ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、デュソルバート戦です。


第30話 紅蓮の騎士

カルムside

 

 俺たちは、カーディナルとユーリに見送られて、大図書室を後にする。

 ドアを潜った先には、大理石と思われる素材で出来た廊下だった。

 後ろをチラリと見ると、ドアは既に消えていた。

 

カルム「ここが、セントラル・カセドラルの中って事か…………。」

ユージオ「確か、ここの3階の武具保管庫に、僕たちの剣があるって言ってたよね。」

ケント「ああ。」

キリト「じゃあ、早く行こう。」

 

 俺たちは、周囲の人の気配に気をつけながら武具保管庫へと向かう。

 もし、これが現代日本なら、監視カメラの一つや二つ、セキリュティの類も警戒すべきなのだろうが、ここはアンダーワールド。

 そんな便利な物があるわけないので、俺たちは先へと進んでいく。

 しばらく進んでいくと、2体の彫像が置かれている部屋の前にまで来たので、俺とキリトが先行して、扉を開いて中を覗いて、無人である事を確認して、ケントとユージオに合図を送って、中に入る。

 暗いので、光素を使おう。

 

カルム「システム・コール。ジェネレート・ルミナス・エレメント。ディスチャージ。」

 

 その声と共に、俺の掌に光素が幾つか精製されて、そのまま上へと上がる。

 すると、周囲が照らされ、風景がわかる。

 

ユージオ「うわぁ………。」

ケント「これ、全部が武具なのか?」

キリト「急ごう。」

カルム「ああ。まずは、俺たちの剣を見つけよう。」

 

 その中には、多数の武器防具があった。

 だが、そんな物は興味がなく、俺たちは自分たちの剣を探す。

 

ユージオ「あったよ、皆!」

 

 ユージオの声と共に俺たちは、駆け寄る。

 そこには、俺の刃王剣十聖刃、キリトの黒い剣、ケントの雷鳴剣黄雷、ユージオの青薔薇の剣があった。

 どうやら、ここに放り込まれて以降は誰もいじっていないようだな。

 俺は刃王剣十聖刃に迷わず手を伸ばし、腰に帯刀する。

 その重さは、いつまで待たせてるんだと抗議するような感じだな。

 一方、ユージオとケントは、感慨に耽っていたのか、それぞれの剣を手に、呆然としていた。

 

キリト「いつまでそうしてるんだ?」

ユージオ「ごめん………。」

ケント「それにしても、ここには本当に大量の武器が保管されてるよな。」

カルム「ああ。タカトラ先輩がこれを見たら、呆然とするかもな。」

キリト「リーナ先輩が見たら、感極まって卒倒しそうだよな。」

ユージオ「こんなに武器があるなんて、教会は自前の軍隊でも作ろうとしているのかな?」

ケント「確かに、整合騎士で充分な気がするんだが。」

カルム「多分、逆。軍隊を作らせないようにしようとしてるんだ。」

 

 俺の言葉に、ユージオとケントは首を傾げる。

 キリトが、俺の言葉を引き継いでくれた。

 

キリト「最高司祭アドミニストレータは、公理教会以外の集団が強い武具を持つ事を警戒したんだ………。」

ユージオ「どういう事………?」

カルム「つまり、教会の権威を一番信じていないのは、意外にも最高司祭ご本人かもしれないって事だ。」

ケント「そういう事か………。」

 

 ユージオとケントは、一応納得したようだな。

 すると、ユージオが口を開く。

 

ユージオ「ねぇ、ここの防具を借りていくっていうのは駄目かな?」

ケント「うう〜ん…………。」

カルム「俺たちって、鎧を着た事なんて、一回もないしな。」

キリト「ああ。慣れない事はしない方が良い。そこら辺の服を拝借しようぜ。」

 

 そう、これまでの戦闘で、修剣学院の服装は大分ボロボロになったからな。

 俺たちは着替える事にした。

 キリトとユージオは修剣学院の服装と似たような物をセレクトして、俺は紫紺色の物を、ケントは紺色の物をセレクトした。

 やっぱり、紫紺色が一番落ち着くな。

 それにしても、随分と着心地が良いな。

 準備を終えた俺たちは、上へと向かうべく、扉を少し開いて、様子を伺っていると、キリトの切迫した声が上がる。

 

キリト「全員避けろ!」

「「「っ!?」」」

 

 その声に、只事ではない事を察して、俺たちは奥へと戻る。

 すると、扉が勢いよく開け放たれた。

 扉に、矢が4本刺さっていた。

 その矢は、見覚えがあった。

 階段の方を見ると、踊り場のところに、赤い鎧を着た整合騎士がいた。

 

カルム「あの整合騎士か!」

???「………………。」

 

 整合騎士は無言で矢をつがえる。

 まずい!

