ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、アドミニストレータとの決戦です。


第46話 支配者の終焉

キリトside

 

 俺は、「ダメだ」と言っておきながら、動けなかった。

 アイツは、壮絶な覚悟を決めたような表情だった。

 その覚悟と共にソードゴーレムに突っ込んでいき、記憶解放術を発動した。

 すると。

 

アドミニストレータ「貴様………!一体何をしている!!」

ユーリ「させるか!!」

 

 アドミニストレータが、ソードゴーレムに掴まったまま動いていないカルムに攻撃しようとするが、ユーリが妨害に入る。

 アリスとイーディスも、ユーリの加勢に入る。

 皆が動いているのに、俺は、動けないのか………!?

 すると、ユージオとケントが、覚悟を決めた様な表情を浮かべる。

 

ユージオ「カーディナルさん。」

ケント「俺たちを、俺たちの体を、剣にして下さい。あの人形と同じように。」

キリト「ユージオ………ケント…………?」

カーディナル「そなたら…………。」

ユージオ「僕らがここから逃げたら………アドミニストレータは世界中の人間たちの半分を、あの恐ろしい怪物に変えてしまう。そんなの、絶対にさせちゃダメです。」

ケント「その悲劇を防ぐ為の、最後の可能性が残されているとすれば、それは、この術式の中にある。」

 

 そう言って、ユージオとケントは、とある術式を唱える。

 

「「システム・コール。………リムーブ・コア・プロテクション。」」

 

 リムーブ・コア・プロテクション。

 恐らく、ユージオとケントは今、己のフラクトライトに対する無制限の操作権限をカーディナルに与えたのだろう。

 2人がなぜ、そんな術式を知っているのかは分からないが、その言葉は、2人の決意と覚悟に満たされていた。

 

カーディナル「よいのか、ユージオ、ケント。元の姿に戻れるかどうか分からぬぞ。

ユージオ「良いんです。これが、僕たちの役目………。僕たちがこの場所にいる理由なんです。」

ケント「そうだ、最後に、これだけは伝えておかないとな。カーディナルさん、キリト。最高司祭に、金属の武器は届かない。だから、短剣を刺せなかったんだ。」

キリト「そう………なのか………。」

 

 それを聞いて、カーディナルは無言で頷いた。

 ユージオとケントは、言葉を続ける。

 

ユージオ「それじゃ………お願いします。アドミニストレータが、ユーリ達に気を取られている隙に。」

キリト「…………だめだ、やめろ!ユージオ、ケント!!もし、元に戻れなかったら………2人の望みは…………!」

ケント「良いんだ。これが、俺たちの、為すべき事なんだ。」

 

 その決意に満ちた言葉に、俺は何も言う事が出来なかった。

 カーディナルは、頷いた。

 

カーディナル「よかろう、ユージオ、ケント。我が術式を………そなたらの決意に捧げよう。」

ユージオ「キリト、頼む。」

キリト「………分かった。」

 

 俺は、ユーリ達に加勢する。

 未だに、カルムはソードゴーレムを掴んだまま、動いていないが、大丈夫だよな。

 すると、アドミニストレータも、カーディナルが何をしようとしているのかに気づいたのか、カーディナルの方を向く。

 

アドミニストレータ「リセリスが………!何をしている!!」

ユーリ「カーディナル達の邪魔はさせない!」

 

 アドミニストレータが、カーディナルの妨害をしようとするが、俺たちが阻止する。

 その中、ユージオとケントの真上に、それぞれの剣が滞空していた。

 

ユーリ「光と闇…………!これが、始まりに生まれし聖剣の力だ!!」

 

 ユーリはそう言って、オーラを纏った光剛剣最光と闇黒剣月闇を振るう。

 光と闇が生成されて、アドミニストレータの後ろで、ブラックホールみたいなのを生み出すも、アドミニストレータに無力化される。

 だが、時間稼ぎはできたようで、カーディナルが術式を唱える。

 

カーディナル「リリース・リコレクション!」

 

