ミトside
増援部隊を全滅させて、カルム達が帰った後、私はたった1人で待ち続ける。
しばらくすると、扉が開く。
扉が開いたということは、ボスを倒したのか、はたまた全滅したのかのどちらかだ。
中に入ると、ボスの姿は無く、勝利を喜ぶスリーピング・ナイツとアスナの姿が。
ミト「皆、お疲れ様。」
私がそう言うと、スリーピング・ナイツとアスナはVサインで返す。
私はそれに対して、サムズアップを送る。
私たちは、28層の転移門をアクティベートして、ロンバールへともどる。
アスナ「皆、お疲れ様!遂に終わったねー!」
アスナはそう言うが、暗い。
多分、もう会わなくなるのではと思ってるんだと思う。
すると、シウネーが打ち上げを提案する。
ミト「そうね。打ち上げ、やろう!」
ジュン「なんせ予算はたっぷりあるしな!場所はどうする?どっか大きい街のレストランでも貸し切りにすっか。」
アスナ「あ………。」
アスナが何か思いついたような反応をする。
そして、提案してくる。
アスナ「えっと、そう言う事なら………。私の家に来ない?小ちゃいとこだけど。」
それを聞いたユウキが顔を輝かせるが、すぐに俯く。
ユウキ「…………。」
ミト「ユ、ユウキ………?」
アスナ「どうしたの?」
私たちが戸惑いながら声をかけても、いつだって元気だった少女は顔を上げない。
すると、シウネーが代弁するかの様に口を開く。
シウネー「あの………ごめんなさい、アスナさん、ミトさん。気を悪くしないでもらいたいんですが………。私たちは………。」
だけど、その言葉は最後まで続かなかった。
ずっと下を向いていたユウキが、突然鋭く息を吸い込むと、右手でシウネーの手を掴んだ。
ユウキは無言のままシウネーを見つめ、シウネーも何か察したようだ。
シウネー「アスナさん、ありがとう。お気持ちに甘えてる、お邪魔させて頂きますね。」
今の一幕を理解できずに、私とアスナが首を傾げると、ノリが声を上げる。
ノリ「そうと決まったら、まずは酒だな!樽で買おう、樽で!」
タルケン「ここには、ノリの好きな芋焼酎は無いですよ。」
ノリ「何だとこら、いつアタシが芋焼酎好きなんて言ったか!アタシが好きなのは、泡盛の古酒なんだぞ!」
ジュン「色気のなさじゃ一緒じゃんかよ。」
ノリとタルケンとジュンの3人の会話に笑いながらユウキを見ると、笑っているものの、その瞳に揺れる切なそうな色は、消えていない。
買い物をして、22層のアスナのログハウスに向かうと、ユウキが雪に向かって突っ込む。
アスナ「………全く。」
ミト「ユウキらしいわ。」
着地して、ログハウスの中に入る。
荷物をテーブルに置こうとすると。
ユウキ「もうご馳走があるよ。」
「「…………え?」」
テーブルを見ると、既に料理と飲み物が並んでいた。
アスナ「これって…………。」
ミト「カルム達ね。」
そこには、キリトとユイちゃん、カルムとカナとパラドのメッセージカードが置いてあった。
全く、粋な事をしてくれるじゃない。
そこに買ってきた材料で追加の料理を作って、宴会が始まろうとする。
ユウキが乾杯の音頭を取る。
ユウキ「それでは、ボス攻略を祝して………かんぱーい!」
それと共に宴会は始まり、秩序なきドンチャン騒ぎになった。
テッチとジュンが肉にがっついていた。
ノリとタルケンはというと。
ノリ「私の酒が飲めないのかよ?」
タルケン「いえ………。お酒ぐらい、飲めますよ…………。」
そんな会話をしていた。
私とアスナは、ユウキとシウネーから、今までコンバートしてきたVRMMOに関しての話を聞いていた。
ユウキ「間違いなく最悪だったのはねぇ、アメリカの《インセクサイト》っていう奴だよー。」
シウネー「ああ………アレはねぇ。」
アスナ「どんなゲームなの?」
ユウキ「虫!虫ばっか!モンスターが虫なのはともかく、自分も虫なんだよぉー。」
アスナ「へ、へぇ………。」
それを聞いていたアスナの顔が青くなった。
まあ、あまり興味が湧いてくるゲームではないのは確かね。
ユウキ「それでも、ボクはまだ二足歩行のアリンコになったんだけど、シウネーなんか……。」
シウネー「だめ、言わないで!」
ユウキ「………でっかいイモムシでさ!口から、い、糸をぴゅーって………!」
それを聞いて、想像させると、結構面白くなり、アスナと共に笑う。
アスナ「いいなあー、皆で色んな世界を旅してきたんだね………。」
ユウキ「アスナとミトは?VRMMO歴、かなり長そうだけど。」
ミト「私とアスナは、ALOだけかな。カルムにキリトは、GGOとかやってたけど。」
アスナ「そんな感じ………。」
ユウキ「そっかー。でも、ほんと、すっごく居心地いいよ、このお家。何だか………昔を思い出すって感じ。」
シウネー「そうですね。ここにいると凄くホッとします。」
そんな風に染み染みと言うユウキとシウネー。
すると、シウネーがハッとする。
ミト「どうしたの?」
シウネー「しまった、忘れてました!私たち、アスナさんにボスからドロップした何かをお渡しするという約束でした!」
ユウキ「うわ、ボクもすっかり忘れてた!」
申し訳なさそうに肩を窄める2人に、アスナは笑って手を振る。
アスナ「いいよ、いいよ。少しだけ、何か貰えれば。あ、ううん………。やっぱり………。」
ミト「アスナ?」
アスナ「やっぱり、何も要らない。その代わり、お願いがあるんだ。」
ユウキ「え…………?」
アスナ「あのね………契約はこれで終わりなんだけど………でも、私、ユウキともっと話したい。訊きたい事が、いっぱいあるの。私を、スリーピング・ナイツに入れてくれないかな?」
ミト「え…………?」
アスナ………。
この短い間に、ユウキ達に、何か思う事でもあったのかしら………?
