ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、アメリカ人がアンダーワールドにログインするまでです。


第67話 非情の選択

リョウガside

 

 死を予感した事はある?

 不意に、そんな声がしてきて、俺は目を覚ます。

 隣のベルクーリも、同様の様だな。

 

リョウガ「ベルクーリ………。」

ベルクーリ「分かってる。後10分したら、伝令兵に全軍起床の角笛を吹かせないとな。」

リョウガ「ああ。」

 

 俺は、起き上がり、先ほどの言葉を思い出す。

 あの言葉は、今は亡き最高司祭アドミニストレータの言葉だ。

 いつ頃の記憶かは、全く思い出せない。

 だが、その時の記憶は、鮮明に思い出せる。

 当時、俺とベルクーリは、アドミニストレータの居室に呼ばれた事がある。

 その時に、そう問われたのだ。

 当時の俺たちは、アドミニストレータの機嫌を取る事を考えずに、思いついた事を答えた。

 

ベルクーリ『………死の予感、ですか。まだ俺とリョウガがひよっ子だった頃、先代だか先々代の暗黒将軍に軽く捻られた時は、流石に危ないと思いましたがね。』

アドミニストレータ『でも、そいつの首は随分前に取ってきたじゃない?確か、その辺に転がってる宝石のどれかに転換した様な気もするわ。それ以降はないの?』

リョウガ「それは、思い出せないな。しかし、なぜそんな事を聞くのです?猊下には無縁の感覚でしょうに。』

 

 俺がそう問い返すと、アドミニストレータは、長い脚を組み替えながら答える。

 

アドミニストレータ『ふふふ………。分かってないわね、ベルクーリ、リョウガ。毎日よ。私は毎日、死を感じてる。朝、目を覚ます度に………ううん、夢の中ですらも。何故なら、私はまだ全てを支配していないから。まだ生きている敵がいるから。そして、未来のいずれかの時点に於いて、新たな敵が発生する可能性が常にあるから。』

ベルクーリ『それはそれは。』

リョウガ『最高司祭というのも、中々に大変な様だな。』

 

 その会話を思い出して、漸く、アドミニストレータが言いたかった事が分かった。

 恐らく、死の可能性を追い求めていたのだろうな、あの方も。

 そう思い至った俺とベルクーリは、騎士服と着物を着て、伝令兵の元へ。

 

カルムside

 

 俺、アスナ、ミトは、リアルワールドに関して、ユージオ、アリス、ケント、イーディス、ロニエ、ティーゼ、シオリ、ルナ、リーナ先輩、タカトラ先輩に話した。

 話の内容としては、キリトが如何にして、戦ってきたのかを話している。

 その際に、アスナは、時折ドス黒いオーラを放っていた。

 恐らく、こんな世界で、女の子を引っ掛けた事に関してだろうな。

 やっぱり、予想通りだな。

 ただ、タカトラ先輩からは、俺の戦闘の事に関しては、予想通りみたいな反応をしていた。

 タカトラ先輩曰く、『カルムの強さには、まだまだ先があると感じていた。』らしい。

 イーディスからは、『リアルワールドって、魔境か何かなの?』と突っ込まれた。

 それを聞いた俺、ミト、アスナは苦笑せざるを得なかった。

 魔境といえば、そうかもしれないのだが、当てはまるのは、一部だし。

 そのまま、俺たちは寝落ちした。

 そして、角笛の音で目が覚めて、俺たちは、寝ぼけ眼で、朝食を食べていた。

 

ロニエ「キリト先輩、今日は顔色が良いですね。」

カルム「良かった。」

アスナ「キリト君………。」

アリス「そうですね。」

ユージオ「とにかく、早く食べよう?」

イーディス「そうね。まだ戦いは終わってないんだから。」

ケント「そうだな。」

 

 そんな事を話しながら朝食を食べていると、敵襲を知らせる角笛が聞こえてくる。

 俺たちはすぐに鎧を装着して、傍付き達に、キリトの護衛を頼む。

 そして、ベルクーリ達の所に向かう。

 そこには、ベルクーリ、リョウガ、カーディナル、ユーリが何かを見ていた。

 

ユージオ「お待たせしました!」

ベルクーリ「おう、よく来たな。」

リョウガ「敵側のリアルワールド人は、相当な事をして来たな。」

ユーリ「皇帝ベクタが、大胆な手をとった。」

アリス「どういう事ですか………?」

カーディナル「お主らも、遠見の神聖術を使ってみよ。………無論、カルムとミトとアスナ、ユージオ、ケントには教えるがな。」

 

 カーディナルから教えてもらったコマンドを言って、遠見の神聖術で、見ると、とんでもない光景が目に映る。

 それは、岸から岸へと渡した10本の荒縄を橋代わりにして、峡谷の横断を強行していた。

 やっぱり、襲撃者側は、アンダーワールド人の命を軽く見ている。

 唇を噛んでいると、ベルクーリが呟く。

 

ベルクーリ「こいつは戦争だ。」

ユージオ「ベルクーリさん………?」

リョウガ「異界人であるアスナさん、ミトさん、カルムの坊主はともかく、俺たちが暗黒界軍に情けをかけてる場合じゃない。この機、活かさなければな。」

ケント「機………ですか?」

ユーリ「ああ。」

カーディナル「そうじゃな。騎士レンリよ。」

レンリ「は………はいっ!」

 