 その声と共に、ユージオとケントは、それぞれの剣と一体化する。

 カーディナルは、倒れる。

 

キリト「カーディナル!」

カーディナル「心配ない。それより、見てみよ。美しい………。人の愛………。そして意志が放つ、光………。なんて………美しい……。」

カルム「そうだな…………。」

 

 すると、カルムがいつの間にか俺とカーディナルの隣に来ていた。

 

カルムside

 

 何とか、ソードゴーレムの意識の中から脱出出来たな。

 すると、ユージオとケントが、それぞれの剣と融合していた。

 しかも、アリスとイーディスの記憶の欠片とも融合していた。

 だが、記憶の欠片の中の幼い2人の意識は、整合騎士としての2人と融合したはず……。

 もしかして、あの記憶の欠片の中に居た2人の残留思念が、ユージオとケントに力を貸しているのか?

 

アドミニストレータ「おのれリセリス………!余計な真似を………!術式を模倣しようと、そんな貧相な二振りの剣で、私の殺戮兵器に敵うはずがないじゃない!」

 

 アドミニストレータはそう叫ぶ。

 だが、ソードゴーレムは、沈黙したままだ。

 それもそのはず。

 剣に転換された人たちを救う事が出来ないと判断した俺は、せめて、その魂だけでも救うべく、整合騎士の記憶の欠片とその人の魂が、合わさって消滅したのだ。

 それゆえ、ソードゴーレムはもう動く事が出来ない。

 いつまでも動かないソードゴーレムに、アドミニストレータが動揺している中、青薔薇の剣と雷鳴剣黄雷は、ソードゴーレムに突っ込んでいき、ソードゴーレムは崩れた。

 

アドミニストレータ「何故………!?動かないのだ…………!」

カルム「俺が、武器にされた人たちの魂を救ったんだ。だから、それはもう、ただの抜け殻だ。」

アドミニストレータ「小賢しい真似を………!つまらない悪足掻きをしてくれたものね、ちびっ子は………!折角の楽しい記憶に傷がついちゃうじゃない………!」

カーディナル「…………クィネラ。お主の負けじゃ。ソードゴーレムはもう居ない。」

アドミニストレータ「………でも、せいぜいプロトタイプを壊すのが精一杯だって事ね。あんなの、これから何百何千と作れるんだから。」

 

 ちっとも懲りてないな。

 すると、2人の意識が入った剣が、アドミニストレータに向けられる。

 

アドミニストレータ「あら………?やる気なの坊や達?隙間を突いて私の人形を崩したくらいで、随分と強気じゃない。」

 

 アドミニストレータは、派手な装飾が入った細剣を手にする。

 青薔薇の剣と雷鳴剣黄雷は、氷と雷を纏わせて、光の翼が現れる。

 俺とキリトは、即座に動いて、それぞれの剣を掴む。

 剣を掴むと、翼は消える。

 

キリト「2人だけに………行かせるもんか………!」

カルム「ケント、ユージオ。2人は、これまで2人で罪を背負ってきたんだ………!俺たちの分まで…………!」

キリト「だから、一緒に戦おう。」

カルム「この狂ってしまった世界を、救うために………!!」

 

 すると、キリトは旧SAOでの服装に変わり、俺も、旧SAOでの服装に変わるが、刃王剣十聖刃が光り、上書きされていく。

 その姿は、右肩に竜の装飾がついて、右腰にマントがつく。

 この姿は、以前戦った神山飛羽真がなった姿とほぼ同じだ。

 この事から、俺は心のどこかで、神山飛羽真に憧れていたのかもしれない。

 俺も、神山飛羽真の様な、強い剣士になりたい。

 だから、この姿に変わった。

 すると、アドミニストレータが細剣を向けてくる。

 

アドミニストレータ「………許さぬ。ここは私の世界だ。招かれざる侵入者達に、そのような振る舞いは断じて許さぬ。膝をつけ。首を差し出せ!恭順せよ!!」

 

 アドミニストレータは、そう絶叫する。

 だが、俺たちの答えは決まっていた。

 

