ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、ケントが、ルナから遠回しなプロポーズをされます。


第21話 傍付きからの告白

カルムside

 

 あの懇親会が終わり、俺たちは、ライオス達の元へと向かう。

 しかし、二手に別れる事にした。

 ライオスとウンベールにはキリトとユージオが、ベルとナツジには俺とケントが行く事に。

 

ケント「大丈夫だろうか………。」

カルム「まあ、行こう。(無駄だとは思うんだけどね…………。)」

 

 そんな事を思いながら、ベル達の部屋のドアをノックする。

 すると、ナツジの声がする。

 

ナツジ「何だ?」

ケント「ケント修剣士とカルム修剣士です。キャンサー修剣士に少々お話が。」

 

 すると、中から荒々しい足音が響き、扉が乱暴に開かれる。

 ナツジは顰め顔で、俺たちを睨み、叫んだ。

 

ナツジ「事前に伺いも立てず押しかけるとは無礼な!まずは書状にて面会の許しを求めるのが筋ではないのか!」

カルム(声でけぇよ。隣もだけど。)

 

 ナツジの突然の罵声に、俺は心の中でそう毒づく。

 隣のウンベールも、同じような事を叫ぶ。

 すると、中から。

 

ベル「気にするな。同じ学舎で琢磨する者同士だ。通せナツジ、こう突然では残念ながら茶の用意は出来ないが。」

ナツジ「………ベル殿のご厚情に感謝しろ。」

カルム(何の寸劇だ?)

 

 そう思いつつ、中に入ると、何ともまあ、悪趣味な部屋だった。

 室内調度の類は、全て最高級品に交換されていて、ベルは紺色、ナツジは赤い薄手の長衣を身に纏っていた。

 どうやら、ベルは俺たちが来る事が分かっていたのか、驚いていないが、ナツジは不快感を隠していない。

 

ベル「それで?我が友ケント修剣士殿はどのようなご用事かな?こんな休息日ももう終わりを迎えようとしている夕刻に。」

ケント「キャンサー修剣士に関して、少々好ましからざる噂を耳にしましたので。学友がその芳名を汚す前にと、忠言に参りました。」

ナツジ「何っ!?」

 

 ナツジが血相を変えて何かを叫ぼうとするが、ベルが制する。

 一応、ケントからは、様子を見てて欲しいと頼まれたのだ。

 

ベル「ほーほう。これは意外であり、望外のことでもあるな。ケント殿に我が朋友のことを案じてもらえるとは。しかし、惜しむらくはそんな噂に思い当たることはないな。」

 

 なるほど、惚けてきたか。

 同室である以上、見ている可能性は高いのだが、誤魔化すか。

 すると、ベルは寝っ転がっていた体を起こして、逆に質問してくる。

 

ベル「ケント殿は一体どこからそのような噂を聞きつけたのかな?」

ケント「キャンサー殿の傍付きと同室の初等錬士たちから直接話を聞いたんです。キャンサー殿がアマネという傍付き錬士に逸脱した行為を命じていると。」

ベル「ふむ、逸脱?何とも奇妙な言葉だな、ケント殿。もっと分かりやすく学院則違反だと言えばいいのではないのかね?」

ケント「っ!?」

カルム(不味いな。)

 

 現在、恐らく、ベルの思惑通りに進んでいる気がする。

 冷静なベルに対して、ケントは少し感情的になりそうだ。

 

ケント「ですが!例え学院則に禁じられていなくとも、初等錬士を導く筈の上級修剣士としてすべきことではないこともあるでしょう!?」

ベル「ほほう!それでは、ケント殿はこのナツジがアマネに一体何をしたと申されるのかな?」

ケント「そ、それは………!?」

 

 不味いな、相手方がかなり余裕の態度を示してるな。

 ベルがナツジに尋ねる。

 

