シノンside
何とか、振り切れた。
バギーから降りたチェイスが質問してくる。
チェイス「そう言えば、アイツは急にお前の目の前に現れたな。何故だ?」
シノン「メタマテリアル光歪曲迷彩を使っていたからよ。」
チェイス「そういう事か……。衛星のスキャンにも映らなかったのは、それが理由か。」
キリト「そんなのがあるのか。」
カルム「だとすると、厄介だな。奇襲されたら……。」
シノン「それは大丈夫。ただ姿を消すだけだから、足音と足跡は消せない。ここは砂地だから奇襲は出来ない。」
チェイス「そうだな。一先ず、あの洞窟の中に入ろう。」
私たちは、洞窟の中に入って、岩壁に背中を預ける。
死銃が気になって呟く。
シノン「ねえ、さっきの爆発でアイツらが死んだって可能性は?」
カルム「その可能性は限りなく低いな。爆発の直前に、あの馬からアイツが飛び降りるのが見えたから。」
カルムはそう言って、救急治療キットを使って、体力を回復させる。
キリトもそうしている。
キリト「俺は入り口付近で死銃たちが来ないか見張ってくる。」
カルム「俺も行く。」
キリト「大丈夫か?」
カルム「敵はいつ来るか分からん。万が一に備えて、2人いた方が良い。」
キリト「分かった。チェイスはシノンの事を頼んだぞ。」
チェイス「分かった。」
キリトはそう言い残して、カルムと共に外へと向かう。
洞窟の中には、私とチェイスだけになった。
シノン「ねえ、チェイス。スタジアムのところにいた時なんだけど、あなた達は外周の上に居たのにどうやってあんなに早く私を助けに来れたの?」
チェイス「銃士Xが、死銃じゃないと一目で分かったからな。」
シノン「何で?」
チェイス「女性プレイヤーだったからだ。キリトの様な、なんちゃって女性プレイヤーじゃなくてな。」
シノン「へぇ。」
チェイス「名乗っていたが、銃士Xと書いて、《マスケティアイクス》と読むらしい。ソイツを倒して、シノンが倒れているのを見て、奴のライフルとスモークグレネードを拝借した。悪い事をしてしまったな……。」
そう言って、チェイスはブレイクガンナーを取り出して、チェックし始める。
シノン「チェイスは怖くないの?アイツらと戦う事が……。」
チェイス「怖くないと言えば嘘になる。だが、このまま放っておけば、また新たな犠牲者が出てしまう。奴らの凶行は、ここで終わらせてみせる。」
――やっぱりあなたは強いね……。
下手したら自分が死ぬかもしれないというのに、あの死神に立ち向かう勇気を失っていない。
私は立ち向かう勇気を失おうとしているのに。
このままここに隠れていたらずっと自分が抱える闇に怯え続けることになるだろう。
シノン「私、逃げない……。 私も外に出てアイツらと戦う。」
チェイス「ダメだ。アイツの持つ拳銃に撃たれたら本当に死ぬかもしれないんだぞ。俺たち3人は近接戦闘タイプだから何とかなるが、お前は違う。さっきみたいに至近距離で不意打ちされたら、危険は俺たちの比じゃない。大人しくここで待っていろ。」
シノン「死んでも構わない」
チェイス「何……?」
シノン「私、さっき凄く怖かった。死ぬのが恐ろしかった。5年前の私よりも弱くなって情けなく悲鳴を上げて、リアルでもゲームでもすっかりあなたに甘えちゃって……。そんな弱い私のまま生き続けるくらいなら、死んだほうがいい……。」
すると、チェイスが顔に怒気を顕にして、私を見てくる。
チェイス「お前は、本気でそう思っているのか?」
シノン「もう怯えて生きていくのは……疲れた。別にあなた達に付き合ってくれなんて言わない。1人でも戦えるから。1人で戦って1人で死ぬ。これが私の運命だったから……。」
そう言い残して立ち上がろうとすると、チェイスが私の手を掴む。
シノン「離して。私……行かないと」
チェイス「お前は間違っている。そんな理由で1人で行かせるわけにはいかない。お前が行くっていうなら俺も一緒に行こう。」
シノン「そんなこと頼んだわけじゃない。私のことなんてもうほっといて!」
チェイス「お前とは半年もずっとGGOで一緒だったんだ!ほっとけるわけないだろ!!」
チェイスと言い争っている内に、私の感情が爆発して、チェイスの襟首に掴みかかる。
シノン「なら、あなたが私を一生守ってよ!!」
今まで溜め込んだ涙までも溢れ出して、地面に落ちる。
シノン「私の事、何も知らないくせに!チェイスは私と違って現実世界でも仮想世界でも強いからそんなこと言えるんでしょ!これは私の、私だけの戦いなんだから!例え負けて、死んでも誰にも私を責める権利なんかない!それとも、あなたが一緒に背負ってくれるの!? この……この、ひ……人殺しの手を、あなたが握ってくれるの!?」
それを言うと、これまでに罵られた記憶が蘇ってくる。
シノン「私の手は血で染まっている……。そのせいで、好きな人に想いを寄せることも……このことを知られて彼に嫌われるのが怖いの……。」
