ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、ベクタの存在を、カルム達が知る所までです。


第61話 焼夷の花

ベクタside

 

 さて、アリスはどこに居るのか………。

 私はそう考えていた。

 ラースのスタッフがロックし忘れたであろうスーパーアカウント、暗黒神ベクタを使って、ダークテリトリーを戦争の駒として使っているのだが、未だ発見には至らないか。

 私としては、アリス、ついでにイーディスというフラクトライトを回収したのち、ここから離れ、アリスとイーディス、STLのテクノロジーを回収して、私の世界を創るつもりだ。

 無論、最初の頃は、3人だけだが、欲を言うと、あの茅場晶彦が作りし本当の異世界、《ソードアート・オンライン》の攻略組と呼ばれるプレイヤーの魂を回収したい物だ。

 特に、かの茅場晶彦を撃破した、紫紺の剣士、黒の剣士、紫鎌、閃光という異名を持つプレイヤーの魂、そして、BoBにて遭遇した、シノンとチェイスという魂が欲しい。

 彼らの魂は、とても甘いだろう。

 そんな事を考えていた。

 

ヴァサゴ「ん?」

ガブリエル「どうした?」

ヴァサゴ「いや、何か、見覚えのある奴が居たような気がしたが………気のせいか。」

ガブリエル「そうか………。」

 

 そんな事をいきなり言うヴァサゴに、私は少し首を傾げつつも、興味を失せた。

 早く、アリスの魂を我が手に………!

 

ディーside

 

 私は、第二陣の最後尾から、戦況を見ていた。

 すると、私の脇に控える伝令術師が、私を見上げて、低い声で告げる。

 

伝令術師「シグロシグ殿、シボリ殿、コソギ殿、共に討ち死にとの事。」

ディー「ええい、使えぬ………。所詮は頭の足りない亜人どもか。」

 

 私はそう吐き捨て、首飾りを見る。

 これは、色合いの変化で時刻を教える事が出来る秘蔵の神器だ。

 6時の石は、橙色に光り、7時の石は未だ闇色。

 つまり、20分くらいしか経過していない。

 たったその時間で討ち取られるとは、所詮は亜人か。

 

ディー「整合騎士どもの位置は掴めたか。」

伝令術師「最前線に視認できた五名は照準済みです。後方に、四名を発見していますが、位置固定には今しばらく。」

ディー「まだたった九人か。あるいは、そもそも数が少ないのか………。しかし、どうあれその八人は確実に屠らねば………。よし、ミニオンを出せ。コマンドは……《七百メル飛行》、《地上に降下》、《無制限殲滅》だ。」

伝令術師「その距離ですと、最前線の亜人部隊を巻き込みますが。」

ディー「構わん。」

 

 所詮は、亜人だ。

 頭の足りない奴を巻き込もうが、それは私には関係のない事だ。

 

伝令術師「数は如何なさいます。現状で孵化済みの八百体、全て運んできておりますが。」

ディー「ふむ、そうだな………。八百、全部を出せ。」

 

 出し惜しみしたいのは山々だが、どうせ、人界を制圧したら、ミニオンは幾らでも量産できる。

 これで、私の大願成就は、もうすぐだ……!

 私は、ミニオンが飛び立つのを見て、そう思った。

 

リョウガside

 

 俺とベルクーリとユーリは、とある準備をして待っていたが、その時が来たようだ。

 

ベルクーリ「来たか………!」

リョウガ「その様だな。」

ユーリ「俺たちも行くぞ。」

 

 ダークテリトリー側から、ミニオンが飛来する気配を感じる。

 既に、レンリが覚醒した事を、俺たちは察知していた。

 そして、ダークテリトリー側から、凍てつく虚無にも似た気配の持ち主がいる。

 恐らく、シャスターはもう居ない。

 なればこそ、俺たちが、そいつを倒すべきだろう。

 すると、ミニオンどもが、俺たちが配置した地帯に残さず入る。

 

ベルクーリ「行くぞ!………時穿剣、空斬!」

リョウガ「時国剣界時、三刻突き!」

ユーリ「光と闇の力!」

 