ベル「どうなんだ、ナツジ?ケント殿の仰ることは身に覚えがあるかね?」

ナツジ「う~ん?とんでもない!何を言われているのかさっぱり思い当たりませんな。まぁ、いくつか他愛もない世話を命じたりはしたかもしれませんがね?」

カルム(リアクションが大袈裟だな。)

 

 恐らく、挑発の類だろう。

 肌が見えるのをお構いなしにオーバーなリアクションをしていく。

 さっきまで怒ってたのに、そっちが優勢になった途端、嬉々として語るな。

 

ナツジ「ケント殿との立ち合いで情けなく引き分けて以来、私も心を入れ替えて鍛錬を撃ち込んでおりましてな!だが、これまで醜い筋肉がつくような稽古を控えていたせいもありましてな。全身が痛くてしょうがなく、アマネには湯浴びの際に全身をほぐしてもらっただけのことですよ!」

ケント「なっ!?」

カルム「っ!?」

ナツジ「その上で制服が濡れてはアマネも困るだろうと思い、下着姿になるようにと、その行為を許す程の寛大さですよ?これのどこが卑しい逸脱行為なのか、理解に苦しみますなぁ!」

「「……………。」」

 

 怒りが込み上げるが、ここでキレたら、奴らの思う壺だ。

 だが、奴の行動は、上級修剣士としては、あるまじき行動だ。

 タカトラ先輩が聞いたら、とても呆れるだろうな。

 ケントは、今は腰に無い剣に手を掛けようとする素振りをして、なんとか怒りを抑えたようだった。

 まあ、俺もかなりキレてるのだが。

 

ケント「アマネ初等錬士は日々耐え難い思いをしております。改善が見られないようなら教官にも調査を依頼することも考えなければなりません。その御つもりで。」

ナツジ「なに!?」

ベル「ご自由にされるがよかろう。まぁ、そんなことをしても徒労に終わると思うがね、ケント修剣士殿?」

 

 うわあ、勝ち誇ったドヤ顔だよ。

 怒りを通り越して、呆れてくるな。

 ベル、お前は、いちいちこちらのマウントを取らないと気が済まないのか?

 

カルム「ケント。これ以上は無駄だ。」

ケント「…………………ああ。」

 

 俺たちは退出して、キリトとユージオと合流して、キリト達の部屋へと向かう。

 どうやら、向こうも似たような感じだったようだな。

 

ユージオ「くそっ!」

ケント「くっ!」

 

 ユージオとケントが、悔しそうに壁に拳をぶつける。

 

キリト「落ち着けよ、ユージオ。」

カルム「気持ちは分かるが、ひとまずケントも落ち着け。」

ユージオ「先にキリトの方が感情を爆発させると思っていたんだけどな。」

ケント「カルムはやけに冷静だったな。」

カルム「いや、刃王剣が有ったら、流石に危なかったな。」

キリト「そっちも、似たような状況だったんだな。」

 

 俺は、キリトのその言葉に頷く。

 予想通りだった意味合いで。

 

キリト「けど、何か裏があるかと思ってたがそれが何なのか分からなかったな。」

ユージオ「………裏?」

カルム「ああ。これはユージオとケントの二人を狙った何かの罠じゃないかって俺たちは考えていたんだ。」

ケント「えっ?」

 

 キリトと俺が告げた推測にユージオとケントは酷く驚いていたが、驚くのも無理もない話である。

 

キリト「例えば、抗議に来たユージオとケントがウンベールとナツジの挑発に乗って言いすぎたりでもすれば、それを逸例行為に認定して最大限の懲罰を科すつもり、だったとかな。」

ユージオ「そんな………。」

ケント「危うく…………引っかかる所だったのか………?」

カルム「気にすんなって。」

キリト「そうだぜ。もしウンベールとナツジがこれからもフレニーカとアマネを辱めるようなことがあれば、すぐに教官に調査を要請できるように準備だけはしておこうぜ?」

カルム「キリトの言う通りだ。教官に、アイツらを突き出してやろうぜ。」

ユージオ「うん。」

ケント「そうだな。」

 

