ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回はソードゴーレム戦です。


第44話 剣の巨人

ケントside

 

 何の音だ!?

 すぐそばで炸裂した異質な轟音に、俺とユージオは目を見開く。

 その音源は、キリトだ。

 秘奥義なのだろうが、こんな型は見た事がない。

 すると、キリトの服装が、変化し始める。

 それも、高い襟と長い裾を持つ黒革の外套がどこからともなく現れたのだ。

 しかも、キリトの目は、かつて見た事がない光を放つ。

 

キリト「う…………おおおおおーーッ!!」

 

 キリトの雄叫びと共に、突き技が放たれて、チュデルキンを貫く。

 俺とユージオは、チュデルキンの意識を逸らせる為に、アドミニストレータに対して、凍素術を放った。

 結果は、アドミニストレータに傷ひとつつかなかったが、チュデルキンの意識はアドミニストレータの方に向いた。

 その結果、チュデルキンの体が、赤い槍によって貫通した。

 

チュデルキン「おほおおおぉぉぉぉぉぉぉぅぅぅ…………。あぁ…………アタ、シの…………げい、か…………。」

 

 そう言って、元老長チュデルキンは倒れた。

 チュデルキンが倒れた事により、炎の魔神は姿を消して、アリスとイーディスも、戸惑った表情でキリトを見つめる。

 カルムは、キリトを案じているのか、その表情は暗かった。

 すると、アドミニストレータが、手をチュデルキンに向けていた。

 まさか、治癒術を施すつもりかと思ったのだが。

 

アドミニストレータ「………ま、退屈なショーではあったけれど、それなりに意味のあるデータも少しばかり拾えたわね。………それにしても、邪魔ね。」

 

 アドミニストレータは、神聖語を混ぜつつ、チュデルキンの骸を軽々と吹き飛ばす。

 それには、アリスとイーディスが押し殺した声で呟く。

 

アリス「何という事を………!」

イーディス「惨いわね…………!」

 

 2人は、現在人格を改変されているが、そう言わずにいられない気持ちは分かる。

 チュデルキンは、尊敬出来ない人物ではあるのだが、主人の為に死力を尽くして戦い、死んだのだ。

 その骸は、手厚く葬るべきだろう。

 アドミニストレータは、チュデルキンの骸には目もくれず、キリトとカルムを見つめる。

 

アドミニストレータ「イレギュラーの坊や達。詳細プロパティを参照出来ないのは、非正規婚姻から発生した未登録ユニットだからかな、って思ってたんだけれど…………違うわね。あなた達、あっちから来たのね?《向こう側》の人間………そうなんでしょ?」

 

 アドミニストレータの言葉には、殆ど理解ができなかった。

 あっち………?

 向こう側…………?

 カルムとキリトは、2年半前に記憶を無くした《ベクタの迷子》として、ルーリッドに現れた。

 2人は、故郷で何か辛い出来事があり、ルーリッドの森に辿り着いたのだと、俺とユージオは思っていた。

 だが、人界を見通す最高司祭は、2人の生まれた場所を、不思議な言葉で表した。

 ダークテリトリーではないのは確かだが、それでは一体、2人はどこから………?

 そんな風に思っていると、キリトとカルムの2人は答えた。

 

「「そうだ。」」

 

 2人の言葉は、肯定の意だった。

 つまり、2人は記憶を取り戻していたのだ。

 いや、もしかしたら、最初から………?

 2人は、俺とユージオをチラリと見てくる。

 その視線には、自分達を信じてくれという懇願の光が浮かんでいた。

 

キリト「………とは言え、俺たちに与えられた権限レベルはこの世界の人たちと全く同等だ。」

カルム「だから、あなたのそれには遠く及ばない、アドミニストレータ。…………いや、クィネラさんと言うべきか。」

 

 最高司祭の別の名前と思われる名前を呟くと、アドミニストレータは少し微笑みが薄れたが、すぐに戻る。

 

アドミニストレータ「図書室のちびっ子が、つまらない話をあれこれ吹き込んだようね。……それで?坊や達は、一体何をしに私の世界へ転げ落ちてきたのかしら?管理者権限一つ持たずに?」

キリト「権限はなくても、知っている事は少しばかりある。」

アドミニストレータ「へぇ。例えば?下らない昔話には興味ないわよ。」

カルム「なら、少し先の未来の話をしよう。」

 