キリト「違う………。あなたはただの簒奪者だ。」

カルム「世界を………そこに生きる人々を愛さない者に、支配者たる資格はない!!」

アドミニストレータ「愛は支配なり。私は全てを愛する。全てを支配する!!」

 

 そう言って、俺たちの戦いは幕を開ける。

 アドミニストレータは、天山烈波を放ってくるが、キリトは、クロス・ブロックで凌ぐ。

 その間に、俺が刃王剣十聖刃と雷鳴剣黄雷で攻撃する。

 アドミニストレータは、その攻撃を捌いていくが、対応が遅い。

 その理由は、ただ一つ。

 アリスとイーディスが言っていたのが、剣を2本持つのは、格好をつけたいだけの上級貴族と相場が決まっている、と。

 その為、二刀流や、異種の二刀流には対応しきれないのだろう。

 

アドミニストレータ「小癪な………!でもね。」

カルム「うん?」

 

 すると、アドミニストレータの周囲に、アドミニストレータが持つ剣と似たような色合いの様々な武器が現れる。

 

キリト「アレは!?」

アドミニストレータ「私だってね、刃王剣十聖刃の事に関しては、ある程度は調べていたのよ!」

カルム「なるほどな………!リリース・リコレクション!!」

 

 俺も対抗して、刃王剣十聖刃の記憶解放術を発動して、周囲に火炎剣烈火、水勢剣流水、雷鳴剣黄雷、土豪剣激土、風双剣翠風、音銃剣錫音、闇黒剣月闇、光剛剣最光、煙叡剣狼煙、時国剣界時を召喚する。

 アドミニストレータが生成したそれぞれの武器に対抗するように、それぞれの聖剣をぶつけていく。

 すると、アドミニストレータが生成した武器は呆気なく壊されていく。

 アドミニストレータが動揺する中、キリトが攻撃して、右腕が斬り落とされる。

 すると、アドミニストレータは絶叫した。

 

アドミニストレータ「おのれぇぇぇ!!」

 

 2人はヴォーパル・ストライクを発動する構えを取った。

 ある程度エネルギーを貯めると、2人は同時に駆け出していた。

 

キリト「うおおおお!!!」

アドミニストレータ「はぁぁぁ!!!」

 

 2人のヴォーパル・ストライクは、お互いにぶつかり合い、アドミニストレータの剣が砕け散った。

 キリトの黒剣は、アドミニストレータの左腕も斬り落としていた。

 すると、アドミニストレータは更に激昂する。

 

アドミニストレータ「おのれぇぇぇぇ!!」

 

 叫んだアドミニストレータは、何と、己の髪を使って、キリトを縛ろうとしてくる。

 キリトは、黒い剣と青薔薇の剣で迎撃していくが、遂には縛られる。

 

アドミニストレータ「このまま締め殺してあげるわ!!」

キリト「まだだ………!まだだァァ!!行け、カルム!!」

カルム「ああ!」

 

 俺はキリトの背中を踏み台にして、高く空へと飛び上がる。

 アドミニストレータは、対応が遅れていた。

 その間に、俺は刃王剣十聖刃を飛ばして、キリトの拘束を解き、俺とキリトは、ヴォーパル・ストライクを、青薔薇の剣と雷鳴剣黄雷で放つ。

 2本の剣は、アドミニストレータの胸に突き刺さる。

 

キリト「ううううぉぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

カルム「ハァァァァ!!!」

アドミニストレータ「あああ………!!」

 

 すると、青薔薇の剣と雷鳴剣黄雷に蓄積されたエネルギーが爆発して、俺とキリト、アドミニストレータは吹き飛ぶ。

 俺とキリトは、転がっていき、何とか起き上がる事が出来た。

 カーディナル達の方を見ると、カーディナルとユーリが結界を張っていた事で、アリスとイーディスは無事だった。

 すると、煙が晴れてくると、胸に二箇所の穴が空いたアドミニストレータがそこに居た。

 俺たちは、1人の人間の生命を破壊してしまったのだ。

 だが、ここで躊躇う事は、カーディナルとユーリの為にも許されなかった。

 それは、アドミニストレータの為にも。

 すると、アドミニストレータはつぶやく。

 

