ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、ベルクーリとリョウガに、ユージオとケントが挑みます。


第36話 伝説の英雄と時国の騎士

ケントside

 

 孤独というのを、すっかり忘れてたな。

 八年前のあの夏、イーディスとアリスが連れ去られてから、俺は、ある意味では孤独だった。

 無論、ユージオも居たのだが、その時には、気まずくて、碌に話せなかった。

 その時に俺は、その過去を、記憶を遠ざけ続けた。

 己の弱さを認められず、諦めていた。

 だが、2年前の春に、ふらりと現れた2人の少年が、俺たちを底なし沼から力ずくで引っ張り出した。

 その2人が居たからこそ、ゴブリンの集団を撃退し、ギガスシダーを打ち倒し、ルーリッドの村を飛び出して、央都まで来れたのだ。

 俺の傍らには、常にカルムが居て、ユージオの傍らには、常にキリトが居た。

 計画とは随分違う成り行きだが、セントラル・カセドラルに侵入して、障害を乗り越え、こんな高い場所に来れたのは、間違いなく、カルムとキリトが俺たちを導き、励まし続けてくれたからだ。

 だが、カルムはイーディスと、キリトはアリスと共にカセドラルから落ちてしまった。

 先ほど、色々試してみたが、無駄だと分かり、断念した。

 あの2人は、突発的な状況に対する能力がある。

 どうにかして、カセドラルを外側から登り始めているに違いない。

 そう思って、俺たちは慎重に進んでいく。

 だが、階を登っているのにも関わらず、人の気配を感じられなかった。

 奇襲を防ぐために、限界まで感覚を張り詰めていたが、とある思考が入り込んでくる。

 カルムと騎士イーディスは、今頃どうしているのだろうか。

 もしかしたら、剣を引かせたのか………?

 そう考えると、馴染みのない感情が胸に込み上げてくる。

 それがきっかけで、デュソルバートに剣を向けた時の葛藤が蘇る。

 

ケント(あの時、カルム、お前は俺を止めた。お前なら、ただ見ているのではなく、自分の事を顧みずに整合騎士に立ち向かい、イーディスとアリスを助けようとしただろう。)

 

 それは、カルムに対する強い劣等感となる。

 あいつは、強くて優しい。

 もしかしたら、整合騎士イーディスの心にすら届くかもしれない。

 

ケント「…………そんな事を考えても無駄か。」

 

 俺は、強引に思考の流れを断ち切る。

 これ以上は考えても無駄だ。

 カセドラル最上階に保管されている《記憶の欠片》を取り戻し、整合騎士イーディスの魂に戻せば、本物のイーディスが戻ってくる。

 今は、雑念を捨て、ひたすら前に進もう。

 そんな風に決意して、ユージオと共に足を動かしていく。

 しばらくすると、大きな扉が見える。

 

ユージオ「ここが、カセドラルの90階……。」

ケント「恐らく、この先に、騎士長がいるはずだ。」

ユージオ「………行くぞ。」

ケント「ああ。」

 

 俺とユージオは頷き合い、扉を押し開く。

 すると、白煙が押し寄せてくる。

 目に入ったのは、巨大なお風呂場だ。

 

ユージオ「ここは、お風呂なのか?」

ケント「そう…………だろうな。」

 

 すると、人の気配を感じて、剣の柄に触れる。

 2人だ。

 片方は、相当に大柄で、もう片方は、平均的な大きさだろう。

 両方とも男なのは、分かる。

 先制攻撃を仕掛けるべきか………!

