだ。

 それも結構な。

 

 長耳族の血を引くのか耳は少し尖り、その血の影響か整った顔の造形はエリナリーゼさんを彷彿とさせる。

 長い金髪を三編みにし、高身長な背中に垂らしている。

 そしてある一部を除いてとてもスレンダーだ

 

 でかい。

 何がとはあえて言わない。 

 

 だが彼女の防寒着に隠れたそれには、世界の人口の半分を惹きつける夢が詰まっているのだ。

 エリスのそれが日進月歩だとすれば、彼女のは究極生命体。

 土星辺りまで飛んで行ってしまっているのだ。

 しっかりして下さい。仙人!

 誰か助けて!息をしてないの!!

 

 やはり俺もノトスの血を引くものか。

 ふっ、血は争えないものだな。

 

「お願いしますっ!何でもしますからっ!!」

 

 え、今何でもって言った?

 見上げて来る彼女の一部から目を離せない。

 逃れる事など出来なかった。

 よーし、おじさんも何でもしちゃうぞー。

 

「ふんッ!」

「はっ!」

 

 冗談を言っている場合ではない。

 エリスに肘で脇を突かれて俺はようやく正気に戻った。

 

「どうしましょうか……?」

 

 騒ぎに集まってきた仲間を振り返る。

 ロキシーとギレーヌは考え込む様に手を顎に当てている。

 あ、ギレーヌはただ当ててるだけだ。恐らく考えてはいない。

 

「数時間前の話であれば、まだ生きている可能性もありますね。ですが、私達の装備の面で見れば……」

 

 ロキシーは、冷静に達成可能どうかを思案している。

 確かに、まだ食料や防寒着などは準備が出来ていない。

 薄情ではあるが断る可能性が少し出て来た。

 

 ミイラ取りがミイラになる訳には行かないのだ。

 

「デッドエンドは困ってる人を助けるのよね!」

 

 だがエリスはやる気満々だった。

 難しい事は何も考えていない様子だ。

 確かにここで断ったら、将来ルイジェルドさんに顔向けが出来ない。

 

 そうだな。

 俺の決意は決まった。

 あ、でもエリスさんや、お願いだからあんまりデッドエンドって大声で言わないでね。

 

「あたしはエリスお嬢様に従う」

「……そうですね、助けましょう!」

 

 ギレーヌとロキシーも賛同してくれた。

 そうと決まれば出発だ。

 

 だがそこに一人、水を差す人物がいた。

 

「今日は一日のんびりしていたい気分ですの」

 

 まだ隣にゾルダートを小判鮫の様に引っ付けてるエリナリーゼだ。

 あ、そういえばこいつのパーティーもSランクじゃないか。

 するとゾルダートの奴は、何やら弁明をしてきやがった。

 

「悪いな。仲間の一人が事故で死んだばっかでよ。俺らは辞退するぜ」

 

 ほんとにそれだけか。

 疑いたくもなるほど緩みきった顔だ。

 

「どうもわたくしは、何か違和感がありますのよ」

 

 エリナリーゼの方は眉を顰めて、首を捻っている。

 体の具合を確かめる様に頭を擦ったり、肩を揉んだり、最後にはお腹を触った。

 

「風邪ですか?……ってまさかっ!妊娠!!」

 

 ロキシーが慌てている。

 あ、ゾルダートの顔が真っ青になった。

 いい気味だ。

 

「いえ、それとは違いますわ。でもとにかく調子が悪いようですの」

 

 ゾルダートが胸を撫で下ろした。

 エリナリーゼさんは真剣な表情で悩んでいる。

 なんだかいつもより薄情な気がするが、それならまあ仕方がないだろう。

 

「ごめんなさいね。ま、ギレーヌがいれば大抵の事は大丈夫ですわ」

 

 そう太鼓判を押してエリナリーゼは、ゾルダートと去っていった。

 ええと、何でゆっくりするのに男が必要なんでしょうかね。

 

 こうして俺達は四人で依頼を受ける事にした。

 何にせよエリス待望のAランク依頼だ。

 さあ、油断せずに行こう。

 

 

