カルムside
カーディナルの提案に乗り、ユーリの想いを聞いた俺たちは、作戦会議をするべく、ユージオとケントとユーリと合流する。
どうやら、未だに歴史書を見ていたようだ。
それを読み終えたそうだな。
キリト「お待たせ。」
カルム「すまん、時間かかった。」
ユージオ「あ………ああ、キリト、カルム。」
ケント「すまない。どれくらい時間が経ったんだ………?」
ケントの質問に対して、答えようとしたが、カーディナルがかわりに答えてくれた。
カーディナル「およそ2時間じゃな、もう太陽はすっかりと上ったぞ。」
ユーリ「どうだ?人界の長い歴史は?」
ユーリに聞かれたケントとユージオは、煮え切らない口調で答える。
ユージオ「…………この本に書いてあるのは、全部本当にあった出来事なんでしょうか?まるで………よく出来たおとぎ話の連続を読んでるみたいで………。」
ケント「殆どの挿話が、どこそこでこういう問題が起きました、整合騎士が赴いて解決しました、そして以来かくかくしかじかの条項が禁忌目録に加えられたのです………っていう話ばかりだったしな。」
ユーリ「仕方あるまい、それが史実だしな。」
カーディナル「網に注がれる水が溢れぬよう、網目を一つ一つ塞ぎ続けてきたのが、公理教会という組織じゃ。」
ため息を吐きながら語るユーリと、公理教会に対してストレートに批判するカーディナルに、2人は驚いたようだな。
ユージオ「あ………あの、あなたは………?」
キリト「あー、この人の名前はカーディナル。えーと………今の最高司祭アドミニストレータに追放された、かつてのもう1人の最高司祭だ。」
ケント「もう1人の………?」
カルム「ああ。俺たちが、整合騎士相手に戦うのに協力してくれるそうだ。この人にも、アドミニストレータを倒し、最高司祭に復帰する目的があるから、共闘だ。」
まあ、カーディナルが最高司祭に復帰したその後に待ってるのは、世界の終焉だがな。
これに関しては、いずれ2人とも話し合う必要があるな。
ユージオ「そうですか………助かります、本当に。」
ケント「あの………。イーディスとアリス……整合騎士のイーディス・シンセシス・テンとアリス・シンセシス・サーティが、ルーリッドのイーディス・リデルとアリス・ツーベルクと同一人物なんですか?………もしそうだとしたら、元に戻す方法は………?」
ケントの問いに関して、カーディナルとユーリは少しだけ睫毛を伏せて答える。
カーディナル「すまんが………わしがこの場所で手に入れられる情報は、ごく限られておるのじゃ。基本的には、そう多くもない使い魔達とユーリが見聞きした事柄以上の事はわしも知らぬ。」
ユーリ「俺も、カセドラル内部に侵入したりはしているが、イーディスとアリスの2人の出自に関しては、分からなかった。」
カーディナルとユーリの答えに、ケントとユージオは肩を落とす。
だが、カーディナルの言葉に、2人は鋭く息を吸い込む。
カーディナル「…………しかし、整合騎士を誕生、いや造り出す為の神聖術、《シンセサイズの秘儀》を解除する方法ならば教えられる。」
ケント「本当ですか!?」
カーディナル「うむ。彼らの魂に挿入された《敬神モジュール》を除去すれば良い。」
ユーリ「見た目は三角柱の物だ………そうだ、お前達は既に目にしているはずだ。」
ユージオ「あっ………。エルドリエの額から出てきたアレか………!」
ユージオの言葉に、俺たちは思い出す。
エルドリエからアレが抜けていたら、エルドリエを元に戻せたはずだったのにな………。
カーディナル「敬神モジュールは記憶の繋がりを阻害する形で挿入されておる。それで整合騎士となる者の過去を封じ、同時に公理教会と最高司祭への絶対の忠誠を強いておるのじゃ。」
カルム「という事は………。」
ケント「術を解くには、整合騎士の過去………記憶を刺激すれば良いんですか?」
カーディナル「それだけでは不十分じゃ。もう一つ絶対に必要な物がある」
ユージオ「それは何なんですか?」
必要な物をユージオが尋ねると、カーディナルは答えた。
カーディナル「モジュールが挿入されておる場所に本来存在した物…………つまり、整合騎士にとって一番大切な記憶の欠片じゃよ。」
ケント「欠片……でも、それは一体どこに?」
カーディナル「アドミニストレータは慎重な女じゃ。騎士から抜き取った記憶はまず間違いなく自らの居室、セントラル・カセドラルの最上階にあるはずじゃ。」
カルム「っていうことは、整合騎士を元に戻すためには記憶の欠片が必要…………。」