 その時。

 

???「悪ぃけど、もう少し待ってくれねぇかな。なんせさっき央都に着いたばかりでよ、飛竜に乗りっぱなしで全身が強張っちまった。」

???「すぐに出る。」

 

 片方は、低く錆びているが、よく通る声で、もう片方は、いかにも騎士というような声だ。

 判断に困っていると、2人は風呂から上がり、体を解し、服を着る。

 と言っても、片方は東帝国産の着物で、もう片方は騎士服を着ていた。

 

???「おう、待たせたな。」

???「すぐに剣を持つ。」

 

 片方は本当に剛毅な風貌で、もう片方は厳しい風貌だ。

 すると、2人が籠に手を向けると、大剣が剛毅な方に、細い剣が厳しい方に行く。

 片方は、カルムに見せられて知っている。

 アレは、時国剣界時という聖剣だ。

 すると、2人の整合騎士が尋ねてくる。

 

???「さて、お前さんらと戦う前に、一つ聞きたい事があるんだ。」

ユージオ「何ですか…………?」

???「レイカとファナティオは無事か?」

ケント「…………生きてます。今、治療を受けている最中の筈です。」

???「そうか…………。」

???「なら俺らも、お前さんらの命までは取らねぇでおこう。」

ユージオ「な…………。」

 

 すごい自負だ。

 恐らく、相当の激闘を勝ち抜いてきたのだろう。

 だが、その発言は少し気に入らない。

 

ユージオ「気に入らないですね。」

???「ほほう?」

???「何がだ?」

ケント「あなた方の部下は、ファナティオさんとレイカさんだけじゃないでしょう!エルドリエさんやデュソルバート、四旋剣の人たち、そして、イーディスとアリスの生死はどうでもいいんですか!?」

 

 俺の言葉を聞いた剛毅な男は、苦笑する。

 すると、もう片方が声をかける。

 

???「おい。やっぱり変な誤解を招いただろう。」

???「そうだな………。何つうかな………。エルドリエはアリスの嬢ちゃんの弟子だし、四旋剣のダキラ、ジェイス、ホーブレン、ジーロはファナティオとレイカの弟子だ。そんで、ファナティオは俺の、レイカはコイツの弟子だ。」

???「俺達はあまり恨み辛みで戦うのは好んでいないが、でもせめて、弟子が殺されたのなら、その仇くらいは取らないといけない。」

 

 なるほどな。

 つまり、戦闘にはそういったのは持ち込まないのか。

 

???「ただ、レイカを打ち破ったお前達の実力を確かめたい。」

???「………まあ、アリスの嬢ちゃんは、俺のことを師匠くらいにゃあ思ってるかもしれねぇが………正味の話、本気で戦ったら、どっちが強いかはもう分からん。嬢ちゃんが騎士見習いになった6年前ならまだしも、な。」

 

 それには、一つ引っかかった。

 それは、アリスが30なのに、イーディスが10なのだ。

 どういう事だ…………?

 剛毅な方の話は続いていた。

 

???「ま、俺たちはお前さんらに負けるつもりもねぇし、だからオレと同じくらい強いアリスとイーディスの嬢ちゃんがお前さんらに斬られたとも思わん。」

???「元老長に聞いたところでは、お前達には相棒がいるのだろう?その2人がここに居ないという事は、大方、イーディスとアリスの2人と戦ってるのか?」

ユージオ「…………だいたいそんな所です。」

ケント「ちなみに、あなた達を斬ったら、次は誰が仇討ちに来るんですか?」

???「安心しな。俺たちには師匠はいねぇよ。」

???「剣を構えろ。」

 

 そう言って、騎士服を着ている方は、柄の部分と剣先を握り、離した。

 俺とユージオが驚いている中、剣先が三つになっている方を上にして、束の部分と合わせる。

 すると、剣から槍に変わる。

 もしかしたら、既に完全支配状態か。

 なら、ソニックリープで決める!

 すると、2人は反応する。

 

???「見慣れない構えだな。」

???「…………もしやお前さんら、連続剣の使い手かい?」

ユージオ「…………!」

ケント「………俺たちが連続剣を使えたら、何だって言うんだ?」

 

 ユージオが驚く中、俺は低い声で問い返す。

 すると、剛毅な方が鼻を鳴らす。

 

???「いやな、ダークテリトリーの暗黒騎士連中にも連続剣を使う奴がいて、何度か戦ったんだけどよ。あんまりいい思い出はねぇんだよな………。」

???「何せ、こちらは、あまり器用な技は使わないからな。」

ユージオ「…………つまり、僕らも正統流派の技で戦えと?」

???「いやいや、連続剣だろうと何だろうと、好きなだけ使ってくれて構わんさ。」

???「その代わり、俺たちも、奥の手を出させて貰おう。」

 

 やはり、両方とも、完全支配状態か。

 なら、ソニックリープで決める!