アドミニストレータ「………よもや………剣が、4本ともに………金属でないとはね………。ふふ、ふ………。意外………まったく、意外な結果だわ…………。ここに残るリソースを掻き集めても追いつかない、傷を、負うなんて……ね。」

 

 どうやら、瀕死らしいな。

 アドミニストレータは、崩壊寸前の体の向きを変えて、ぎこちなく歩き始める。

 俺たちも、痛む体を必死に動かして、アドミニストレータを追う。

 すると、アドミニストレータは立ち止まる。

 

アドミニストレータ「ふ、ふ………。こうなれば、仕方………ないわ。予定より、随分と早い………けれど、一足先に、行かせて、もらうわね。」

キリト「な、何を………!?」

カルム「言ってるんだ………!?」

 

 アドミニストレータは、右足を踏むと、一台のノート型コンピューターが現れる。

 

キリト「あ、アレは………!」

カルム「システム・コンソール………!!」

 

 間違いない。

 俺とキリトが追い求めていた物だ。

 アドミニストレータは、銀髪の先端で素早くキーボードを叩く。

 すると、アドミニストレータの足元から、紫色の光の柱が出現して、上に向かっていく。

 

アドミニストレータ「ふ、ふ………じゃあね、坊や達。また………会いましょう。今度は、お前達の、世界で。」

キリト「アイツ、まさか………!?」

カルム「現実世界に脱出する気か!?」

 

 不味い、アイツを放置してはいけない!

 だが、俺たちの体のダメージは凄まじく、追えない。

 アドミニストレータが、無音の別れを刻んでいく。

 すると、コンソールの根元に、誰かが居た。

 

チュデルキン「猊下あぁぁぁ………!アタシも、連れて行って、下さいぃぃぃぃ………!」

カルム「チュデルキン!?」

 

 アイツ、死んだんじゃ!?

 俺とキリトが驚いていると、チュデルキンは炎を纏い、アドミニストレータの下に向かっていく。

 流石のアドミニストレータも、驚愕の表情が浮かんでいた。

 チュデルキンは、アドミニストレータにしっかりと巻き付く。

 すると、チュデルキンのみならず、アドミニストレータも炎に包まれる。

 

アドミニストレータ「放せっ………!放しなさい、無礼者!!」

 

 アドミニストレータのその言葉は、チュデルキンにとって、愛の告白に聞こえたらしい。

 

チュデルキン「ああぁぁぁ………!遂に……!遂に猊下と一つになれるのですねぇぇぇ……!」

アドミニストレータ「貴様如き………醜い道化に…………この私が…………!」

 

 アドミニストレータの悲鳴混じりの言葉に、チュデルキンの体は形を失い、炎の塊になりつつも、至福の表情が浮かんでいた。

 

チュデルキン「ああ………猊下………!アタシの………アドミニストレータ………さ………ま………。」

 

 チュデルキンはそのまま消え、アドミニストレータも消えようとしていた。

 すると、アドミニストレータの最後の言葉が、聞こえてきた。

 

アドミニストレータ「…………私は…………私の世界を………。」

 

 その声と共に、白銀の閃光が周囲を満たす。

 しばらくすると、アドミニストレータも、チュデルキンも姿が見えなくなっていた。

 

キリト「…………終わったのか………?」

カルム「…………これで、良いのか、カーディナル?」

カーディナル「うむ。終わったのじゃ。」

ユーリ「アイツは、捨てた筈の元老長の愛によって、消えたのだな。」

 

 俺たちが呟く中、カーディナルとユーリが答える。

 ユーリは、皮肉混じりだったが。




今回はここまでです。
この戦いは、終わりました。
次回で、人界編は終わりです。
カルムの記憶解放術は、刃王クロス星烈斬をモチーフにしています。
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