キリト「それを手に入れるためには、整合騎士たちの守りを突破して、アドミニストレータをも倒さないとまず難しいってわけか………はぁ、言うのは簡単だが、かなり難関だな。」
カーディナル「整合騎士は殺さずに倒そうなんていう考えが通用する相手ではないのは、直接戦ったお主たちが一番分かっておるはずじゃ。」
ユーリ「しかも、煙叡剣狼煙と時国剣界時を使う整合騎士もいるからな。」
まぁね。
エルドリエも、ある意味ではこちらが負けたようなものだし。
しかも、2本の聖剣が、アドミニストレータ側にあるしなぁ…………。
カーディナル「わしがお主たちにしてやれることは整合騎士と対等な装備を与えてやるくらいじゃ。」
カルム「つまり、アドミニストレータの元に行けるのかは、俺たちの実力次第か。」
キリト「まあ、その方がはっきりしてて逆に良いのかもしれないな。」
ユージオ「でも………アリスとイーディスが出てきたら………。」
装備が対等で実力次第。
俺とキリトは、そういう修羅場は何度も潜り抜けてきた。
すると、ユージオとケントから、言葉が漏れる。
ケント「もしイーディスとアリスが出てきたら、俺たちは戦えません。俺たちは、2人を取り戻すためにここまで来たんです……!だから………!」
カーディナル「ふむ、そうじゃったな。ユージオ、ケントよ。そなたらの目的はわしも理解しておるよ。よかろう、もし整合騎士アリスと整合騎士イーディスがそなたらの前に立ちはだかったのなら、これを使うがよい。」
カーディナルはそう言って、赤銅色の短剣を俺たちに渡してくる。
何だこれ?
カルム「これは?」
カーディナル「その短剣は刺したものとわしとの間に切断不可能な経路を生成することができるのじゃ。つまり、わしの用いるあらゆる神聖術が必中となるわけじゃ。ユージオ、ケントよ。整合騎士アリスとイーディスの体のどこでも構わん。それを刺すのじゃ。その瞬間、わしの術で2人を深い眠りへと誘おう………。2人の記憶を取り戻し、シンセサイズの秘儀を解除する準備が整うまでな。」
ユージオ「分かりました。」
ケント「2人が説得に応じなかったら、これを使います。」
カーディナル「なに………元々はアドミニストレータ用に作っておいた予備の分じゃ。残りの2本で成功させられるのなら何も問題はない。」
キリト「責任重大だな………。」
カルム「ああ……………。」
変なプレッシャーはやめて!
絶対へま出来ないじゃん!
キリト「………そうだ。それなら、さっき言ってた整合騎士と対等の装備っていうのは一体何なんだ?」
カーディナル「お主たち4人には強力な愛剣があるじゃろう?それを取り戻せるように協力してやるということじゃ。」
ユージオ「僕の青薔薇の剣と、キリトの黒い剣、ケントの雷鳴剣黄雷、カルムの刃王剣十聖刃の事ですか?」
ユーリ「ああ。お前らの武器は、カセドラル3階にある武具保管庫に置いてあるはずだ。」
キリトとユージオの質問に対して、答えていくカーディナルとユーリ。
なるほどな。
俺は、気になる事があるので、聞いてみる事にする。
カルム「ちなみに、アドミニストレータの居室って何階なんだ?」
カーディナル「セントラル・カセドラルは年々上昇を続けておるからな。現在では100階に迫っておろう。」
「「…………100階。」」
奇しくも、かつて俺たちが住んでいた浮遊城アインクラッドと同じフロア数だ。
流石に、アドミニストレータも、アインクラッドの事は知らないだろうから、偶然の一致だろうな。
そんな事を思っていると、カーディナルとユーリから追撃が来る。
カーディナル「残念じゃが、お主らにはもう一つやらねばならないことがあるぞ?」
キリト「ま、まだ何かあるのか?」
ユーリ「お前らの剣は確かに強力だが、それだけでは整合騎士たちには勝てない。なぜなら、連中には武器の性能を数倍に増幅する恐るべき術がある。」
ケント「もしかして、エルドリエが使っていた武装完全支配術とか記憶開放術っていう技のことか?」
そういえば、エルドリエの霜鱗鞭は、蛇が元になっていると聞いたな。
アレが、武器の記憶という事だろう。
カーディナル「うむ。神器級の武器には記憶………代償となったオブジェクトの性質を濃く受け継いでおる。完全支配術や記憶開放術は言うなれば、武器の記憶を全開放することで本来あり得ない超攻撃力を実現するものじゃ。」
ユーリ「雷鳴剣黄雷の場合は、3本の首を持つ番犬と針を纏うネズミ、ランプの魔神の力が合わさって精製されて、刃王剣十聖刃は、10本の聖剣の記憶が元になっている。」
カルム「なるほど…………。」
刃王剣十聖刃は、聖剣の力が合わさっている物だ。
全ての聖剣の記憶を保持していてもおかしくはないな。
