ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、カルムが刃王剣十聖刃を覚醒させます。


第45話 刃王剣の覚醒

カルムside

 

 まさか、あんなに強いなんて………。

 俺たちはソードゴーレムと戦ったのだが、あっという間に倒されてしまった。

 甘く見ていた訳ではない。

 だが、想定していた強さを遥かに上回ったのだ。

 すると、キリトの頭から、1匹の蜘蛛が現れて、ソードゴーレムに挑む。

 その蜘蛛が、ユージオとケントに指示を出していたが、2人は蜘蛛の時間稼ぎを無駄にはせず、昇降板に短剣を刺していた。

 あの蜘蛛は、シャーロットという、俺たちに張り付いていた蜘蛛だ。

 その蜘蛛は、命懸けの突撃を行い、倒れた。

 こんな絶望的にも関わらず、シャーロットは死んでしまったのだ。

 俺が歯噛みをしていると、紫色の光が周囲を包み込み、ドアが現れる。

 そのドアから、一筋の雷と、2本の剣を持った剣士が飛び出してくる。

 その2つの攻撃を喰らい、ソードゴーレムは動きを止めた。

 その攻撃を放った主は、カーディナルとユーリだった。

 カーディナルは、アリスとイーディスの2人に近づいて、治療を施していた。

 俺とキリトの下には、ユーリが来て、光剛剣最光を翳すと、俺とキリトの怪我が治っていく。

 俺とキリトがお腹を摩っている中、カーディナルと共にアリスとイーディス、少し離れていたユージオとケントもやってくる。

 

アリス「キリト………カルム………。この方は、一体…………?」

キリト「この人の名前はカーディナル。二百年前にアドミニストレータと戦い、追放された、もう1人の最高司祭だ。」

カルム「大丈夫、味方だ。俺とキリト、ユージオ、ケントを助けて、ここまで導いてくれた人だ。この世界の事を心から愛して、また憂いているんだ。」

イーディス「分かったわ。私とアリスの傷を治してくれたこの人を信じるわ。………それに、ユーリも居てくれるなんて、ありがたいわね。」

ユーリ「ああ。俺も本気で行こう。」

 

 そんな風に話している中、カーディナルは、シャーロットの骸に近づき、持ち上げる。

 そんなカーディナルに、俺たちも近寄る。

 

カーディナル「……………この頑固者………!」

カルム「済まない………。俺たちを助けるためにシャーロットは…………。」

カーディナル「お主が謝ることではない……。せっかく任を解き、労い………お前の好きな本棚の片隅で望むように生きよと言ったじゃろうに…………。」

キリト「最期に………俺たちと闘えて良かったって…………その、シャーロットもフラクトライトを持っていたのか?」

カーディナル「いや………お主たちの世界の言葉を借りるのなら、シャーロットはNPC同じ存在じゃ。」

キリト「…………そんな………でも、あの言葉は…………あの話し方はまるで………!?」

 

 俺とキリトが、シャーロットの事に関して驚く中、カーディナルの言葉は続く。

 

カーディナル「この子はもう200年も生きておった。その間、ずっとわしとユーリと語らい、多くの人間たちを見守ってきたのじゃ。お主に張り付いてからも早2年………。それ程の時が経てば、例えフラクトライトを持たなくても………。例えその本質が入力と出力データの蓄積だとしても、そこに真実の心が宿ることもあるのじゃ………。そう…………時として、愛すらも持つこともな………!貴様には永遠に理解できないことであろうがな!!アドミニストレータ………虚ろなる者よ!」

 

 カーディナルは、そう言って、アドミニストレータを睨む。

 だが、アドミニストレータは、やけに余裕の態度だった。

 カーディナルとユーリが加勢してきたのにも関わらずにだ。

 

アドミニストレータ「来ると思ったわ。その坊や達を苛めていれば、いつかはカビ臭い穴倉から出てくると思ってた。それがお前の限界ね、おチビさん。私に対抗するための手駒を仕立てておきながら、それを駒として使い捨てる事も出来ないなんて。まったく度し難いわね、人間というものは。」

 

 やはり、俺たちを追い詰めて、カーディナル達を引き出すのが目的だったのか。

 

カーディナル「ふん。暫く見ぬうちに、貴様こそ随分と人間の真似が上手くなったものじゃな。」

ユーリ「二百年の間、ずっと鏡を相手に笑う練習でもしていたのか?」

 

 カーディナルとユーリの、皮肉が込められた辛辣な言葉を、アドミニストレータは微笑で受け流す。

 

アドミニストレータ「あら………そういうオチビさんこそ、その可笑しな喋り方は何のつもりなのかしら?200年前、わたしの前に連れて来られた時には、心細そうに震えていたのに……ねぇ、リセリスちゃん?」

