ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、須郷の本性が顕になります。
前半は、侑斗視点、後半は冬馬視点で送ります。



第2話 己の無力

侑斗side

 

 1月19日、俺は桐ヶ谷家に来ていた。

 理由は、桐ヶ谷直葉と会う為だ。

 桐ヶ谷直葉とは、SAOをやる前から剣道仲間としてだ。

 正直言って、キリトが直葉の兄貴だと知ってとても驚いた。

 だが、俺はそれでも気にする事なく接する。

 

直葉「あの、侑斗くん?本当に大丈夫なの?」

侑斗「大丈夫だって。俺、結構早くリハビリが終わったからな!」

和人「お前のその余裕はどこからくるんだ?」

侑斗「お前は少しは食えよ、キリト。」

和人「うるさいな!」

直葉「お兄ちゃんとは、どんな仲なの?」

侑斗「簡単に言えば、親友だ!」

和人「その割には結構、お前とは接点がないんだけどな。」

侑斗「それを言うなって!どうしたスグ?来ても良いぜ!」

直葉「まあ、良いけど……。」

 

 そうしてしばらく試合をした。

 流石にブランクがあったが、それでも何本かは取る事が出来た。

 途中で、和人がアスナのいる病院に向かって行った。

 

侑斗「いやぁ、燃えたぜ!」

直葉「まさか、何本か取られるなんて。」

侑斗「まあ、前の世界じゃ結構剣、振ってたからな!」

直葉「本当に強いや。君は。」

侑斗「それが俺だ。」

直葉「自分で言う?」

「「………ハハハッ!」」

 

 俺と直葉は、仲が良い。

 直葉が上級生に虐められている所を何度か助けた。

 それ以降、結構遊ぶようになった。

 だが、最近、どうにも直葉の事が気になっている。

 SAOに囚われて、もう会えないと思ったからか?

 

直葉「そう言えばさ、侑斗君って、知ってる?アミュスフィアを。」

侑斗「アミュスフィア?何だそれ?」

直葉「ナーヴギアの代わりに出た奴。」

侑斗「って事は。スグ、お前やってるのか?」

直葉「うん。ALOって言うんだけどね。」

 

 直葉曰く、妖精をアバターにして操作するやつで、SAO事件の時に発売されたらしい。

 

直葉「………あのさ、一緒にALOやらない?」

侑斗「面白そうだな!……ん?姉ちゃんからメールだ。」

 

 そのメールに書かれていたのは、ちょうどアミュスフィアを買ったから、ALOを一緒にやろうとの事だ。

 ………盗み聞きしてるんじゃないだろうな。

 

侑斗「丁度、姉ちゃんがアミュスフィアを買ってくれたから、やろうぜ!」

直葉「本当!?じゃあ、やろうよ!」

 

 そうして、俺は直葉とALOをやる約束をして家に帰った。

 

冬馬side

 

 俺は、深澄と和人と待ち合わせをしていて、所沢の病院へと向かった。

 俺としては、和人と深澄が心配だからだ。

 和人は、アスナと恋人関係で、深澄とは親友だからな。

 最近、思い詰めている様な気がして、とても不安だ。

 

冬馬「和人、深澄。2人とも無茶するなよ。」

和人「悪い。」

深澄「でも、明日奈が心配で。」

冬馬「気持ちは分かるけど。」

 

 アスナがいる病室に入り、和人と深澄が明日奈の手を握っているのを見て、本当に不安になってくる。

 正午になって、帰ろうとすると。

 

???「おお、来ていたのか桐ヶ谷君、小野君に兎澤君。」

 

 そこに居たのは、アスナの父親の結城彰三だった。

 レクトのCEOだそうだ。

 

和人「こんにちは。」

深澄「お邪魔してます、明日奈のお父さん。」

冬馬「どうも。」

彰三「いやいや、いつでも来てもらって構わんよ。この子も喜ぶ。」

 

 彰三氏も、大分不安だろうに。

 すると、今日は同行者がいる事に気づく。

 