 ベルクーリの時穿剣、俺の時国剣界時、ユーリの光剛剣最光と闇黒剣月闇の武装完全支配術を発動する。

 格子状に配置された時穿剣の斬撃と、俺の時国剣界時から放たれる槍の突き、光剛剣最光と闇黒剣月闇から放たれる光と闇の斬撃波は、ミニオンを残らず殲滅した。

 

ディーside

 

 これまで全くの無感情を貫いていた伝令術師の声に、微かな怯えの響きを聞き取った私は、嫌な予感がした。

 そして、その予感は、すぐに現実となった。

 

伝令術師「恐れながら閣下………ミニオン八百体、降下直前に全滅した模様にございます。」

ディー「な…………何故だ!敵に大規模な神聖術師が居るとは聞いてないぞ!」

 

 それ以前に、ミニオン八百体を、術式だけで屠るのは不可能のはずだ。

 ミニオン自体は、斬撃に弱いが、空中にいるミニオンに、斬撃などが届くはずがない。

 私は、どうにか怒りを抑えながら問う。

 

ディー「…………敵の飛竜はまだ出ていないのだな?」

伝令術師「は。戦場上空には、現時点まで一匹の飛竜も確認しておりません。」

ディー「となると………アレか。整合騎士どもの切り札………《武装完全支配術》。しかし………よもや、これほどの………。」

 

 まさか、武装完全支配術がこれほどだとは。

 だが、武器をその様に使えば、天命を大量に消費してしまう筈だ。

 そうそう連発は出来ないはず。

 すると、伝令術師は、更なる報告をする。

 

伝令術師「総長閣下、後方の整合騎士四名の位置把握、完了致しました。合わせて、九の目標を照準中。」

ディー「………よし。」

 

 まさか、ミニオンが無力化されるとは……。

 最大の不安要素たる敵の武装完全支配術を更に消費させるべく、第二軍主力の暗黒騎士団と拳闘士団を投入するべきか?

 いや、ここで切り札たる暗黒術士団をここで動かすべきだろう。

 私は冷静だ。

 今こそ、最初の栄光を掴み取る時。

 

ディー「オーガ弩弓兵団、及び暗黒術士団、総員前進!峡谷に侵入後、《広域焼却弾》術の詠唱を開始せよ!」

 

イーディスside

 

 それにしても、カーディナルは、とんでもない神聖術を思いついたものね。

 まさか、光素を鏡の玉の中で無限に反射させて、大量に保持させるなんて。

 だけど、アリスの顔が辛そう。

 

イーディス「………アリス、大丈夫?」

アリス「大丈夫よ…………。」

 

 全然大丈夫そうに見えない。

 私も、幼い頃は、神聖術をよく使っていたけど、今は、闇斬剣を主体とする戦法を取ってるから、アリスを支えられない。

 それでも………。

 

イーディス「アリス。」

アリス「イーディス………。」

イーディス「大丈夫よ、私にケント、そして、ユージオが居るわ。だから、あなたは1人じゃないのよ。」

アリス「そうですね………。私は1人じゃない。例え、多くの命を奪う事になっても。」

イーディス「ええ。…………どうやら、敵が動き始めたみたいね。」

 

 すると、遠くから、オーガと思われる一団と、暗黒術士団が動いていた。

 

雨緑『グルル………?』

アリス「大丈夫よ、雨緑……ふぅ………。」

 

 雨緑は、アリスを心配そうに見ていて、アリスは、優しく答えながら、金木犀の剣を抜刀する。

 

アリス「咲け、花たち!エンハンス・アーマメント!!」

 

 アリスは金木犀の剣の武装完全支配術を発動し、後方に花弁を待機させる。

 それらを支所にし、金木犀の剣を鏡玉へと向けて、アリスはその一言を放った。

 

アリス「………バースト・エレメント……!」

 

 その一言と共に、鏡の玉の内部にあった光素がバーストして、それは、亜人部隊へと突き刺さる。

 しかも、暗黒術士団の一部をも巻き込んで、倒した。

 

アリス「………………。」

イーディス「アリス………。」

アリス「大丈夫です。戻りましょう、雨緑。」

イーディス「霧舞も、戻りましょう。」

 

 私とアリスは、それぞれの飛竜に指示をして、地上へと向かっていく。

 

カルムside

 

