ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、雲上庭園に入る直前までです。


第33話 昇降係

ケントside

 

 カルムとキリトが、武装完全支配術を使って、ファナティオとレイカの2人を撃破した直後、倒れてしまった。

 

ユージオ「キリト!」

ケント「カルム!」

 

 俺たちはすぐさま2人に近寄り、2人の傷に、手をかざす。

 

「「システム・コール!ジェネレート・ルミナス・エレメント!!」」

 

 俺とユージオは、すぐに光素を生成して、2人の傷を塞ぐ。

 だが、2人は未だに目を覚まさない。

 ユージオの青薔薇が、神聖力を大量に放出しているのもあり、神聖力に関しては、特に問題はない。

 しかし、失われた天命の回復は、俺たちに使える程度の神聖術では無理だ。

 そこで、とある神聖術を使う。

 

「「システム・コール!トランスファー・ヒューマンユニット・デュラビリティ、セルフ・トゥ・レフト!!」」

 

 以前、セルカとメアリが使った神聖術を使う。

 思い返せば、デュソルバートと戦った時も、今回も、俺たちは特に負傷しておらず、カルムとキリトばかりが負傷している。

 借りを返すなら、今だろう。

 体感的に、半分くらい天命を渡した所で、2人が目を覚ました。

 

カルムside

 

 気絶してすぐ、何かが流し込まれるような感覚がして、目を覚ますと、俺にはケントが、キリトにはユージオが天命を流し込んでいた。

 流石に、やめさせる。

 

キリト「………ありがとう、ユージオ、ケント。」

カルム「俺たちはもう大丈夫だ。」

ユージオ「無理するなよ!」

ケント「ああ!それだけやられれば、外からは見えない傷が残ってるはずだ!」

キリト「ゴブリン連中にやられた時よりマシだよ。」

カルム「それより、ファナティオとレイカの2人が心配だ。」

 

 俺たちが、ファナティオとレイカの2人を心配するような視線を向けると、ケントとユージオは、眉を顰めていた。

 

ユージオ「………キリト………カルム………。アイツらは…………2人を、殺そうとしたんだよ………。」

ケント「憎しみじゃ勝てない。………カルムとキリトは、そう言ったよな。確かに、あの2人は、個人的な恨みとか憎しみとか、そんな次元で戦っていないのは分かる………。」

ユージオ「でも………でも僕は、やっぱり教会と整合騎士を許せないよ。」

ケント「物凄い強さだけじゃなくて、あんな志を………人界に暮らす人たちを守る心を持ってるのなら、どうしてその力を、もっと………。」

 

 2人の言いたい事は痛いほど伝わってくる。

 そんな思いを吐露する2人に、俺たちは口を開く。

 

キリト「あいつらだって…………多分、あいつらなりの迷いの中にいるんだ。騎士長って奴に会えば、もう少しその辺の事情って奴も分かるだろう。」

カルム「それに、憎しみは、また違う憎しみを生んでしまい、それは連鎖してしまう。その連鎖は、難しくても、断ち切るに限る。」

 

 それは、ラフィン・コフィンがいい例だ。

 SAOで生まれた悪意は、GGOにまで連鎖してしまった。

 それによって、3人の命が奪われている。

 だから、そんな悪意の連鎖は、防がないといけない。

 

キリト「ユージオ、ケント。お前達の完全支配術は凄かった。あの騎士達に勝ったのは、お前たち2人だ。」

カルム「だからもう、人間としてのファナティオやレイカ、四旋剣の騎士たちまでを憎む必要はないよ。」

ユージオ「人間…………。うん………そうだね。戦ってる時に、それだけは分かった。」

ケント「あの人たちは人間だった。だからあんなに強かったんだ。」

 

 俺とキリトは、その言葉を聞きつつ、それぞれの剣を納刀する。

 

キリト「アイツらは、自分たちのことを絶対の善と言い、お前にとっては絶対の悪だったんだろうけどさ、俺たちもアイツらも生身の人間なんだ。」

カルム「そうだな。そんな、絶対の善悪なんてもの、人間には決められないんだと、俺は思うよ。」

 

 俺とキリトは、ファナティオとレイカの2人の元に行く前に、ユージオとケントに解毒薬を渡して、リネルとフィゼルの毒を抜くように頼む。

 だが、その時に、ケントの呟きが聞こえたような気がした。

 

ケント「…………キリト、カルム。お前たちは、最高司祭アドミニストレータに対しても、そんな風に思えるのか?」

 

 俺たちは早く、ファナティオとレイカの元に向かうが、傷が酷かった。

 武装完全支配術の攻撃を直にくらったのだ。

 早く治さないと………!