 すると、騎士達は、名乗りを上げる。

 

ベルクーリ「整合騎士長………ベルクーリ・シンセシス・ワン。」

リョウガ「騎士長補佐………リョウガ・シンセシス・スリー。」

「「参る!!」」

 

 ベルクーリ!?

 まさか、あのベルクーリか!?

 すると、ベルクーリは、剣を大きく振りかぶる。

 リョウガの方は、槍を両手で持っているだけだ。

 舐められたものだな。

 俺たちは、ソニックリープで2人の下に向かう。

 だが、ユージオの前方に、何か陽炎が漂っていた。

 ユージオがその陽炎に当たると、ユージオは吹き飛ばされる。

 しかも、斬られていた。

 すると、リョウガが目の前から消えて、背後から斬られる。

 

ユージオ「ぐ…………はっ…………!」

ケント「ぐっ……………!」

 

 俺とユージオは、浴槽へと落下する。

 ユージオは前の部分を、俺は背中を斬られ、出血していた。

 咄嗟に光素を出して、傷口を塞ぐ。

 騎士長は、剣を鞘に収めて、右腕を懐に差し込み、補佐の方は、槍の下の部分を地面に立てていた。

 

ベルクーリ「今のはちっと危なかったな、まさかあんな勢いで突っ込んでくるとは思わなかったからよ。悪ぃな、殺しちまうとこだった。」

リョウガ「向こうはそれを承知で突っ込んで………は居ないようだな。」

 

 そう呟いていた。

 だが、何故リョウガという方は、いきなり消えたんだ!?

 

ユージオ「い………今の技は………!」

ケント「一体…………!?」

ベルクーリ「だから言ったろう、奥の手を使うってな。俺はただ素振りで空気を斬った訳じゃねぇぜ。言わば…………ちょいと先の、未来を斬ったのよ。」

リョウガ「俺は、この聖剣の力で時間を削り、抹消したのだ。」

 

 言っている意味が分からない………!

 つまり、時に干渉出来るのか………!?

 だとすると、かなり厄介な能力だ。

 リョウガに接近しても、すぐに背後に回り込まれてしまう。

 

ベルクーリ「俺らが初めて暗黒騎士の連続剣を見たのは、整合騎士の任に就いて間もない頃でなぁ。最初は、そりゃあぐうの音も出ねぇ程にやられたもんさ。」

リョウガ「俺たちの技は、一撃の威力を追求した物なのに対して、連続剣は、如何にして敵の打ち込みを捌き、自分の攻撃を当てるかを突き詰めた物だ。」

ベルクーリ「………んで俺たちが導いた答えがコイツだよ。この剣は元々、セントラル・カセドラルの壁に据え付けられてた、《時計》っつう神器の一部だったのさ。最高司祭殿は、《システム・クロック》………とか妙な呼び方をしてたなぁ。アリスの嬢ちゃんの《金木犀の剣》が、空間っつう横方向の広がりをぶった斬るのに対して、こいうは時間っつう縦方向を貫くのよ。銘は《時穿剣》………時を穿つ剣だ。」

リョウガ「俺のは、時国剣界時。時を司る聖剣だ。お前の雷鳴剣黄雷が、雷を司る聖剣なのと同じようにな。」

 

 つまり、空間の広さで勝負をするしかないという事か。

 俺の雷鳴剣黄雷の、二つの記憶を使う。

 その為に、武装完全支配術の術式の詠唱をしていると、ベルクーリが笑う。

 

