ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、チュデルキン戦です。


第43話 炎の巨人

カルムside

 

 どうやら、間に合ったみたいだな。

 あの後、チュデルキンがホヒホヒ笑いながら現れたのだが、アリスが容赦なく金木犀の剣の武装完全支配術に巻き込み、逃げたので、俺たちは追って、最上階に着いた。

 着いたのは良いのだが、そこからは、濃厚な《死の気配》が漂っていた。

 つまり、死ぬ可能性があるという事だ。

 腹を括らないとな。

 すると、ユージオとケントの目から涙が溢れてきて、謝ってきた。

 

ユージオ「ごめん………。」

ケント「お前達を裏切って………!」

カルム「気にするな。」

キリト「それに、俺がお前達の言いつけを守った事があるか?」

ユージオ「………フフッ。君はいつだってそうだ。」

ケント「全くだな………。」

 

 ユージオとケントは、アリスとイーディスを見て、2人も頷いた。

 俺とキリトは、アリスとイーディスの2人に尋ねる。

 

キリト「あれが………最高司祭、アドミニストレータ………。」

カルム「そうなんだな?」

アリス「そうです。」

イーディス「6年前から、何一つ変わってないわね…………。」

 

 俺たちの会話が聞こえたのか、アドミニストレータは何かを呟く。

 

アドミニストレータ「ベルクーリとファナティオ、リョウガ、レイカはそろそろリセットする頃合いだったけれど………。アリスちゃんとイーディスちゃんは、まだ6年くらいしか使ってないわよね?論理回路にエラーが起きている様子もないし………。やっぱり、そこの2人のイレギュラーユニットの影響なのかしら?ねぇ、アリスちゃんにイーディスちゃん。貴方達、私に何か言いたい事があるのよね?怒らないから、今言ってご覧なさいな。」

 

 そう言って、ベッドの上を一歩歩いた。

 その途端、アリスとイーディスも一歩下がってしまう。

 やっぱり、敬神モジュールの影響がまだ出ているみたいだな。

 あと、俺とキリトの事を、イレギュラーユニットって言ったか?

 という事は、もう勘付かれてるのか?

 そう考えていると、アリスとイーディスは、俺とキリトが巻いた包帯に左手を当てて、毅然と言い放つ。

 

アリス「最高司祭様。栄えある我らが整合騎士団は、本日を以って壊滅いたしました。私たちの隣に立つ、僅か4名の反逆者によって。……そして、最高司祭アドミニストレータ、貴方がこの塔と共に築き上げた果てなき執着と欺瞞ゆえに!!」

イーディス「私たちの究極の使命は、剣なき民を守る事にある!しかるに最高司祭様、アンタの行いは、人界に暮らす人々の安寧を損なう物だわ!」

 

 言うねぇ。

 だが、アドミニストレータは、怒る訳でもなく、興がるように唇の両端をわずかに吊り上げる。

 その代わりに、チュデルキンが騒ぐ。

 

チュデルキン「だっ、だまっ、黙らっしゃぁぁぁぁイッ!」

 

 そう言って、チュデルキンが出てくる。

 毒ガスが再充填されていたが、巻き込まれた際に全て抜けてしまった。

 チュデルキンは、虎ならぬアドミニストレータの威を借りる狐と化していた。

 

チュデルキン「この半壊れの騎士人形風情がァァァ!!使命ィ!?守護ォ!?笑わせてくれますねぇ!!お前ら騎士どもは!所詮、アタシの命令通りに動くしかしない木偶人形なんですよッ!!」

 

 こいつ、小物臭がするな。

 まあ、実際に小物なんだろうけどな。

 

チュデルキン「大体ですねぇ!騎士団が壊滅したとか、ちゃんちゃらおかしいぃぃーーンですよゥ!使えなくなったのは、ポンコツの一号から四号を含めて十人足らずじゃないですかッ!つまり、アタシにはまだまだ二十も駒が残ってるんですよォ!お前らがガタガタ言った所で、教会の支配はぴくりとも揺らぎゃァしねェんですよこの小娘ども!!」

 

 皮肉にも、道化師の安っぽい悪罵には、アリスとイーディスの緊張を取り払っただけだった。

 まあ、小物だな。

 