カーディナル「わしをその名で呼ぶな、クィネラ!わしの名はカーディナル………貴様を消し去るためだけに存在するプログラムじゃ!」

アドミニストレータ「フフッ、そうだったわね。そして、私はアドミニストレータ………全てのプログラムを管理する者。」

 

 口論の内容が、姉妹喧嘩染みてるな。

 だが、現状、そう突っ込めない。

 

アドミニストレータ「挨拶が遅れて悪かったわね、オチビちゃん………。貴女を歓迎するための術式を用意するのにちょっと手間取っちゃったものだからね!」

「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」

 

 アドミニストレータが指を弾くと、カセドラル最上階の窓が全て割れた。

 周囲には、闇のような景色が広がっていた。

 

カーディナル「貴様………!アドレスを切り離したな!?」

アドミニストレータ「200年前、あと一息で殺せるというところで、お前を取り逃したのは、確かに私の失点だったわ、オチビさん?」

カルム「昇降板まで………!?」

 

 カーディナルの言葉から察するに、大図書室の様に、アドレスを切り離したのだろう。

 つまり、退路は断たれた。

 

アドミニストレータ「だからね………私はその失敗から学ぶことにしたの。いつかお前を誘い出せたら、今度はこっち側に閉じ込めてあげようって………鼠を狩る猫のいる檻の中にね。」

カーディナル「猫と鼠のう………。この戦力差では、どちらが鼠で、どちらが猫かが分からぬと思うが?」

ユーリ「何せ、俺たちは八人、そして、お前はたった一人だからな。」

アドミニストレータ「八人対一人…………?いいえ、その計算はちょっとだけ間違ってるわね。」

 

 すると、大きな音がする。

 その音源は、カーディナルとユーリの攻撃を食らったソードゴーレムが、何事も無かったように立っていたのだ。

 しかも、黒焦げになっていたのが、剥がれて金色に戻っていた。

 

アドミニストレータ「正しくは、8人対300人なのよ?私を加えなくてもね。」

キリト「300人………?」

カルム「それはどういう………っ!?」

カーディナル「貴様、なんと…………なんという非道な真似を………!?」

ユーリ「その300人は、お前が守るべき民じゃないのか!?」

ユージオ「………民…………?」

ケント「民って、人間………!?」

アリス「人、だというのですか………!?」

イーディス「あの怪物が…………!?」

 

 俺たちは絶句した。

 まさか、人を神器に転換するなんて………!

 

アドミニストレータ「守るべき民とか、私がそんな低次元なことを気にするわけないじゃない。私は支配者よ?私の意志のままに支配される者が下界に存在するだけでいいのよ!人だろうと、剣だろうと大した問題じゃないわ………。」

カルム「お前、人の命を何だと思ってんだ!」

アドミニストレータ「フフッ………何をそんなに怒っているの?数多の民から、たかが300個程度のヒューマンユニットデータを物質変換したくらいでしょ?むしろ、私の忠実なるゴーレムの糧となれたことに感謝してほしいくらいだわ。」

ユーリ「貴様………!!」

 

 アドミニストレータの、命を軽く見ている発言には、俺とユーリは怒る。

 アイツ…………!!

 

カーディナル「たかがじゃと…!?」

アドミニストレータ「そうよ。これはプロトタイプ…いやったらしい負荷実験に対抗するための完成形を量産するためには………ざっと半分くらいは必要かなって感じだわ。」

ユーリ「半分だと………!?」

アドミニストレータ「人界に存在する約8万のヒューマンユニットの半分………。それだけあれば、足りるんじゃないかしら?ダークテリトリーの侵攻を退けて、向こう側に攻め込むのにね。」

「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」

 

 それは、まさに悪魔の所業だった。

 4万の人が、あの化け物に変わるのだ。

 そんな事は、絶対に許されない。

 

アドミニストレータ「どう?これで満足したかしら、アリスちゃんにイーディスちゃん?貴女達の大事な人界はちゃんと守られるわよ?」

アリス「…………最高司祭様…………もはや貴女に人の言葉は届かない…………。故に神聖術師として尋ねます。その人形を作っている30本の剣………。その所有者はどこにいるのですか?」

イーディス「例え、最高司祭様が完全支配できる剣は1本のみという原則を破れたとしても、その次の原則は破れない筈………。記憶開放を行うには剣と主の間に強固な絆が必要となるわ。最高司祭様、その人形を形作る剣の源となったのが、罪なき民たちだというのなら、アンタが剣たちに愛されるわけがない!」

アドミニストレータ「そうね………。普通ならそうよね………。でも、答えならアリスちゃんとイーディスちゃんの目の前にあるわよ?………尤も、ユージオとケントには分かっている筈よ?」

 

 ユージオとケントが?

