無職転生 ー妄想してみたー   作:ぺこぽん

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魔法大学編 女子寮窃盗事件7

「な、なんだね!君達は!?」

 

 なんの捻りもない。

 犯人は最初から最有力候補だったあいつだったのだ。

 ユンゲル・ホワイトゴートが驚愕の表情で、俺達を見返していた。

 

 それもパンツ一丁でだ。

 その裸体は、部屋に置かれた浴槽に浸かっている。

 そして、浴槽はあるもので満たされていた。

 

「先輩、その大量の下着はどうしたんです?」

「こ、これは……っ!?」

 

 どこぞの怪しい雑誌の裏表紙にでも乗ってそうなお姿だ。

 こっちは金じゃなくて、下着だが。

 

「っ、いきなり人の部屋に入って来て!!礼儀というものを知らないのか!?」

 

 ユンゲルは取り繕うかのように眼鏡を掛け、下着風呂から立ち上がった。

 たった今、人としての尊厳を失った野郎に、礼儀がどうだとかは言われたくはない。

 

「それより質問に答えてもらえませんか?」

「この下着は、……恥ずかしいが私の趣味だ。そう、私が買ったものだ!」

 

 おっとその手に出たか。

 

「ばれてしまってはしょうがないが、私は女性の下着が好きだ。それは認めよう。胸を張れない嗜好だというのはわかっている。だが、これは店で買ってきたものであってだな。断じて盗んだものではない」

「やけに早口ですね、先輩。ちなみに誰も盗んだものかなんて事は聞いてないですよ」

 

 まあいい。

 このまま続けて、どれくらい言い訳が出るかも一興だが、

 これ以上、呑気に戯言に付き合ってやるつもりはない。

 

 俺は、さっさと魔力懐中電灯を下着風呂に向けた。

 するとたった今手に入れた戦利品を、堪能していたばかりだったのだろう。

 丁度、奴の膝に引っ掛かっていた下着が、見事に発光した。

 

「これはさっきお前が人の下着を盗んだという証拠だ。さっさと観念するんだな」

「そ、そんな待ってくれ!これは何かの間違いだ」

 

 ユンゲルは否定し、下着風呂から出ると膝をつき、徐々に擦り寄ってきた。

 とてもじゃないが、見ていられないみっともない姿だ。

 見てくれだけは、なかなかの好青年だったはずなのだが。

 今は、女生徒達に真実の姿を晒し、過去の栄光は見る影もない。

 

「だ、第一。私はさっきまでずっと、自分の部屋にいたんだぞ。確かに証明してくれる者はいないが、時間的に犯行は不可能だ!」

 

 新世界の神並みに往生際の悪い奴だな。

 俺は最後の審判を下す事とした。

 

 俺は魔力の光を、カーテンに隠された部屋の奥に向けた。

 ちゃんと今まで追ってきた足跡は、その中にと続いている。

 俺の目線の合図で、シルフィが近づきカーテンを開けた。

 

「やっぱり、あの足跡。人間じゃなかったんだ」

 

 カーテンの奥には檻が置いてあり、その中に実行犯はいた。

 白い毛並みを持つ小さな猿だ。

 そいつは俺達の姿にぎゃっ声を上げて驚くと、すっと体を透明にして消えた。

 

 ようやく謎が全て解けた。

 シルフィが見たすばしっこい小柄な姿も、いくら警戒しても盗み出す方法も。

 透明になれるこの魔獣、命名透明猿ならば、全てを説明出来る。

 ユンゲルがこいつを躾けて、数々の犯行をさせていたのだろう。

 

「ユンゲル・ホワイトゴート!」

 

 そこにアリエルが声を上げた。

 さすが次期王女と言わんばかりの、場を支配するカリスマ性だ。

 

「正直に罪を白状しなさい!そして、ホワイトゴート家、いえ、アスラ王国に泥を塗った責任を取りなさい!」

「あ、アリエル様……」

 

 もうユンゲルは言い逃れが出来そうもなかった。

 すでにアリエルの生徒選挙の対立候補でもなく、犯罪者として、いや、人としてすでに終わっている。

 まあ、アリエルが余り動揺した所がないのを見ると、アスラ王国の貴族じゃこれぐらいの性的趣向は一般人扱いなのかもしれないが。

 

「まずはこの国での裁きを受けなさい!アスラ王国での処罰はそれからです!」

「そ、そんな……」

 

 ユンゲルは四肢をつき項垂れた。

 だが、なおも諦め悪そうにぶつぶつと、呟いている。

 

