ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、ユウキの処遇が分かります。


第7話 絶剣の学校入学

深澄side

 

 ユウキから、学校に行きたいという願いを聞いた私と明日奈は、冬馬と和人に依頼した。

 その翌日、昼休みの電算機室に来ていた。

 明日奈の肩には、プローブが乗っていて、和人、冬馬、鋭二の3人が話し合っていた。

 ちなみに、悠那も来ていた。

 だけど、鋭二と悠那は、この春にはこの帰還者学校を卒業して、東都工業大学に行くらしい。

 鋭二は、悠那のお父さんの研究室に入る事になっている。

 

鋭二「だから、これじゃジャイロが敏感すぎるぞ。視線追随性を優先しようと思ったら、ここら辺のパラメータにもう少し遊びがないとダメだろうな。」

和人「でもそれじゃあ、急な挙動があった時にラグるんじゃないか?」

冬馬「そこら辺は、最適化プログラムの学習効果に期待するしかないだろうな。」

 

 だが、3人の会話は、呪文じみていて、いまいちよく分からない。

 隣の悠那も、苦笑していた。

 流石に明日奈が辛そうなのと、時間が迫っている事もあり、急かす。

 

明日奈「…………ねぇ、まだ!?昼休み終わっちゃうよ!」

深澄「3人とも、時間が掛かりそう?」

悠那「流石に急いだら?」

和人「よし、取り敢えず、初期設定はこれでよしとしよう。」

鋭二「じゃあ、木綿季さん、聞こえますか?」

 

 鋭二君がドームに呼びかけると、スピーカーから、ユウキの声がする。

 

ユウキ『はーい、よく聞こえてるよー。』

和人「よし、じゃあ、これからレンズ周りを初期設定するんで、視界がクリアになった所で、声を出して下さい。」

ユウキ『はい、了解。』

 

 明日奈の肩に乗ってるのは、通称《視聴覚双方向通信プローブ》という物で、和人と冬馬、鋭二の3人で試行錯誤しているテーマだ。

 ただ、鋭二はこの春には離脱する。

 仕組みは、アミュスフィアとネットワークを通して、現実世界の遠隔地と視覚、聴覚のやり取りをしようという機械だ。

 プローブ内部に搭載されているレンズとマイクに収集されたデータは、明日奈の携帯を介してネットに送信され、メディキュボイドを経由して、専用の仮想空間にダイブしているユウキに届く仕組みだ。

 昨日、その手の愚痴を聞いていて、そういう事が思い至った私たちは、すぐさま2人に頼み込んで、2人は承認してくれた。

 レンズがフォーカスを調整するモーター音が明日奈の肩から響き、ユウキの声がする。

 

ユウキ『そこ。』

和人「よし、これで終わりだ。明日奈、一応スタビライザーは組み込んであるけど、急激な動きは避けてくれ。」

明日奈「了解!」

冬馬「深澄。悪いけど、明日奈とユウキのサポートを頼む。」

深澄「分かったわ。」

 

 突貫でプローブの調整をやって、疲れ気味な3人に手を振って、私たちは、学校探索へと出る。

 職員室まで向かう間も、ユウキは何かを見つけるたびに歓声を上げていたが、職員室に到着すると、急に静かになる。

 

明日奈「どうしたの?」

ユウキ『えーと………ボク、昔から苦手だったんだよね、職員室………。』

深澄「大丈夫よ。ここの学校の先生は、先生っぽくない人ばっかりだから。」

 

 笑いを交えて、私たちは職員室に入り、5時間目の国語の先生に話しかける。

 私と明日奈で事情を説明していると、その教師は、湯呑みを持ちながら聞いていて、話し終わると、頷いて言う。

 

先生「うん、構わんよ。ええと、君、名前は何と言ったかね?」

ユウキ『あ、はい………。紺野木綿季です。』

先生「コンノさん、良かったら、これからも授業を受けに来たまえ。今日から芥川の『トロッコ』をやるんでね、アレは最後まで行かんとつまらんから。」

ユウキ『は………はい、ありがとうございます!』

 

 私たちは、その先生に礼をして、職員室から退出する。

 3人同時に息を吐いて、笑う。

 教室に着くと、明日奈は仲良くしている女子グループの元へと向かった。

 流石にあの中に混じる勇気はないため、私は自分の席からそれを遠巻きに見ていた。

 明日奈とユウキはあっという間に注目を集め、クラスメイトから質問攻めにあっていた。

 

深澄(しばらくは、あのままね。)

 

 私がそんなことを考えていると、丁度よくチャイムが鳴り、先生が入室したことで明日奈たちも解放され、全員が着席した所で日直が号令をかけ、授業が始まった。

 

先生「えー、それでは、今日から教科書98ページ、芥川龍之介の『トロッコ』をやります。これは、芥川が30歳の時の作品で……。」

 

 先生の概説が続く間、明日奈はタブレット端末をユウキに見せていた。

 

先生「………では、最初から読んでもらいましょう。紺野木綿季さん、お願い出来るかな?」

「「は!?」」

ユウキ『は、はいっ!』

 

 私と明日奈は思わず素っ頓狂な声を上げてしまい、クラスが少しざわつく。

 

先生「無理かね?」

ユウキ『よ、読めます!』

 

 その声と共に、ユウキが音読を始めて、クラス全員が聞いていた。

 心に映ったのは、帰還者学校の制服を着たユウキが隣にいる光景だ。

 その後、授業が終わり、クラスメイトからの再度の質問攻めをなんとか脱出し、私たちは校庭のベンチへと来ていた。

 

ユウキ『アスナ、ミト………。今日は本当にありがとう!凄く楽しかったよ、ボク!』

明日奈「先生も、毎日来てもいいって言ってたからね。」

深澄「まだ見せたいものが沢山あるのよ。それより、もっと他に見たい物とかない?」

 