 

「「システム・コール!ジェネレート・ルミナス・エレメント!!」」

 

 即座に光素を生成して、傷口に当てるが、血が止まらない。

 すると、ユージオとケントもやってくる。

 

ユージオ「キリト!」

ケント「カルム!」

キリト「手伝ってくれ!血が止まらないんだ!」

カルム「ケントは、俺の方を手伝ってくれ!」

ユージオ「あ………ああ。」

ケント「分かった…………。」

 

 ユージオとケントも、手伝ってくれたのだが、止血出来ない。

 このままでは、神聖力が尽きてしまい、この2人の命も尽きてしまう。

 

ユージオ「無理だよ、2人とも。」

ケント「出血が多すぎる。」

キリト「分かってる!でも………この人達は、死んだら消えてしまうんだ!」

カルム「ああ!100年以上も生きて………迷って、恋して、苦しんで!そんな魂を消してはいけないんだ!!」

 

 ユージオとケントは、戸惑ったが、俺たちは無視して、絶叫する。

 

キリト「聞こえるか!騎士長!アンタの副官とその補佐達が死んじまうぞ!元老長とやらでもいい!聞こえてたら、降りてきて助けろよ!!」

カルム「誰でもいい………!まだいるんだろう、整合騎士!仲間を助けに来いよ!司祭でも、修道士でも………誰か来てくれよ!!頼むよ………誰か………来てくれよ!!」

 

 そんな風に絶叫するが、誰も答えない。

 このままじゃ、この整合騎士達が、死んでしまう。

 すると、とあるアイデアが浮かんで、胸元からカーディナルから受け取った短剣を取り出す。

 キリトも、取り出していた。

 すると、ユージオとケントが止める。

 

ユージオ「ダメだよ、キリト、カルム!」

ケント「その短剣は、アドミニストレータに刺すものだろう!?」

キリト「分かってる!」

カルム「でも、助けられる手段があるのに、それを使わないなんて、俺はごめんだ!!」

 

 その言葉に、ユージオとケントは何も言えなくなっていた。

 俺とキリトは、短剣をレイカとファナティオの右手に刺す。

 すると、短剣が分解されて、2人の体が紫色の光に包まれた。

 更に、カーディナルの声がする。

 

カーディナル『やれやれ………。仕方のない奴らじゃのう。』

キリト「カーディナル………アンタか!?」

カルム「カーディナル………すまない……。」

カーディナル『今更謝るな。状況は理解しておる。ファナティオ・シンセシス・ツーとレイカ・シンセシス・フォーの治療は引き受けよう。しかし完全修復には時間が掛かる故、身柄をこちらに引き取るぞ。』

 

 その言葉と共に、レイカとファナティオが宙に浮かび、そのまま消える。

 2人の整合騎士が消えたと同時に、四つの瓶が実体化して、床に落ちる。

 カーディナルの声が聞こえてくるが、その音量は徐々に小さくなっていく。

 

カーディナル『もう蟲共に気づかれておる故、手短に伝えるぞ。状況から把握して、アドミニストレータは現在、非覚醒状態にある。あやつが目を覚ます前に最上階に辿り着ければ、短剣を使わずとも排除が可能だ。急げ………。残る整合騎士は僅かだ………。』

 

 そう言って、カーディナルの声は聞こえなくなった。

 俺とキリトは2本ずつ取って、片方をケントとユージオに渡す。

 

キリト「取り乱して悪かった。」

ユージオ「いや………謝る事じゃないよ。」

ケント「それにしても、お前達が取り乱すなんて、少し驚いたな。」

カルム「そうか。」

 

 俺たちは、カーディナルが送ってきた瓶の中身を飲むと、傷が塞がっていき、天命が回復していくのを感じた。

 

ユージオ「凄いな………。」

ケント「どうせなら、1人一本ずつじゃなくて、もっとたくさん送ってくれればよかったのにな。」

キリト「これだけ高優先度の代物をデー………術式化して転送するには時間がかかるんだろうさ。」

カルム「むしろ、よくあんな短時間で…………うわっ!?」

 

