ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、ファナティオ戦の直前までです。
オリジナルの整合騎士が1人でます。


第31話 幼き暗殺者にして整合騎士

ケントside

 

 整合騎士、デュソルバート・シンセシス・セブンを打ち破った俺たちは、そのまま階段を登っていく。

 俺とユージオは、激昂の末、デュソルバートを斬ろうとした。

 だが、カルムとキリトがそれを止めた。

 そこで、デュソルバートが、イーディスとアリスに関する記憶がないと知った。

 それが真実なら、受け入れるしかない。

 全ては、最高司祭が行った事で、本来憎むべきは、アドミニストレータだけだとは思う。

 そんな風に思いながら、俺たちは上へと昇る。

 すると、キリトが口を開く。

 

キリト「さて、どれくらい行ったのかな。」

ユージオ「次が29階だよ。」

カルム「随分と上った気がしたんだが、まだまだだなぁ…………。」

ケント「そりゃあ、最上階は100階だぞ。あと30分も上れば、問題の50階だ。」

ユージオ「正面から乗り込むのかい?」

 

 ユージオがそう聞くと、キリトとカルムは階段の段の部分に座る。

 

キリト「そうだなぁ…………。」

カルム「一先ず、それは後にして、腹ごしらえといこうぜ。」

 

 カルムとキリトは、そう言って、懐から饅頭を取り出す。

 恐らく、大図書室から幾つかくすねた物だろうな。

 

ユージオ「いつの間に………。」

ケント「まあ、いただくが。」

 

 俺とユージオは、2人から饅頭を受け取り、口に頬張る。

 本当に、美味しいな。

 

キリト「さっきの2人とおっさんの戦闘をを見た限り、やっぱりアイツらは連続技に慣れてない、と言うより殆ど未経験なんだろうな。」

カルム「一対一の接近戦に持ち込めれば勝機はあると思うけど、敵が複数な上に準備万端に待ち構えてるんじゃ、それも難しいな。」

ユージオ「じゃあ、正面から行くのはやめて、他の道を探す?」

キリト「それもどうかなぁ。この大階段が唯一の通路だって、カーディナルとユーリが断言してたしな。」

カルム「それに、仮に抜け道が見つかっても、挟み撃ちになる危険が残る。50階に居る騎士は、奥の手を使ってでも倒しておきたい。」

ケント「そうか………武装完全支配術……!」

 

 俺の得心がいった言葉に、キリトとカルムの2人は頷く。

 

キリト「ぶっつけ本番で使うのは不安だけど、こんな所で試し撃ちする余裕もないしな。」

カルム「50階に突入すると同時に、先制で武装完全支配術を叩き込んで、無力化しよう。」

ユージオ「あー、その事なんだけど、キリト、カルム。」

ケント「俺たちの武装完全支配術は、大威力の直接攻撃じゃない。」

キリト「え………そうなの?」

カルム「そうなのか?」

 

 キリトとカルムは、俺たちを驚いた表情で見てくる。

 

ユージオ「だって、術式を書いてくれたのはカーディナルさんだし………。」

ケント「そりゃ、どんな技にするか思い描いたのは俺だけど………。」

キリト「まあ、2人の武装完全支配術がどんなのか見せてくれよ。」

カルム「俺にも見せてくれ。」

 

 俺とユージオは、武装完全支配術の術式が書かれた羊皮紙を2人に渡す。

 俺の武装完全支配術は、3種類あり、1つは、3つの首の番犬が放つ鎖で敵を拘束する物で、2つ目は、針を飛ばして攻撃する物で、3つ目は、魔法の絨毯を召喚して、雷鳴剣黄雷から雷を放つ物だ。

 これは、雷鳴剣黄雷に宿っている3つの記憶を、少しずつ解放するからだ。

 羊皮紙を見た2人は、頷いていた。

 

キリト「…………なるほどな。確かに攻撃的な技じゃないが、でも使い方次第じゃ十分役に立ちそうだぞ。」

カルム「うん。俺たちの武装完全支配術と相性が良さそうだ。」

ユージオ「そういえば、カルムはともかく、キリトの武装完全支配術はどうなんだい?」

ケント「そうだな。カルムの場合は、複数の聖剣の力を引き出す感じだろうしな。」

カルム「ま、まあな…………。」

キリト「それは見てのお楽しみだ。」

 

 そんな風に話しながら、俺たちは上へと昇るのを再開しようとするが、視線を感じて上を向くと、誰かいた。

 すると、カルムが尋ねる。

 

カルム「君達……………誰?」

 

 カルムが尋ねると、二つの顔はそれぞれ見合わせて、同時に頷いてから、おずおずとその全身を露わにした。

 

