ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、ケントとカルムの傍付きが登場します。


第18話 世の理を書き換える想い

カルムside

 

 あの後、リーナ先輩の部屋に、俺、キリト、ユージオ、ケント、タカトラ先輩、ゴルゴロッソ先輩、ユア先輩がお邪魔して、宴会となった。

 そこから、ゴルゴロッソ先輩の、無限ループ剣技史ウンチクが始まった。

 そんな話を聞いているうちに、酔いが回ったのか、ゴルゴロッソ先輩とユージオは酔い潰れて寝てしまった。

 現在、ユア先輩とケントの2人で介抱していて、俺はタカトラ先輩と、キリトはリーナ先輩と話していた。

 内容は、セルルト流が生まれた理由だ。

 

リーナ「それにしても、キリト達のアインクラッド流は、まだまだ奥が深いな。我がセルルト流は、実用剣術のつもりでいたが、まだまだ硬いな。」

タカトラ「俺のウェインライト流も、まだまだだと思い知った。カルムとキリトのアインクラッド流の技を見てな。」

キリト「いやぁ………。ていうか、タカトラ先輩、カルムの剣技を見てたんですか?」

カルム「うん。四連撃技までは見せたぞ。」

 

 すると、リーナ先輩は少し表情を暗くして、語り始めた。

 

リーナ「セルルト流剣術が生まれたのは、セルルト家が皇帝の不興を買ったためにハイ・ノルキア流剣術の伝承が禁止されてしまったことが起源なのだ。」

タカトラ「補足すると、セルルト家が不興を買った理由は領民のことを思っての行動だったのだが、当時の皇帝が余りにも愚脳でな。」

カルム「タカトラ先輩、そんな黒い笑みで言わないで下さいよ。怖いです。」

 

 そんな風に言うから、誰も何も言えなくなってしまった。

 すると、リーナ先輩が空気を変えるかのように話題を変える。

 

リーナ「そういえば、タカトラのウェインライト流は、どういう経緯で生まれたんだ?」

カルム「確かに気になりますね。」

キリト「聞かせて下さいよ!」

タカトラ「大した理由じゃないぞ。………闇の国の侵攻に備えて、俺が独学で生み出した物だ。俺1人で十分だと思っていたが、カルムという継承者ができて良かった。」

リーナ「なるほどな。………私も、セルルト流の後継者がお前で良かったよ、キリト。」

 

 そんな風に言われて、俺たちは照れ臭くなってしまう。

 なるほど、タカトラ先輩は、本当に人界を守ろうとしているんだな。

 すると、タカトラ先輩が気になる事を口にした。

 

タカトラ「もしかしたら、ウォロも、お前達が気になって勝負を挑んだのかもしれないな。」

キリト「ええっと、何でですか?」

リーナ「それは確かに。」

タカトラ「あくまでもしかしてだがな。ウォロは、カルム、キリト、ユージオ、ケントの4人に興味を持っていたみたいだからな。」

カルム「そうなんですか?」

タカトラ「ああ。貴族出身でないこともそうだが、お前たちが使うアインクラッド流剣術や戦い方があまりにも他と違いすぎたことから注目していたらしいぞ。」

キリト「ええっ!?」

リーナ「そうなのか!?」

タカトラ「尤も、家柄の都合上、お前達を選ぶ訳には行かなかったから、選ばなかったが、機会が有れば戦いたいと俺に言ってきてな。」

 

 それを聞いて、俺は冷や汗を流す。

 もしかしたら、対象が俺になっていた可能性があったわけだ。

 リーナ先輩も、違う意味で冷や汗を流していた。

 そうして、宴会はお開きになり、俺はケントとユア先輩と協力して、ユージオを部屋に連れ帰る。

 

カルム「悪いな、手伝って貰って。」

ケント「大丈夫だ。気にするな。」

ユア「もうすぐ消灯時間だ。ちゃんと寝ろよ。」

カルム「はい。ちょっと、酔いを覚ましてくるから、ケントは先に寝ててくれ。」

ケント「ああ。」

 

 俺は、酔い覚ましの為に外に出る。

 

カルム(酒を飲むのは初めてだったな。ちょっと飲みすぎた…………。)

 

 俺は少しふらつきながらも、何とか外に出る事が出来た。

 月を眺めていると、とある事を思う。

 

カルム(そういえば、ミトは元気かな?少し会いたくなるな………。)

