俺の息子は天才だ。
転移事件の後、ミリス大陸で捜索活動をしている俺はふと思い出す。
あいつならもっと俺よりうまくやれたんじゃないかと……。
最近死亡報告が多い。
俺の知り合いも何人も死んでいるのがわかった。
だがその中でも朗報もあった。
何故か魔大陸方面、それに大森林から転移被害者が大勢やってきたのだ。
しかも、小金持ちになったと嬉しそうに語る奴もいた。
なんでもデッドエンドと名乗る意味不明の冒険者パーティーが助けてくれたそうだ。
そのパーティーのリーダーは噂によると、人族。
曰く番犬と狂犬を引き連れたまるで菩薩の様な奴ときたもんだ。
そんな与太話につきあってられっか。
こっちはあのルディでさえ見つかっていないっていうのによ。
ってまてよ、あれまさかうちの子に限って……
「団長、何やってんですか!」
ヴェラが呼んでいる。
憂さ晴らしに酒を飲もうとした所がばれちまった。
どうやら捜索団が根城にしている場所に大勢の人間が迫っているらしい。
なんだ奴隷の主人が手下でも引き連れてきたってのか。
だが予想は外れた。
現れたのは転移被害者達と、そこ両手を広げた気の良いおっさん、いや俺の息子がいた。
「父様、お久しぶりです!」
まじか。
久しぶりに会ったパウロは少し疲れている様に見えた。
事情を察するに大変だったのだろう。
ミリシオンに到着した俺は、二人に内緒でパウロに会いに来たのだ。
何故父親がいる事を知っているか、エリスに聞かれたくなかったのだ。
エリスには、両親の事を言い出せないままだから。
途中、冒険者ギルドに寄って魔大陸からの帰還者と共に、張り紙を頼りに会いに来た。
周りに大勢喜んでいる人はいるのに、何故かパウロは不機嫌そうだ。
「さすがはルディだ。伝言を見なくても自分で事情を察して、勝手に動いてるなんてよ」
言い方がまるでスネ夫だ。
もしかして、俺のサクセスストーリーに嫉妬したのだろうか。
それとも、苦労せず魔大陸ウルトラ横断を果たしたから本当に感心してるのだろうか。
あれ、おかしいな、5年ぶり位に会うのだから、もっと感動的になるかと思ってた。
ああ、そうか。
俺は最初からパウロが何処にいるか知ってたからか。
もしかしたらパウロの方はすごく心配してたのかもしれない。
なにせ頭脳は大人、知能と体は子供だ。
心配して当然の年齢だ。
ショッピングモールで迷子になった子供を必死で探し出したら、その子供にお父さん、どこいってたのと言われた気分なのかもしれない。
そうだ、パウロは俺の父親なのだ。
なぜかすとんと腑に落ちた。
前世での事を思い出す。
この世界では本気で両親とも向き合いたい。
今の決心でパウロは9割悪友、その他少量の成分父親って気分になった。
「お父さん、今おっきな人がね」
そこにノルンが現れた。
あ、デッドエンド糖を持ってる。
「ノルン、兄ちゃんだわかるか?」
「お兄、さん……?」
やばい可愛い。
お持ち帰りしたい。
だが、パウロが余り俺に会えて嬉しくなさそうなのが疑問だったのだろう。
「お父さん、お兄さんに会えて嬉しくないの?」
やめてくれ。
子供の純粋な術は心に効く。
「お、俺は……本当は」
パウロも俺も向き合った結果、ようやく再会する事が出来たのだ。
「誰も見つからなくて……皆死んじまったかと……」
俺とパウロはひとしきり泣きじゃくる。
ノルンが優しく俺達の頭を撫でてくれた。
「あ、いえ家族の場所ならわかってますよ」
「「「な、なんだってー!」」」
涙が引っ込んだ。
全てを話した後、俺は本当に一つだけ持っている悩み事を打ち明けた。
