ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、解説です。


第27話 図書館の賢者と光の剣士

カルムside

 

 あの整合騎士に追われて、咄嗟にドアに飛び込んだが、少しの浮遊感を感じた。

 目を開けると、床が迫っていた。

 何とか、着地できた。

 が、俺の背後で物凄い落下音が響いた。

 何事か後ろを向くと。

 

キリト「痛ててて………。」

カルム「大丈夫か?」

 

 ものの見事に顔面からダイブを決めていたキリトと無事に着地を決めたユージオとケントの姿があった。どうやら俺たち全員、無事にあの状況から脱することができたようだ。

 だが、ここがどこだか分からないため、油断はまだできない状況が続いていることには変わりなかった。

 警戒を緩めることなく、周囲を見渡している時だった。

 

???「やはり探知されてしもうたか。このバックドアはもう使えん。」

???「そうか。」

 

 扉の方から声が聞こえて、そちらを向くと、1人の少女と1人の男性がいた。

 少女は杖を持っていて、博士帽の様な帽子を着けていた。

 男性は、ローブを着用していて、一本の剣を持っていた。

 少女が杖を叩くと、扉は消滅した。

 一応、礼は言っておくべきだよな。

 

カルム「助かりました。あの、男性の方は、一度会ったことがあるような気がするんですが………。」

ユーリ「ああ。俺はユーリ。お前に刃王剣十聖刃を託した者だ。」

カルム「やっぱり………。」

 

 という事は、あの男性は、刃王剣十聖刃の元に案内したという事か。

 

キリト「その…………。」

ユージオ「初めまして。僕はユージオ。こっちは、キリトにカルムにケントです。」

キリト「おい、ユージオ………!」

ケント「あの………。あなた達は、この部屋に住んでいるんですか?」

???「そんな訳がなかろうが。………着いてこい。」

 

 少女は呆れ顔になりつつ、鼻眼鏡をくいっと持ち上げながら答えて、正面の壁にある大きな壁に向かって歩き始める。

 俺たちは少女とユーリに着いていく。

 キリトが気になる事があるのか、少女に聞く。

 

キリト「………ここは、もうセントラル・カセドラルの内部なのか?」

???「そうであるとも言えるし、違うとも言えるな。」

カルム「どういう事です?」

???「わしが本来の扉を消去したゆえ、この大図書室は、カセドラル内部に存在するが、何者も入ってはこれない。」

カルム「つまり、ここは、カセドラルから独立しているという事ですか?」

ユーリ「そうだ。」

???「お主らのように、わしが自ら招かない限りはな。」

 

 俺の言葉に、頷いたユーリと少女。

 扉が開くと、大図書室という名前が相応しい広大なフロアが現れた。

 

ケント「これは………。」

ユージオ「大図書室……。」

???「うむ。ここにはこの世界が創造された時よりのあらゆる歴史の記録と天地万物の構造式、そして、お主たちが神聖術と呼ぶシステムコマンドの全てが収められておる。」

カルム「全て………!?」

 

 その言葉に、俺は驚いた。

 修剣学院には、アンダーワールドの歴史に関連する本があまりないから、見てみたいな。

 俺の好奇心が疼いている中、キリトは少女に質問をしていた。

 

キリト「アンタ………何者なんだ………?」

カーディナル「わしの名はカーディナル。……かつては世界の調整者であり、今はこの大図書室のただ一人の司書じゃ。」

カルム「え?」

 

 俺は、その名前に驚いた。

 それは、カーディナルという名前に、聞き覚えがあるからだ。

 SAOと、新生ALOで。

 ただ、カーディナル・システムには人格という存在がないはずだ。

 そんな風に考えていると。

 

ユージオ「あらゆる歴史…………?」

ケント「四帝国の建国以来の年代記が、全部ここにあるんですか?」

カーディナル「うむ。世界がステイシア神とベクタ神によって、人界と暗黒界に分かたれた頃の創世記すらも所蔵されておる。読みたければ読んでもよいぞ?」

ケント「それは是非!」

 

 ユージオとケントのテンションが高くなってるな。

 まあ、俺もそういうのは見てみたい。

 

カーディナル「それよりも………。お主ら、右腕を出すのじゃ。」

「「「「…………?」」」」

カーディナル「良いから、ほら。早く出すのじゃ。」

 