「何か弁明でも? それとも共犯者がいるとでも?」

 

 ユンゲルはアリエルの問いに、かくかくと首を振った。

 それから何かを床に向かって、小さな声を投げかけ始める。

 小さすぎて聞こえず埒が明かないので、俺は奴を起こすことにした。

 

 腕を掴み、起こそうとした時、いきなり奴ががばっと起き上がった。

 それから奴は俺の背中に回り込み、俺は羽交い絞めにする。

 

「ルディ!」

「おっと、動くなよ」

 

 ユンゲルは俺の喉元に向けて、刃物を突き付けてきた。

 護身用のナイフだ。

 こいつ、這いつくばる振りをして、はなからこの機会をずっと伺ってたな。

 

「ルディエッタ。君がここまでする子とは思っても見なかった。見くびっていたよ」

「俺もお前が、ここまで落ちるとは思ってなかったよ」

 

 どうやらユンゲルは俺を人質に、ここを突破するつもりらしい。

 しかし、こんな真似して逃げても、その先どうするというのかね。

 浅慮というか、貴族特有のぼんぼん思考というか。

 

「今すぐルディを解放するんだ!ユンゲル・ホワイトゴート!!」

 

 杖を構えたシルフィが、ゆっくりと近づいてくる。

 やばい、かっこいい。

 こんな時だというのに、俺が女だったら惚れちまうぞ。

 いや、繰り返すが今は女だったな。

 

「ルディエッタ。一緒に逃げよう。私はアスラ王国での地位が約束されているのだ。

 今回は上手くいかなっかったが、グラーヴェル様が王座につけば、アリエルを妨害した私はきっと重宝されるはずだ」

「そりゃすごい」

 

 すごい妄想だ。

 妨害どころか、路傍の石ころぐらいの邪魔にしかなっていなかったが。

 

「きっと君を未来の四代貴族を超えた、真の貴族の妻としてあげよう。さあ、お前ら、道をあけるのだ」

「…………」

 

 シルフィも勿論、アリエル、そして事情を知る獣族の女生徒は誰も動かなかった。

 まあ、俺を信頼しての事だと信じたい。

 以前の俺なら刃物を突き付けられただけで、ぶるってちびってただろうが、

 今はオルステッドと比べたら、もう何も怖いなんてものはない。

 

「くっ、ルディエッタ。……こうなったらせめて最後の一時を」

 

 そう言うと、、ユンゲルは俺の身体をまさぐり始めた。

 

「は、おま」

「ああ、ハスキーな声も素敵だ。このまま捕まる位なら一緒に死のうじゃないか!」

 

 そういや、さっきから地声で喋ってたな。

 すると奴は俺の股間をついにまさぐり始め、俺の息子に行き当たった。

 まだ生まれてない子供の方じゃあない。

 

「え、あれ。あ、え」

「ふー、それは私のおいなりさんだ」

 

 混乱の只中にいるユンゲルに、俺はため息をついた。

 どう調理しようか考えていた思考を止めて、俺は思いっきり首を振る。 

 後頭部が奴の顔面にぶつ当たり、鼻が折れる音が響く。

 

「ルディ、離れて!」

 

 そこにシルフィが風の魔術で奴を吹き飛ばした。

 その際、奴が俺の付け髪を握っていた為、取れてしまう。

 

「ど、どういう事だ!?何故君に……っあれが!!」

「冥土の土産に教えといてやろう!……おれは男だ!」

 

 髪が視界の邪魔になるので、俺は後ろでさっと髪を何時もの様に括り、宣言した。

 そんな馬鹿な、とばかりガクッとユンゲルは肩を落とした。

 

 さて、後は警備員でも呼んで、こいつを引き渡そう。

 いや、ユンゲルは魔術もそこそこ出来るから、俺も付いて行ったほうが良いだろうか。

 などと考えていると、場の雰囲気が凍り付いているのに気が付いた。

 

「ルディエッタさんが男……?」

 

 一人の女生徒が呆然と呟いた。

 事情を知らない生徒の一人だ。

 そして、俺のいつもの髪型にしたせいで、心当たりが生まれたのだろう。

 

「え、あの顔って前に見たような……」

「あ、特別性の一人、ルーデウスとかいう」

「ああ、前に寮にいたから知ってるよ、あいつがそうだよ」

 

 そこに俺の顔を知る男子生徒が顔を覗かせ、答え合わせまでしやがった。

 それとなく感じていた女生徒も確信を深めたようだ。

 