ユージオ「こ、子供…………?」

ケント「みたいだな…………。」

 

 そう、そこに居たのは、修道服と思われる服を着た、2人の少女だ。

 すると、片方が声を出す。

 

フィゼル「あの………!あたし、じゃない……私は公理教会修道女見習いのフィゼルです。」

 

 金色のショートカットの薄い青色の瞳の少女………フィゼルと名乗った修道女はそう自己紹介をした。

 そして、隣に立っているもう一人の少女についても紹介を始めた。

 

フィゼル「こっちが同じく修道女見習いの………。」

リネル「リ、リネルです………。」

 

 気弱そうな自己紹介をしたリネルという修道女は薄いクリーム色の二つに分かれたおさげ髪に灰色の瞳が特徴的な少女だった。

 そんな自己紹介をされ、なんと答えればいいのか俺たちが困っていると、フィゼルがこちらへと近寄ろうとしていた。

 

フィゼル「あの………。ダークテリトリーからの侵入者っていうのは、皆さんの事ですか?」

ユージオ「は…………?」

ケント「えっと…………。」

 

 思わずユージオ、カルム、キリトの3人と顔を見合わせる。

 どうしたものかと考えていると、カルムとキリトは、俺たちの後ろに引っ込む。

 

キリト「子供、苦手なんだよ。」

カルム「2人に任せる。」

ユージオ「ずるいぞ!」

ケント「何でだ!」

 

 俺とユージオは2人に向かってそう囁き返すのだが、2人はそそくさと後ろに引っ込む。

 しょうがないと思い、対応する事に。

 

ユージオ「え…………えっと、その………僕らとしては人界人のつもりだけど………。」

ケント「…………侵入者というのは、あながち間違いではないな………。」

 

 そう言うと、リネルとフィゼルは、額を寄せ合って、ひそひそと話しだす。

 

フィゼル「何よ、見た目は全然普通の人間じゃないのよ、ネル。角も尻尾もないわよ。」

リネル「わ、私は本でそう書いてあるって言っただけですよぅ。早とちりしたのはゼルの方です。」

 

 そう話す2人に、埒が明かないと思い、声をかける事に。

 

ユージオ「あの………君たち。」

ケント「俺たちと話していると、怒られるんじゃないのか?」

 

 そう言うと、フィゼルの方が、少々得意げに答える。

 

フィゼル「今日は朝から、全修道士、修道女と見習いは私室の扉に鍵を掛けて、外に出ないように命令が出てるのよ。ってことは、侵入者を見物に行っても、誰にもそれがバレる心配はない道理じゃないの。…………人間よ。」

リネル「人間ですね。」

 

 そんな事を聞くと、キリトの言い訳みたいに聞こえるな。

 すると、リネルの方が、どうしてそう思ったのかを話す。

 

リネル「投獄されていた筈なのに、鋼鉄の鎖を引き千切って脱出して、しかも二人の整合騎士を倒したんですよね?てっきり闇の化物か、もしかしたら本物の暗黒騎士が攻めてきたのかと思って待ってたんですけどね………。」

ケント「暗黒騎士ではないのは、確かだな。」

 

 そんな風に言って、俺は困惑する。

 すると、リネルが更に近づく。

 

リネル「最期にお名前を教えてもらっていいですか?」

ユージオ「僕はユージオ。後ろの黒髪が、キリトだよ。」

ケント「俺はケント。後ろの青髪の奴が、カルムだ。」

リネル「ふーん………性はないんですか?」

ケント「ああ。開拓民の子供だからな……。」

ユージオ「もしかして、君たちも?」

リネル「いえ、私たちにはありますよ。」

 

 そう言うとリネルは、にっこりと笑って、こっちに近づく。

 すると、俺の腹部に、ひんやりとした冷気を感じて、視線を下げると、小剣が、腹部に刺さっていた。

 ユージオの方を見ると、既に刺されていたようだ。

 

リネル「私の名前は、リネル・シンセシス・トゥエニエイトです。」

ケント「整合騎士………!?」

キリト「ユー………!」

カルム「ケン………!」

 

 カルムとキリトが、叫ぼうとするが、フィゼルが既に、キリトを刺し、カルムに短剣を刺していた。

 

フィゼル「…………で、あたしがフィゼル・シンセシス・トゥエニナイン。」

 

 すると、体が痺れる。

 

ケント(毒か…………!)