 カーディナルにそう言われ、首を傾げながら右手を差し出した。

 そして、それを見て確認したカーディナルは持っていた杖を俺たちの右腕に向けたかと思えば。

 

カーディナル「ほい。」

キリト「…………!おおっ!」

カルム「鎖が取れた………!」

 

 やっと鎖が取れた。

 右腕が軽く感じるな。

 すると、ケントとユージオがくしゃみをする。

 そういえば、2人は噴水に落ちてたしな。

 

カーディナル「先程の戦闘でかなり疲労も溜まっておるのではないか?ここには狭いが風呂場もある。ゆっくりと体を温めてきてはどうじゃ?」

カルム「………ケント、ユージオ。行ってきていいぞ。2人は噴水に落ちてたしな。」

キリト「俺たちは後で良いから。」

ユージオ「…………ありがとう、2人とも。すみません、お言葉に甘えます。」

ケント「………それと、創世記に関する本はどこに置いてますか?」

ユーリ「風呂から上がったら、俺が案内しよう。着いてこい。」

ユージオ「分かりました。」

 

 ユージオとケントは、ユーリに連れられて、風呂場へと向かう。

 俺も、創世記の本を読んでみようかな……。

 そう思っていると。

 

カーディナル「………尤もここにある創世記は残念ながら公理教会最高司祭の創作物ではあるがな。」

カルム「えっ!?」

キリト「っ!?」

 

 その言葉に、俺とキリトは顔を見合わせる。

 俺が聞いてみる。

 

カルム「それって、ステイシアやベクタといった神は実在しないということなのか?」

カーディナル「そんな者はおらぬ。アンダーワールドの民が信じておる神話は、教会が支配権を確立するために作り広めた創作物にすぎん。ステイシアを始めとした神たちの名は緊急措置用のスーパーアカウントとして登録されてはおるが、外の人間がそれを使ってログインしたことは一度もない。」

 

 それを聞いたキリトは、語気を少し強めにして、カーディナルに言う。

 

キリト「やっぱりそうか………!あんたはアンダーワールドの住人じゃないんだな?この世界の外側………システム管理者たちに近しい存在だ!」

カーディナル「うむ、お主たちが考えている通りじゃ。そして、それはお主たちにも言えることじゃな。無登録民キリト、そして、カルムよ。」

カルム「そうだ。俺たちもまた、外からこの世界にやってきた。」

 

 カーディナルの方も、隠す事は何もないのか、腹を割って話してくれるそうだ。

 こちらも、外の住民だという事を隠す必要がないな。

 

カルム「この世界を作ったのは、ラース。それで合ってるよね?」

カーディナル「いかにも。」

キリト「そして、あんたはカーディナル・システム………。仮想世界を制御するための自立型プログラムだ。」

カーディナル「そうじゃ。まさか、カーディナル・システムのことまで知っておるとはのう……。もしかして、あちら側でわしの同類と接したことがあるのか?」

カルム「まぁね…………。」

 

 ユイちゃんとカナとの一件の時に、キリトと共にカーディナル・システムに挑んだものだ。

 そして、カーディナル・システムが持つクエスト自動精製機能のせいで、ALOが崩壊するかと思ったし。

 

キリト「でも、俺たちの知る限り、カーディナルシステムにはそんな擬人化インターフェイスは組み込まれていなかった。なのに、あんたはこうして俺たちの目の前にいる………。あんたは一体どういう存在なんだ?」

カルム「それに、セントラル・カセドラルから独立してるこの大図書室で、アンタは一体何をしようとしてるんだ?」

カーディナル「フッ…………そうじゃの。少し長くなるが、できるだけ手短に話すとしようかのう。」

 

 立ち話もなんだという事で、カーディナルに連れられて、椅子に座る。

 すると、カーディナルは、杖を机に叩くと、肉まんとサンドイッチが現れる。

 

キリト「おお!」

カーディナル「まじないをかけてある故、傷もたちまち癒えるぞ。」

カルム「ありがとう。」

キリト「へぇ~、流石は管理者だな。」

カーディナル「わしは管理者ではない。操れるのもこの図書室のオブジェクトだけじゃよ。」

 

 なるほど。

 まあ、食えれば良いか。

 俺はそう思い、肉まんを頬張る。

 美味しいな。

 