こんな事話せる人は本当に少ない。
「エリスの両親が死んでいるかも知れないって伝えるべきなんでしょうか」
パウロは父親らしく答えをくれた。
「早めに言った方がいい。後々黙ってることがばれたら散々な目に会うぞ」
なんだか実体験らしい。
人生経験ではパウロの方が上だな。
悔しくなんかないけど。
パウロは俺を見て何か安心している様だった。
ああ、完璧超人、七大列強みたいな化物のルディでも悩む事があるのだなと。
それからすぐに家族を探しに行く事を俺は勧めた。
「だが、この捜索団を放り出す事は……」
「そのためのデッドエンドです!」
俺は後ろにいる戦闘員、もといパーティメンバーを振り返った。
「俺達は悪を見過ごさぬー!」
「「「「デッドエンド!」」」」
「困った人がいれば必ず助けるー!」
「「「「デッドエンド!」」」」
「正義の味方!」
「「「「デッドエンド!!」」」」
よし、ちゃんと教育は行き届いているようだな。
「転移問題で困った方は、総合商社デッドエンドにお任せ下さい。ありとあらゆる問題をカスタマーサービスにてお受けしております。今すぐお電話を!」
ノルンがきらきらした目を浮かべている。
冗談はともかく。
どうやらパウロも仲間に慕われているらしい。
探しに行けと、母音の姉ちゃんにも言われている。
「わかった。だが、まずゼニスの母親に報告しないとな」
え、ビックマザー?
一旦、宿に戻りエリスに隠し事を打ち明けた。
ルイジェルドさんは察してくれた。そこに以下略。
「そんな事もあると思ってたわ」
「僕のいう事を信じるんですか?」
「当り前じゃない」
エリスはすごいな。
「家族はおじい様だけになっちゃったのね」
うん。でもそれもパウロから聞いた話だと危ないかもしれない。
アスラ王国のくそ野郎は、転移災害の責任をサウロスに被せるかもしれないと。
よくある話らしい。
「それでね。私今日、結婚式をやってるのを見てきたの」
うん、エリスさん。話の流れが見えないのですが。
「とっても綺麗だったわ。それで、その……」
エリスの顔が赤い。
「私、ルーデウスの家族になりたいにゃん」
ボレアス家伝家の宝刀。
「で、でも……」
両親が死んだ隙をついたみたいじゃ……。
いや、エリスが望んでいるんだ。
ここで行かなきゃ、男じゃない。
「エリス、結婚しましょう」
こうして結婚する事になったのである。
ミリス教じゃないけど、エリスが憧れてたミリス式の結婚をした。
しかし、まだ子供なのに結婚出来るもんなんだね。
貴族の間では普通なのかもしれない。
介添人は、俺はパウロでエリスはルイジェルドさんだ。
勿論、喜んで引き受けてくれたさ。
花嫁衣裳を着たエリスは言葉に出来ないほどだったよ。
おかげで汝、一人を生涯愛しますかの返事も上の空だ。
あと、ノルンがやけに憧れた目線で見ていたな。
エリスに頼まれたので、いつぞやの花火を勝手に打ち上げてみた。
めっちゃ怒られたさ。
いい思い出になった。
さて、見事ルーデウス・グレイラットからルーデウス・グレイラットに華麗なる性の転換を終え、聖なる儀式を終えた後は、聖なるいや、性なる夜だ。
結婚初夜である。
大き目のベッドで何故か両端に腰掛けた二人。
落ち着けルーデウス。
やることは簡単だ。
「ルーデウス……」
エリスの顔にそっと手を伸ばす。
それからキスをした。
「エリス……」
おっと諸君。
こっから先は有料だ。
100円の準備は出来たかい。
「お兄さん、お姉、さん?」
呼んでもないのに飛び出てマイスウィーティーシスター!!
今いい所だったのに!
