冬馬side
5月中旬
俺と和人は、六本木にあるオフィスビルへと来ていた。
オフィスの一画へと到着した俺たちはそこに置かれている機械に近づいた。
和人「へぇ〜………。これが第4世代型フルダイブ実験機か。」
冬馬「それにしても、随分と大きいな。ゲーセンでよく見る箱形の据え置き機くらいか?」
比嘉「いやいや、これでも当初の設計段階に比べればかなりコンパクトに仕上がったんッスよ?」
俺たちがそう言うと、呼び出した張本人、比嘉タケルがそう答える。
彼は、重村ラボの学生の1人で、茅場晶彦、須郷伸之の後輩で、ALOの事件で協力してくれた安田巧と同期だ。
比嘉「しかも、昔のゲーセンに置いてあったのとは、スペックが段違いっス!!例えるなら……ファミコムとドリキャブくらい!」
和人「………俺、両方実機見たことない。」
冬馬「俺も。」
比嘉「えっ!じゃあ今度、僕ん家でレゲー合宿とかどうっスか!?ゲーム好きなんでしょ!桐ヶ谷君に小野君!」
和人「え、まあ………。」
冬馬「…………つまり、俺たちはこれでフルダイブして、中で動けば良いってことか?」
比嘉「そーゆーことっス。メールで伝えたように、2人の高いVR適正を見込んでお願いしたいんスよ!」
なるほどな。
だが、メールを送ったのは、比嘉さんだが、これを斡旋してくれたのは、菊岡さんだ。
あの人のことだ、何か企んでいそう。
ちなみに、比嘉さん曰く、高性能故、VR酔いが凄まじいらしい。
比嘉「中のグラフィックを見るだけで、立ってもいられないんス。………思い出すだけで眩暈が………。」
和人「まあ、給料を貰うんですから、何でもやりますけど………。」
冬馬「一応、確認しておきますが………。大丈夫なんですよね………?」
比嘉「2人が心配なのは分かるっスよ。SAOサバイバーだし。でも、大丈夫!僕の開発したマシンに危険性は、これっぽっちくらいしかないっスよ!」
和人「そうですか。それを聞いて安心……。」
冬馬「……………これっぽっちくらいしか?」
俺がジト目で比嘉さんを見つめると、比嘉さんは慌てて口を開く。
比嘉「大丈夫!大丈夫!!大丈夫ッス!!!ただ………ダイブ中に電源が落ちると、ちょーーーっとアレなのと………。」
冬馬「アレって何ですか?」
比嘉「いやいやいや!!ちゃんとそのために、補助電源×2と緊急用バッテリーを備えてるッス!!」
安心出来る要素が少ない。
俺が若干不安になってると、和人が比嘉さんに言いかけた事を話させる。
比嘉「あー………。つまり、出るんスよ。これが。」
そう言って、幽霊のポーズをとる。
まさかと思い、聞いてみる。
和人「は………?え………?」
冬馬「幽霊?」
比嘉「いやマジなんすよ!僕もハッキリ見たんスから………!この実験機はこの世界おいて今ここにある2台のみしか存在してないですよ!ですが、一台しか動かしてない時や同時稼働でも別々のVRワールドにダイブしていたとしても………全てのテストダイバーが見たという報告を上げてくるんッスよ。ダイブした先で薄っらとした人影を何度も見た、と。」
何か、胡散臭い話になってきたな。
和人が声を出す。
和人「それって、VR酔いのせいでライトエフェクトを見間違った………とかじゃないんですか?」
冬馬「それか、シェーダーがバグってるとかは………?」
比嘉「ノーーー!!!このジーニアス比嘉が組んだプログラムにそんな!ヘボイ!バグがあるわけがないデス!!」
何か、エセ外人みたいな喋り方になったな。
一応、ログは解析したらしい。
比嘉「こうなったら、考えられるのは本当にお化けの仕業なのか………あるいは。」
「「………あるいは?」」
どうやら比嘉さんには他にも心当たりがあるらしい。
周りに聞かれないように、周囲に誰もいないことを確認してから、比嘉さんは小声で話し始めた。
比嘉「…………コホン。これは口外厳禁でお願いしたいですけどね………。この実験機の心臓部には量子演算回路が組み込まれているんッス。いわゆる、一つの量子コンピュータッスね。」
冬馬「量子コンピュータって、SFとかでよく聞くあれですか?」
和人「ああ。それも比嘉さんが作ったんですか?」
比嘉「残念ながら………基礎理論はかの茅場先輩が残した理論ッスよ。まぁ、それはともかく……量子コンピュータっていうのは平行世界に干渉する可能性があるって言われてるッス。昔からSFの世界では………。」