キリト「それなら、外との連絡手段は?カーディナル・システムの貴女なら………。」

カーディナル「ばかもん………。それができればこんな埃っぽい場所に何百年も閉じこもっておらんわ!残念ながら、その手段を持っているのは最高司祭だけじゃ。」

カルム「まあ、連絡手段があるだけ、まだマシでしょ。」

 

 まあ、最高司祭に会いに行かなきゃいけないんだろうけど。

 ただなぁ………今の俺たちの立場は、反逆者だしなぁ………。

 難しいかなぁ…………。

 そんな事を考えていると、カーディナルが話し始める。

 

カーディナル「わしは先程この世界に神はおらんと言った。じゃが、創世の時代………今より遡ること450年前、似たような者たちは存在したのじゃ………。まだ央都セントリアが小さな村でしかなかった頃に4人の神がな。」

カルム「……450年前。」

 

 4人の神…………。

 もしかして。

 

キリト「それが起源の4人………。この世界に最初にダイブしたラースのスタッフのことだろう?」

カーディナル「その通りじゃ。4人の外世界人がこの土地に降り立ち、2軒の農家で8人ずつの子供を育てたのじゃ。読み書きや作物の育て方、家畜の飼い方、そして、後の禁忌目録の礎となった善悪の価値観に至るまでな。」

カルム「そんな時から善悪の基準まで教えていたのか…………。」

 

 ラース…………というより菊岡は一体何を企んでるんだ?

 カーディナルの話は続く。

 

カーディナル「原初の4人は課せられた困難な使命を見事に達成したことからも人間としては最高級の知性を持っていたことが分かる。しかし、知性に秀でていても……善ならざる者が一人だけ存在したのじゃ。」

カルム「善ならざる者………?」

キリト「まさか…………。」

カーディナル「お主等の想像通りじゃ。そやつは子に所有欲や支配欲といった利己的な欲望をも伝えてしまった………。その子供が祖先となったのだ。今の人界を支配する貴族や公理教会の上級司祭達のな………。」

「「………………。」」

 

 つまり、アンダーワールドの悪意の貴族が生まれたのは、ラースのスタッフの1人が、やらかしたせいか。

 なんて事してくれたんだ。

 

カーディナル「そして、彼らの頂点に立つのが公理教会最高司祭にして、今ではシステム管理者でもある一人の女じゃ………。アドミニストレータという不遜極まりない名前を名乗っておる。」

キリト「アドミニストレータって………。」

カルム「ああ。エルドリエが言ってたな。確か、『最高司祭アドミニストレータ様の招きを受けて』って。」

カーディナル「わしが話しているのはまさしくそやつのことよ。そして、おぞましいことだが………。アドミニストレータは、言うなればわしの双子の姉でもあるのじゃ。」

「「!?」」

 

 どういう事!?

 俺たちは顔を見合わせる。

 

カーディナル「順を追って話そう。原初の4人のログアウトから数十年後、とある二つの領主家の間で人界初の戦略結婚が行われ、一人の女の赤子が生まれたのじゃ………。名をクィネラと言ってのう。」

 

 そこから、カーディナルは、アドミニストレータ………もとい、クィネラの過去を話す。

 クィネラは天職として『神聖術師見習い』が与えられた普通の人工フラクトライトだったらしい。

 彼女は人一倍神聖術に関して研究していた、いわゆる研究者気質みたいなタイプで、神聖術の式句には意味があると見出していた、ある種の天才と呼べる才能を持っていたのだと……。

 そして、その好奇心と知性が一つの過ちを生んでしまった。

 彼女は気付いてしまったのだ……。

 神聖術を扱うレベル………システムコントロール権限やオブジェクト操作権限といった数値は人間や小動物………動的オブジェクトを殺せば上昇するというシステムの理に……。

 禁忌目録がまだないその時代に彼女を縛るものなど存在しなかった。

 そこから、クィネラは暴走しだした。

 誰も直すことが出来ない怪我や病気を神聖術で治し、誰にでも親しみと慈悲の笑みを向ける彼女をいつしか人々は『神の子』、『ステイシア神の遣い』だと崇め始めたのだという。

