カルムが若干心の闇を見せます。
レイモンドとフィリップから、グリムロックがよく行く店を聞いた俺とミトは、ヒースクリフから意見を聞いたキリトとアスナと合流した。
カルム「さて、これからどうするか。」
キリト「て言うかカルム。ヒースクリフから伝言を預かってるぞ。」
カルム「伝言?まあ予想はつくけど、一応聞いておくか。………それで?」
キリト「ヒースクリフ曰く、『カルム君。まだ血盟騎士団には来ないのかね?』だそうだ。」
カルム「やっぱりか………。」
アスナ「ていうかカルム君。いつの間に団長からスカウト受けたの?」
ミト「うん。カルムがビートルアンデッドって奴を倒して、ブレイラウザーとかを手に入れた時にね。」
キリト「どうするんだ?」
カルム「まだ、決心がつかん。」
アスナ「決心?」
ミト「どういう意味なの?」
カルム「それは追々話す。」
そんな事よりも圏内事件だ。
キリト「それで、どうするんだ?」
アスナ「なら、黄金林檎のレア指輪事件について知っている人に聞きましょう。」
カルム「あぁ。」
ミト「シュミットに聞くのね。」
そうして、俺達は第56層にある聖竜連合のギルド本部へと向かう。
シュミットは恐らく、本部に籠城していると思われ、門番に対しての交渉は、アスナとミトに任して、俺達は待機している。
キリト「なあカルム?」
カルム「うん?」
キリト「お前は何で、血盟騎士団への誘いを保留の形にしてるんだ?」
カルム「………まだその時じゃないと思っているからさ。」
キリト「そうなのか………。」
しばらくすると、シュミットが現れて、俺とキリトも合流して、話をする事に。
シュミット「誰から聞いた?」
カルム「ん?」
シュミット「指輪の件を誰から聞いたんだ?」
キリト「元黄金林檎のメンバーからだ。」
キリトの返答に、シュミットは顔を青ざめる。
シュミット「………名前は?」
カルム「………ヨルコさんだ。」
俺は一瞬迷ったが、ミトやアスナも頷いたので明かす。
シュミット「ヨルコ?………そうか。そうだったんだな。」
シュミットは、安堵するかの様に顔色が戻り、息を吐く。
キリト「その様子だと、ヨルコさんも指輪の売却に反対してたのは知ってたんだな。」
シュミット「あぁ。」
カルム「だからこそ、同じ売却反対派のカインズが殺されたと知って、自分も殺されるのではと思ったんだな。」
俺がそう言うと、シュミットは再び顔を青ざめる。
ミト「一応言っておくけど、私達は黄金林檎のリーダー、グリセルダさんを殺した犯人を探してる訳じゃない。昨日の事件を起こした犯人、そのトリックを知りたいだけなの。」
アスナ「シュミット、グリムロックはどこにいるの?仮にグリムロックが犯人じゃなかったとしても、あの槍を作った人だから、どうしても彼から話を聞きたい。」
シュミット「し、知らない!」
シュミットが大声で叫んだ。
まあ、グリムロックのよくいる場所は、こっちでも調査済みなんだが。
カルム「アスナ、大丈夫だ。グリムロックがよく行く店は調べてある。」
キリト「レイモンドとフィリップか。」
アスナ「そうなの?」
シュミット「………頼みがある。」
ミト「何?」
シュミット「ヨルコと話をさせてくれ。」
シュミットはそう頼み込んだ。
俺達は、少し話し合いをする事にした。
カルム「シュミットとヨルコさんを話させて大丈夫なのか?」
キリト「俺達が目を離さなければ大丈夫じゃないのか?」
ミト「なら、何でシュミットは今頃、ヨルコさんに出会わせろなんて言うんだろ?」
アスナ「さあ……実は片思いしてた、とかじゃ……無いわよね、うん。」
キリト「えっ、マジで。」
キリトがシュミットを見ようとするのを制止する。
カルム「違うに決まってるだろ。」
ミト「とにかく、アスナ。ヨルコさんにメッセージをお願い。」
アスナ「分かった。」
アスナがメッセージを送ると、返ってきてOKだそうだ。
シュミットにOKと言うと、シュミットは安堵した様な表情を出す。
そうして、俺達は第57層主街区マーテンへと転移して、ヨルコさんが泊まっている部屋へ。
カルム「まず、安全の為に確認だ。2人とも武器は装備しない事、そしてウインドウを開かない事を守って欲しい。」
ヨルコ「………はい。」
シュミット「解っている。」
元黄金林檎のメンバーの2人は、しばし無言のまま視線を見交わしていた。
さて、どう動くのか。
そう思っていると、ヨルコさんが口を開いた。
ヨルコ「………久しぶり、シュミット。」
シュミット「……ああ。もう2度と会わないだろうも思ってたけどな。座っていいか。」