アリス「馬鹿はお前です、カカシ男。その丸い頭には、脳味噌ではなく麦わらやらボロ布が詰まっているのですか?」

イーディス「アリス、アレは、多分何も入っていないわよ。」

チュデルキン「なっ………なぁぁぁ!!」

 

 結構辛辣ですね、アンタら。

 まあ、アレぐらいが丁度いいのかもしれないけどな。

 

アリス「残る騎士のうち、半数は最高司祭様の言った《リセット》………つまり術式による記憶の調整で動かせず、残る半数は、今も飛竜に跨って、果ての山脈で戦っています。彼らを呼び戻す事は出来ない。そんな事をしたら、公理教会の支配は崩れ去る。」

イーディス「いや、既に崩れかけてるわね。十名の騎士達と飛竜も、永遠に戦える訳ではないからね。しかも、カセドラルには、交代要員は残ってない。それともチュデルキン、アンタがダークテリトリーに赴いて、暗黒騎士達と一戦交えるの?」

 

 耳が痛い。

 俺とキリトは、頭を俯かせた。

 交代要員の騎士を倒したのは、俺たちだ。

 つまり、この状況にしたのは、俺たちのせいでもあるのだが。

 まあ、開き直るか。

 チュデルキンが何かを喚こうとするが、アドミニストレータが口を動かすのを見て、黙る。

 

アドミニストレータ「やっぱり、論理回路のエラーじゃなさそうね。それに、敬神モジュールもまだ機能している………。となると、あの者が施した《コード871》を自発的意思で解除したのかしら…………?」

 

 あの者…………?

 裏切り者のラーススタッフの誰かか?

 やはり、何者かがアドミニストレータに介入していたのだ。

 誰だ…………?

 コード871というのも、随分と記憶に残りやすいな。

 

アドミニストレータ「ま、これ以上は解析してみないと分からないわね。………さて、チュデルキン。」

チュデルキン「ヒッ!」

アドミニストレータ「私は寛大だから、下がりきったお前の評価を回復する機会をあげるわよ。あの6人を、お前の術で無力化しなさい。」

 

 アドミニストレータはそう言うと、右手を振るって、ベッドを仕舞う。

 なるほど、この階には、こういうような仕組みが幾つか仕掛けられてるのか?

 そう考えていると、チュデルキンがアドミニストレータに近づく。

 

チュデルキン「さ、ささ、最高司祭猊下ッ!」

アドミニストレータ「なぁに?チュデルキン。」

 

 チュデルキンはそう言って、突如土下座をしだす。

 それには、俺たち全員が戸惑う。

 

チュデルキン「元老長チュデルキン、猊下にお仕えた永の年月におきましてはじめての不遜なお願いを申し上げて奉りまするぅっ!小生これより、身命を賭して反逆者どもを殲滅致しますゆえっ!それを成し遂げた暁には、猊下のっ!げっ、猊下のぉぉっ、貴き御身をこの手で触れっ、口付けしっ、い、い、一夜の夢を共にするお許しを、何卒、何卒、何卒頂戴致したくぅぅぅぅぅっ!!」

「「「「「「うわぁ……………。」」」」」」

 

 随分とストレートなお願いだな。

 その発言には、俺たち全員がドン引きしてしまう。

 

カルム「なぁ、イーディス………。」

イーディス「カルム………。お願いだから、何も言わないで。」

ケント「…………俺たちは、こんな奴と戦うのか………?」

 

 キリト、ユージオ、アリスは口を開けながら呆然としていて、俺はこれからこんな奴と戦うのかとイーディスに聞こうとしたが、イーディスは現実から目を背けた。

 ケントも呆然としている中、アドミニストレータは、侮蔑と嘲笑を含んだ視線をチュデルキンに向けて、表情とは裏腹に、慈愛に満ちた声を出す。

 

アドミニストレータ「………良いわよ、チュデルキン。創世神ステイシアに誓うわ。役目を果たしたその時には、私の体の隅々までも、一夜お前に与えましょう。」

 

 あの言葉は、嘘だな。

 嘘や偽りに塗れた現実世界人である俺とキリトには分かる。

 だが、チュデルキンは、そんな主の偽りには、一切気づかなかった。

 