 俺は、ユージオとケントの靴の所に、虫が乗っかっているのを見て、素っ頓狂な声を上げてしまう。

 それにキリトも気づいたようだ。

 

ユージオ「な、何だよ急に?」

キリト「ユ、ユージオ…………動くな。」

カルム「ケントも、下を見ない方が良いぞ。」

ケント「はあ?」

 

 そう言って、2人が足元を見ると、虫を見た様で、激しく足踏みをする。

 その時に、虫は落ちたが、2人の足元をうろちょろする。

 2人は垂直跳びを何度かしていると、虫を踏んづけたみたいで、俺とキリトは、2人から少し離れる。

 すると、2人は絶叫する。

 

ユージオ「おい!………おおい!」

ケント「どっか行くな!」

キリト「ごめん、俺、そういうのちょっと苦手なんだよ。」

ユージオ「僕だって苦手だよすっごく!」

カルム「ほら、そういう虫って、大抵、1匹死ぬと大量に集まってくるお約束じゃん。」

ケント「嫌なことを言うな!」

 

 すると、ユージオとケントが踏みつけた虫は、神聖力となって、消えていった。

 俺とキリトは、2人の元に戻る。

 

キリト「…………なるほどな。今のが、アドミニストレータがカーディナル捜索用に放った使い魔って事か。」

カルム「大方、さっきの図書室との通路を嗅ぎつけたって事だな。」

「「…………………。」」

 

 俺とキリトが真面目に推察していると、2人から、恨みがこもった視線が向けられる。

 すまんな、俺はああいうのは苦手だ。

 

ユージオ「じゃあ………この塔には、さっきみたいな奴が沢山彷徨いてるって事?でも、今まであんなの見た事無かったよ。」

キリト「ほら、バラ園から図書館に逃げ込んだ時、扉の向こうでカサカサ言ってたろ?普段は隠れるのが上手いんだろうさ、だからって、探して回るのはごめんだけどな。それに………カーディナルが妙な事言ってたな………。アドミニストレータが非覚醒、とか何とか………。」

ケント「ああ、そう言えば………。それはつまり、寝てるという事か?こんな昼間に?」

カルム「………カーディナル曰く、アドミニストレータや整合騎士は、数百年も生きてる代償として色々無理をしているってさ。特にアドミニストレータは、1日の殆どを寝て過ごしてるらしいけど………まあ、上に登れば自ずと分かってくるか。」

 

 その後、ユージオとケントに、変な虫が居ないかを確認してもらい、俺たちは入ってきた方向とは逆の扉へと進んでいく。

 まあ、四旋剣とリネルとフィゼルは放置でも大丈夫か。

 扉を開けて、中に入っていくと、階段が見当たらなかった。

 

ユージオ「か…………階段がないよ。」

ケント「ないな…………。」

キリト「…………な……………。」

カルム「何だこりゃ…………?」

 

 そこにあったのは、大きな円錐形の筒だ。

 どういう事かと首を傾げていると、何か来る気配がする。

 

キリト「おい、何か来るぞ。」

ユージオ「え?」

カルム「まさか、整合騎士か!?」

ケント「気をつけるぞ!」

 

 俺たちは、いつでも抜刀出来る様に、剣の柄に手を乗せる。

 すると、円盤が降りてきて、そこには、1人の少女がいた。

 

少女「お待たせ致しました。」

「「「「…………はい…………?」」」」

少女「何階へのご利用でしょうか?」

ユージオ「何階をって…………。」

ケント「もしかして、君が俺たちを上の階へと連れててくれるのか?」

少女「…………………。」

「「………………ふぅ。」」

 

 ユージオとケントが少女に質問している間に、少女の体を見てみると、特にこれといった武器はないので、警戒を解く。

 

キリト「俺たち…………カセドラルに侵入した、いわゆるお尋ね者なんだけど………。そのエレベー…………じゃない、円盤に乗っけても問題はないの?」

少女「わたくしの仕事はこの昇降盤を動かすことだけでございます。それ以外に如何なる命令も受けておりません。」

カルム「いわゆるエ…………ゴホン………。案内嬢ってことか。それなら、お言葉に甘えて乗せさせてもらうか。」

ユージオ「ちょ、ちょっと………!」

ケント「大丈夫なのか!?」

 

 女性に敵意が無いことを確認した俺たちは、昇降板へと乗るが、ユージオとケントは、未だに警戒していた。

 まあ、リネルとフィゼルの暗殺コンビに騙されたから、気持ちは分からんでもないが。

 