 そして、底なしの支配欲を満たす時が来たことを彼女は悟ったのだと。

 神に祈りを捧げる場所として建てられた、セントラル・カセドラルの原型にて、自ら以上のシステム権限を持つ者が現れないようにするため、殺しを主に禁止とした法律の成文化……ステイシア神の信託と偽って公布した禁忌目録の初期版、今の世界の歪みをクイネラは作り出してしまったのだと………。

 だが、そんな彼女にもどうにも回避できないものがあったのだという。それは自身の寿命………フラクトライトの限界………それはアンダーワールドに生きる彼女にはどうしようもない結末のはずだった。

 だが、彼女は再び過ちを………いや、奇跡ともいえる神聖術を発見してしまったのだという。

 それが神の悪戯だったのか、悪魔からの贈り物だったのかは分からない。彼女は見つけてしまったのだ………禁断の扉を…………。

 そこまで言うと、カーディナルは、自らの腕で体を抱える。

 

カーディナル「……ふぅ……ふぅ……。」

カルム「………大丈夫か、カーディナル?」

カーディナル「……大丈夫じゃ。話を続けよう。」

 

 流石に、これ以上は話させてはいけないと思ったのだが、カーディナルは話す。

 

カーディナル「ありえない偶然によってか……あるいは外の人間が何か手を貸したのかもしれん。見せてやろう………。システム・コール!インスペクト・エンタイア・コマンドリスト!」

キリト「っ!?」

カルム「これは!?」

 

 確かに、これは悪魔からの贈り物だと言われても、納得がいく。

 そこには、すべての神聖術のコマンドが記されていたのだ。

 

カーディナル「そうじゃ。この窓にはシステムコマンドの一覧が記してあるのじゃ。それを知ったクイネラがまず行ったのは天命値の全回復と自然減少の停止、そして容姿の回復………。彼女は10代後半の美貌………全盛期の美しさを取り戻したのじゃ。」

カルム「嘘だろ………。」

 

 俺はカーディナルのその言葉に、クィネラの歓喜………いや、狂喜っぷりがよく分かる気がする。

 言っちゃなんだけど、クィネラの若くいたいという欲望は、女性なら誰しもに存在すると思うからな。

 ミトはあるのか分からないが。

 カーディナルが言葉を紡ぐ。

 

カーディナル「そこで満足して終わりにしておけばよかったのじゃ。しかし、クイネラは自分と同じ権限を持つ者すら………カーディナル・システムすらその存在を許すことができなくなってしまったのじゃ。」

カルム「まさか………。」

キリト「それって…………。」

カーディナル「そうじゃ。あやつはカーディナル・システムの権限レベルを奪おうと考え、強大な神聖術を組み上げ唱えた………。その結果、カーディナルシステムに与えられていた基本命令を己のフラクトライトに書き換え不可能の行動原理として焼き付けてしまった。」

 

 それはつまり、アドミニストレータは、この世界のカーディナル・システムを支配しようとしたが、逆にシステム自体と融合したのか。

 

カーディナル「秩序の維持………。それがカーディナルシステムの基本命令であり、存在目的じゃ。お主たちも同じシステムの制御される世界にいた頃があるのなら分かるじゃろ?お主たちプレイヤーの行動を常に監視し、バランスを乱すような事象を検出するや否や……容赦なく対処する。」

「「っ!?」」

 

 確かに、心当たりがある。

 ユイちゃんとカナを消そうとしたのは、紛れもなくカーディナル・システムだったからな。

 それ以外にも、効率の良い狩場も、しばらくすると、効率が悪くなるしな。

 

カーディナル「昏倒していたクイネラは一昼夜眠り続けてから覚醒した。その時には既にフラクトライト………いや、あらゆる意味で人間ではなくなっておった。老いもせず、水も飲まず、パンも食わず………。欲するのは己が支配する人界を今のままに永遠に保つことのみ………。」

 

 それが、狂った支配者であるアドミニストレータの誕生理由という事か。

 だが、それはもう、AIの開発という範疇を超えてしまっている。

 俺は以前、胸騒ぎを感じていた。

 それは、ルーリッドの村から旅立つ時だ。

 まるで、あの雷鳴が、時を超えて、今鳴り響く様な気がする。




今回は、ここまでです。
次回、武装完全支配術の術式を組み立てたり、刃王剣十聖刃がどの様にして生まれたのか、ユーリとは何なのかを語ります。
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