 すげぇな。

 地面が燃えてるよ。

 だが、こんな神聖術を放ったアリスがとても不安になるな。

 俺は、ユージオとケントと一緒にこの光景を見ていた。

 すると、雨緑と霧舞が降りてきた。

 俺たちは、その着地場所へと向かう。

 

ファナティオ「お疲れさま、アリス。」

レイカ「よくやってくれましたね。」

アリス「…………っ………!?」

ユージオ「アリス!?」

 

 雨緑から降りようとしたアリスは、力が抜けたのか、落ちそうになる。

 それを、ユージオが抱える。

 イーディスとケントも、不安そうな表情でアリスを見つめる。

 

アリス「ううぅ………ゴメン、なさい、ユージオ…………ちょっと力が抜けて。」

ユージオ「気にしないで………。今はゆっくり休もう。」

ファナティオ「ユージオの言う通りよ………。敵はほとんど撤退したわ。これは貴女が導いた勝利よ。」

アリス「あり、がとう………ございます、ファナティオ殿………ですが、戦いはまだ終わったわけではありません。今の術式で屠られた敵から、新たな神聖力が発生した筈です。それを敵に再利用されないように………!」

レイカ「ええ、分かっているわ。拳闘士部隊はともかく、まだ敵の暗黒術士部隊も残っているしね……。すぐさま修道士隊に命じるわ。」

 

 ファナティオとレイカは、修道士隊に、治療を命じた。

 ユージオは、アリスを支えていた。

 

ファナティオ「私はこのまま本陣で指揮を取られている騎士長閣下とリョウガ殿に報告してくる。兵たちに敵陣の見張りはさせるが、ここの指揮を任せてもいいかしら、アリス?」

アリス「私は………少し休めば大丈夫ですから。」

レイカ「そう………ユージオ、イーディス、ケント、カルム。アリスが無茶をしないように、傍についていてもらえるかしら?」

ユージオ「分かりました。」

イーディス「ええ。」

ケント「はい。」

カルム「分かった。」

 

 そう言って、ファナティオとレイカは、この場を離れる。

 アリスとイーディスの飛竜も、夜空へと飛び立っていった。

 これで、敵が諦めてくれるといいんだけどな。

 俺はそんな風に思っていた。

 

ユージオ「アリス、大丈夫………?」

アリス「大丈夫よ、ユージオ。」

イーディス「無理しないで。」

ケント「そうだな。」

カルム「ああ。…………ん?」

 

 誰か来る気配がしたので、俺はその気配がした方向を向くと、エルドリエが居た。

 だが、エルドリエは、血まみれだった。

 

エルドリエ「…………師よ………ご無事でしたか………。」

アリス「えっ………っ!エルドリエ!?その姿は……!?」

ユージオ「エルドリエさん………!」

ケント「大丈夫ですか………!?」

カルム「血まみれじゃねぇか………!」

エルドリエ「ユージオ達も、無事な様だな……。心配ない。そこまで大きな傷は受けていないし、半分は返り血だ………私は………大丈夫だ…………をだが……この姿を晒すぐらいなら、一層戦いで命を落とすべきだったよ………。」

アリス「な、何を言っているのですか!?そなたには騎士として、この戦いが終わるまで衛士を率いて戦い抜くという使命があるではありませんか!」

エルドリエ「………私は…………騎士として、その使命を果たすことができませんでした………。」

アリス「エルドリエ…………?」

イーディス「どういう事………?」

 

 エルドリエの瞳には、後悔の色が浮かんでいた。

 エルドリエが事情を話す。

 

エルドリエ「騎士長から左翼の第一陣を任されたというのに、ゴブリン共の策に嵌った上に陣をああも簡単に突破され、カルム達に敵兵が倒され、レンリ殿とユージオの2人に族長が討たれ、私一人が翻弄された挙句何もできず………無様な姿を晒しました!アリス様の期待を……ユージオ達の信頼を裏切った!」

ケント「エルドリエさん………。」

エルドリエ「私には騎士を………アリス様の弟子を語る資格などないのです!」

アリス「そなたは…………そなたは、良くやりました!………私たちにも、守備軍にも、そして人界の民達にもそなたは必要な者です。なぜその様に自分を責めるのですか。」

エルドリエ「必要………。それは、戦力として、ですか。それとも………。」

カルム「エルドリエさん………。待った、誰か来る。」

 

