ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、アリスとイーディスとの激突、そして、現実世界で、ミトが何をしているのかです。


第34話 金木犀の騎士と深淵の騎士

カルムside

 

 俺たちが扉を開くと、そこは、雲上庭園の名に恥じぬ、広大な庭園だった。

 

カルム「ここ、本当にカセドラルの中か?」

キリト「ああ…………。」

ユージオ「広い…………。」

ケント「まるで、外の光景と、何ら変わらないな…………。」

 

 そう、本当に、外の光景と何ら変わらないのだ。

 奥に向かって、緩やかな斜面で構成された丘があり、その先には、金木犀の木が生えていた。

 こうして立ち止まっても埒があかないので、俺たちは先へと進む。

 金木犀の木が大きく見える所まで来ると、ユージオとケントが気がついた。

 

ユージオ「あっ…………ああ………!」

「「………………。」」

ケント「イーディス………アリス………!」

 

 そう、2人の視線の先には、イーディスとアリスが居た。

 俺は周囲を見渡して、あの2人以外の整合騎士が潜んでいないか、確認する。

 見たところ、あの2人以外に整合騎士は潜んでいないようだな。

 俺とキリトは、ユージオとケントの2人に声をかける。

 

キリト「お前らは戦うな、ユージオ、ケント。カーディナルの短剣を、確実に2人に刺す事だけを考えろ。」

カルム「あの2人の攻撃は、俺たちが体を張って止めてみせるよ。」

ユージオ「ごめん………。」

ケント「すまない………。」

キリト「謝らなくていいぞ。」

カルム「すぐに倍にして返してもらうよ。」

 

 俺たちがそう話している。

 すると、アリスが声を出す。

 

アリス「もう少しだけ待ってください………。せっかくの良い天気だから、この子にたっぷり日を浴びさせてあげたいのです。」

カルム(この子…………あの金木犀の事か?)

イーディス「まさか、ここまで来るとはねぇ。まあ、退屈してたからいいけど。」

 

 イーディスは、アリスに対する態度で喋るのだが、こちらに対して、闘気を隠していない。

 まあ、当然か。

 

イーディス「まさか、あの副騎士長とその補佐まで倒すなんてね。」

アリス「お待たせしました。」

 

 どうやら、向こうは通す気ゼロだな。

 それもそうだな。

 

アリス「まさかとは思っていましたが、ここまで登ってくるとは思ってもみませんでした。万が一、地下牢から逃げ出したとしても、エルドリエ一人で対処できると私は判断していました。しかし、まともな武器もない筈なのに貴方たちはエルドリエを倒し、幾多の整合騎士たちをも切り伏せて、この雲上庭園の土を踏んだ。」

イーディス「常人ならとてもじゃないけどありえない話だよ。どうして、そこまでしてカセドラルの最上階………最高司祭様の元へと向かおうとするのかな?」

カルム「言ったら通すのか?」

イーディス「その答えは否だよ。」

 

 ですよね。

 俺たちは、少しずつイーディスとアリスの2人に近づいていく。

 

アリス「いったいなぜ、人界の平穏を揺るがす挙に及ぶのです?お前達が整合騎士を一人傷つける度に、闇の勢力に対する備えが大きく損なわれてることが、どうして理解出来ないのですか?」

イーディス「まあ、それは、剣をぶつけてみれば分かるでしょ。」

アリス「それもそうですね。これ以上、口で何を言っても無駄のようですし………。ここで貴方たちの天命を断ち、その蛮行を終わりにしてあげましょう。」

 

 アリスはそう言って、金木犀へと手を当てる。

 俺は、嫌な予感がして、キリト達に突撃をやめさせる。

 

カルム「皆、突進するなよ。」

キリト「何でだよ?アリスの方は、剣を持ってないんだぜ。」

カルム「多分だけど、剣はある。」

 

 その言葉を証明するかのように、金木犀の木が金色の光を放ち、剣として顕現する。

 

キリト「…………カルムの言う通りだな。」

カルム「迂闊に突進してたら、多分、やられてたと思う。」

 

 やっぱり、あの子が指すものは、あの金木犀だったのか。

 突進してなくて正解だったな。

 教えてくれるかは分からないが、聞いてみる事にしよう。

 