 

 俺たちの体から、力が抜けてしまい、地面に倒れ伏す。

 

リネル「そんなに怖がらなくて良いですよ。ユージオさん、ケントさん。」

 

 俺たちは、リネルとフィゼルの2人に引き摺られながら、上へと上っていた。

 

リネル「ただの麻痺毒です。尤も、ここで死ぬか、50階で死ぬかの違いですが。」

 

 その言う通りで、麻痺毒が全身に回った結果、あらゆる感覚が消えていた。

 くそ…………!

 

リネル「不思議に思ってますよね?どうしてこんな子供が整合騎士になれたのか、って。」

 

 そう言って、リネルが語り出したのは、途轍もなく恐ろしい事だった。

 リネル曰く、2人はカセドラルで育ったらしく、アドミニストレータが、塔内の修道士と修道女に命じて作らせたらしい。

 その目的は、完全に失われた天命を回復させる、蘇生神聖術の実験の為に。

 途中から、フィゼルも発言しだしたが、その声は朗らかだった。

 何で、そんな恐ろしい事を、そんな風に言えるんだ。

 実験は中々上手く行かなかったらしく、最終的に諦めたらしい。

 

リネル「…………でも、完全な蘇生は不可能だったみたいで、私たちが8歳の頃に、蘇生術の実験は中止にしたんです。その頃には、もう30人いた仲間たちも、私とゼルだけになりました。」

 

 つまり、そんな悍ましい実験を続けた結果、リネルとフィゼルだけしか生き残らなかったという事か………!

 嘘だろ…………!?

 その後、アドミニストレータから、新たな天職を選べと言われた際に、整合騎士と答え、その時の新米の整合騎士の、カルドとジャレドという整合騎士を殺し、その座に特例で入ったそうだ。

 

リネル「…………でも、他の騎士みたいに防衛任務に就くには勉強が足りないからって、修道女見習いとしてもう2年も法律とか神聖術とか教わってるんですけど………正直、うんざりなんです。」

フィゼル「どうすれば早いとこ飛竜と神器が貰えるかってあれこれ相談してたら、カセドラルにダークテリトリーの手先が侵入したって警報が流れてさ。他の騎士より早く侵入者を捕まえて処刑すれば、アドミニストレータ様もあたし達を正式な騎士にしてくれるって思って、階段で待ってたのよ。」

リネル「ごめんなさい、毒なんか使って。でも、なるべくユージオさん達を生かしたまま50階まで持っていきたかったものですから………。あ、安心して下さい。私たち、殺すの凄い上手いですから、痛くないですよ。」

 

 それは、安心できる要素がない。

 何とか脱出法を考えたいが、俺は、2人の言葉に呆然とする事しかできなかった。

 しばらくすると、目的地に着いたようで、扉が開かれて、放り投げられる。

 すると、恐ろしく広い空間が目に入る。

 回廊の中心部には、6人の整合騎士が待ち構えていた。

 等間隔に並んで4人いて、2人が前にいる。

 後ろの4人は、全く同じ形の鎧を着けていて、大剣を持っていた。

 前にいる2人は、1人は薄紫色の鎧で、もう1人は、臙脂色の鎧だった。

 両方とも、兜を被り、少し華奢な感じだった。

 すると、リネルが声を出す。

 

リネル「…………そこにいらっしゃるのは、四旋剣の皆様に、副騎士長のファナティオ・シンセシス・ツー殿に、その補佐のレイカ・シンセシス・フォー殿ですね。」

フィゼル「《天穿剣》のファナティオ殿と《煙叡剣狼煙》のレイカ殿がわざわざお出ましとは、元老もよっぽど慌てているようですね。」

 

 リネルとフィゼルの言葉を聞いた、ファナティオとレイカという整合騎士は、人間味を感じさせないくぐもった響きだが、ある種のに苛立たしさを感じさせる言葉を出す。

 

ファナティオ「………見習いの子供が、なぜ名誉ある騎士の戦場にいるのだ。」

レイカ「下がれ。貴様らはここに居てはいけないのだ。」

フィゼル「あは、くーっだらなぁい!戦いに名誉とか格式とか持ち込むから、一騎当千の整合騎士様が二度も負けるんだよーだ。でも安心していいわよ、騎士様がこれ以上醜態を晒さなくて済むように、あたし達が侵入者を捕まえてきてあげたから!」

リネル「これから、私たちが侵入者さんの首を落としますから、よく見てちゃんと最高司祭様に報告してくださいね。まさか、名誉ある整合騎士様が、手柄を横取りするような真似はしないと思いますけどね。」

 

 そう言って、2人は憎しみと蔑みを視線に乗せて整合騎士達を睨み、6人の騎士達は、苛立ちを込めて子供を見返す。

 だが、なぜそこまで憎むんだ。

 俺たちを前にしてさえ、2人は単なる好奇心しか見せなかったというのに。

 すると、黒衣と紫紺色の人影が、短剣を抜き取り、キリトはリネルを、カルムはフィゼルを短剣で斬りつける。

 

