馬前世持ちTS転生ウマ娘と男前新米女トレーナーの話。 作:馬生編スキップしたオリ馬ウマ娘物作者の屑
……ウインディちゃん、難し過ぎるんだ。
視点変更はウインディちゃん→主人公→エアグルーヴです。
ちなみに、85/56/91の159cm。後、様子がおかしいのは彼女だけです。
標的は今まさにドアを開けようとしている。耳をぴんと立たせて足音を聞き逃さないように。
じっと息を潜めてその時を待つ。
今日こそは噛み付いて、あのすまし顔を恐怖に染めてやるのだ。
……今ッ……!
「ガブー!」
「うわ」
開け放たれたドア、飛び出すウインディちゃん。
しかし渾身の噛み付きはヒラリと躱されてしまう。
寮の同室相手であるサーは空色の目をぱちくりとさせながらも、軽く身構えた。
「あ、避けるな! 噛み付かせるのだ!」
「いや、だから、嫌だと、いつも、言っている」
「ガゥウー!!」
負けじとさらに飛び掛るが、やはり何度やっても掠りすらしない。
唸れどもサーは涼し気な顔だ。ひらりひらりと踊るように全部を避けてみせる。
それでも、一度着いたウインディちゃんの闘争心はちょっとやそっとでは消えはしないのだ!
「……はぁ。ほら、おいで」
「っ!」
でも、ベッドに座ってぽんぽんと膝の上を叩く彼女の姿に、ウインディちゃんの闘争心はどうしてか萎んでいってしまう。
なぜかはわからないけど、その太い足がとても魅力的に見えてしまう。面と向かって太いって言うと変な顔されるけど。
「ほーら、わしゃわしゃわしゃー」
「……むむむ」
実はこれは、もう何ヶ月も続く同じやり取りだ。
ほとんど毎日、サーが帰るなりウインディちゃんが噛み付きに行って、最後はサーの膝の上に落ち着く。遊ばれているみたいでムカつくけど、撫でられて落ち着くのも本当のこと。
「……ふん」
……まったく、不思議なヤツなのだ。
■
「ということが昨日あったんだ」
「お前はアイツに甘過ぎではないか?」
自分でもそう思う。
授業と授業の合間の休み時間。ほんの少しの休憩時間でも年頃のウマ娘達は話に花を咲かせる。
そんな中で私に苦言を呈するのは、同世代である未来の女帝エアグルーヴ。
ちなみにこれは美浦寮での相部屋であるシンコウウインディとの間にあった昨夜の一幕だ。
寂しがり屋なのを知っているからこその解決方法とはいえ、我ながらとても罪深い。それを役得と思えるような胆力はありません。ウマ娘の身体を悪用してキャッキャウフフするのはよろしくない。
尚、本人は休み時間が始まると同時に教室の外へと駆け出して行ったのでこの場にはいない。
「……そう言えば、エアグルーヴは担当は決まったのか?」
「そうだな。お前と違って、十分以上に仕事が出来てこちらに必要以上に干渉してこないなら担当を選り好みはしない」
うぐ。それを言われるとなぁ。
話を変えようとすれば、鋭いジャブ。キツい。
別にアニメやゲームに登場したトレーナーのような特定の人物を除けば、選り好みをしているわけではないのだ。
ただ一番の理由が、走り出す心の準備ができていないというだけで。それを彼女に言ったところで意味は無いことなのだが。
でも、いろいろと心配は掛けてしまっているのでここらで安心させようと思う。
「いや、実は昨日、トレーナーにスカウトされた」
「ほう。それで? わざわざ取り上げるということは、何かしら気になることがあったのだろう?」
興味深そうに聞いてくる彼女は、本当に面倒見が良くて優しい。
彼女自身もことトレーナーに関してはかなり苦悩しているはずなのに、それでも私のトレーナー事情に気を遣ってくれている。
エアグルーヴとは前々世だと画面の内外、所謂次元に隔てられ。前世ならただの馬、それも牡馬と牝馬だったのもあって大した縁はなかったが、こうしてウマ娘となった今ならばそういう隔たりは何も無い。……自身がウマ娘となってしまったことは複雑な反面、良い友人が持てて素直に嬉しい。