ユウキが口を開く。
ユウキ「あのね………あのね、アスナ。ボク達………スリーピング・ナイツは、もうすぐ……多分、春までに解散しちゃうんだ。それからは、皆、中々ゲームには入れないと思うから………。」
アスナ「うん、分かってる。それまででいいの。私、ユウキと………皆と、友達になりたい。それくらいの時間はあるよね………?」
そうユウキに尋ねるけど、返ってきたユウキの声はいつになく辛そうだった。
ユウキ「ごめん………ごめんね、アスナ。本当に………ごめん。」
アスナ「そっか………。ううん、私の方こそ、無理なお願いしてごめんね、ユウキ。」
意図せず、空気が重たくなる。
その空気を変えるために、私は手を叩いて、大きな声を出す。
ミト「折角の打ち上げだし、暗いままじゃ台無しよ。景気付けに、アレ、見に行こう。」
シウネー「アレ………?」
アスナ「肝心な事を忘れてるね!きっともう更新が反映されてるよ!」
ミト「そう、黒鉄宮の《剣士の碑》がね!」
その誘いに、ユウキは少し笑った。
私たちは、久しぶりに始まりの街に訪れ、黒鉄宮へと向かい、剣士の碑を見る。
すると、そこには、ユウキ達の名前が刻まれていた。
ユウキ「あった………ボク達の、名前だ……。」
ミト「良かったわね。」
ジュン「おーい、写真撮るぞ!」
ジュンのその言葉に、私は邪魔にならないように離れようとするけど。
シウネー「ミトさんも入りましょう!」
ミト「えっ、でも………私はボス攻略に参加してないし………!」
ノリ「ミトさん達が居なかったら、私たち危なかったし!」
ミト「………じゃあ、お言葉に甘えて。」
私たちが碑の前に並ぶと、ジュンは《スクリーンショット撮影クリスタル》のポップアップウインドウを操作して、タイマーを設定して、こちらに来て、撮影が終わる。
アスナ「やったね、ユウキ。」
ユウキ「うん………。ボク、遂にやったよ、姉ちゃん。」
アスナ「ふふふ………。ユウキ、また言ってる。」
ユウキ「え………?」
アスナ「私の事、ボス部屋でも、姉ちゃんだって言ってたよ?」
ミト(ユウキにはお姉さんがいるのね……。でも、何でお姉さんはしてないんだろう?)
そんな事を考えていて、ユウキの方を見ると、ユウキは口を抑えて、涙を溢していた。
ミト「ユウキ……!?」
ユウキ「アスナ………ぼ、ボク………。」
そのままメニューを操作して、ユウキはログアウトしてしまった。
それから3日後、ユウキとは出会えていない。
私とアスナは、ユウキにメッセージを送っているけど、ログインしていないらしい。
アスナも、シウネーと会ってきたらしいけど、スリーピング・ナイツとも連絡を取っていないらしく、逆に止められたらしい。
アスナをどうにかユウキに会わせたいけど、どうしたら良いのか、分からない………。
私は、アスナの助けになりたいのに………。
私と明日奈が、里香と浩介、珪子と壮吾と話している時、私と明日奈のスマホに、冬馬と和人から『昼休み、屋上に来てくれ。』というメールが来た。
昼休み、屋上に向かうと、冬馬と和人が作業をしていた。
和人「3人とも、どうだ?俺たちの顔が見えるか?」
ユイ『ちょっと視界がぼやけてます。』
カナ『私も、ユイと同じ。』
パラド『俺もだ。』
冬馬「うう〜む。オートフォーカスの機能が上手く働いていないのか……?和人。調整するぞ。」
和人「ああ。3人とも、ちょっと待っててくれ。」
私たちは、そんな会話をしているそれぞれの最愛の人の元に向かう。
2人も、私達に気付いたようで、作業の手を止めて立ち上がる。
私たちは、2人の肩口に額を当てる。
冬馬は私の、和人はアスナの背中を優しく叩く。
そして、和人は声を出す。
和人「2人は、どうしても、絶剣に会いたいか?」
明日奈「うん………!」
冬馬「もう会わない方がいい、と言われたんだろう?それでも?」
深澄「それでも、私もユウキと会いたい。会って、きちんと話をしたい。」
私と明日奈は、そう答える。
2人は「そうか………。」と言って、アイコンタクトをして、和人が小さなメモを明日奈に渡す。
和人「ここに行けば、会えるかもしれない。」
明日奈「え………?」
冬馬「あくまで可能性だけどね。………でも、俺たちは、そこに絶剣が居ると思う。」
深澄「な、何で………2人が知ってるの……?」
和人「そこが、日本で唯一、《メディキュボイド》の臨床試験をしている場所だからだ。」
明日奈「メディ………キュボイド?」
聞き慣れない単語を聞き、私と明日奈は、放課後にそこに向かう事に決めた。
今回はここまでです。
次回、ユウキがこの作品ではどうなっているのかが分かります。
前回の話で語った、神崎零士か神山飛羽真に会わせるの意味は、カルムには、刃王剣の凄さを見せたいからです。