ベルクーリ「となりゃあ、遠距離から攻める手だ、と考えるんだな。俺たちの技を見た奴は、皆。」

リョウガ「ファナティオやアリスの様に、俺たちの後に召喚された整合騎士が、遠距離型の完全支配術を使うのは、それが理由だな。………まあ、イーディスは例外だが。」

ベルクーリ「さて、俺は楽しみなんだ。連中を片っ端から退けてきたお前さんらの技が、どんな代物なのかよ。」

ユージオ「…………余裕、ですね。」

 

 つまり、これまでの長い会話は、俺たちに武装完全支配術の詠唱をさせる為だったのか。

 悔しいが、どうにかするしかない。

 俺とユージオは、通路に出る。

 

ベルクーリ「ふっふ、来るかよ、少年達。」

リョウガ「言っておくが、次は手加減しない。」

 

 俺たちは、叫ぶ。

 

「「エンハンス・アーマメント!」」

 

 ユージオは、青薔薇の剣を地面に突き立てて、氷を発生させ、ベルクーリに向かわせる。

 俺は、針鼠とランプの魔神の記憶を使い、針と雷をリョウガに向かわせる。

 俺は魔法の絨毯に乗り、リョウガに向かっていく。

 ユージオも駆け出していた。

 2人の整合騎士は、一切動いていなかった。

 ベルクーリが剣を振るうと、氷はあっという間に砕け散り、リョウガは消えて、針と雷が床に当たる。

 となると、リョウガは後ろに現れるはずだから、俺を中心に、雷を落とす。

 すると、現れたリョウガに雷が当たり、少し痺れる。

 

リョウガ「何…………!?」

ケント「ハァァァァ!!」

 

 俺はすぐさま絨毯から降りて、痺れたリョウガに向かって、アインクラッド流《体術》、メテオブレイクという秘奥義を放つ。

 体勢が崩れていたのがあって、リョウガは俺と共に浴槽に突っ込む。

 ユージオの方も、ベルクーリを俺がリョウガを落とした浴槽に落とす事に成功したようだな。

 リョウガは、俺を振り解いて立ちあがろうとしていたが、俺はそれよりほんの一瞬先に、雷鳴剣黄雷を浴槽の底へと突き立てる。

 頼む、雷鳴剣黄雷、力を貸してくれ!

 すると、俺とユージオの口から、とある言葉が放たれる。

 

「「リリース・リコレクション!!」」

 

 すると、雷鳴剣黄雷と青薔薇の剣から、強烈な光が放たれ、あっという間に、俺たちは氷に囲まれ、体には氷の蔓と鎖が巻き付いていて、痺れる。

 この時に、カーディナルとユーリから言われた事を思い出す。

 

カーディナル『良いか、武装完全支配術には2つの段階がある。《強化》と《解放》じゃ。』

ユーリ『強化とは、武器の記憶を部分的に呼び覚まし、新たな攻撃力を発現させる事。解放とは………言葉通りに武器の記憶を全て目覚めさせ、荒ぶる力を解き放つ。』

カルム『荒ぶる力か…………。』

キリト『なるほどな。エルドリエの霜鱗鞭は、蛇が元だから、あんな事が出来るんだな。』

カーディナル『そういう事じゃ。しかし、お主達ではまだまだ解放術は使えぬぞ。』

ケント『な、なんでですか………?』

ユージオ『どういう事ですか………?』

ユーリ『荒ぶる力、と言っただろう。記憶解放は、術式を覚えたばかりの剣士に制御できる代物ではない。下手をしたら、自分をも巻き込み、命を落としかねない。』

 

 そんな忠告をされていた。

 だが、この2人を倒すには、これしかない!