カルム「僭越ながら、お聞きしたい。先ほどの金木犀の木が、騎士アリスの神器の元になった物ですか?」

アリス「………いいでしょう。冥土への手土産として、教えましょう。この神器の元となった木………セントラル・カセドラルが立つこの場所は、遥かなる古の時代、創生神ステイシアによって人間に与えられた始まりの地でした。」

 

 なるほど、カーディナルが言ってた、始まりの4人が居た村の事か。

 そう納得する中、アリスの説明は続く。

 

アリス「小さな村の中央には美しい水が涌き、岸辺には一本の金木犀の木が生えていたそうです。その木こそが我が神器………『金木犀の剣』の原型。神の創りたもうた木の転生した姿………人界の神羅万象の中で最も古き存在なのです。そして、その属性は永劫不朽…………。舞い散る花弁の一枚ですら、触れた石壁を割り、地を穿つのです。」

キリト「………なるほどな。創生神様が最初に作った破壊不能オブジェクトってわけか。」

カルム「それで…………隣のあんたはどんな神器を使うんだ?」

イーディス「お?聞くねぇ。まあ良いわ、教えてあげる。私の闇斬剣は、ソルスの光が一才届かない湖底の岩から生まれたのよ。その剣の属性は闇の剣。誰にも触れる事は出来ない。」

 

 なるほどな。

 まあ、闇の剣といえば、こっちにも、闇黒剣月闇があるのだが。

 なら、光剛剣最光の力を引き出すべきか?

 そんな事を考えながら、キリトはアリスの目の前に、俺はイーディスの目の前に立つ。

 

イーディス「へぇ………。私の相手は、君なんだね。」

カルム「悪いけど、手加減する義理はない。勝たせて貰うよ。」

イーディス「言ってくれるじゃない………!」

 

 俺とイーディスは、その言葉と共に、お互いに駆け出していく。

 そして、刃王剣十聖刃と闇斬剣をぶつける。

 

イーディス「へぇぇ………!少しはやるじゃないの………!」

カルム「そっちもな………!」

イーディス「じゃあ、こっちも早速本気を出そうかな!」

カルム「!?」

イーディス「エンハンス・アーマメント!」

 

 まさか、武装完全支配術か!?

 どんな大技が来るかと警戒していたが、突然、闇斬剣が刃王剣十聖刃をすり抜け、こちらに向かってくる。

 俺は咄嗟に、躱して、少し離れる。

 

イーディス「へぇぇ………。まさか、あの一瞬で性質を見抜いて、躱すなんてね。」

カルム「何だよ、それ………!?」

イーディス「言ったでしょ?私の剣は闇の剣よ。その影を映した刀身は、何者も防げないのよ。」

カルム「マジかよ…………!?」

 

 つまり、サラマンダーの将軍、ユージーンが使う魔剣グラムに宿る《エセリアルシフト》とほぼ同じ能力か!?

 嫌な思い出が蘇るな…………。

 すると、イーディスが何かを呟く。

 

イーディス「現れなさい。影ノ傀儡。」

カルム「まさか!?」

 

 俺の影から、もう1人のイーディスが現れて、その刀を俺に向かって振ってくる。

 咄嗟に躱すが、俺は動揺していた。

 

イーディス「へぇ………。影ノ傀儡の攻撃まで躱すなんてね………!」

カルム「影を使うとか反則だろ!?」

イーディス「それが私の剣よ。刃王剣十聖刃を使ってる割には、大した事なさそうね。」

 

 その発言に、俺はイラッときた。

 ケントの方をチラッと見ると、武装完全支配術の準備自体は出来てるようだな。

 キリトの方は、壁際に追い込まれていく。

 

イーディス「あの黒髪の方は、アリスに押されてるわね。」

カルム「それが?」

イーディス「まあ、すぐに楽にしてあげるわ。」

カルム「悪いな、俺もアイツも、諦めが悪いんでね!」

 

 俺は、刃王剣十聖刃に光剛剣最光の力を宿す。

 ユーリ、力借りるぜ………!