リネル「なんで………!」

フィゼル「動け………!」

 

 2人はそう言って、倒れる。

 

カルムside

 

 全く、立ててた作戦が全部台無しになっちゃったよ。

 俺たちは、あの2人を怪しいと見て、毒素分解術を唱えていたのだ。

 俺たちは、2人の修道衣を探り、解毒剤を見つけ出す。

 やっぱり、解毒剤は持ってたか。

 俺とキリトは、ケントとユージオに、その解毒剤を飲ませる。

 そして、2人に新たに立てた作戦を伝える。

 

キリト「麻痺は数分で解ける。口が動くようになったら、騎士達に気付かれないように、武装完全支配術の詠唱を始めるんだ。」

カルム「2人は、準備ができたら、そのまま保持して、俺たちの合図を待ってくれ。」

 

 さて、次はこの子供どもだ。

 一応、あの整合騎士達を相手に、猶予を求めるとするか。

 

カルム「剣士カルム、ならびに剣士キリト、ならびに剣士ユージオ、ならびに剣士ケント、横臥して見えた非礼を深く詫びる!非礼ついでに今しばし、我らの不名誉を雪ぐ猶予を与えられし!その後、存分に剣を交えさせていただくが如何に!」

 

 俺がそう叫ぶと、ファナティオとレイカという整合騎士は、堂々たる声音で返答する。

 

ファナティオ「整合騎士第2位、ファナティオ・シンセシス・ツーである!」

レイカ「同じく、整合騎士、レイカ・シンセシス・フォー。」

ファナティオ「咎人よ、我らが神器には一抹の憐憫すらもあり得ぬ故、言うべきことがあるのなら、この剣が鞘にあるうちに言うが良い!」

 

 どうやら、猶予はくれるみたいだな。

 そして、片方が、煙叡剣狼煙を使っている整合騎士という事か。

 すると、キリトが近づいてきて。

 

キリト「お前、律儀だな。」

カルム「そういうもんだろ。」

 

 キリトの突っ込みに、俺はそう返して、リネルとフィゼルに向き合う。

 

キリト「…………不思議に思ってるだろう。どうして俺たちが動けたか。」

カルム「君たち、口を滑らせたね。全修道士と修道女は部屋から出ないよう命令されてるって。カセドラルの中に、命令を破る奴がいるはずがない。」

キリト「なら、命令に従わないお前達は、本物の修道女見習いじゃないって事だ。」

 

 俺たちは、激怒していた。

 あんなに笑顔で人を殺すなんて、絶対に許されない。

 それでは、ラフコフの面子となんら変わらないからな。

 俺たちは、それが許せない。

 だが、コイツらも、整合騎士と同じく、被害者ともいえるのだ。

 だから、一概にも、コイツらが悪いとは言い切れない。

 

キリト「それに、お前達の腰にある鞘。それは南方の《紅玉樫》製だな。《ルベリルの毒鋼》で作られた剣に触れても唯一腐らない素材だ。」

カルム「ただの修道女見習いが、そんな物騒な物を持ってるはずがない。だから、俺たちは毒素分解術を予め唱えていたんだ。分解が完了するのに、少し時間がかかったけどね。」

キリト「剣の速さだけが強さじゃないぞ。つまるところ、お前たちが愚かだって事だ。」

カルム「うん。ここで死ぬのが、仕方ないくらいにね。」

 

 俺たちはそう冷たく言い放ち、それぞれの短剣を、2人の眼前の床に向かって刺す。

 2人は、唖然としていた。

 

キリト「でも、お前達は殺さない。」

カルム「その代わり、よく見てろ。君たちが馬鹿にした整合騎士が、どれだけ強いのか。」

 

 俺たちは、リネルとフィゼルをその場に放置して、前に出る。

 キリトは黒い剣を、俺は刃王剣十聖刃を抜刀する。

 すると、相手も、剣を抜刀する。

 

キリト「待たせたな、騎士ファナティオに騎士レイカ!」

カルム「剣士カルムに剣士キリト。」

「「参る!!」」

 

 俺たちは、そう言いながら、飛び出していく。

 そうして、副騎士長とその補佐との戦いが幕を開ける。

 




今回はここまでです。
遂に、煙叡剣狼煙の担い手が現れる!
キリトはファナティオに、カルムはレイカに戦いを挑みます。
リバイスも、もしかしたらヒロミさんが復活する気配がしますね。
狩崎さんが変身するデモンズも、強かったですね。

カルムは心身喪失状態にすべきか

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