 そうだ!

 

カルム「バースト・エレメント!」

 

 俺は上空に待機させていた光素をバーストさせて、奴の目を眩ませる。

 奴は矢を撃ったが、目が眩んだ影響で、俺達とは関係ない場所に着弾した。

 

???「ぬうっ!?」

キリト「前だ!」

 

 俺たちは、キリトの言葉と共に、保管庫から飛び出して、整合騎士に迫る。

 整合騎士は、目を眩ませていたが、どうやら回復したようだな。

 

???「下らぬ真似を……!」

キリト「ハアッ!」

 

 奴は、迎撃の為に矢を一本放つが、先陣を行くキリトが黒い剣を使って弾き飛ばす。

 俺たちもキリトに続いて接近しようとするが、奴は、驚くべき行動を取る。

 それは、矢筒に入っている残りの矢を全て弓につがえていた。

 

カルム「まさか………!」

キリト「避けろ!」

 

 俺たちは、接近を一旦諦め、俺とキリト、ケントとユージオの2組に別れて回避行動を取る。

 矢は放たれて、まるで雨の如く降り注ぐ。

 何本か掠めそうになったが、何とか傷は負わずに回避できた。

 もし捕まったら、そのまま整合騎士にされる可能性があるからな。

 

ユージオ「キリト!カルム!」

ケント「無事か!?」

キリト「ああ………。何とか。」

カルム「俺は大丈夫だ。」

ユージオ「…………行こう。」

ケント「ああ。」

???「システム・コール。…………。」

 

 奴は、矢が尽きた上に弦が切れた。

 何にもできないとして、俺たちは接近を再開しようとするが、神聖術を発動させる起語が聞こえた。

 しかも………!

 

キリト「まずい、これは………!」

カルム「これは、属性攻撃じゃない。武装完全支配術だ!」

???「エンハンス・アーマメント。」

 

 その式句とともに、奴の持っている弓から炎が噴き出し始めた。

 その炎は弓から奴の体へと伝えわり、その身に炎を纏った姿へとなっていた。

 階段上にいる奴から階段下にいる俺たちまでかなりの距離があるはずなのに、その炎の熱が十二分に伝わってきて、その炎がただの炎でないことを物語っていた。

 

キリト「凄いな、あの炎。あの弓は何が元になってるんだろうな。」

ユージオ「感心してる場合じゃないよ!」

カルム「まずいな………。」

ケント「くそっ。こっちも武装完全支配術を使えるようにしておけばよかったな。」

 

 確かに。

 まあ、カーディナルも、使いどきを考えろと言っていたから、この状況は、武装完全支配術を使えなくても、倒すしかない。

 

???「こうして熾焔弓の炎を浴びるのは実に2年ぶりだ。なるほど、騎士エルドリエ・サーティワンと渡り合うだけの技はあるようだな、咎人どもよ。しかし、なれば尚の事許せん。正しき騎士の戦いではなく、穢れた闇の術によってサーティワンを惑わした事がな。」

キリト「や……….。」

カルム「闇の術?」

ユージオ「ち………違う、僕らは闇の術なんか使ってない!」

ケント「俺たちはただ、エルドリエが整合騎士になる前の話をしただけだ!」

???「騎士になる前だと?我らに過去など存在しない。我らは、天界より召喚されたその時から常に光輝ある整合騎士である!」

 

 奴はそう言うと、腕を振るった。

 まあ、話し合いが無理なのは、分かりきってはいたが。

 

???「生かして捕らえろと命じられているゆえ、貴様らを消し炭にまではせぬが、こうして熾焔弓の炎を解放した以上は、腕の一本なりとも焼け落ちると覚悟せよ。」

 

 そう言って、本来弦があるべき場所に右手が据えられると、炎が一本の矢へと姿を変える。

 

キリト「弦切れも弾切れも関係なしか。」

ユージオ「何か策はある?」

カルム「俺が刃王剣十聖刃の、水勢剣流水の力を使って受け止める。キリトは俺の支援。ユージオとケントは懐に飛び込んで、奴を倒せ。」

ケント「分かった。」

 

 作戦が決まって、俺とキリトが前に出て、ユージオとケントはその後ろにいる。

 水勢剣流水、俺に力を貸してくれ………!