もしかしたら、チェイスも突き放すのではと思ったけど、予想に反して、私を抱きしめる。
シノン「チェイス……?」
チェイス「お前に何があったのかは、俺にはとても分からない。けど、お前がたった1人で戦ってきたのは分かる。俺なんかよりもよっぽど強い、シノンは。例え、お前の手が血で染まっていても、俺が握る。」
チェイスの言葉に、私の中で何かが外れて彼の胸にうずくまってしばらくの間泣き続けた。
その間、チェイスは私を離さずにずっと抱きしめてくれていた。
カルムside
俺たちが見張りをしていると、チェイスとシノンの2人が言い争っているのが聞こえてきて、覗いたが、介入できず、見張りに戻った。
カルム「あの2人、大丈夫か?」
キリト「信じるしかないだろ。」
しばらくすると、シノンが話があると言って呼んできた。
俺たちは何なのだろう?と思いながら洞窟の中へと進み、洞窟の岩壁に背中を預けて座っているチェイスの近くに腰を下ろす。
その後にシノンが腰を下ろし、ゆっくりと口を開いた。
シノン「私ね……人を、殺したの……。5年前、私が11歳の時に東北の小さな街で起きた郵便局の強盗事件で……。 報道では、犯人が局員の一人を拳銃で撃って、犯人は銃の暴発でなってたんだけど、実際はそうじゃないの。その場に居た私が、強盗の拳銃を奪って、撃ち殺した……。」
5年前か……。
そういえば、そんな事件があったな。
あまり話題にならなかったが。
唐突な内容に言葉を失っていると。
シノン「私、それからずっと銃を見ると吐いたり倒れたりしちゃうんだ。銃を見ると……目の前に、殺した時のあの男の顔が浮かんできて……怖いの。 すごく、怖い。でも、この世界では大丈夫だった。だから思ったんだ。この世界で一番強くなれたら、きっと現実の私も強くなれる。あの記憶を忘れることができるって……。なのに、さっき死銃に襲われた時、すっごく怖くて、いつの間にか《シノン》じゃなくて、現実の私に戻っていた……。 死ぬのは怖いよ。でも、でもね、それと同じくらい怯えたまま生きるのも辛いの。死銃と戦わないで逃げちゃったら、私は前より弱くなっちゃう。 だから……だから……。」
シノンが話し終えると、俺は呟いた。
カルム「俺も人を殺めた事がある……。」
チェイス「俺もだ……。」
キリト「俺もだ……。」
シノン「え………?」
シノンは驚いてこちらを見てくる。
チェイスが口を開く。
チェイス「言っただろ。俺たちは死銃たちと他のゲームで本気で殺し合ったことがあるって。そのゲーム名は《ソードアート・オンライン》。お前も聞いたことあるだろ?」
シノン「ええ。もしかして……とは思っていたけど、やっぱりそうだったのね……。」
《ソードアート・オンライン》というゲーム名は、多くの人が知っていると答えるだろう。
2022年から2024年にかけて、一万人もの人の意識をゲーム内に閉じ込め、最終的に4千人近くの人が亡くなった悪魔のゲームを。
カルム「そのSAOで、ラフィン・コフィンという殺人ギルドがあって、死銃は、そこに所属していたんだ。俺たちは、討伐戦で、恐怖と怒りに任せて、剣を振って、2人殺してしまったんだ……。」
チェイス「本当なら、無力化する筈だったが、俺たちは殺してしまったんだ。」
キリト「それも、無理矢理忘れようとして、アイツらに会って、思い出したんだ……。」
話終わって、沈黙が支配する。
すると、シノンが掠れ声で話しかける。
シノン「ねえ、貴方達はその記憶をどうやって乗り越えたの……?」
カルム「俺たちは、乗り越えていない。ここ最近は、殺した奴の事を見るからな。」
キリト「俺は昨夜、俺の剣で死んだ奴らのことを繰り返し夢で見て殆ど眠れなかった。アバターが消える瞬間の奴らの顔、声、言葉、俺はきっともう2度と忘れられないだろうな……。」
チェイス「だが、それは必要な事だ。自分の手でアイツらを殺したことの意味、その重さを受け止め考え続ける。そうする事が俺たちに出来る最低限の償いだと今は思う。過去や記憶は消すことは出来ない。だから、このことを受け入れて戦い続けるしかない……。」
そう、殺してしまった事を受け入れて、戦い続けるしかない。 それが、少しでも贖罪になるのなら……。
今回はここまでです。
誰かが支えになれば、立ち直れると思いますね。
アリシゼーションのカルムに持たせる武器はどれがいいか?
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火炎剣烈火
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無銘剣虚無
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刃王剣十聖刃
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闇黒剣月闇