カーディナル「4人とも、目を瞑るのじゃ。」
ユーリ「そして、お前らの剣の事を強く思い浮かべろ。」
「「「「………………。」」」」
俺たちは、言われたように目を瞑る。
頭に浮かんだ刃王剣十聖刃は、太陽系のようだった。
雷鳴剣黄雷、水勢剣流水、風双剣翠風、時国剣界時、闇黒剣月闇、火炎剣烈火、音銃剣錫音、土豪剣激土、煙叡剣狼煙、光剛剣最光の順番に光り、最後に無銘剣虚無がそれらのエネルギーを一つにまとめ、刃王剣十聖刃が生まれる。
これが………刃王剣十聖刃の記憶………。
カーディナル「よし、良いぞ。」
カーディナルの声と共に、俺の意識は、大図書室に戻る。
どうやら、残りの3人も同じようだ。
カーディナルが手を叩くと、それぞれの目の前に4枚の羊皮紙が現れる。
これが、それぞれの武装完全支配術を発動させる為の術式なのだろう。
カーディナル「ほれ。」
キリト「うへぇ…………。」
ユーリ「しっかり覚えとけ。」
カルム「分かった。」
ユーリ「そうだ、カルム。お前に話がある。」
カルム「分かりました。」
俺はユーリに連れられて、カーディナル達から離れた所に向かう。
カルム「どうした、ユーリ。」
ユーリ「お前の刃王剣十聖刃は、武装完全支配術を発動させずとも、聖剣の力を引き出す事が出来る。」
カルム「そうなんですか?」
ユーリ「ああ。その際には、使う聖剣の力を想像すれば、刃王剣十聖刃がその聖剣の力を引き出してくれる。ただし、せいぜい2本ぐらいにまでにしておけ。3本の聖剣の力を引き出すには、武装完全支配術でなければダメだ。」
カルム「分かりました。」
ユーリから、そんなアドバイス兼忠告を受けて、俺はキリト達の元に戻る。
そして、カーディナルからもアドバイスを受ける。
カーディナル「カルムも戻ってきた事だ、わしも話をしよう。武装完全支配術は強力じゃが、無闇に乱発してはならぬ。あれは一度使うだけで武器の天命をかなり損耗するのでな。無論、使い惜しみをして敗れるのはもっといかん。ここぞという時に使い、その後はきちんと鞘に収めるのじゃ。」
カルム「分かった。」
キリト「そういえば、エルドリエが武装完全支配術の続きみたいな術式を言ってたな。確か………。」
ユージオ「リリース・リコレクション………だったかな。」
ケント「彼がそう唱えたら、本物の蛇に変わって驚いたな。」
キリト「俺たちの奴には、それはないのか?」
キリトの質問に、カーディナルは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
カーディナル「良いか、武装完全支配術には2つの段階がある。《強化》と《解放》じゃ。」
ユーリ「強化とは、武器の記憶を部分的に呼び覚まし、新たな攻撃力を発現させる事。解放とは………言葉通りに武器の記憶を全て目覚めさせ、荒ぶる力を解き放つ。」
カルム「荒ぶる力か…………。」
キリト「なるほどな。エルドリエの霜鱗鞭は、蛇が元だから、あんな事が出来るんだな。」
カーディナル「そういう事じゃ。しかし、お主達ではまだまだ解放術は使えぬぞ。」
ケント「な、なんでですか………?」
ユージオ「どういう事ですか………?」
ユーリ「荒ぶる力、と言っただろう。記憶解放は、術式を覚えたばかりの剣士に制御できる代物ではない。下手をしたら、自分をも巻き込み、命を落としかねない。」
そういう注意を受けて、俺たちは、武具庫に送ってもらう事に。
ちなみに、ユーリは、あの整合騎士に対して目眩しを行った影響で、しばらく休むそうだ。
カーディナル「さてと、ユージオ、ケント、キリト、そしてカルムよ。わしはお主たちに告げるべきことは全て告げた。世界の命運はそなたらに委ねられておる………地獄の業火に包まれるのか、虚無に沈むか………もしくは………。」
カーディナルはそこまで言うと、俺とキリトに視線を向け、微笑む。
カーディナル「第三の道を見出すのか………お主たちが信じる道を行けば、その答えを見つけることができるじゃろう………。」
ユーリ「さあ、行ってこい!お前達の信じる信念の元に!」
俺たちは、カーディナルとユーリに激励を貰って、俺たちは、その扉を通る。
俺は、一つの決意を固めた。
カルム(絶対に、皆を死なせはしない。カーディナルが言った第三の道を見出して、この世界の結末を変えてみせる…………!)
その決意の元、俺たちは、武具庫へとその歩みを進める。
今回はここまでです。
カルムは、新たな決意の下、歩み始めます。
次回、デュソルバートとの戦いです。
後、今後の展開のアンケートを出したいと思っています。
カルムは心身喪失状態にすべきか
-
する
-
しない