 

イーディス「光を纏った所で、どうなのかしらね!」

カルム「それはどうかな!………光あれ!」

 

 イーディスが再び影ノ傀儡を出すが、俺の光剛剣最光の力を宿した光によって、傀儡は消滅する。

 

イーディス「!?」

カルム「これで、傀儡は使えないぜ!」

イーディス「やるじゃない………!なら、私も本気で行かせて貰うわ!」

カルム「行くぜ!」

 

 そこから、苛烈な剣裁が巻き起こる。

 俺も本気を出して、光を纏った刃王剣十聖刃で、闇斬剣とぶつかっていく。

 しかも、闇斬剣の透過能力がうまく発動しない。

 恐らく、俺の刃王剣十聖刃の光の力で、打ち消されていると思う。

 

イーディス「まさか………闇斬剣の力が、効かない!?」

カルム「光剛剣最光の力だ!」

イーディス「光剛剣最光………!?あのユーリって奴の聖剣ね………!」

 

 どうやら、ユーリは何度か整合騎士と激突したようだな。

 だが、相手が刀なのに対して、こっちは少し大きい剣だ。

 取り回しの都合で、こちらが押される。

 そして、遂に壁にまで追い詰められる。

 

イーディス「まさか、この私をここまで追い詰めるなんてね。それは誉めてあげるわ。」

カルム「…………どうも。」

イーディス「でも………これで終わりよ。」

カルム「……………。」

 

 後ろをチラッと見ると、ケントが駆け出していた。

 

イーディス「じゃあ、覚悟しなさい。」

カルム「…………!」

 

 俺は闇斬剣の斬撃を、刃王剣十聖刃で逸らせる様な形で躱して、イーディスの腕を掴む。

 

イーディス「何を………!?」

カルム「今だ、ケント!俺ごとやれ!」

ケント「………すまない………!エンハンス・アーマメント!」

 

 ケントの叫びと共に、鎖がこちらにやって来て、俺ごとイーディスを縛ろうとする。

 だが、イーディスはすぐさま俺を剥がして、鎖を切断する。

 キリトの方を見ると、ユージオの武装完全支配術がアリスに当たるも、アリスの武装完全支配術によって、削られていた。

 

イーディス「…………作戦としては悪くないんだけどね、私に、それは効かないわよ。アンタは、後で私が相手するから、そこで大人しくしてなさい。」

 

 イーディスは、ケントに気が向いてる。

 なら、こっちも反撃するか!

 

カルム「エンハンス・アーマメント!」

イーディス「!?」

 

 俺は、火炎剣烈火、水勢剣流水、雷鳴剣黄雷、土豪剣激土、風双剣翠風、音銃剣錫音の幻影を出現させて、6つの属性を纏った攻撃を、イーディスの闇斬剣にぶつける。

 すると、二つの武装完全支配術がぶつかり合い、周囲にヒビが入る。

 

イーディス「えっ…………!?(コイツ、剣を狙って………!?)」

カルム「ケント!!」

 

 俺のその叫び声に、ケントは短剣を持ちながら駆け出していく。

 

ケントside

 

 カルムの絶叫に、俺は短剣を持ちながら駆け出していく。

 そうだ、これが、まさしく、最後の機会。

 これを無駄にするわけにはいかない!

 イーディスにまで、あと六メルの所で、予想だにしなかった出来事が起きる。

 2本の神器の武装完全支配術が融合する事で、途轍もない破壊力が生まれてしまい、カセドラルの外壁に穴が空いてしまったのだ。

 突然の突風に、俺は地面に倒れ込む。

 猛烈な空気の流れは、紫紺色の剣士と、灰色の騎士を巻き込み、絡み合って外へと飛ばされていく。

 

ケント「うわぁァァァ!!」

 

 俺は絶叫して、すぐに壁に空いた穴の元へと向かう。

 だが、無情にも、大理石の壁石が、まるで時間を巻き戻すかの如く、2人が吸い込まれた穴を塞いでいく。

 

ケント「あああああっ!!」

 

 悲鳴を漏らし、懸命に駆け寄ったが、壁は何事もなかったかの様にピタリと塞がる。

 そこに、無我夢中に拳を叩きつける。

 

ケント「カルムーーーー!!イーディスーーーーッ!!」

ユージオ「キリトーーーー!!アリスーーーーーッ!!」

 