 良かった、落ち着いたみたいだな。

 この状態だと、また挑発された際に感情的になりやすくなってしまう。

 しかし、アイツらが、俺たちに言われて簡単に止めるとは思えない。

 警戒はしておかないとな。

 

キリト「ユージオ。もし俺たちがいないところで何かを言われたとしても、さっきみたいに熱くならないように気を付けろよ?」

カルム「怒ることがあいつらのもっとも狙っていることだからな。何言われても、全部受け流すようにするんだぞ?」

ユージオ「わ、分かってるよ!」

ケント「ステイ・クール、だろ?」

キリト「そうだ、ステイ・クールだ。」

 

 その後、今後の方針について話し合い、今日の事を、ティーゼとルナに報告すべく、ユージオはティーゼに、ケントはルナに言う事になった。

 俺は、キリトとユージオの部屋から退出し、自室に戻る。

 

ケントside

 

 翌日、散々笑って満足したのか、ライオス達は、俺たちに目もくれなかった。

 俺としては、あまりライオス達に絡まれるのは嫌なのだが、問題は、ウンベールとナツジがフレニーカとアマネに対する扱いを改めたのかということだ。

 一応、昨夜のうちに、学院管理部宛の調査依頼の書状は、俺たち4人の連名で書き上げてある。

 連中も、流石に懲りるだろう。

 程なくして、四時の鐘が鳴り、ルナとシオリの2人がやって来る。

 ちなみに、カルムは自室で、聖剣に関する本を読み漁っているだろう。

 以前、ルナに対して、何度か掃除を手伝おうと申し出たが、きっぱり断られる。

 部屋を散らかさないように気をつけているのだが、ルナは、いつも掃除のし甲斐がないと文句を言っている。

 どうすれば良いんだ…………?

 どうやら、掃除が終わったようだ。

 

ルナ「ケント上級修剣士殿、ご報告します!本日の清掃、完了しました!」

ケント「ご苦労様。いつもありがとうな。」

ルナ「いえ、これが傍付きの仕事ですから!」

ケント「悪いんだが、ちょっと話をしても良いか?立ったままじゃなんだし、座ってくれ。」

 

 そう言ったのは良いのだが、この部屋には椅子が一脚だけしかなかった。

 椅子に座らせようとするのだが、断りそうだったので、ベッドに座らせる事に。

 ルナは、一瞬目を丸くするが、今度は微かに頬を赤く染めながら頷く。

 

ルナ「はっ………それでは、失礼します。」

 

 ルナはベッドの端に座る。

 俺も、ルナとかなり距離を離して、腰を下ろす。

 

ケント「アマネとフレニーカの一件だがな、昨日、抗議しておいたからな。流石にアイツらもこれ以上大事にするのは避けるから、もう逸脱した命令は出さない筈だ。」

ルナ「本当ですか!?ありがとうございます、上級修剣士殿。アマネもフレニーカも喜ぶと思います。」

ケント「もう仕事は終わったから、ケントでいいぞ。それに、俺も謝らないといけないしな。」

ルナ「え?」

ケント「今回の一件は、やっぱり、俺がナツジと立ち合ったのが原因だった。抗議した際に、あわよくば逸礼行為で懲罰を科す計画だったらしい…………。つまり、アマネは、俺とナツジ達の確執の巻き添えになった。一度、彼女に謝りたいんだ。」

ルナ「そう………ですか………。」

 

 ルナは俯いて、何かを考えている様子だったのだが、やがて俺を見るとゆっくりとかぶりを振る。

 

ルナ「いえ………ケント先輩の責任ではありません。アマネには、先輩のお言葉だけ伝えておきます。あの………す、少し、お傍に行っても良いですか?」

ケント「あ、ああ…………。」

 

 俺が良いと言うと、ルナは一層頬を染めて、体をずらし、かなり近くまで来る。

 ルナは、話し始める。

 