チュデルキン「おおぉ………おおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!小生は今!無常の歓喜に包まれております!!もはや…………もはや小生は闘志万倍!生気横溢!はっきり言いますれば、無敵ですよぉぉぉぉ!!!」

カルム「汚ねぇな…………。」

 

 涙と鼻水まみれのチュデルキンの顔を見て、そう呟いたが、次のチュデルキンの行動に、油断なく構える。

 

チュデルキン「システム・コォォール!!ジェネレート・サーマル・エェレェェメントォォォォォ!!ヌハハハハハハ!?」

カルム「目が………!?」

 

 まさか、両手両足に留まらず、目までもを媒体にしたのか………!?

 だが、熱素を目の前で生成したら、ただじゃ済まないはず………!

 事実、チュデルキンの両目は焦げていた。

 

チュデルキン「ゲヘヘヘ…………!お見せしましょう、我が最大最強の神聖術をぉ!!出でよ………魔神!!反逆者共を焼き尽くせぇぇぇぇ!!!」

 

 その声と共に、チュデルキンは両手両足を振り回す。

 すると、一箇所に集まり、炎の巨人………いや、炎の魔神を生成する。

 

カルム「あんなことも出来るのかよ……!?」

イーディス「嘘でしょ………!?」

アリス「どうやら、チュデルキンを侮っていたようです。私の花達では、あの魔神を倒すのは難しい。」

キリト「つまり、その間に、俺たちがチュデルキン本人を攻撃しないといけないって事になるのか………。」

アリス「そうです。10秒、どうにかして防ぎます。キリト、ユージオ、カルム、ケント、その間に、チュデルキンを討って下さい。」

カルム「…………分かった。俺はアリスの援護に回る。」

キリト「頼む。」

ユージオ「………うん。」

 

 そんな風に話している中、炎の魔神がこちらに向かって歩いてくる。

 そんな中、アリスは金木犀の剣の武装完全支配術を、俺は刃王剣十聖刃の水勢剣流水の力を使い、迎撃する。

 

アリス「巡れ!花達!!」

カルム「行くぜ!水勢剣流水!!」

 

 アリスが金木犀の花を竜巻状にして、俺はその竜巻に水を纏わせる。

 イーディスは、俺とアリスを後ろから支える。

 すると、魔神は大きくジャンプして、俺たちを踏み潰そうとする。

 

アリス「ぐっ………!グゥゥゥゥ!!」

カルム「グゥゥゥゥ!!」

イーディス「2人とも、頑張って!」

 

 これは、辛いな………!

 アリスから聞いた話によると、金木犀の剣は、炎に弱いらしい。

 まあ、元が金木犀だからな。

 一応、俺が水を纏わせた事により、多少は炎の魔神も削られているが、このままでは、俺たちが押し潰されてしまう。

 すると、ジェットエンジン染みた金属質の轟音がしてきて、何事かと思い、キリト達の方を見てみると、キリトは、ヴォーパル・ストライクの体勢を取っていた。

 確かに、ヴォーパル・ストライクは、威力が凄まじく、射程距離も長い。

 だが、いくらのヴォーパル・ストライクでも、チュデルキンには届かない。

 という事は、心意で拡張する気か!

 すると、キリトの服装が変わり始める。

 キリトの服は、武具保管庫から拝借した物なのだが、今の服は、あの旧SAOで、黒の剣士と呼ばれた服装になっていた。

 ヴォーパル・ストライクが放たれて、チュデルキンを貫いていた。

 

チュデルキン「おほおおおぉぉぉぉぉぉぉぅぅぅ…………。あぁ…………アタ、シの…………げい、か…………。」

 

 チュデルキンは、大量に出血して、そのまま倒れた。

 チュデルキンがいなくなった事により、炎の魔神が消えて、俺たちはキリトを見つめる。

 だが、キリトの心境は穏やかではないだろう。

 




今回は、ここまでです。
昨日はエイジ、今日はアリス、明日はユージオと、SAOキャラの誕生日が続きますね。
本当にめでたいです。
ちなみに、カルムの誕生日は、10月15日です。
次回、あの巨人が現れます。
近いうちに、カルムが刃王剣十聖刃の本当の能力を知る事になるでしょう。
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