「どうして男である貴方が女子寮にいるんですの!?」

 

 そして、エイダを筆頭に女生徒達がにじり寄ってきた。

 さっきようやく犯人を捕まえたというのに、またもや騒動が始まってしまった。

 先ほど、イケメンランキング上位を占めていたユンゲルが醜態をさらしたばかりだ。

 きっと彼女らの、男に対する嫌悪感が一気に増したのだろう。

 

「あー、ボス?」

 

 リニアがひよった声で、援護すべきか迷った声を上げている。

 そしてルーデウスを女子寮に上げた筆頭であるアリエルは、先ほどから沈黙したままだ。

 微笑を浮かべ、どちらに転んでも悪くない様に絶妙な立ち位置を保っている。

 切り捨てるか、犯人逮捕の功績とするか女生徒達の反応で、今天秤に掛けているのだろう。

 

「ルディは犯人逮捕の為に、女子寮に潜入してたんだ!」

 

 そこにシルフィが真実を打ち明けた。 

 アリエルが少し驚いた声を上げている。

 シルフィが、アリエルの様子見の行動に逆らったからだろう。

 

「ボクがお願いして、わざわざ女装までしてもらったんだよ!」

 

 無言のフィッツが大声で庇っているのが珍しいのだろう。

 全員が目を丸くして、驚いていた。

 

「で、ですが彼は変な噂もありますし、フィッツ様なら彼に頼らなくても犯人を捕まえれたのでは」

 

 おずおずと声を上げた女生徒にシルフィは髪を振り乱して答える。

 

「ボクはアリエル様の下着を守れなかったし、ルディがいなきゃ、絶対に捕まえられなかったよ!」

「シルフィ……」

 

 俺は必至に庇ってくれるシルフィに胸が熱くなった。

 そういえば、前にもこんな事があったなと。

 

「犯人を捕まえてくれた事はルーデウスさんには感謝してます。でも、言い方は悪いですが、彼が女子寮に潜入していた間、そこのユンゲルの様に悪事を働かなかったと言えますか!?」

 

 ええ~、感謝と疑惑は別腹か。

 そこまで俺の悪評は悪いのかと、地味にへこむぞ。

 

「それは……大丈夫だよ!だって、……ルディの事はボクが満足させてるから!!」

「「「ええええぇ!!!」」」

 

 半分黄色い悲鳴が混じった叫び声が上がった。

 ざわざわと、部屋に入れず外にいる女生徒にも話が波の様に伝わっていく。

 

「そ、その。フィッツ様はそちらのルーデウスさんと、お付き合いを?」

 

 先ほど俺を嫌悪感増しましで見ていた女生徒が、前のめりになっている。

 落ち着いてお嬢さん、涎が垂れそうですよ。

 

「ううん、結婚してるよ」

「「「ええええぇ!!!」」」

 

 また悲鳴が上がり、外にいる女生徒にも以下略。

 

「あの、そのミリス教もですけど、男の子同士での結婚は禁止されてるんですが……」

 

 そこにおずおずと一人のミリス教の女生徒が声を上げた。

 

「その……実はボク、今まで黙ってたけど、ほんとは女の子なんだ!」

「「「ええええぇ!!!」」」

 

 そう言ってシルフィは俺の胸に飛び込んできた。

 本当はずっとそうしたかったとばかりに。

 それにアリエルが仕方がないですわね、とばかりに苦笑を浮かべた。

 

 学内で打ち明けるタイミングは本当は、生徒会選挙の後が良かったはずだ。

 まあ、対立候補の一角はあの有様だし、もう問題ないのだろう。

 

 そしてシルフィはサングラスを取って、その顔を衆目に晒した。

 潤んだ瞳で、愛らしい顔をゆっくりと近づけてくる。

 

「シルフィ、皆が見てるよ……」

「だって、こうしなきゃ信じてもらえないと思うんだ」

  

 確かに、その場しのぎの嘘をついてると思われる可能性もある。

 俺は覚悟を決めて、シルフィの肩に手を置いた。

 徐々に近づいていく互いの唇。 

 それに合わせて臨場感たっぷりに周囲に黄色い悲鳴が上がる。

 

 そして二人は幸せなキスをして終了。

 

 とはいかなかった。

 完全に俺の疑惑が晴れ、見事に祝福ムードで盛り上がっている中、拍手が響いた。

 ぱちぱちぱち、と。

 見れば、ユンゲルが二つの意味の衝撃から立ち上がっている。

 