 そう言って、キリトは黒い剣に両手を乗せて、カルムは刃王剣十聖刃を肩に乗せる。

 

キリト「クィネラさん。あなたは、そう遠くない未来にあなたの世界を滅ぼす。」

アドミニストレータ「………私が?私の可愛い人形達を散々痛めつけてくれた坊や達じゃなくて、この私が滅ぼすの?」

カルム「そうだ。何故なら、あなたの過ちは、ダークテリトリーの総侵攻に対抗する為に、整合騎士団を作った…………いや、作ってしまった事、それ自体だからだ。」

アドミニストレータ「ふふふ。いかにも、あのちびっ子が言いそうな事ね。不憫だわ。そこまでして私を追い落としたいあの子も、うかうかとそれに乗せられた坊や達も。」

 

 細い喉を鳴らして、最高司祭は笑い続ける。

 キリトとカルムは、何かを言おうとするが、アリスとイーディスが口を開く。

 

アリス「御言葉ですが、最高司祭様。来るべき闇の軍勢の総侵攻に、現在の整合騎士団では抗しきれないとお考えだったのは、騎士長ベルクーリ閣下に騎士長補佐リョウガ殿、副長ファナティオ殿、副長補佐レイカ殿も同様でした。そして、私たちも。」

イーディス「もちろん、私たちは、最後の一騎までも戦い抜いて、散り果てる覚悟だったけど、最高司祭には、私たちが居なくなった後、人界に住む人たちを守る手立てはあるの!?」

アリス「聞きたいのはそれだけではありません。あなたは我らを親から………妻や夫、兄弟姉妹達から無理矢理に引き離し、記憶を封じておきながら、ありもしない神界より召喚したなどという偽りの記憶を植え付けた………。」

イーディス「どうして、私たちの忠誠と敬愛すら信じてくれないの!?何で私たちの魂に、アンタへの服従を強要する汚れた術式を施したのよ!!」

 

 その発言に、俺とユージオは驚いていた。

 まるで、かつての2人がそのまま整合騎士として成長したかのように思える。

 そして、俺とユージオは気づいた。

 2人の左目から、涙が流れていたのだ。

 だが、アドミニストレータは、2人の言葉に何も思わなかったのか、冷笑を浮かべる。

 

アドミニストレータ「心外だわ。とっても信頼してたのよ。あなた達にプレゼントした敬神モジュールこそ、私の愛の証だわ。あなた達がいつまでも綺麗なお人形でいられるように。下らない悩みや苦しみに煩わされずに済むように。」

 

 そう言って、アドミニストレータは、俺とユージオから抜き取った改良型の敬神モジュールをくるくると回転させる。

 そんな中、アリスとイーディスは再び言葉を紡ぎ出す。

 

アリス「…………小父様が…………騎士長ベルクーリ閣下が、整合騎士として生きた三百年という永き日々の間に、わずかに悩んだり、苦しんだりしなかったと、最高司祭様はそうお考えですか。」

イーディス「誰よりも深い忠誠をあなたに捧げた人が、その心中に抱き続けてきた痛みを知らないと、そう言うの!?」

 

 そんな2人の言葉に、冷ややかな声で、アドミニストレータは答える。

 

アドミニストレータ「知ってたわよ。ベルクーリが、その手の下らない話にうじうじ悩むのは、初めてじゃないのよ。実はね、百年くらい前にも、あの子は同じような事を言い出したの。だからね、私が直してあげたの。」

「「「「「「………………ッ!?」」」」」」

 

 俺たちが驚愕する中、アドミニストレータの言葉は続く。

 

アドミニストレータ「あの子だけじゃない……百年以上経ってる騎士は、皆そう。辛い事は、何もかも忘れさせてあげたのよ。安心して、アリスちゃん、イーディスちゃん。今、貴女達にそんな悲しい顔をさせている記憶も消してあげるわ………。何も考える必要のないお人形にちゃんと直してあげるわ。」

ケント「狂ってる…………!」

ユージオ「ああ…………。」

 

 俺はそう呟いた。

 人の記憶を自在に消し、或いは書き換える力。

 その恐ろしさは、俺たちが身をもって体感している。

 すると、アリスとイーディスが呟く。

 