 すると、2人は、驚いた様な声を出す。

 

リョウガ「驚いたな。まさか、俺の時国剣界時の武装完全支配術を、あんな形で防ぎ、こんな風に拘束するとはな。」

ベルクーリ「お前さんらが思いついたのか?」

ケント「いや、相棒が教えてくれたんです。」

ユージオ「戦場に存在するあらゆる物が、武器とも罠ともなり得る事を。」

リョウガ「地の利か………。」

ベルクーリ「これは一本取られた事は認めてやるが、負ける訳にはいかねぇな!」

 

 そう言って、ベルクーリとリョウガの2人は、体に力を入れて、氷にヒビを入れる。

 このままでは、2人が脱出してしまう。

 俺は、ユージオに向かって叫ぶ。

 

ケント「頼む、ユージオ!」

ユージオ「咲け………青薔薇!!」

 

 すると、俺たちの周辺に、氷の薔薇が咲き誇る。

 だが、これはある意味恐ろしい光景だ。

 何故なら、この薔薇達は、今ここにいる俺たちの天命を吸って咲き誇っているのだ。

 四肢から力が抜け、視界が薄暗くなる。

 流石の整合騎士達も、力が抜けたようで、驚愕の声を出す。

 

ベルクーリ「小僧共…………!」

リョウガ「貴様ら、最初から、相討ちが狙いだったのか…………!?」

ケント「勘違いしないで下さい…………。」

ユージオ「僕たちが、あなた方2人に勝っているかもしれない、唯一の要素………。それは、天命の総量です。」

ケント「外見から察するに、貴方達が整合騎士になったのは、ベルクーリさんは四十歳、リョウガさんは三十歳を越えてから。当然、天命の最大値も減っている。」

ユージオ「対して、僕たちの天命値は今が最大に近い………例え一太刀受けていても、総量ならまだ僕たちの方が多い筈。それに賭けたんです。」

 

 俺たちの解説を聞くと、ベルクーリとリョウガの目が見開き、驚愕の表情を浮かべる。

 

ベルクーリ「テメェら…………今、なんて言ったんだ。」

リョウガ「整合騎士になった………だと………?まるで、俺たちの前世を知っている様な口を叩くな。」

 

 俺たちは、その問いに答える。

 

ユージオ「僕は………貴方達のそういうところが許せないんだ。」

ケント「自分が何者かを忘れ、剣を捧げた公理教会の、真の姿を知らずに………自分達だけが正義の、法の守護者だという顔をする。貴方達は、最高司祭が天界から召喚した神の騎士なんかじゃない!」

ユージオ「そうだ!母親から生まれて、ベルクーリとリョウガっていう名前を与えられた、僕らと同じ人間なんだ!」

 

 すると、俺たちは、ベルクーリが誰かなのかを思い出した。

 そう、ルーリッド村を拓いた初代衛士長となった男だ。

 果ての山脈で、白竜から青薔薇の剣と雷鳴剣黄雷を盗もうとした豪傑。

 

ユージオ「…………ベルクーリ。貴方は、僕達の剣に、見覚えがある筈です。」

ベルクーリ「…………確かに………どこかで……。あれか。あの時………。」

リョウガ「確か、ベルクーリが北辺の守護竜を殺した時に、それと似た様な剣があったと報告していたな。」

ケント「なんだって…………!?」

 

 つまり、英雄自らが、あの白竜を殺したのか………!?

 俺とユージオは、驚愕する。

 

ユージオ「あの、竜の骨…………。あれは、貴方がした事何ですか………?貴方は………自分の物語に出てくる竜を…………殺してしまったんですか…………?」

ケント「本当に、忘れてしまったんですか……何もかも………。ベルクーリ、貴方は、央都から北辺まで長く辛い旅をして、荒れ地に村を拓いた、俺たちのご先祖様だ。それは、ルーリッド村では、誰もが知っている。」

ユージオ「最高司祭は、そんな貴方達を拉致して、整合騎士に仕立てた。貴方達だけじゃない。」

ケント「ファナティオさんにレイカさん、エルドリエさんに、デュソルバートさん、そして、イーディスとアリスも…………!皆、整合騎士にされてしまう前は、俺達と同じ、人間だ。」

 

 その言葉に、ベルクーリとリョウガは、動揺していた。

 すると、掠れた声がする。

 

リョウガ「…………お前達の話を、簡単に、信じてやる訳にはいかない。」

ベルクーリ「だが………俺もリョウガも、自分が天界から召喚された、神サンの騎士だっつう話には、長い事、呑み込めねぇもんを感じて………居たんだ…………。」

 

 ここまでか…………。

 最高司祭の力は凄まじい。

 英雄すらも、忠実な騎士に作り替えてしまうのだから。

 俺たちの天命は、あと僅かだろう。

 すると。

 

???「ホッホォォォォー、これは絶景、絶景。」

 

 耳障りな声が大浴場に響く。

 そこに居たのは、1人の道化師だ。

 何者だ…………?