 エルドリエを案じていると、何かがやって来る気配がする。

 しかも、獣の唸り声も聞こえてくる。

 俺たちが身構えると、そこには、半分焦げた亜人がいた。

 

アリス「そなた………その姿からして、もう天命はほとんど残っていない筈………。なぜ丸腰でこちらへと向かってきたのですか?」

フルグル「俺は…………オーガの長、フルグル………!」

イーディス「オーガ族の長………?暗黒界十侯の一人ね………。」

 

 つまり、向こうのトップの1人という事か。

 そんな奴が、どうしてここまで来たんだ?

 すると。

 

フルグル「俺、見た………あの光の術………放ったの、お前……あの力、その姿……お前、光の巫女………!お前、連れて行けば………戦争終わる………。オーガ、草原、帰れる………!」

アリス「何を………言っている…………?光の巫女………?戦争が……終わる?」

 

 光の巫女?

 アリスを求めてる奴がいるのか?

 どういう事かと首を傾げていると、エルドリエが前に出る。

 

エルドリエ「おのれ…………獣風情が!何を言うかぁ!!」

アリス「待ちなさい、エルドリエ!」

エルドリエ「っ…………!?師よ、なぜ止められるのですか!?」

 

 エルドリエがフルグルに斬りかかろうとするが、アリスが止める。

 すると、アリスはフルグルに近づく。

 

アリス「そなたの言う様に、如何にも私こそが光の巫女だ。さぁ、私をどこに連れて行くのですか?」

カルム「なるほど………。」

 

 情報収集か。

 確かに、気になる事が多すぎる。

 一応、いつでも抜刀出来るようには構えるが。

 

アリス「光の巫女である私を連れて行けば、戦争が終わると言いましたね?一体、誰が私を求めているというのですか?」

フルグル「皇帝………ベクタ………!」

カルム(皇帝ベクタ!?………確か、暗黒神ベクタって神が居るはずだよな………。いや、待てよ。まさか………!)

 

 俺の考えている事は、最悪な形で察しがついた。

 恐らく、襲撃者側もログインしているのだ。

 ミトから、スーパーアカウントは概ねロックされたって聞いたけど、ダークテリトリー側のアカウントはロックされてなかったのか!

 つまり、皇帝ベクタにアリスを渡す訳には行かない。

 

フルグル「皇帝、欲しいの、光の巫女だけ………!巫女を捕まえ、届けた者の願い、何でも聞く………オーガ、草原帰る………馬狩って、鳥獲って、暮らす………!」

アリス「私を………恨まないのですか?あの術でダークテリトリーの大勢を………そなたの民を皆殺しにしたのはこの私です。」

フルグル「…………強い者、強さと同じだけのものを背負う………。俺も…………長の役目を背負っている…………。だから、お前捕まえて、連れて…………行くゥゥゥ!!ウウウオオオオオオオォォォ!?!?」

ユージオ「………っ!」

 

 フルグルは、アリスを捕まえようとして駆け出していき、俺たちは構えるが、アリスが一足先に抜刀していた。

 それにより、フルグルは倒されていた。

 アリスはフルグルに近づいていた。

 

ユージオ「アリス………?」

アリス「せめて………その魂を草原に飛ばしなさい。」

 

 アリスは、倒れたフルグルから発生した神聖力を、風素に変えて、そのまま解き放った。

 

カルム「強さと同じものを背負うか………。それは…………力を持つ者にとっては逃れられないことなのかもしれないな。」

ケント「カルム…………。」

 

 まあ、アリスを差し出した所で、待っているのは、この世界の終わりだが。

 一応、ミトとアスナにもこの事は知らせておこう。

 どうやら、本気でワールド・エンド・オールターに行かないといけなくなったっぽいからな。

 




今回はここまでです。
遂に、カルムが、襲撃者の存在を知ります。
次回は、カルム達がどう行動するかを相談する話です。
それにしても、比嘉さんのヘマが多いですね。
アンケートは、もう暫く続けたいと思っています。

キリトに持たせる剣は何が良いか

  • 水勢剣流水
  • 闇黒剣月闇
  • 無銘剣虚無
  • その他(その場合は活動報告に入れる事。)
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