 アドミニストレータの言葉に首を傾げ、ユージオとケントを見ると、2人は天井を見ていた。

 その顔は、驚愕していた。

 

ユージオ「そうか………!そういう事だったんだ………!」

キリト「どういう事だよ!?」

ケント「…………天井のあの水晶………。あれはただの飾りじゃない。きっと、あれが整合騎士達が奪われた記憶の欠片だ………!」

カルム「何…………!?」

ユーリ「まさか…………!!」

「「っ!?」」

 

 ユージオとケントの言葉に、俺たちは再び絶句して、カーディナルが叫ぶ。

 

カーディナル「おのれ、クィネラ!貴様は……貴様はどこまで人を弄ぶつもりなのじゃ!シンセサイズの秘儀で抜き取った記憶ピースを精神原型に装填すれば、それを疑似的な人間ユニットとして扱うことは可能じゃ………。しかし、その知性は極めて限定され、とても武装完全支配術という高度なコマンドを行使することはできぬ。じゃが、記憶ピースとリンクする武器の情報が重複する場合は別じゃ。すなわち、整合騎士たちから奪った記憶に刻まれた………愛する人間たちをリソースとして作った………そういうことじゃな、アドミニストレータよ!?」

 

 そう、あの剣は、整合騎士達が愛する人たちを転換して、生成されたのだ。

 本当に、悪魔に魂を売りやがった………!

 

アドミニストレータ「騎士たちの模擬人格が望むのはたった一つ………。記憶している誰かに触れたい、抱きしめたい、自分のものにしたい………。そういう醜い欲望がこの剣人形を動かしているの。彼らは今、すぐ傍にその誰かがいることを感じているわ…………。でも触れない、一つになれない………。狂おしほどの飢えと渇きの中で見えるのは…………邪魔をする敵の姿だけ。この敵を斬り殺せば、欲しい誰かが自分のものになる…………だから戦う。どんなに傷を負っても、何度倒れても起き上がって永遠に戦い続けるの!どう?素敵な仕組みでしょ?本当に素晴らしいわ、欲望の力というものわ!!」

カーディナル「違う!!」

 

 アドミニストレータの狂った発言に、カーディナルが叫ぶ。

 

カーディナル「違う!その感情を、欲望などという言葉で汚すな!それは………それは純粋なる愛じゃ!!」

アドミニストレータ「同じことよ………。愚かなオチビさん?愛は支配、愛は欲望………その実態はフラクトライトから出力される信号に過ぎない。そして、何より重要なのは………その事実を知ってしまった今、お前には決して人形を破壊できないという事実よ………なぜなら!人形の剣たちは形を変えただけの生きた人間共なのだから!!」

カーディナル「っ…!?!?」

 

 そう、あのソードゴーレムを構成する剣は、人が転換された物だ。

 殺人が出来ないカーディナルにとって、破壊できない。

 

カーディナル「そうじゃ………その通りじゃな。わしには人を殺せぬ…………人ならぬ貴様だけを殺すために、200年の時を費やして術を練り上げてきたが、どうやら無駄だったようじゃ。」

カルム「…………カーディナル…………!?」

アドミニストレータ「フフッ………!アハハハハハハハハハ!!!なんて………なんて愚かななのかしら!なんて滑稽なのかしら!!この世界に存在する命なるものは全て書き換え可能なデータに過ぎないのに!!!」

カーディナル「いいや………人だとも、クィネラよ。アンダーワールドに生きる人々は、我々が失ってしまった真の感情を持っている。笑い、悲しみ、喜び、愛する心をな!それ以上に何が必要であろうか?!」

ユーリ「まさか………!!」

 

 カーディナルはそう言って、前に出る。

 まさか………!!

 

カーディナル「わしの命はくれてやる!代わりに、この若者たちとユーリの命は奪わんでくれ!!」

カルム「待て!カーディナル!!」

 

 俺はそう叫んだが、ソードゴーレムによって黙らされる。

 

アドミニストレータ「そんな交換条件を受け入れて、私にどんなメリットがあるのかしら?」

カーディナル「戦闘を望むのなら、その哀れな人形が動きを封じながらでも、貴様の天命の半分くらいは削ってみせるぞ?それ程の負荷が掛かれば、貴様の心もとない記憶領域が更に危うくなるのではないか?」

アドミニストレータ「ふーん…………考えたわね………。まぁ、いいわ。そんな雑魚どもを見逃すくらい、お前を殺せるのなら、私にとっては全く問題ないことだしね。」

 