 

???「オホォ…………。いけません、いけませんねぇ、騎士長殿に補佐殿。まさか、そのままくたばる気じゃないでしょうねェ。そいつは明白な反逆ですよゥ、麗しき最高司祭猊下への。お目覚めになられましたら、きっとお怒りになりますよゥ?」

ベルクーリ「元老長チュデルキン………。」

リョウガ「貴様の様な俗物が………剣士の戦いに、手出しをするな………!」

 

 チュデルキンと言われた人物は、勢いよく両手を叩きながら、飛び跳ねる。

 

チュデルキン「汚らわしい反逆者どもを相手に、手加減をしておいてよく言いますよゥ!お二方、時穿剣の《裏》を使わず、時国の鎧までも使いませんでしたねェ?その気になればそこのガキどもを、一言も喋らせずにぶっ殺せたでしょうにィ!それがそもそも最高司祭様への反逆だって言ってるンですよゥ!!」

 

 チュデルキンがそう言うと、ベルクーリさんとリョウガさんは、怒りの籠った声を出す。

 

ベルクーリ「うるせぇ………!俺たちは全力で戦ったんだ………!」

リョウガ「それに、貴様こそ、俺たちを謀ったな………!この2人は、ダークテリトリーの暗殺者じゃない………!貴様のような醜い肉の塊よりも遥かにマシな………!」

チュデルキン「うっさァァァァァい!その首引っこ抜くぞォォォォォッ!!」

 

 その言葉に、キレたチュデルキンは、ベルクーリさんとリョウガさんの頭を踏む。

 

チュデルキン「だいたいお前ら糞騎士どもが糞ほどにも役立ちゃしねェからこんな面倒な事になってンですよゥ。たかだかガキ4人にいいようにやられまくるんですよゥ。もうね、猊下がお目覚めになったら、騎士どもは片っ端から………少なくともアナタ方と副騎士長とその補佐は、再処理決定ですよゥ!」

ベルクーリ「なんだ………テメェ……!」

リョウガ「一体何を…………!?」

チュデルキン「システム・コオォォォル!ディープ・フリィィィーーーズ!インテグレータ・ユニット、ID・001&003!!」

 

 まったく聞き覚えがない神聖術だ。

 術式は、かなり短く、大した事ないと思っていると。

 

ベルクーリ「ぐっ…………!」

リョウガ「貴様…………!」

 

 2人が呻くと、まるで石のようになる。

 俺たちが呆気に取られていると、元老長チュデルキンが、2人の頭から飛び降りる。

 

チュデルキン「ホッ、ホヒッ、ホヒヒッ………実際、もうお前らのようなジジィどもは要らねぇンですよゥ、一号、三号。なかなか使えそうなコマが2人も見つかった事ですし………ねェ?」

 

 そう呟いた道化は、俺たちをじろりと睨め付け、冷たい怖気が背中を駆け上がる。

 だが、俺たちは、限界だった。

 氷の薔薇と鎖を踏み潰しながら近づいてくる道化師の姿を凝視するが、視界が暗く塗りつぶされていく。

 

ケント(カルム………!イーディス………!)

 

 俺は、2人の名前を呼んだ所で、意識は途切れる。




今回はここまでです。
時国の鎧とは、仮面ライダーデュランダルの装甲をモチーフにした鎧の事です。
一応、それなしでも界時抹消は使えますが、鎧を着けてる方が、リョウガに負荷がかかりません。
次回は、カルムとイーディスの話に戻ります。

カルムは心身喪失状態にすべきか

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