 冒険者ギルドに装備の融通をしてもらう。

 準備不足は否めないが、なにせ人の命が掛かってる。

 サクっと行ってさっさと帰ろう。

 

「あの、私テレサ・オルシアといいます。引き受けて下さってありがとうございます」

 

 姉はリアーナといい、双子の姉妹なのだそうだ。

 なんともその妖精の様な姿に似た綺麗な名前だ。

 是非、お姉さんにもご挨拶したいね。

 

「いえいえ。それでは準備の方はよろしいでしょうか?」

「はいっ」

 

 テレサは元気に返事をくれた。

 よっぽど俺らが引き受けてくれた事がうれしかったのだろう。

 例えリアーナさんは生きていなくても遺品の一つは取り返してあげたいな。

 

 俺達は棲み処まで案内してもらうため、道案内役にテレサを引き連れて出発した。

 彼女は剣士だ。

 他にも初級の魔術を使えるらしいが得意ではないらしい。

 あまり戦力には数えない方がいいだろう。

 

「私がサポートしますから、急ぎましょう」

 

 ロキシーがテレサの傍で一緒に走っている。

 テレサは気丈にも、なんとか俺達に付いてきていた。

 見た感じ、運動は出来そうな感じはするんだけどなあ。

 ああ、もしかしたらある一部が重いせいかもしれない。

 

「ルーデウス、敵だ」

 

 先頭で索敵をしていたギレーヌが声を掛けてくる。

 追いつくと丘の下には、スノーバッファローの群れが犇めいていた。

 

「腕が鳴るわね!」

「エリス待った」

 

 肩を回して飛び降りようとしているエリスを留める。 

 代わりに俺が前に出て杖を掲げた。

 

「獄炎火弾」

 

 俺が出した上級火魔術は、奴らを包囲殲滅陣で取り囲む。

 あっという間にスノーバッファローの群れは業火に飲まれていった。

 上手に焼けました。

 

「あれくらい私だってあっという間だったのに!」

「今回は救出が最優先なんだよ。出来る限り最短で行きたい」

 

 出鼻をくじかれたエリスは不満そうだ。

 

「ルーデウスの言う事が正しい」

 

 ギレーヌにも諭された。

 

「わ、わかってるわよ」

 

 そんなに不貞腐れなくても活躍の機会はこれからあるさ。

 すばしっこい奴とか特に頼むよ。

 

 エリスの期待通り、進んでいくと素早い魔物が現れ始めた。

 テレサ達を襲ったアサルトドッグの姿も見え始める。

 

「見てみて、ギレーヌ!」

 

 エリスが満面の笑みで、剣を血で濡らしながら振り返ってくる。

 よほど修行の成果を見せたかったのだろう。

 満点のテストをお母さんに見せてくる小学生の様だ。

 

「まだ、脇が甘い!エリス、最後まで油断するな!」

「はあい!」

 

 ギレーヌの厳しい叱責を受けながらエリスは敵を屠っていく。

 腕組みをしたままのギレーヌは手を出そうとはしない。

 今後の鍛錬の段取りでも考えているのだろうか。

  

 エリス一人でも十分対処可能な敵しか今は現れていない。

 でもあまりエリスを疲れさせるわけにもいかないか。

 まあ、俺もロキシーも後衛にいるのだ。

 安牌で行こう。

 

 周辺の敵を駆逐した後、小休止を取る事とした。

 暖かい食事と、雪山では忘れがちな水分も補給する。

 無限と言っていいほど水を出せる俺がいるパーティーは水を持ち運ぶ必要はなく、装備を身軽に出来る利点があるのだ。

 俺はロキシーにテレサの様子の確認をとった。

 

「テレサさんの様子はどうですか?」

「大丈夫なようです。もっと消耗してるのかと思いましたが、以外としっかりしてて。やっぱりお姉さんの事が心配なんでしょうね」

 

 今は俺が魔術で作った椅子に座って休息を取っている。

 テレサに土魔術で作ったコップに水を入れて渡してあげた。

 

「ありがとうございます。ルーデウスさん」

 