「なんと言うべきか、変なトレーナーだった」
「変?」
思い出すのは昨日のこと。
柴田と名乗った女性トレーナーは私の好みや憧れを聞くなり、『貴女の走りに目を焼かれた』なんて言ってきた。
あまりにも唐突過ぎて逃げるようにして帰ってしまったが、今思えばあれはスカウトだったのだろう。
「……それはまた奇抜なスカウト文句だな。私のトレーナーの方がまだマシな文句を垂れるぞ」
「ああ。何もかもいきなり過ぎるし、なんの脈絡も無い。ただ……」
「ただ?」
話を聞いただけのエアグルーヴも苦笑を禁じ得ないような変な話だ。私だって正直言って困惑する他無い。
しかし、それはスカウトの手法に対してだとか、突拍子も無いその発言に対してだとかではない。いや、勿論それもあったけど。
でも、本当の理由は────
「スカウトを、受けてみても良いと思ってる」
────その言葉が、いつかと
……なんてエアグルーヴには決して言えはしないけど。
私も変なやつだと思われるのは勘弁。
それにしても、妙な因果を感じてしまう。
場所も立場もタイミングも何もかもが違うのに、どうしてもその言葉には意識を持っていかれる。単純にその言葉に弱いのだ。別に彼女は私へのクリティカルを狙ったわけではないだろうけど。
けれど、そのお陰で踏ん切りが付きそうなのも確か。
まだまだ、この世界で生きる目的みたいな大層なモノや、ウマ娘
ただ走ることに飢え続けているのは楽だけど、それじゃあ良くないと思うのだ。
「……そうか。良かった」
「え?」
エアグルーヴの安堵の声に聞き返す。
すると、彼女はキッと眦を上げて私を見据えた。
その後ろで彼女の中の熱意が、彼女を象徴する青い炎が滾っているのを私は幻視する。幻視させられた。
「路線は違えども、これでお前と同じ立場になれる」
「……ああ、心配掛けた。私もここからやってみるよ。君と並べるように、君を抜かせるように」
本当に心配を掛けてしまった。きっとこれから先も心配を掛け続けることになる気がしてならない。
だから、その分……私は彼女の前に立とう。
彼女が私を倒したいと思ってくれるように、私と鎬を削りたいと精魂を燃やせるように。
先ずはあのトレーナーと共に朝日杯だ。あれを再び手中に収めることから始めよう。
私は一人、これからのことに思いを馳せるのであった。
■
「君と並べるように、君を抜かせるように……か」
言ってくれるものだ。人の気も知らないで。
ギリギリと屋上のフェンスが音を立てた。
「これから、な」
彼女の走りを見た時から、私は私が許せなくなった。女帝で在る為に、強き者で在らんと走り続けてきたのに。
あの日、最後尾からの七バ身差を見た時の身の毛がよだつような体験。諦観という絶望。手折られそうになった、その強く、堅く、聳え立つような圧倒的な走りに。
その時から、彼女のことが頭から離れない。
そうだ。なんと無慈悲なことか。
私の想いを知らないから、そんなことを言えるのだ。まだ終わりではないと、まだ底を見せていないと無意識に恐怖を振りまくから。私が最後の血の一滴を振り絞ってでも付いてくるものだと理解しているから。
お前とはどこか気が合うが、私はお前に気を許しはしない。
お前とは無二の友となれるだろうが、私はお前を絶対に許さない。
お前にとって私は好敵手の一人となるのかもしれないが、お前は私の獲物だ。
……私は死なない。私は抜かされない。私は燃え尽きなどしない。私はお前を恐れなどしない。
私は、私は……私を────
「────殺して見せろよ、サーフォーミダブル……!!」
鬼哭が風に攫われた。
鬼の産声が上がった。
(〇-︎︎〇) 刀┗┐爪
このノリで行って良い?
-
良い
-
駄目
-
もう少し抑え目に
-
全ツッパ
-
あの、とせがらメス堕ちはまだですか?