「いやー、おめでたい」

 

 何言ってんだコイツと、全員の視線を集める中、ユンゲルは窓から飛び降りた。

 あ、しまったと窓に駆け寄る。

 魔術の詠唱が響き、無事に着地したであろう声が聞こえてきた。

 

 そのままユンゲルは走って逃げだした。

 このまま奴は逃げおおせてしまうのだろうか。

 だが、すぐに男子寮の曲がり角で強烈な一撃を喰らう事となった。 

 

「師匠、こやつはいかがいたしましょうか?」

 

 ザノバに摘み上げられたユンゲルは、眼鏡ごと顔面をへこまされていた。

 指示通りに外で待機していたザノバの拳を受けたのだろう。

 うわ、生きてるかなあいつ。

 

「とりあえず、殺さない様に持ってきてくれ」

 

 生きてるなら死なない程度に治癒でもかけといてやろう。

 俺はシルフィと顔を見合わせ、微笑んだ。

 なにはともあれ、ついに一件落着だ。

 

 こうして人騒がせな下着泥棒事件は幕を閉じたのだった。

 

 

 後日談。

 見事というか、当然というかアリエルは生徒会長となった。

 さっそく全校集会にてそのカリスマぶりを発揮しておられる。

 

 その横には女性である事を明かしたシルフィの姿もある。

 堂々と俺との結婚を公表したシルフィは、女子寮にて受け入れられ、ありがたい事に俺の悪評を払拭しようとしてくれている。

 まあ、実はルーデウスは女だったとか、男のフィッツの寝込みを襲っただとか不確かな噂も流れて入るが耳を閉ざそう。

 

 ノルンも活き活きとした表情で、アリエルがいる生徒会に入った。

 それに、少しは兄の威厳を取り戻せたのか、前よりは話し掛けてくれるようになった。

 今後、疎かにしていたルイジェルド人形の製作にも本気で取り組んでいこう。

 きっと快く手伝ってくれる事だろう。 

 

 マルグリット先生はというと、実家の田舎で休養を取った後、学校に戻ってきた。

 授業は当初の通り減らされたが、講師としての契約は更新された。

 約束通り、ロキシーと共同研究を進めているようだ。

 

 ナナホシはというと、ザノバにやられらユンゲルの姿を見て、溜飲が下がったのだろう。

 奪われた下着は気持ち悪いから燃やしといてと言い、いつもの研究に戻っていった。

 いや、ほんと無事に解決出来てほんと良かった。

 あやうく第三次人魔大戦の引き金を引くところだったかもしれない。

 

「何故、そんな面白そうな事に吾輩を呼ばなんだのだ、フハハハハハ!」

 

 バーディガーディには色んな意味で、見つからなくて良かった。

 存在を忘れていたとは口が裂けても言えない。 

 

 あとは、手助けしてくれた全員に挨拶回りをする事にしたよ。 

 皆、快く協力してくれた事に本当に頭が上がらない。

 

「結局、俺一人じゃ解決出来なかったよ、なんか情けないな」

「ううん、そこがルディの良い所なんだよ」

 

 シルフィは本気でそう言ってくれている様だった。

 男としては、ずばっと一人で解決して、妻を安心させたい所だったけど、力不足はしょうがない。

 まあ、コネ最強って事で納得する事とした。

 

 ああ、あと最後に透明猿の扱いに困ったのだった。

 ユンゲルの悪事の手先となったはいえ、猿に罪はない。

 まさかユンゲルと同じ様に、投獄する訳にもいかないだろう。

 

 とりあえず学園が、学内の動植物園で世話を見てくれる事となった。

 なにやら大変希少な魔獣らしい。

 リニア曰く、大森林の奥深くに生息してるとかだそうだ。

 

 転移門で生息地に返すことも出来なくはない。

 だが、今は聖獣誘拐をやらかしてる身だし、あまり近づきたくない。

 

 そうだ。今度、ギースが来たら頼んでみるか。

 なんか、あいつの遠い親戚っぽいしな。

 

 ……それにしても、新入りの奴、全然顔出さないよなぁ。

 

 とまあ、こんな感じで後処理を終え、俺は久しぶりの我が家と凱旋したのだった。

 

「ただいま、エリス!」

 

 エリスは憮然とした表情で、俺を待ってくれていた。

 あれ、なんかご機嫌斜めそうだな。

 

「聞いたわよ、ルーデウス!」

「なにを?」

 

 エリスはにまにまと笑顔を浮かべ、腕を組んだ

 

「見事に犯人を捕まえたって、さすがルーデウスだわ!」

「ああ、まあな」

 

 俺は鼻を照れくさそうにこすった。

 

「それも女装してって聞いたわ!ずるいじゃない!私にも見せなさいよ!!」

 

 俺の手が止まった。

 誰だ、エリスにばらした奴は。

 

 エリスは何故か女物の服を取り出して、にじり寄る。

 あの、エリスさん、何故そんなものを近づけるんです?