 カーディナルの条件を呑んだアドミニストレータは、ソードゴーレムを下がらせる。

 

アドミニストレータ「私も面白い遊びを後に取っておけるしね。じゃあ、ステイシア神に誓いましょう。オチビさんを………。」

カーディナル「いや、ステイシア神ではなく、貴様が唯一絶対の価値を置く、自らのフラクトライトに誓え。」

 

 そう話していたが。

 

キリト「ダメだ………。」

カルム「これじゃあ、八年前と変わらない。目の前で大切な人を失わせない。」

カーディナル「じゃが、わしにはソードゴーレムは倒せん………。」

カルム「だから、俺たちが………いや、俺がやる。」

ユーリ「カルム…………。」

カルム「刃王剣十聖刃は、世界の理を書き換える力を持つ聖剣だ。」

アドミニストレータ「あら………?折角命拾いさせてあげようとしたのに、そこまで死にたいのかしら?」

カルム「死ぬんじゃない。生きて、ここから脱出するんだ。」

 

 俺はそう言って、ソードゴーレムに向かって駆け出していく。

 ソードゴーレムは、俺に向かって剣を振るってくるのだが、俺はそれを躱す。

 そうだ、これは、俺が背負うべきなんだ。

 刃王剣十聖刃に選ばれた、この俺が。

 ソードゴーレムの攻撃を躱して、狙うは、敬神モジュールだ。

 敬神モジュールに向かって、刃王剣十聖刃を突き出していく。

 だが、ソードゴーレムは、させないと言わんがばかりに、肋骨の部分に当たる剣を閉じてくる。

 それでも、何とか隙間に刺す事が出来た。

 すると、ユーリの声が聞こえてくる。

 

ユーリ「今だ!!」

カルム「リリース・リコレクション!!」

 

 俺は、刃王剣十聖刃の記憶解放術を発動する。

 すると、周囲が強烈な光に包まれる。

 目を開けると、そこには300人もの人の姿が見える。

 そして、整合騎士達も。

 恐らく、敬神モジュールを介して、ソードゴーレムの意識の中に居るのだろう。

 俺は、どうにかして、整合騎士の大切な人たちを戻せないかと見てみるが、術式が強力すぎて、元には戻せないと判明する。

 

カルム「ダメか………!なら、せめて、救ってみせる………!」

 

 すると、2つの記憶の欠片が、こちらにやって来て、人の形に変わる。

 それは、幼いアリスとイーディスだった。

 

カルム「アリス………イーディス………。」

アリス「まさか、ここまで来てくれるなんてね。」

イーディス「ありがとうね、カルム。」

カルム「済まない、あの時に助けられなくて………!」

アリス「良いの。」

イーディス「大丈夫だから。」

カルム「そういえば、2人はどうなるんだ?大切な人は居るのか?」

 

 俺が2人にそう聞くと、2人は顔を見合わせて、答える。

 

アリス「私とイーディスは、使い勝手が違うのか、対応する武器が作れなかったのよ。」

イーディス「だから、私たちは………整合騎士としての私たちと融合するの。」

カルム「………!?」

 

 そんな事ができるのか!?

 俺がそう驚いていると。

 

アリス「…………うん。整合騎士としての私たちとも話して、決まったわ。」

イーディス「だから、この300人達を、救ってあげて…………。」

カルム「ああ…………!」

 

 いつ話したのかは分からないが、整合騎士としてのアリスとイーディスが良いと言うのなら、俺はやる。

 俺は刃王剣十聖刃を大きく振るい、虹色の斬撃波を放つ。

 すると、整合騎士達の記憶の欠片と大切な人たちが繋がって、その二つが、安らかな表情を浮かべて、消えていく。

 せめて、魂を救えて良かった………。

 そして、幼いアリスとイーディスは、整合騎士としての2人と融合する。

 すると、とある感覚が伝わってきた。

 それは、ユージオとケントの2人が、それぞれの剣と融合した事が。

 まさか、整合騎士にされる際の術式を使って、カーディナルがしたのか!?

 

カルム「ケント、ユージオ………!今からそっちに戻る!!」

 

 俺は、誰も居なくなったソードゴーレムの意識空間から脱出する。

 




今回はここまでです。
次回で、アドミニストレータと決着をつけようかなと考えています。
そして、カルムが察知していますが、ユージオとケントは、青薔薇の剣と雷鳴剣黄雷と融合しています。
展開的には、アリシゼーション・リコリスを元にしています。
刃王剣十聖刃は、世界の理………システムを書き換える剣と、カルムは解釈しております。
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