 どきっと、女性らしい仕草に俺は思わずときめいた。

 いや、うちの女性陣が決して女性らしくないというつもりはないよ。

 ただ、ハの字に開いた足と高身長に関わらず上目遣いで見てくる表情。

 年下である俺にも敬語を使ってくるおとしやかキャラ。

 いかにも全てが男心をくすぐる存在なのだ。

 

「いえ、必ずリアーナさんを救いましょう」

 

 俺はベテラン冒険者ぽく声を掛ける。

 テレサはそれに嬉しそうにこっくり頷き、一口水を飲んで呼吸を整え始めた。

 深呼吸に合わせて上下するテレサさんのテレサ。

 

 そうだ、俺も休憩しないとな。

 おっと、次の戦闘までに準備も大切だ。

 さあ、屈伸でもしよう。

 

 テレサさんの呼吸に合わせて、いちにいさんし。

 いや、合わせる必要は全くないが。

 

「ルーデウスはあれくらい大きい方がいいの?」

「な、なんのことだい!?」

 

 突然聞いてきたエリスに俺は直立不動である。

 いや、ほんと準備体操してただけです。

 

「私だって、いつかはあれくらいになるわよ」

 

 エリスは腕組みをして、俺に詰め寄った。

 確かに、もう腕に載せられるだけはある。

 まあ、ヒルダさんの血を引いているのだ。

 将来はビンタ出来る程になるだろう。

 

「エリスは……エリスのままでいいよ」

「そうなの?」

 

 別に体に惹かれてエリスと結婚した訳ではないのだ。

 いや、初期型ルーデウスはそうだったけど。

 エリスの外も内も知る長い付き合いを経たのだ。

 あんな脂肪の塊に引き裂かれる程、俺達の絆は浅くないはずだ。

 

「エリス」

 

 きっとエリスは嫉妬しているのだろう。

 私だってエリスが知らない男と話してたら嫉妬しちゃうわ。

 そういえば前にも弓使いの女性冒険者を助けて、友人関係となったのだが、エリスを宥めるのに苦労した。

 

 あの時はどうしたんだっけ。

 ああ、そうだ。エリスはきっと安心感が欲しいのだ。

 俺は、にちゃらない様に顔を引き締めた。

 

「俺は誰よりも百万の星よりもエリスの事、好きだよ」

 

 精一杯のイケボである。

 だが効果てきめんだった。

 

「ふがッ……!」

 

 顔を赤面させるエリス。

 

「そ、そうよね。ルーデウスが好きなのは私だもんね!」

 

 エリスは嬉しそうに、小走りで歩哨に立つギレーヌの元に走っていった。

 キザなセリフは、ここぞという時に効果があるなあ。

 でも、ほんとは愛してるといおうとしたのだ

 なんだか、気恥ずかしくて止めてしまった。

 

 ギレーヌは歩哨をエリスと交代してやって来た。

 俺を見て耳をピンと立てている。

 

「ルーデウス」

「はい、何でしょう」

 

 ギレーヌは何やら言い出しづらそうだ。

 

「あー、そのだな。あたしはエリスお嬢様とお前が一緒になってとても嬉しく思ってる」

 

 うん、それは知ってる。

 

「番になっても他の雌に欲上するのは、男の性だとパウロでよく知ってる」

 

 うん、それもよく知ってる。

 

「だが、悪い事はいわない。あいつだけは止めておけ」

 

 ギレーヌの視線はロキシーと笑顔で会話を交わすテレサに向けられていた。

 

「え、それってどういう……」

 

 俺の疑問にギレーヌは答えることなく去っていった。

 どういう事だろう。

 もしかしたらテレサさんが引く長耳族の血が問題なのだろうか。

 大森林では迫害されている一族の末裔なのだろうか。

 

 

 疑問はさておき、俺達は目的地にと到着した。

 

「こっちです」

 

 積雪地帯を抜け、木立の中に入っていく。

 二人が襲われた場所にはまだ血が残っていた。

 恐らく魔獣のものと思われる足跡もだ。

 

「あっちだな。血の匂いが続いている」

 