 そう聞くと、ユウキは、とある住所を言う。

 電車を何本か乗り継いで、目的地に着く。

 そこには、誰も住んでいない家があった。

 それを見て、私は察した。

 

明日奈「ここが………ユウキの、お家なんだね。」

ユウキ『うん。もう一度、見られるとは思わなかったよ………。』

深澄「家の中に入る?」

ユウキ『ううん、これで充分だよ。』

 

 その後、ユウキが語ったのは、親戚が揉めている事だ。

 取り壊してコンビニにしたり、更地にして売ったり、このまま賃貸にしたりすると、揉めているそうだ。

 それはあんまりだと思っていた。

 そんな事を思っていると、話は続いていた。

 

ユウキ『本当に、ありがとう、アスナ、ミト。この家をもう一度見せてくれて。例え、家が無くなっても、思い出はここにある。ママやパパ、姉ちゃんと過ごした、楽しかった頃の記憶は、ずっとここにあるんだから………。』

深澄「ユウキ………。」

 

 ユウキは語っていく。

 それは、薬を飲むのが辛くて泣いた時、お母さんがイエス様の話をしてくれたそうだ。

 本当に、良いお母さんよね………。

 すると、明日奈が口を開く。

 

明日奈「私もね………、私も………、もうずっと母さんの声が聞こえないの。向かい合って話しても、心が聞こえない。私の言葉も伝わらない。ユウキ、前に言ったよね。ぶつからなければ伝わらない事もある、って。どうしたら、ユウキみたいに出来るかな………?どうしたら、ユウキみたいに強くなれるの………?」

深澄「明日奈………。」

 

 少し配慮が欠けている言葉かもしれない。

 でも、これが、明日奈の心からの声だ。

 すると、ユウキが少し戸惑ったような声で答えた。

 

ユウキ『ボク………強くなんかないよ、全然。』

明日奈「そんな事ない。私みたいに、人の顔色を窺って、怯えたり、尻込みしたり、ユウキは全然しないじゃない。凄く………凄く自然に見えるよ。」

 

 そんな明日奈の言葉に、ユウキは答えていく。

 お父さんとお母さんを悲しませないように、元気なふりをしていなきゃと思っていたらしい。

 演技でも、笑顔でいられる時間が増えるならそれでも良いと思ったらしい。

 ユウキの言葉は続く。

 

ユウキ『だからね、最初からドカーン!ってぶつかってさ、相手に嫌われちゃってもいいんだって思ったんだ………。その人の心の近くまで行けたことに変わりはないもんね………。」

明日奈「…………そうだね………ユウキがそう言ってくれたから、私たち………ここ何日かでこんなに仲良くなれたもんね。」

ユウキ「ううん、それはボクじゃないよ。ボクが逃げても、アスナとミトが一生懸命追いかけてくれたからだよ。だからアスナも、お母さんと、あの時みたいに話してみたらどうかな。気持ちって、伝えようとすればちゃんと伝わる物だって思ってるよ。大丈夫、アスナはボクなんかよりずっと強いもん。ほんとだよ。ぶつからなきゃ、伝わらない………アスナとミトがどーんってぶつかってきてくれたから、ボクは、この人達には、全てを任せられるって思ったからさ。」

 

 ユウキの言葉に、私も上を向く。

 その後、明日奈と共に、世田谷の自宅に帰る事に。

 

深澄「明日奈………。頑張ってね。」

明日奈「うん。」

 

 家に入ろうとする明日奈にそう言って、私も帰路に着く。

 一応、予め連絡していた。

 家に着くと、お母さんとお父さんが私に話があると言ってきた。

 

深澄「それで、話って………?」

お母さん「実はね、妹が増えるのよ。」

深澄「…………え?」

お父さん「母さん、そんな抽象的だと、深澄が混乱するぞ。」

お母さん「そうだったわね。」

深澄「どういう事………?」

 

 お母さん曰く、とある病院に入院している家族がいない女の子を、ウチで預かるらしい。

 エイズの特効薬を勧めた人が親戚に居たらしく、その人が、お母さん達に引き取れないかと相談してきたそうだ。

 特効薬、エイズ、女の子、身寄りがないという単語に、一つ引っかかった。

 

深澄「その女の子って、名前は………?」

お父さん「ああ。確か、紺野木綿季さんって言ってたな。」

深澄「ええ!?」

お母さん「どうしたの!?」

深澄「さっきまで、その人と会ってたの……。」

「「ええ!?」」

 

 その言葉に、お母さんとお父さんが驚く。

 私が帰ってくるのが遅かった理由を説明すると、2人は納得していた。

 

お父さん「なるほどな………。」

お母さん「冬馬君に感謝しないとね。」

深澄「そうね………。」

 

 まさか、こんな事になるとは思いもよらず、少し呆然とする。

 その後、ウチで引き取る事に決定した。

 明日、それを言うのが楽しみになる。

 翌日、やけに嬉しそうな明日奈と会う。

 

深澄「おはよう、明日奈。」

明日奈「おはよう。」

深澄「どうだったの?」

明日奈「うん!伝わったよ。ちゃんと。」

深澄「良かったぁ………。」

明日奈「深澄も嬉しそうに見えるけど?」

深澄「うん。実はね………。」

 

 昨日、両親から言われた事を明日奈に伝えると、凄く驚いていた。

 そんな風に、私たちは学校に向かっていく。




今回はここまでです。
アンケートを見ても、やはり、神山飛羽真を出すが、多かったですね。
マザーズロザリオも、次の話で終わります。

アリシゼーションの前日譚にカルムに会わせるのは、どちらがいいか

  • 神崎零士
  • 神山飛羽真
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