 カーディナルは、レンリの名前を呼び、レンリは背筋を伸ばす。

 

カーディナル「お主の神器、《雙翼刃》の最大射程はどれくらいじゃ?」

レンリ「はい、通常時で三十メル、武装完全支配術を使えば七十………いや、百メルは。」

ベルクーリ「決まりだな。」

リョウガ「ああ。これより、俺、ベルクーリ、アリス、ユージオ、イーディス、ケント、シェータ、ユーリはレンリの護衛をし、レンリは、神器で敵軍の張った縄を片っ端から切れ。」

 

 血も涙もないな。

 レンリは、幼い顔に決意を滾らせていた。

 

レンリ「了解しました!」

シェータ「大丈夫。私が、守る。」

カルム「俺とミトとアスナも行く。護衛は多い方が良いだろう。」

ミト「私も。」

ユーリ「急ぐぞ。」

 

 俺たちは、すぐに馬に乗って、その場所へと向かっていく。

 すると、拳闘士団の長………ベルクーリ達から聞いたが、イスカーンという名前らしい。………が叫ぶ。

 

イスカーン「敵襲だ!!守れ!!綱を死守しろぉーーーッ!!」

 

 その言葉に、渡り終えた拳闘士が、綱を守る様に円陣を組む。

 俺たちは、すぐに馬から飛び降りて、綱の一つへと走っていく。

 

拳闘士「ウラァァァ!!」

 

 拳闘士は、拳を、足を俺たちに向かって向けてくる。

 心の中で、謝罪をしつつ、拳闘士団を倒していく。

 そして、レンリの雙翼刃が放たれ、右端の縄へと向かっていく。

 

イスカーン「やめろおおおぉぉぉーーッ!!」

 

 イスカーンの叫び声が聞こえる中、荒縄は中央で切断され、そこにいた拳闘士団は、谷底へと落ちていく。

 その光景に、俺は、心が苦しくなった。

 あの拳闘士団達は、ある意味で被害者なのだ。

 リアルワールドの争いに、巻き込まれてしまった被害者。

 本当なら、あの拳闘士達を助けたい。

 だが、それは、人界が蹂躙されるかもしれないという状況下では、とても出来ない。

 今の俺に出来る事は、命を奪うのではなく、戦闘続行が困難な状態に追い込む事しか出来ない。

 

カルム「くっ………!」

ミト「カルム………。」

 

 俺が歯痒い思いをしている中、ミトは俺を不安げに見てくる。

 

ガブリエルside

 

 敷設させたロープの内、3本が切られた。

 私は、それを頬杖をつきながら眺める。

 

ガブリエル「はぁ………所詮はAIか。それにしても、いくらこちらが亜人ばかりだとはいえ、人界側のユニットの方が性能は優秀というのはどうなのか………。いや、状況対応力だけを見れば、その差は歴然という評価をすべきか。」

 

 この結果により、自軍ユニットの七割を損耗していたが、どうという事はない。

 全ては、アリスを確保できればそれでいい。

 

ガブリエル(やはり暗黒軍は捨て駒だな……。それに、これはこちらにとってもチャンスだ。上手くやれよ………。クリッター。)

 

 私はそんな事を思いながら、新たな策を考えていた。

 

カルムside

 

 俺は、心を痛めながら剣を振るっていく。

 すると、ミトが声をかける。

 

ミト「カルム。」

カルム「うん?」

ミト「あんまり、無理しないで。」

カルム「分かってる………でも………!」

ミト「うん。………あれは?」

カルム「ミト?………あれは?」

 

 ミトが何かに気付いたのか、空を見る。

 すると、一際赤く輝く線。

 それは、数千にも及ぶ。

 無数の線はそれぞれ、微細なドットの連なりからなっている。

 その線は、戦場から東に1、2キロ離れた場所に降り注いで行く。

 それを見て、俺は悪寒がした。

 何か、とんでも無いことが起ころうとしている気がする。

 いつしか、その場にいる全員が、その光景を見入っていた。

 すると、赤い線は、すぐに人の姿になる。

 それは、暗い赤色の鎧に身を固め、長剣や戦斧、長槍で武装されていた。

 暗黒界軍の増援か!?

 そう思ったが、すぐに違うと思った。

 何故なら、聞き覚えがある叫び声が聞こえてきたのだ。

 

暗黒騎士「Charge ahead!」

暗黒騎士「Give’em hell!」

アスナ「まさか………!?」

ミト「嘘………!?」

カルム「英語………!?」

 

 しかも、アメリカ人だ。

 その時、その悪寒の正体が分かった。

 それは、このアンダーワールドは、秘匿されているとはいえ、ザ・シードをベースにしている。

 つまり、アミュスフィアがあれば、アンダーワールドへとダイブ出来る。

 という事は、襲撃者側は、それを利用して、アメリカ人をアンダーワールドへと呼び込んできたのだ。




今回はここまでです。
次回は、アリスが攫われる部分までは行きたいと思っています。
活動報告に、この小説に関する物を入れたので、良かったら見てください。
カルムは、心にダメージを負いつつあります。
カルムも、アンダーワールド人の命を奪いたくないと考えているので。
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