 

 そんなホームシックに襲われていると、校舎の外から声がしてきて、何事かと思い、見てみると、キリト、ライオス、ウンベール、ベル、ナツジが居た。

 

カルム(何でアイツらが?花なんて、興味を示す様な奴らじゃないのに。)

 

 何か胸騒ぎがして、キリトの元へと向かう。

 その際に、ライオス達とすれ違ったのだが。

 

ウンベール「おやおや!こんな時間にどこに行くのですかな!」

ナツジ「まさかとは思いますが、貴殿もあの様な花の世話に?」

ライオス「そんな無駄な事をするとは。」

ベル「傍付き殿も忙しそうですねぇ!」

カルム「………だったら、アンタらがここに居る理由もないだろう?」

ライオス「それもそうですな!」

 

 何だ、いつにも増して、嫌味が多いな。

 しかも、いつもなら、俺が無視したり、嫌味を返すと、こちらにきつい視線を向けてくるのに、今日はそれがない。

 キリトの方を見ると、項垂れていた。

 まさか…………。

 アイツらを無視して、キリトの方に行くと、ゼフィリアの花が無惨に散らされていた。

 どうやら、懸念が当たったな。

 なるほど………アイツらが妙に嬉しそうなのはそれが理由か………!

 だが、あんなクズ共の相手をする暇はない。

 キリトに近寄る。

 

カルム「キリト。」

キリト「カルム…………。」

カルム「アイツら………!これはどう見ても禁忌目録違反だろ!」

キリト「いや、この土は、央都の外から運んできた物だ。だから、《所有権の存在しない原野の土に生えているなら、その植物は誰の物でもない》と判断したんだろうな………。」

カルム「アイツら………!!」

 

 妙な所で悪知恵が働くな、アイツら!

 もう笑いながら去ったであろうライオス達に殺意をぶつける。

 まあ、あんなクズ共に相手をするほど暇じゃない。

 俺は怒りの感情を抑えて、ゼフィリアの花の状態を見る。

 状態を見てみると、根までは散らされていないが、この状態から花を咲かせるのは不可能に近い。

 キリトの落胆する気持ちは痛いほど分かる。

 キリト曰く、このゼフィリアの花は俺たちみたいだなと。

 言われてみればそうだ。

 日本からこんな異世界に来たのだ。

 無理もない。

 

キリト「ごめんよ…………。」

カルム「キリト…………。」

 

 俺は、泣いているキリトに対して、掛ける言葉が見つからなかった。

 それにしても、アンダーワールドの悪意は、何で俺たちに牙を剥く。

 俺たちが平民だから?

 俺たちがこの世界の住人じゃないから?

 何で親しい人や愛する人たちと離され、いつ再会出来るかも分からない孤独や不安を味わっている俺たちに、そんなに攻撃をする。

 そんなアンダーワールドに対する苛立ちが、俺の思考回路を埋め尽くしていた。

 すると、謎の声がした。

 

???「信じなさい。」

「「!?」」

 

 誰もいないはずの花壇に女性らしき声が響いた。

 慌てて周りを見渡すが、やはり花壇には人影は見つからない。

 だが、次は違う声が響く。

 それも、刃王剣十聖刃を手に入れた時に居た男性に似た声が。

 

???「信じろ。異国の地でここまで育った花達の力を。」

カルム「誰だ…………!?」

???「そして、その花をここまで育てたあなた自身の力を。」

 

 声の主はキリトへ向けて言葉を送っているようだった。

 女性と男性が1人ずついるのか?

 キリトは、悲しさを滲ませた声で答える。

 

キリト「………でも、もう…………皆、死んでしまった。」

???「大丈夫。土に張った根は、まだ生きようとしているわ。」

???「それに、感じるだろう?この花壇に咲く聖花達が、小さな仲間を助けたいと思っている。命を分け与えたいと願っている。」

???「あなた達なら、その願いをゼフィリアの根に伝えられる。」

キリト「無理だ………。俺たちにそんな高等神聖術は使えない………。」

カルム「……………。」

???「あらゆる術式は、心意………お前達が言うイメージを整える道具に過ぎない。」

???「さあ、感じて。花達の祈りを………。世界の、理を。」

キリト「心から意する意志………『心意』。」

カルム「プログラムやシステムを超越する力……想像する力………なのか?」

 