カルム「階段とか見当たらないから、これを使うしか無いだろ。」

ユージオ「それはそうだけど…………。」

ケント「乗るしかないか…………。」

キリト「それじゃあ、行ける一番上の階まで行ってくれ。」

少女「畏まりました。……システム・コール。ジェネレート・エアリアル・エレメント。……バースト・エレメント。」

 

 少女が風素を生成して、解放し、この円盤が上昇する。

 本当に、エレベーターみたいだな。

 まさか、アンダーワールドでエレベーターに乗るとは思わなかった。

 すると、キリトが少女に質問をしていた。

 

キリト「君は、いつからこの仕事をしてるの?」

少女「この天職を頂いてから、今年で107年になります。」

ユージオ「ひゃ…………!?」

ケント「という事は、107年の間ずっと、この円盤を動かしていたのか!?」

少女「ずっと…………ではありません。お昼に食事休憩を頂きますし、勿論、夜は休ませて頂きますから。」

カルム「マジかよ…………!?」

 

 という事は、この少女は、整合騎士と同様に、天命を凍結されたという事か。

 キリトが再び少女に質問をする。

 

キリト「君………名前は?」

少女「…………名前は…………忘れてしまいました。皆様は、私を《昇降係》とお呼びになります。昇降係…………それが私の名前です。」

カルム「そっか…………。(会話が長続きしないな………!)」

 

 沈黙が続いている中、ユージオとケントが口を開く。

 

ユージオ「…………あの………あのさ、僕たち、公理教会の偉い人を倒しに行くんだ。君にこの天職を命じた人を。」

少女「そうですか。」

ケント「もし………教会が無くなって、この天職から解放されたら、君はどうするんだ?」

少女「…………解放…………?」

 

 ケントの一言に、少女は首を傾げる。

 すると、意外な望みが少女の口から出る。

 

少女「私はこの昇降廊以外の世界を知りません。故に新たな天職と言われても決めかねますが…………でも、してみたいことという意味では、あの青い空をこの昇降盤で自由に飛んでみたい。」

「「「「……………………。」」」」

 

 少女の望みに、俺たちは呆然とする。

 しばらくすると、行ける最上階に着く。

 

少女「お待たせしました。80階………『雲上庭園』でございます。」

 

 そう告げ、俺たちが降りたことを確認すると、彼女は再び昇降機で下へと降りていった。

 彼女にお礼も兼ねて手を振って見送っていると、ユージオとケントの2人がぼそりと言葉を漏らした。

 

ユージオ「………僕たちの前の天職も、終わりが見えない事にかけては世界で一番だと思ってたけど…………。」

ケント「歳を取って、斧が振れなくなったら引退出来るだけ、恵まれてたよな、あの子の天職に比べれば………。」

 

 ユージオとケントの漏らした言葉に、俺とキリトは頷く。

 

キリト「天命の自然減少を術式で凍結しても、魂の老化は防げないってカーディナルは言ってたよ。記憶が少しずつ侵されていって、最後には崩壊してしまう、って。」

カルム「公理教会のしてる事は間違ってる。だから俺たちはアドミニストレータを倒す為にここまで来た。でも、それで終わりじゃ無い。本当の難題は、その先にある………。」

ユージオ「え…………?アドミニストレータを倒せば、あとはカーディナルさんに任せれば良いんじゃ無いの?」

ケント「どういう事だ?」

キリト「それは…………この先の話は、アリスとイーディスを取り戻してから話すよ。」

カルム「今は、これからの戦いに集中しないとな。」

 

 そうして、俺たちは、セントラル・カセドラルの80階、雲上庭園の扉を開く。

 そう、例えアドミニストレータを倒しても、その先に待つのは、闇の国の侵攻、そして、カーディナルの、アンダーワールドを虚無に帰す計画。

 俺は、これからの戦いに集中しようとする。

 




今回はここまでです。
次回、アリスとイーディスが再登場です。
ソードアート・オンラインも、アニメが10周年で、プログレッシブの映画、そして、新しいゲームの、ヴァリアント・ショウダウンが発表されましたね。
アンケートを見ると、カルムを心身喪失状態にしないが3分の2で、残りが心身喪失状態にするですね。
アンケートは、しばらく続けます。

カルムは心身喪失状態にすべきか

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