 雲上庭園に、俺とユージオの絶叫がこだまする。

 俺は、すぐさまユージオと合流する。

 

ケント「ユージオ!」

ユージオ「ケント………!キリトとアリスが………!」

ケント「そっちもか…………!」

ユージオ「って事は、カルムとイーディスの2人も………!?」

 

 俺たちは、すぐに4人の元に向かおうとする。

 だが、それぞれの剣をぶつけても、使える神聖術の中で最大の威力を持つ熱素の神聖術をぶつけても、効果がなかった。

 俺たちは、キリトとカルムの2人を信じて、先へと進む事にする。

 

深澄side

 

 私と明日奈は、神代博士と共に、朝食を食べていた。

 ビュッフェ形式の朝食だったけど、なかなかに立派ね。

 すると、神代博士が呟く。

 

凛子「このお魚、オーシャン・タートルで釣れたのかしらね?」

明日奈「ど、どうでしょう…………。」

深澄「分かりません…………。」

 

 そう言って、白身魚のフリットを食べてみると、ほろほろとして柔らかく、それでいてしっかりとした歯応えがある。

 相当に新鮮ね。

 そういえば、このオーシャン・タートルは、どこを航行しているのかしら?

 携帯端末は、船内Wi-Fiに接続するのは、保安上の理由から、却下された。

 それにしても、あのアリシゼーション計画は、話したのが全てなのかしら。

 いまいち、菊岡さんが信頼できない。

 だけど、菊岡さん曰く、明日には、カルムは目を覚ます。

 その際には、しっかりと抱き締めて、言いたい事を全部言うんだから。

 すると、明日奈が何かに気づく。

 

明日奈「あっ………向こうに何か見える。」

深澄「えっ…………?あっ、本当だ。」

凛子「漁船…………ではないわね。やけにアンテナが伸びてる。」

明日奈「じゃあ………軍艦?」

深澄「そうなのかしら………?」

???「あれは日本の船ではありますが、軍艦ではありませんよ」

 

 そう話していると、横から、解説する声が入ってくる。

 確か、中西って人だった気がするわね。

 

中西「朝食中に失礼致しました。おはようございます、お三方。」

明日奈「おはようございます。」

深澄「おはようございます、中西さん。」

凛子「おはよう、中西さん。………それで、軍艦じゃないのなら、自衛艦ですか?」

中西「惜しいですね。海自所属の艦船は、護衛艦と呼びます。あの船は、5千トン型汎用護衛艦DD119『あさひ』です。」

深澄「へぇ…………。」

中西「2台あさひ型護衛艦のネームシップで2番艦は不知火と言うんですが…………。」

 

 この人は、この手の話になると、ウンチクが止まらないのかしら?

 それを見て、私、明日奈、神代博士は、笑う。

 すると、あの船が、遠ざかっていくのに気がついた。

 

深澄「あれ………あの船、離れて行きますね………。」

明日奈「本当だ。」

中西「あさひ型はこの2隻だけで…………。何ですって…………?………失礼。」

 

 すると、中西さんは、ウンチクを語るのをやめて、穏やかな雰囲気から、少し表情が険しくなった。

 中西さんは、私たちから少し離れて、電話で菊岡さんと話す。

 

中西「菊岡二佐、中西です………。たった今、あさひが西の方向へと方向転換を致しまして………。確か明朝1200までは随走予定のはずでは…………。はい、すぐに参ります………。お話の途中で申し訳ありませんが、ここで失礼致します。」

 

 中西さんは、一礼をした後、その場を去っていく。

 

凛子「…………どうしたのかしらね?」

明日奈「さあ…………?」

深澄「…………胸騒ぎがする。」

 

 一体、どうしたんだろう。

 まあ、朝食を食べるとしましょう。

 それにしても、カルムは、アンダーワールドで、女の子を引っ掛けてなければいいんだけど。

 カルムって、優しいから、フィリアとレインが好意を寄せているのが分かる。

 そんな事を考えながら、朝食を食べていく。

 




今回はここまでです。
ミトが、懸念している事は、当たっています。
それを知ったら、ミトはどんな反応をするんでしょうね?
一つ分かるのは、カルムが無事では済まない事ですね。
次回は、壁登りです。

カルムは心身喪失状態にすべきか

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