 キリトや俺の言葉に応えたかのように花壇の花たち全てが一斉に光を放ち始めた。

 その光はまるで自分のたちの命を分け与えてもいい、そんな生命力に満ち溢れた光だった。

 俺の勝手な考えかもしれないが、それでも俺はさっきの2人の言葉を………この光を信じてみたいと思った。

 

キリト「カルム、手伝ってくれ。」

カルム「ああ。」

キリト「……頼む。力を………命を、ほんの少しだけ分けてくれ。」

 

 キリトの言葉で俺も想像する。

 もし、ゼフィリアの花が生きているのなら、俺たちの体を媒介にして、花の生命力を、ゼフィリアの花に分ける。

 そのイメージ共に花たちが放つ光が一段と輝きを増す。

 そして、光が集結したかと思えば、ゼフィリアの花へと一気に降り注いだ。

 その結果………ゼフィリアの花は息を吹き返したかのように蕾を揃え、元の姿へと復活していた。

 

キリト「これが心意なのかな………?」

カルム「多分な。さっきの声は………もうしないか。」

キリト「ありがとう。」

 

 この世界は、不思議だな。

 万物は、仮想世界のオブジェクトに過ぎないはずなのに、現実世界を持つ遥かに上回る美しさを………生命力を………意志を備えている。

 そうだったな。

 この世界には、悪意だけじゃない、善意もまた存在するのだ。

 ライオス達が悪意の貴族だとしたら、タカトラ先輩達は、善意の貴族だ。

 そして、この世界でできた親友の、ユージオにケント。

 危うく、この世界を嫌いになってしまう所だったな。

 俺もまだまだだな。

 そんな自虐心を抱きつつ、俺はキリトと共に寮に戻る。

 今度は、キリトの物だと証明するべく、キリトの校章を置いて。

 そういえば、想いがシステムを越えるのを見たのは初めてじゃないな。

 ヒースクリフとの決戦の時、システム的麻痺に襲われていたミトとアスナの2人が、麻痺を解除して、助太刀してくれた。

 あの時から、心意を感じていたのかもな。

 

 

 そして、遂に卒業式の日が来た。

 卒業トーナメントを見学するため、大修剣場に来た俺たちの目下では激戦が繰り広げられていた。

 ちなみに、タカトラ先輩も参加したが、リーナ先輩に敗れた。

 リーナ先輩とウォロ主席のツートップの剣士。

 その一進一退の攻防は観客全ての目を釘付けにしていた。

 剣がぶつかり合うたびに剣圧が発生し、戦いの激しさを物語っていた。

 だが、遂に勝負を決する時がきた。

 ウォロ主席が剣を上段へと構えた。

 キリトとの試合の時にも放ったハイ・ノルキア流剣術秘奥義〈天山烈波〉の構えだ。

 それに対するリーナ先輩が構えるのは、セルルト流剣術秘奥義〈輪渦〉(両手剣ソードスキルのサイクロンだ。)で迎え撃つようだ。

 お互いの剣気がぶつかる中、両者が動く。

 

ウォロ「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

リーナ「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 気合いと共に放たれた両者の秘奥義がぶつかる。

 そのぶつかり合いに、会場全体が振動しているかのような錯覚を覚えた。

 そして、技の打ち合いを制したのは………。

 

リーナ「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 その気迫と共に、ウォロ主席の模造剣を叩き折ったリーナ先輩だった。

 流石のウォロ主席も剣を折られるとは思っていなかったのか、驚愕の表情を浮かべていた。

 そのまま、リーナ先輩はウォロ主席の首へと剣を突き付けた。

 

アズリカ「そこまで!」

 

 アズリカ先生の掛け声と共に会場に歓声が爆発する。

 二人の試合に拍手喝采の嵐が起こっていた。

 その歓声に手を振って応えるリーナ先輩、そして、やられたといったよう表情でその様子を見つめながら苦笑するウォロ主席の姿があった。

 俺たちも、拍手を送る。

 そして、遂にお別れの時だ。

 俺は、ユージオとケントと共に、ワインをそれぞれの先輩に渡す。

 俺は、自作で何かを作れる程、器用ではないからな。

 その横で、キリトが見事に花をつけたゼフィリアの花をリーナ先輩に送っていた。

 すると、タカトラ先輩が呟く。

 

タカトラ「カルム。あれは、キリトが育てたのか?」

カルム「はい。一生懸命、キリトが努力を重ねた結晶です。」

タカトラ「なるほどな…………。」

カルム「先輩?」

 

 何かを考え込むような表情をする先輩に問いかけるが、何でもないと返された。

 

タカトラ「まあ、傍向きを指名する際には、ちゃんと見極めろよ。」

カルム「いや、まだ上級修剣士になったわけじゃないんですが。」

タカトラ「そうか?お前なら、なれるさ。それより、大丈夫か、キリトは?セルルトがあんな表情を向ける男性を始めてみたのだが。」

カルム「言わないでください。」

 

 アイツ、リーナ先輩を惚れさせやがった!