彰三「彼とは初めてだな。うちの研究所で主任をしている須郷君だ。」

須郷「よろしく、須郷伸之です。……そうか、君たちがあの英雄キリトにカルム、ミトか。」

和人「……桐ヶ谷和人です。よろしく。」

深澄「……兎沢深澄です。」

冬馬「……小野冬馬です。」

 

 何だろうか、こいつ妙に怪しい。

 と言うか、彰三氏、喋ったのか。

 俺達の視線に首を縮める。

 

彰三「いや、すまん。SAOサーバー内部での事は口外禁止だったな。あまりにもドラマティックな話なのでつい喋ってしまった。彼は私の腹心の息子でね。昔から家族同然の付き合いなんだ。」

須郷「ああ、社長、その事なんですが……。来月にでも、正式にお話を決めさせて頂きたいと思います。」

 

 何の事やらと沈黙していると、彰三氏が退出して、俺、深澄、和人、須郷の4人が残った。

 

須郷「……桐ヶ谷君、君はあのゲームの中で、明日奈と暮らしてたんだって?」

和人「……ええ。」

須郷「それなら、僕と君はやや複雑な関係という事になるかな。」

冬馬「どういう意味だ?」

 

 俺がそう問うと、須郷はニヤニヤしてきた。

 俺は、コイツが彰三氏の前では猫を被っていると悟った。

 

須郷「さっきの話はねぇ……僕と明日奈が結婚するという話だよ。」

深澄「えっ……!?」

和人「そんな事……出来るわけが……。」

須郷「確かに、この状態では意思確認が取れない故に法的な入籍は出来ないがね。書類上、僕が結城家の養子に入る事になる。……実の所、この娘は、昔から僕の事を嫌っていてね。親達はそれを知らないが、いざ結婚となれば本人から拒絶されるだろう。だからね、この状況はとても都合がいいんだ。」

 

 俺は、コイツがとんでもない奴だと察した。

 だから、それに気づいていたアスナは奴を拒絶した。

 須郷の腕を和人が引き離した。

 

冬馬「アンタ、アスナの昏睡状態を利用する気なのか。」

須郷「利用?嫌だなぁ、正当な権利さ。ねぇ桐ヶ谷君に小野君に兎沢君。SAOを開発したアーガスがその後どうなったか知ってる?」

深澄「……解散したって話だけど。」

須郷「そう。アーガスは解散して、SAOサーバーの維持は僕の部署で行っている。……つまり明日奈の命は今やこの僕が維持していると言っていい。なら、僅かばかりの対価を要求したっていいじゃないか?」

 

 そういう事か。

 アスナの命を、己の目的の為に利用する気なのだ。

 俺達が立ち尽くしていると、須郷は冷ややかな声を出した。

 

須郷「……桐ヶ谷君、君がゲームの中でこの娘と何を約束したのか知らないけどね、今後ここには一切来ないで欲しいな。それは君たちも同じだよ、小野君、兎沢君。」

 

 それに、強く拳を握り締めたが、何も出来ない。

 須郷が哄笑を堪える様に言った。

 

須郷「式は来月この病室で行う。君達も呼んでやるよ。それじゃあな、せいぜい最後の別れを惜しみたまえ、3人の英雄君。」

 

 須郷は俺達の肩をポンと叩いて、退出した。

 その後、ショックを受けた和人を連れて、俺と深澄は、駅に着いた。

 

深澄「……キリトの事、お願いね。」

冬馬「ああ……。」

和人「…………。」

 

 その後、一旦桐ヶ谷家に送って行った。

 途中で、泣いていた。

 俺は、とても悔しかった。

 親友が泣いてるのに慰められない自分、親友の大事な人を己の目的の為に利用する須郷を見ているだけの自分、そして、あの浮遊城で英雄と呼ばれていても、現実では無力な事を。

 

冬馬「すまない……キリト……。」

 




今回はここまでです。
次回、いよいよALOへと向かいます。
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