アリス「…………確かに、私は今、胸を引き裂かれる程の苦しみと悲しみを感じています。こうして立っていられるのが不思議なほどに。」

イーディス「私もそうよ。…………でも、私たちはこの痛みを………初めて感じるこの気持ちを消し去りたいなんて思わない。何故なら、この痛みが、私たちが人形の騎士じゃなくて、1人の人間である事を教えてくれる。だから、私たちはアンタの愛を望まない。アンタに直してもらう必要はないわ!」

 

 アリスとイーディスの決別の言葉を聞いたアドミニストレータは、語った。

 

アドミニストレータ「残念だけど、貴女達がどう思うかなんて関係ないの。私が再シンセサイズすれば、今の貴女達の感情なんて何もかも消えちゃうだから。」

 

 アドミニストレータが、優しい笑顔で残酷な事を言う中、キリトが呟く。

 

キリト「あなたが、自分に対して行ったように………かな、クィネラさん。」

アドミニストレータ「ねぇ、坊や。昔の話はやめてって言わなかったかしら?」

カルム「昔の話をやめただけで、事実が消えるのか?いや、消えはしない。過去から積み重なって、今のアンタがいる。だから、アンタも1人の人間なんだよ。」

アドミニストレータ「だったら、どうだって言うの?向こう側から来た坊やたち。」

カルム「人間である以上、過ちは犯す物だ。そして、アンタの過ちは、もう修正不可能な領域にまで達してしまった。整合騎士団が半壊以上、もし今すぐにでもダークテリトリーの総侵攻が始まったら人界は滅ぶぞ?」

アドミニストレータ「騎士たちを壊してきたのは坊やたちでしょう?」

キリト「自分だけ生き延びられたら、その後に最初からやり直せばいいとでも思ってるのかもしれないけどな。そうはいかない。」

 

 どういう意味だ?

 そんな風に首を傾げる中、キリトとカルムの話は続く。

 

キリト「向こう側には、この世界に対して、真に絶対の権限を持つ者たちがいるからだ。」

カルム「彼らはこう思うだろうな。今回は失敗だった、また最初からやり直そう、と。そしてボタン一つが押されて、この世界の凡ゆる物が消えてしまうんだ。それは、人間とて、例外じゃない。」

 

 その言葉に、俺、ユージオ、アリス、イーディスは理解できなかった。

 だが、アドミニストレータだけは、2人が言いたい事を理解したようだ。

 

アドミニストレータ「…………それなら、貴方たち向こう側の人間はどうなのかしら?自分たちの世界が、より上位の存在に創造された可能性を意識し、世界がリセットされないように上位者の気に入る方向にのみ進むように努力しているの?」

キリト「………ッ!」

カルム「………………。」

 

 アドミニストレータの問いに対して、2人は答えられなかった。

 

アドミニストレータ「…………そんなはず無いわよね。戯れに世界と命を創造して、要らなくなれば消し去ろうなんて連中だものね。そんな世界からやってきた坊や達に、私の選択をどうこう言う権利があって?私はごめんだわ。創造神を気取る連中に阿って、存在し続ける許しを乞う、なんて惨めな真似は。私の存在証明はただ支配することのみにある!その欲求だけが私を動かし、私を生かす!この足は踏みしだくためにあるのであって、決して膝を屈するためではない!!」

 

 俺は、その圧力に押され、思わず右足を引いてしまった。

 だが、キリトとカルムも、上体を揺らしこそするが、大きく叫ぶ。

 

キリト「ならば!………ならば、あなたはこのまま人界が蹂躙されるに任せ、民なき国の支配者として、名ばかりの玉座で1人滅びの時を待つつもりなのか!!」

アドミニストレータ「アハハハ!私はこのアンダーワールドをリセットさせるつもりはもちろん、最終負荷実験すら受け入れるつもりはないのよ。そのための術式は完成しているのよ。喜びなさい………。誰よりも最初に貴方たちに味わせてあげるから…………。」

カルム「術式………?一体何をするつもりだ…………!?」

 

 カルムの問いに対して、アドミニストレータは独白を続ける。

 

アドミニストレータ「正直に言うとね、整合騎士団はただの繋ぎだったのよ。これが完成したからには、もう人形の記憶や性格を操作する必要はない………。私が真に求める武力には記憶や感情はおろか、考える力すらもいらない。ただひたすらに目の前の敵も屠り続ける存在であればいい。つまり、人間である必要はないの……。さぁ、目覚めなさい!私の忠実なるしもべ!魂なき殺戮者よ!!リリース・リコレクション!!」

 

 あれは、記憶解放術の術式!?