 これをアスナが知ったら、一体どんな反応をするんだか。

 ミトも、問い詰めてこないといいんだけど。

 そうして、リーナ先輩が1位、タカトラ先輩は3位、ゴルゴロッソ先輩は4位、ユア先輩は5位の成績で卒業した。

 

ケントside

 

 先輩達が卒業して、試験を受けて、俺たちは上級修剣士となった。

 カルムが6位、俺が5位、キリトが8位、ユージオが7位となった。

 意外にも、ライオスが主席、ウンベールが次席、ベルが3位、ナツジが4位である事だ。

 それをキリトとカルムは、こう呟いていた。

 

キリト「多分、手を抜いていたんだろうな。」

カルム「自尊心の塊であるアイツらが、傍付きになるなんてあり得ないからな。」

 

 手を抜くのは剣士としてどうなんだと返したのだが。

 

カルム「それがアイツらだ。全く、正々堂々と出来ないのかね?」

 

 そんな風に毒づいていた。

 そんな事を考えていたからか、突然の声に驚いてしまった。

 

ルナ「ケント上級修剣士殿、ご報告します!本日の掃除、完了致しました!」

ケント「ああ。ご苦労様、ルナ。今日はもうこれで寮に戻って良いぞ。………その………。」

 

 彼女はルナ・カウマン。

 俺の傍付き初等錬士だ。

 彼女は、六等貴族だ。

 そして、ルナの隣で直立不動の状態で立っている彼女にも、声をかける。

 

ケント「………悪いな、シオリ。アイツには何度も、部屋の掃除が終わるまでには戻って来いと言ったんだが…………。」

シオリ「い、いえ、報告を完了するまでが任務ですから!」

 

 彼女はシオリ・ヒューレット。

 彼女も六等貴族で、カルムの傍付きだ。

 すると、扉の方から慌てた足音がしてきて、カルムが入ってくる。

 

カルム「悪い!遅れた!!」

シオリ「カルム上級修剣士殿!本日の掃除、完了致しました!」

カルム「お疲れ様。」

 

 カルムは、腕に何かの紙袋を抱えていた。

 そこから、甘い匂いがするので、跳ね鹿亭の蜂蜜パイだろう。

 

ケント「カルム。もう少し早く帰って来い。」

カルム「悪い。キリトの奴がのんびりしててさ。」

ケント「お前も大変だな。」

カルム「全くだ。………はい、キリトも、ロニエとティーゼを介して蜂蜜パイを渡してるだろうから、君たちも、残りは寮の皆で食べてくれ。」

 

 そう言って、カルムは蜂蜜パイを二つだけ取り出して、残りをルナとシオリに渡す。

 2人は年相応の少女らしい歓声を上げた後、慌てたように姿勢を正す。

 

シオリ「あ、ありがとうございます上級修剣士殿!」

ルナ「頂いた物資の天命が減少しないよう、全速で寮に戻ります!」

 

 高速で略式礼をして、出ていく。

 廊下から、歓声が聞こえて、たちまち遠ざかっていく。

 俺は蜂蜜パイを一口食べて、カルムを見る。

 

ケント「それで、何で俺たちがここにいるのかを忘れていないだろうな?」

カルム「忘れてないよ。あと少しで、カセドラルに向かえる。そうすれば………。」

ケント「イーディスに会える………!」

 

 そんな思いを抱きつつ、俺は壁に立てかけてある2本の剣を見る。

 俺たちは、決して諦めない。

 




今回はここまでです。
カルムがキレる程、アンダーワールドの悪意は凄いです。
ルナ・カウマンは、仮面ライダーセイバーのルナ、シオリ・ヒューレットは、仮面ライダーブレイドの広瀬栞がモチーフになっています。
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