ルナ「私は、修剣学院を卒業したら、そう遠くないうちに、カウマン家を継いで、同格か一等上の爵家から夫を迎えるんです。…………私、怖いんです。」

ケント「え?」

ルナ「もし、私の夫となった人が、キャンサー殿みたいな人だったら………?誇りを持たずに、周りの人に平気で酷い事をするような人だったらどうしようって思うと………怖くて……。」

ケント「ルナ………。」

 

 彼女の気持ちは分かる。

 しかし、俺たちの間に、存在する身分差を意識せざるを得ない。

 俺は平民で、ルナは貴族だ。

 今でこそ、央都セントリアで沢山の貴族達に混じって暮らしているが、学院代表剣士になれなければ、その後はどうなるかは分からない。

 帝国騎士団や大きな街の衛兵隊に職を得られれば良いが、最悪は、兄の下で働く事すら有り得るのだ。

 すると、ルナが俺の右腕に縋り付く。

 

ケント「ルナ…………!?」

ルナ「先輩!先輩に、お願いがあるんです。きっと、学院代表になって、剣武大会にも勝って、四帝国統一大会に出て下さいね。」

ケント「そ、それは、もちろんそのつもりなんだが…………。」

ルナ「えっと………その………。」

 

 ルナは、一瞬言葉に詰まってから、顔を赤く染めて続ける。

 

ルナ「と、統一大会で上位に入れば、初等錬士寮のアズリカ先生みたいに一代爵士として叙任されると聞きました。そうなれたら………私、私…………!」

ケント「……………。」

 

 俺が統一大会を目指しているのは、整合騎士になって、イーディスともう一度会う、ただその為なんだ……………。

 だが、それをルナに伝えられなかった。

 例え嘘になってしまっても、恐らく生まれて初めて不確定な将来に怯えている十六歳の少女の………自分の傍付き錬士の懇願を無為に出来ないと感じた。

 

ケント「ああ………。大会が終わったら、きっと君に会いに行く。」

ルナ「………私も、私も強くなります。ケント先輩のように、正しい事、言わなきゃいけない事をきちんと言えるくらい、強く。」

 

カルムside

 

 ケント、それは、遠回しなプロポーズを受け入れたようなもんだぞ。

 俺は、ケントの部屋に向かおうとするが、ルナとケントのやり取りを覗いていた。

 

シオリ「カルム先輩、覗きはダメなんじゃないですか?」

カルム「悪い。ただ…………。」

シオリ「ただ?」

カルム「ケントが不安でね。」

シオリ「そうですね………。」

 

 ケントは、ルナを傷つけまいと答えたのだろう。

 ただ、ケントにはイーディスが居る。

 結局、どうなるかは分からないな。

 

カルム「ケントって、意外と鈍感だからなぁ。」

シオリ「…………それって、カルム先輩も一緒ですよね。」

カルム「何か言ったか?」

シオリ「いえ!何でも!」

カルム「そっか。」

 

 シオリは、俺に惚れているのかは分からない。

 ただ、もし惚れられていると分かったら、恐怖するだろうな。

 すると、ミトが脳裏に映る。

 

ミト『へぇ………。カルム。君って人は、違う世界で女の子を惚れさせたんだ………。』

 

 ヤバい、怖い。

 刺されそうで、怖い!!

 だからといって、シオリとはちゃんと向き合いたい。

 でもなぁ…………。

 

シオリ「先輩?大丈夫ですか?」

カルム「大丈夫…………。」

シオリ(先輩の鈍感。私の想いに気づいてよ。)

 

 寒気がするな。

 俺はミト一筋だ!

 そう自分に言い聞かせる。

 ただ、この日のすぐに、あんな出来事が起こるなんて、この時の俺は気づいていなかった。

 




今回はここまでです。
カルムも、シオリに惚れられてますね。
ミトは、まだ気づいていません。
今は、まだ…………。
次回、運命が動き出します。
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