「一緒に寝ていい?」
断れる事など出来なかった。
三人で川の字になって寝る。
真ん中は勿論ノルンだ。
「小さい子っていいわね」
俺が言うと犯罪になるセリフがエリスから出た。
それってつまりオッケーのサインすか。
「ルーデウス、約束覚えてるわよね。それにまだおじい様に認めてもらってないからね!」
あ、はい。
とんだ据え膳だった。
クレア・ラトレイアとその夫に会いに行った。
どうやらパウロの事が気に入らないご様子。
どう考えても美味しいシチューは出してくれそうにない。
だが、ゼニスの居場所を言うと、追加資金を出してくれる事になった。
まあ、デッドエンド財団の資金でも十分なんだがね。
でも、先日俺もパウロの親の愛を知ったばかりだ。
ありがたく受け取っておこう。
「あなたがルーデウスですね」
なんでしょう。
目一杯可愛い孫アピールをしていますが、何か。
それから俺の自己紹介。
魔大陸を走破、途中で難民も救った英雄。
パウロが眉唾物を語ったせいか、表情が険しい。
魔物とかがお嫌いなのかも。
ルイジェルドさんを置いてきてよかった。
「そうですか。跡継ぎとしての責務は十分に果たしているのですね」
唯一表情が和らいだのが、アスラ4大貴族のエリスと結婚しているといった時くらいだ。
あらー、教育ママでざんすね。
ゼニスが出奔した理由がわかった気がした。
「最近では、デッドエンド石鹸なるものを売りつけようとする頭のおかしい宗教連中が増えていて困っているのです。その点、ルーデウス殿、貴方はご立派です」
ギクッ。
パウロ、冷や汗が出ているぞ。
サークルリーダーやってましたとか、アピールしなくて良かった。
そろそろデッドエンドが収集つかなくなっている気がする。
詐欺や騙りで、俺が罪に問われたらどうしよう。
でも、資金はいるしな。
よし、餅は餅屋だ
こういう事は他の幹部連中に任せて俺らはとんずらする事にしよう。
こうしてノルンは祖母に預け、パウロはゼニスのいるベガリット大陸に向かう事にした。
新入りギースも同行する事になったらしい。
何故だろう。そこはかとなく不安だ。
リーリャ、アイシャそれにシルフィは王宮にいるらしいから、命の危険まではないだろう。
俺がエリスを送り届けるついでに助けに行くことにした。
「いや、お父さんと離れたくない」
だだをこねるノルンをルイジェルドさんが宥める。
「家族を信じてやれ。出来るな」
きましたルイジェルドスマイル。
これに堕ちなかった奴はいない。
ついでに俺が作ったルイジェルド人形もあげる。
枕元に置いとけば睡魔も怖がってこないさ。
クレアに見つからなきゃいいが。
それから俺達は旅を続けた。
シーローン王国では、ロキシーいねえじゃんに続き、またもやシル〇ーサーファー野郎が出て助言をしやがった。
だが、まだ4回目だ。
慌てる時じゃない。
そんなこんなでリーリャとアイシャを助け出し、ザノバと師弟の契りを交わした。
二人はミリシオンに送ろうかと思ったが、もうパウロも出発しているかも。
俺達の旅に同行者が増えた。
リーリャさんの久しぶりの料理は美味しいし、アイシャも美味しい。
いや光る原石って意味でね。
無詠唱魔術を教えてたら覚えたし、エリスから剣も習っている。
将来無敵の魔法剣士少女とかになりそうだ。
リーリャさんとルイジェルドさんは落ち着いた大人の雰囲気を醸し出している。
俺もいつかはああなりたいもんだ。
いい雰囲気だが、リーリャさんにはパウロがいる。
てか仮にルイジェルドさんと隣を歩く女性がいたらどんな人かね。
いつもは働くルーデウスレーダーは何故か全く反応しなかった。
そして赤竜の下顎に辿り着いた。
道行く人は俺達しかいない。
いないはずだが。
何故だろう、ふと俺は道の真ん中で悪寒を感じた。
肺に穴が開いた様な感じだ。
さらにもう一発。
今度はお腹に穴が開いた感じがしたのでさっさと進む事にした。
なにやだ怖い。
アスラ王国は目と鼻の先だ。
時々、怪しい電波を受信するルーデウスレーダー