 すると、周囲に飾られていた武器が、アドミニストレータの下へと集まっていく。

 俺たちが動けない中、キリトとカルムは動いていた。

 

キリト「ディスチャージ!」

カルム「頼む!火炎剣烈火!!」

 

 キリトが熱素の神聖術を放ち、カルムが炎を纏った刃王剣十聖刃をふるう。

 行く先は、アドミニストレータが持つ敬神モジュールだ。

 だが、あの武器の一部が、2つの攻撃を無力化してしまう。

 そして、宝石が巨体に格納され、地面へと落ちる。

 

カルム「なんだよ、アレ…………!?」

アリス「あ、ありえません………!」

イーディス「同時に複数の………30の神器を使った大掛かりな記憶開放術を使うなど、術の理に反しているわ………!」

「「「「っ!?」」」」

アドミニストレータ「これこそ私の求めた力、永遠に戦い続ける純粋なる攻撃力………!名前は…………そうね、ソードゴーレムともしておきましょうか?」

キリト「剣の………。」

カルム「自動人形…………!?」

アドミニストレータ「剣の一本一本が、神器級の優先度を持っている…貴方たちはこのソード・ゴーレムに勝てるかしら?私が貴重な記憶領域をギリギリまで費やして完成させた最強の兵器に………!」

「「「「「「…………!!」」」」」」

アドミニストレータ「さぁ………闘いなさい、ゴーレム………お前の敵を滅ぼすために!」

 

 そう言って、ソードゴーレムは動き出してきた。

 俺たちが反応に遅れる中、アリスとイーディスが剣を持って俺たちの下へ。

 

アリス「ハァァァァ!!」

イーディス「させないわよ!」

 

 ゴーレムの剣を、アリスとイーディスが受け止めて、キリトとカルムが隙をついて攻撃しようとするが、アリスとイーディスの剣が弾かれる。

 

アリス「しまっ………!」

イーディス「うわっ…………!」

 

 2人は体勢を整えようとするが、無慈悲にも剣が2人の体を貫き、その場に倒れる。

 

キリト「ぐぅ……ああああああぁぁぁぁぁ!!」

カルム「キリト、落ち着け!!」

 

 キリトが秘奥義を発動しながら突っ込むが、あっさり弾かれて、壁に叩きつける。

 カルムも、雷と風を纏った刃王剣十聖刃で攻撃するが、無力化されて、壁に叩きつけられる。

 そんな…………!

 あの4人は、強い剣士のはず………!

 それなのに、こんなにあっさり倒されるなんて…………!

 俺とユージオが硬直してる中、ソード・ゴーレムは少しずつ近づいてくる。

 すると。

 

???『短剣を使うのよ、ユージオ、ケント!』

「「!?」」

 

 その声に、我に返る。

 その声は、続く。

 

???『床の昇降盤に刺しなさい!時間は私が稼ぐから!!急いで!』

 

 すると、キリトの近くから巨大な蜘蛛が現れて、ソード・ゴーレムに向かっていく。

 何故、蜘蛛が居るんだと思ったが、そんな事を気にしている場合じゃない!

 俺とユージオは、昇降板にまで行き、指示通りに、短剣を刺す。

 すると、紫色の光が周囲を包みこむ。

 蜘蛛は、ソード・ゴーレムに倒されていた。

 

???『良かった………間に合った。………最後に、一緒に闘えて、うれし……っ。』

 

 そう言って、事きれた。

 ソードゴーレムが、俺とユージオに向かってくる中。

 

???「バースト・エレメント!!」

???「光あれ!!」

 

 昇降板から現れた扉から、雷と2本の剣を持った剣士が飛び出してきた。

 雷と剣士の剣は、ソードゴーレムに当たり、大きく吹っ飛ぶ。

 そこに居たのは、幼き賢者と、ローブを纏った1人の青年だった。

 

ユージオ「カーディナルさん………!」

ケント「ユーリ…………!」

 

 そう、幼き賢者はカーディナル、青年はユーリだったのだ。

 




今回はここまでです。
ユーリは、光剛剣最光と闇黒剣月闇の装備状態です。
ユージオ、誕生日おめでとう!!
小説内では、こんな状況ではありますが。
一応、大戦編では、カルム、ケント、ユージオの3人に強化を入れる予定です。
カルムは、セイバーのアルティメットバハムートをモチーフにした強化をする予定です。

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