 そうイメージすると、刃王剣十聖刃に水流が纏う。

 これで、水勢剣流水の力が引き出せたはず。

 

???「ほう。この熾焔弓の炎を迎え撃とうというのか………。その意気込みや良し!だが、射抜かせてもらうぞ!」

カルム「そうは行かない………!」

キリト「システム・コール!ジェネレート・クライオゼニック・エレメント!フォームエレメント・シールドシェイプ!ディスチャージ!」

 

 キリトが凍素で氷の盾を精製して、俺が刃王剣十聖刃を構えたと同時に、炎の矢が放たれ、氷の盾を壊していく。

 俺は水流を纏った刃王剣を上段に構え、迎撃の体勢を取る。

 炎の矢は、最後の氷の盾で止まっていたが、次第に、炎の矢は、一体の不死鳥と化す。

 そして、最後の盾は、儚く散って、俺に向かっていく。

 

カルム「ハァァァァ!!!」

 

 俺は気合いと共に水流を纏った刃王剣十聖刃で不死鳥に斬りかかる。

 水流の勢いを強めて、炎を消し去っていく。

 キリトは俺の後ろに立ち、俺の体を支えてくれる。

 不死鳥は咆哮を上げたと思ったら、爆発した。

 その爆発に巻き込まれて、俺とキリトは壁に激突する。

 

ケントside

 

 まさか、あの炎の矢を凌ぎ切るなんて!

 だが、至近距離で爆発を食らったカルムとキリトは、壁に激突し、窪みを作る。

 

ユージオ「キリト!」

ケント「カルム!」

 

 2人に向かって叫ぶが、2人は激突しながらも、叫ぶ。

 

キリト「止まるな!」

カルム「ケント!ユージオ!」

 

 俺とユージオは、刹那の逡巡を捨て、整合騎士に向かって駆け出す。

 2人が作ってくれた千載一遇の好機を、無駄にするわけにはいかない!

 水流と炎がぶつかった結果、辺り一体に煙が立ち込めていた。

 俺とユージオは、その煙から飛び出すようにして、騎士に向かっていく。

 整合騎士の顔にも、少なからずの驚愕の気配が感じられた。

 

「「ハァァァァ!!!」」

???「舐めるな小僧ども!」

 

 そう言って、拳に炎を纏わせていた。

 …………どうする!?

 すると、以前カルムとキリトに言われた言葉が脳裏をよぎる。

 

キリト『この世界では、剣に何を込めるのかが重要なんだ。』

カルム『その想いを剣に込めろ。俺やキリトだって、1人だったら、ここまで強くはない。2人が居たからこそだ。2人の守りたい者の為に、その剣を振れば十分だと思うよ。』

 

 そうだ………。

 今の俺には、確固たる目標がある。

 記憶を奪われ、整合騎士に変えられてしまったイーディスを取り戻す。

 俺に大切なのは、それだけだ。

 今度こそイーディスを助ける!

 だから、頼む、雷鳴剣黄雷、力を貸してくれ。

 俺が、前に進む為に!

 

「「ハァァァァ!!!」」

 

 俺たちは気合いと共に、バーチカルを放ち、騎士は、二本の剣を弓の持ち手部分で受け止める。

 しばらくは拮抗していたが、熾焔弓の炎が、俺たちの剣に回り始める。

 

ユージオ「ぐっ………!グゥゥゥゥ!!」

ケント「グゥゥゥゥ!!」

 

 このままでは、秘奥義が強制終了し、殴られてしまう。

 大図書室で見た雷鳴剣黄雷の記憶によれば、三つの首の番犬と、針を纏うネズミ、ランプの魔神が合わさったもので、三つの首の番犬は、どんな攻撃にも怯まなかったという。

 

ユージオ「こんな炎なんかに……!」

ケント「負けるなァァ!!」

 

 すると、青薔薇の剣と雷鳴剣黄雷は、その叫びに応えたのか、氷と雷を出して、弓ごと奴の腕を凍らせ、痺れさせる。

 

???「何っ!?」

「「ハァァァァ!!」」

 

 熾焔弓を弾き、奴も体を痺れさせたまま、後ろへと吹き飛ぶ。

 俺たちは、《秘奥義連携》で秘奥義……バーチカル・アークを発動させる。

 一撃目は、奴の体を浅く当たった。

 だが…………。

 