ヨルコが頷いて、シュミットが座る。
俺とミトは、シュミットとヨルコさんの西側の方に立ち、キリトとアスナは、東側に立った。
俺は2人を見ながら、周囲に警戒を張り巡らせていた。
何やら、ギスギスした会話だが、俺は部外者なのだ。
やたらに首を突っ込む訳には行かない。
それにしても、シュミットはともかく、ヨルコさんも結構着込んでるな。
シュミット「グリムロックの武器でカインズが殺された。その4人からそう聞いたが、本当なのか?」
ヨルコ「本当よ。」
何やら、不穏な空気だな。
シュミット「何で、何で今更カインズが殺されるんだ!?もしかして、グリムロックが売却に反対した俺たち3人を殺そうとしてるのか!?……じゃあ、俺やお前もターゲットにされてるのか!?」
ヨルコ「彼に槍を作らせたのは他のメンバーかもしれない。もしかしたら、グリセルダさん自身の復讐かもしれない。………だって、圏内で殺人なんて、幽霊じゃなきゃ不可能でしょ。」
幽霊ね……。
プログラムで動くゲーム内でそんな事が起こるのかと思ったが、実際に起こっているので、鼻で笑えない。
俺達は顔を見合わせた。
ヨルコ「私ね、昨夜、寝ないで考えたの。結局のところ、リーダーを殺したのは、ギルメンの誰かであると同時に、メンバー全員でもあるのよ。あの指輪をドロップした時、投票なんかしないで、リーダーの指示に任せれば良かったんだわ。ううん、いっそ、リーダーに装備させれば良かったのよ。剣士として一番実力があったのはリーダーだし、指輪の能力を一番活かせたのも彼女だわ。なのに、私達は皆、自分の欲を捨てられずに、誰も言い出さなかった。」
ヨルコさんはそう言いながら、窓の方に、その姿に俺は気圧されながら、違和感を感じていた。
ヨルコ「ただ1人、グリムロックさんだけはリーダーに任せると言ったわ。あの人だけが自分の欲を捨てて、ギルド全体の事を考えた。だからあの人には、多分私欲を捨てられなかった私達全員に復讐して、リーダーの敵を討つ権利があるんだわ……。」
しばらく沈黙が続いたが、シュミットがそれを破った。
シュミット「…………冗談じゃない。冗談じゃないぞ。今更……半年も経ってから、何を今更……。」
カルム「シュミット………。」
シュミット「お前はそれでいいのかよ、ヨルコ!今まで頑張って生き抜いてきたのに、こんな、訳も解らない方法で殺されていいのか!?」
俺達全員の視線がヨルコさんに集中する。
ヨルコさんも言葉を紡ごうとしたが、その瞬間に、とん、という乾いた音がした。
まさかと思い、ヨルコさんの背中を見ると、一本のダガーが。
そして、ヨルコさんが窓の奥へと傾いた。
アスナ「あっ………!」
ミト「まずい………!」
その2人の喘ぎを漏らしたと同時に俺とキリトは飛び出して、ヨルコさんの体を引き戻そうとするが、届かずにヨルコさんは音も無く宿屋の外へと落下していく。
キリト「ヨルコさん!!」
カルム「嘘だろ!?」
そうして、ヨルコさんはポリゴンとなり、そこにはダガーのみが残っていた。
有り得ない!!
そんな思いが俺にあった。
宿屋はシステム的に保護されている。
それなのにも関わらず、ヨルコさんは殺されてしまった。
宿の向かいの屋根を見ると、そこには、1人の人間がいた。
キリトも見たようで。
キリト「野郎っ………!!」
カルム「逃すかっ………!!」
キリト「アスナ、後は頼む!!」
カルム「ミトも頼む!!」
アスナ「キリトくん、ダメよ!」
ミト「カルムも戻って!!」
そんな悲痛な叫び声を聞きながら、俺とキリトは犯人を追跡する。
犯人は、こちらを攻撃する訳でもなく、そのまま疾走していく。
すると犯人は、転移結晶を取り出していた。
カルム「転移する気か!?」
キリト「くそっ!」
俺達はピックを投げるも、犯人の方が早く転移結晶を使えたようで、システム障壁に阻まれる。
ならば、行き先だけでもと聞こうとするが、5時の鐘の音で分からない。
そうして、逃げられた。
俺達は、ダガーを回収して、宿屋へと戻っていった。
アスナとミトは武器を取り出していた。
アスナ「ばかっ、無茶しないでよ!」
ミト「本当にそうだよ!!」
カルム「すまん。逃す訳には行かなかった。」
ミト「それで、どうなの?」
キリト「テレポートで逃げられた。誰なのかも分からなかった。」
その後、シュミットが怯えてしまい、黄金林檎のメンバー全員の名前を書いてもらって、聖竜連合本部へと送り届けた。
そうして、俺達はグリムロックがよく訪れるレストランへと向かっていった。
今回はここまでです。
カルムが血盟騎士団に入るのは、もう少し先です。