 

「もう女装は嫌だぁ!!」

 

 下手な映画を見るよりも、トラウマを植え付けていったのだ。

 二度と経験したくない。

 俺は逃げる事にした。

 

「あ、エリス姉。走っちゃ駄目だよ!」

 

 アイシャがエリスの行動を止めるのが先か、水音が聞こえるのが先だったのかはわからない。

 

「あ、破水……」

 

 アシシャがぽつりと漏らした言葉で周囲が凍りついた。

 しばしの間、沈黙が支配した後。

 

「ど、ど、ど、どうしよなもし!エリスが!俺のベイビーが!」

 

 俺は、しゃがみ込んだエリスに近寄るか、土下座するか一瞬逡巡した。

 

「落ちていて下さい!」

「落ち着いてよ!」

 

 ロキシーが杖を打ち鳴らし、シルフィが声を張り上げた。

 

「アイシャはゼニスさんと、リーリャさんに手助けをお願いしてきて」

「ルディはエリスをベットに運んで下さい」

 

 ああ、頼りになる奥さん達だ。

 やっぱり俺には三人が必要なのだ。

 

「「早く!」」

 

 あっと、今必要なのは頼りになる夫だ。

 錯乱している場合などではない。

 

 流石のエリスも未体験の出来事に、強がってはいるが不安そうな表情を浮かべている気がする。

 

「大丈夫、俺がついてるから」

 

 まるで俺自身に言い聞かせる様だ。

 それにエリスは力強く頷いた。

 

「全くルーデウスは心配性なんだから。何の問題もないわよ」

 

 そしてシルフィ達が準備を終えてやってくると、どっちがこれから子供を産むのやらわからないほど、青白い顔をした俺を発見した。

 

 ……何が無詠唱魔術師だ。……また肝心な時に俺は無力だ!

 などと反省してる暇はない。

 

 身重で動けない母さんとリーリャさんの代わりに、俺が指示を受けひたすら動き回った。

 今の俺は父さん並に役に立ちゃしないな。

 なんとかノルンとアイシャが産まれた時の錆びついた記憶を掘り起こし、瞬間湯沸かし器として活躍したのだった。

 

「おめでとう、男の子だよ」

 

 そして意外とあっさりと、元気な産声を上げる男の子が産まれた。

 

「ありがとう」

 

 俺はエリスに自然とその言葉を言い、男の子ならアルスと決めていた名前を呼び、我が子を抱きかかえた。

 こうして俺は父親となったのであった。

 

 

 またまた後日談

 

 それからほどなくして、母さんとリーリャの子供も生まれた。

 二人とも、グレイラット家の男女不均衡を正そうとばかり男の子だった。

 

 子供の名前に母さんはフィル、そしてリーリャはリヨンと名付けた。

 フィルという名に少し思う事はあるが、どちらも可愛らしい弟達だ。

 

 アルスを連れてきて、寝台に三人並べると、髪色以外はそっくりだった。

 そりゃそうか。

 全員血縁だしな。

 まるで兄弟みたいだ。

 ほんとは叔父と甥っ子が混ざってるけどね。

 

「喧嘩せずに大きくなれよ」

 

 前世での自分の兄弟達を思い出す。

 子供の頃は、こんな風に仲良しだったのだ。

 それがあんな形で終わる事となってしまった。

 

 思い出したくもない、俺の過ちだ。

 でもこの子達はきっとそんな風にはならないだろう。

 俺がそうならないようにしたいと思う。

 

 父親とか、子育てとかはまだよく分からないが、自分の歴史を、過ちを教える事位は出来る。

 なんの参考にもならないかもしれないけど、それでも耳がタコになるまで伝えたい。

 

 本気で生きなきゃ後悔するぞってな。

 




ヨシ!
なんとかエタらずに書き終わりました。
一気に書いたので、言葉遣いが変だったり、存在を忘れていた奴もいますが気にしない事とします。
だって妄想ですからね。
駄文を読んでくださった方、ありがとうございました。
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