ユージオ「逃さない!」

ケント「ハァァァァ!!」

???「ぬおおおぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 二撃目が奴に命中して、体に二つの傷が残る。

 そして、奴は膝をついた。

 

カルムside

 

 2人の攻撃を喰らった騎士は、もうまともに動けないようだな。

 

キリト「カルム………。アイツら。」

カルム「ああ。すごいな。」

 

 刃王剣十聖刃を見ると、水流は収まっていて、ただ、そこに置かれていた。

 俺は刃王剣十聖刃を鞘に納刀して、キリトと共にケントとユージオの元へ。

 

ユージオ「キリト!カルム!」

ケント「大丈夫なのか?」

キリト「大丈夫だ。」

カルム「俺は、ちょっと火傷したくらい。」

 

 騎士と向き合っていたケントとユージオが心配そうな声をかけてくるが、大丈夫だと答える。

 すると、騎士は、掠れているが、威厳は失われていない声を出す。

 

???「………氷の小僧に雷の小僧。最初に使った秘奥義の名は、何だ………?」

ユージオ「アインクラッド流剣術、二連撃技、《バーチカル・アーク》。」

???「二…………連撃技。」

ケント「そうです。」

???「そこの…………紫紺色の貴様が使った武器は、何だ?」

カルム「俺が使ったのは、刃王剣十聖刃に宿っている水勢剣流水って聖剣の力を引き出したんです。」

???「そうか……………。人界の端から端まで………その果てを越えた先までも見てきたつもりでいたが………世にはまだ我の知らぬ剣、知らぬ技があったのだな………。………貴様らの技には、真摯な修練を積み重ねた重みがこもっていた。貴様らが穢れた術によって騎士エルドリエを惑わせたと言ったのは……我の誤りであった………。名を………教えてくれ。」

 

 騎士は、己が間違っていた事を認め、俺たちの名前を聞いてきた。

 俺たちは、順番に答える。

 

ユージオ「………剣士ユージオ。姓は無い。」

ケント「剣士ケント。俺も姓は無い。」

キリト「俺は剣士キリトだ。」

カルム「俺は、剣士カルムだ。」

 

 整合騎士は、俺たちの名前を噛み締めるように頷いて、意外な一言を放つ。

 

???「カセドラル50階。そこは霊光の大回廊と呼ばれる開けた場所になっているのだが、そこに複数の整合騎士が貴殿たちを待ち受けている。生け捕りではなく、天命を消し去れとの命を受けてな。我のように真正面から突撃すれば、刹那の内に息の根を止められるだろう。」

キリト「おい、オッサン!」

カルム「大丈夫なのか!?そんな機密情報を教えて!?」

???「アドミニストレータ様のご下命を完遂できなかった以上、我は騎士の証たる鎧と神器を没収され、無期限の凍結刑となろう。」

カルム「たった一回で………!?」

 

 情け容赦ないな。

 凍結刑というのは、よく分からないが、ただではすまないのは確かだ。

 そして、整合騎士の放った言葉に、俺たちは呆然とする。

 

???「そんな辱めを受けるくらいなら………貴殿らの手で我の天命を断ってくれ。」

「「「「っ!?」」」」

デュソルバート「迷うことはない………。貴殿らは堂々たる剣の技によって我を倒したのだからな。この整合騎士…………デュソルバート・シンセシス・セブンをな。」

ユージオ「デュソルバート…………?」

ケント「シンセシス・セブン…………?」

 

 ユージオとケントが、そう言って、呆然としている。

 すると、2人から、怒りの気配を感じる。

 

カルム「ケント…………?」

キリト「ユージオ…………?」

ユージオ「天命を絶ってくれ…………?」

ケント「堂々たる勝負だったって…………!?」

 

 ユージオとケントは、そう言って、デュソルバートの顔を覗く。

 すると、青薔薇の剣と雷鳴剣黄雷から、氷気と雷が放出される。

 

ユージオ「たった!たった11歳の2人の女の子を鎖で縛り上げて!」

ケント「飛竜でぶら下げて連れ去った奴が!今更そんな口を開くなァァァ!!」

 

 デュソルバートの言葉に激昂したユージオとケントは、それぞれの剣を振り上げ、怒りの咆哮と共に振り下ろそうとしていた。

 だが、デュソルバートが何の抵抗もしようとしなかった事に、2人は動揺して、俺たちはそれぞれの肩に手を置く。

 