 ギレーヌが鼻を鳴らして先導し始める。

 すると木立の中に広場が見えてきた。

 そこには雪に隠された大きな洞穴が見える。

 

「きっとあの中です」

 

 テレサはぎゅっと手を握って告げた。

 きっと双子ならではのテレパシーがあるのだろう。

 

「じゃあ、行くわよ!」

 

 俺はエリスの首根っこを抑えた。

 

「わっ。今度は何よ!?」

「あのね。何も考えなしに突っ走る事はしないよエリス」

 

 洞穴の中は暗い。

 どれ位の大きさかは分からないし、中に何が潜んでいるかも分からない。

 

「じゃあ、どうするのよ。もう死にかけてるかもしれないのよ」

「エリス……」

 

 ロキシーはテレサを見て、エリスを窘めた。

 テレサの顔は青ざめている。

 

「見張りを立てて、まずは様子を見ましょう」

 

 ロキシーの指示の下、テレサとエリスを護衛として見張りに残して置く事にする。

 

 そして偵察隊の先頭は、最高戦力であるギレーヌだ。

 後衛の俺のサポートには、ベテラン冒険者であるロキシーが付いてくれた。

 

 火炎弾を明かり代わりに浮かべ、俺達は中にゆっくりと入っていく。

 入口の大きな氷柱が落ちてきそうで、凄く怖い。

 ギレーヌの耳が何度も激しく動き、やがて止まった。

 

「何もいないな」

「そうですか。それにしても随分暗いですね」

 

 ロキシーが見つめる先には、明かりが届かない洞窟が広がっている

 いや、洞窟というよりはむしろ遺跡といっていいのかもしれない。

 何か地殻変動とやらで、遺跡の一部が地表に出てしまったのかもしれないな。

 

「誰もいそうにありませんか?」

「ああ、残念ながら死体もないな」

 

 となるともっと奥か。

 踏み出すのを躊躇したくなる暗闇の先だ。

 とにかく一度戻ってテレサに報告しよう。

 

「なんだ、広いじゃない!」

 

 ん、誰だ。

 

「って、エリス。何で入って来てるの!?」

「だってつまらないじゃない。っじゃなくて私は止めようとしたのよ!」

 

 どうやら、テレサが先に来てしまったらしい。

 

「ごめんなさい。どうしても居ても立っても居られなくなって……」

 

 気持ちは分かるが、今挟み撃ちにされたら袋の鼠だ。

 とにかく一旦出よう。

 そう思った時だった。

 

「なんだ?」

 

 急にパキパキと氷が成長する音が響く。

 出処は洞窟の入口だ。

 氷柱が、壁にこびり付いた霜が、成長しているのだ。

 入口が見る見る間に氷で閉ざされていく。

 

「あたしじゃないぞ!」 

 

 わかってますよギレーヌ!

 

「どいて下さい!!」

 

 完全に閉じる前に破壊してやる。

 俺は岩砲弾を氷壁に数発ぶち込んだ。

 だが、氷の壁を破壊するまでには至らず突き刺さっただけだ。

 

「あたしがやろう」

 

 ギレーヌも事態を察し、腰の剣を抜き放つ。

 確かに光の太刀は、厚い氷を斬り裂いた。

 でも駄目だ。

 すぐにその切り口は、新しい氷に覆われていく凍っていく。

 

「…大いなる炎の加護あらん」

 

 ロキシーはというと既に呪文を唱え始めていた。

 そうか、氷を溶かすには火だ!

 俺はロキシーに目配せし、同時に唱えた。

 

「「大火球!!」」

 

 二つの火球が氷に激突する。 

 そしてその結果はいうと。

 

「アッツァ!」

 

 熱せられた水蒸気で俺達は蒸し焼きになる所だった。

 慌てて遠くに避難する。

 

 入口を見るも、ほとんど変化はない。

 いや、更に氷の層が広がり、外から届く光量がますます落ちていく。   

 

 絶対に逃がさないという意思を感じるね。

 

「閉じ込められちゃったわ!」

 

 エリス、嬉しそうに言わないの。

 

「しまった……」

 

 こうして俺達は囚われてしまったのである。

 




一体テレサは何者何でしょうね
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