ユージオ「何で止めるの………!?」

キリト「このオッサンは、もう戦う気はないよ。そんな相手に、剣を振るっちゃダメだ。」

ケント「コイツは………!幼いイーディスとアリスを連れ去ったんだぞ!」

カルム「……………騎士デュソルバートは、多分その事を覚えていないよ。」

ユージオ「えっ…………?」

キリト「もちろん忘れたわけじゃない………。覚えていられると不都合だから、その記憶を消されたんだ。」

デュソルバート「その二人の言う通りだ。」

 

 カーディナルから聞いた話と整合騎士を生み出す方法から、デュソルバートの記憶が消えた理由を察した俺たちは、そう話す。

 困惑するユージオとケントだが、デュソルバートは肯定して、兜を脱ぐ。

 

デュソルバート「我が………幼き少女を捕縛し、飛竜で連行しただと………?そのようなことをした覚えはない。」

ユージオ「覚えていないのか………!?」

ケント「たった8年前の事なんだぞ……!?」

カルム「騎士デュソルバート。アンタはノーランガルスの北の辺境を守る整合騎士だった。それは間違い無いな?」

デュソルバート「然り………。ノーランガルス北方第7辺境区が我が統括区であった。そう、8年前までは…………そして、我は功績大なりとして、この鎧と共にセントラル・カセドラル警護の任務を与えられた。」

キリト「その功が何か、覚えてるか?」

デュソルバート「………………。」

 

 俺とキリトの質問に、デュソルバートは沈黙する。

 これで裏付けは出来たな。

 

カルム「貴方が答えられないのなら、俺たちが答えます。貴方の功績は、整合騎士、イーディス・シンセシス・テンとアリス・シンセシス・サーティを見出した事だ。」

キリト「アドミニストレータは、アリスとイーディスをこの塔に連行した事をアンタの手柄としながらも、その件に関する記憶を消さなければならなかった。」

カルム「整合騎士には過去が存在しない。何故なら、アドミニストレータにより天界から召喚されたとされているから。大方、そんな風に吹き込まれたんでしょう。」

キリト「整合騎士以前の記憶がないのはそのせいだって納得させるために吹き込んだのはいいが、その話を押し通すためにはアリスとイーディスのことを覚えていたままでは都合が悪かった。」

カルム「他の整合騎士誕生の経緯を覚えられていたら、致命的な矛盾…………自分が連れて来たはずの罪人達が、いきなり仲間になったら、大混乱するのは目に見えるしな。」

デュソルバート「………覚えていない………何もかも…………。」

 

 デュソルバートは、困惑していた。

 やはり、記憶を消されていたんだな。

 キリトは、話を続ける。

 

キリト「あんたはアドミニストレータに大事な記憶を奪われ、代わりに教会への忠誠心を埋め込まれて整合騎士へと仕立て上げられたんだ。あんたは俺たちと同じ人間なんだよ」

デュソルバート「我が、そなた等と同じ人界の民…………?記憶の操作…………?………信じられん。最高司祭陛下が我にそんな術を………。」

カルム「残念ですが、それが真実なんです。よく思い出してください。貴方にも、何かがあるはずです。どんな術を使っても、忘れられない大切な何かが………。」

 

 俺がそう言うと、デュソルバートは目を瞑った。

 しばらくすると、心当たりがあったのか、ポツポツと語り始める。

 

デュソルバート「人界に降り立った頃から何度も同じ夢を見たことがある………。我を揺り起こす小さな手と、その薬指に填められた銀の指輪………。だが、その者の顔を何故か認識することができず、目が覚めるとそこには誰も………くっ…………!」

カルム「それが、貴方にとって、忘れられない思い出という事です。」

キリト「これからどうするかはあんたが決めることだ。アドミニストレータの所に戻って処罰を受けるか、傷を治療して俺たちを追ってくるか…………。それとも……………。」

 

 俺とキリトはそう言って、階段へと向かっていく。

 デュソルバートは、ただ沈黙していた。

 まあ、すぐに答えが出る訳ではないからな。

 

ユージオ「…………っ!?」

ケント「…………。」

 

 ユージオとケントも、それぞれの剣を鞘に納刀して、俺たちの元へ。

 やはり、整合騎士は、被害者なのだ。

 アドミニストレータの掲げる停滞を実現する為の。

 だから、そんな被害者を増やさない為にも、俺たちが、アドミニストレータを倒すのだ。

 




今回はここまでです。
カルムが使った力は、クロスセイバーの、クロス斬りを元にしています。
次回、あの暗殺コンビが登場します。

カルムは心身喪失状態にすべきか

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