「「……………………。」」
比嘉さんは、自信なさげにそう語る。
まあ、量子コンピュータは、そういう可能性があるのは、否定できない。
比嘉さんは、未だに語り続ける。
比嘉「もしも平行世界からの干渉を受けているのだとしたら、このお化け問題にも説明がつくんッスよ。この実験機が、過去や未来、パラレルワールドに接続して、いるはずのダイバーの影を見せている………とすれば。」
冬馬「…………分かりました。ダイブして確認してきます。」
和人「一応、そこのベッドに横たわれば良いんですか?」
比嘉「流石はSAO生還者!度胸が違いますね!」
ジェル状のベットに寝転がり、俺と和人は実験機に身を預けた。
そのまま比嘉さんがパネルを操作し、ダイブの準備を始める。
比嘉「それじゃ、桐ヶ谷君、小野君。頼んだッスよ!アバターは君たちのセルフイメージから精製されるッスから違和感はないはずッス。では、リンク・スタートの掛け声でダイブを開始するッス。」
「「…………了解。リンク・スタート!」」
いつもの掛け声と共に俺の意識はVRワールドへと旅立った。
VRワールドに旅立って、しばらくすると。
カルム「どこだここ?」
見た感じ、草原だな。
だけど、少し何かがおかしい。
飛行機が飛んでいたり、ドラゴンが飛んでいたり、鯨が飛んでいる。
しかも、何か巨大な剣が刺さっている。
カルム「どうなってんだ………?」
俺の服装を見てみると、SAOのそれだ。
どうやら、俺のイメージからそうなったみたいだな。
すると、背後に気配を感じて、抜剣しながら振り返ると、そこには、1人の若い男性が居た。
飛羽真side
俺は、神山飛羽真。
小説家にして、炎の剣士だ。
今は、この新しく創られたワンダーワールドで、消えた人を現実世界に戻すべく、執筆作業をしていた。
執筆作業を一旦、休憩する為に止めて、俺は気分転換に外に出る。
1人でも多く、現実世界に戻す為に、頑張らないとな。
すると、誰かが居る。
飛羽真「人なのかな………?でも………。」
だけど、あの人物は、始まりの5人やルナ、バハトの誰でもない。
このワンダーワールドには、俺も含めて8人しか居ないはず………。
飛羽真「君。ちょっと良いかな?」
俺は彼に声をかける。
すると、その人は、剣を抜きながらこちらに振り返る。
見た感じ、剣士だろうけど、警戒心がある。
飛羽真(アレは、聖剣なのか?でも、形状が明らかに違う。………しかも、いきなり剣を向けられるなんてね………。)
観察するけど、どう出るべきか………。
一応、いつでも刃王剣十聖刃を呼び出せるようにはしておく。
火炎剣烈火を構える。
カルムside
俺は、少し後悔していた。
カルム(しまった。VRでの習慣からか、思わず抜刀してしまった………。)
俺と男性は、そんな硬直状態に陥ってしまった。
すると、男性が動く。
飛羽真「君!こっちに戦う意志はない!何があったのか、理由を聞かせてくれないか!」
男性が何か言ってるが………。
カルム(聞こえない………。最後の警告か?いつでも武器を使えるようにしてるし………。一応、こっちも呼びかけるか。)「すいません、何を言ってるんですか?俺はフルダイブの実験機でテストダイブしてる者です!あなたは、どこからダイブしてるんですか!?」
だが…………聞こえてるようには見えない。
飛羽真(…………見た感じ、こっちの声も向こうの声も聞こえないみたいだな。………どうしようかな。タッセルさんにでも相談するか。)
男性は、何処かへと向かおうとして、嫌な予感がしたので、思わず攻撃するが、躱される。
カルム(相手が動いたから思わず攻撃したけど、躱されるとは………!………多分、ユウキやキリトとは違う強い人だろうな………!)
飛羽真(いきなり攻撃されたんだけど!?……まさか、あの距離を一瞬で詰め寄るなんて……!戦うしかなさそうだ……!)
すると、男性は腰に何かバックルみたいなのを装着して、剣を納刀する。
更に、小さい赤い本を取り出して、開く。
その本を、バックルに装填して、剣を抜刀すると、男の人の姿が変わる。
それは、右に赤い竜の装備が着いて、頭から持ってる剣が伸びている。
カルム(何だあれ………!?)
こちらから攻撃してしまった以上、戦いは避けられない。
しばらく睨み合い、風が吹いて、止む。
カルム「ハァァァァ!!」
飛羽真「!?」
俺は先手必勝と言わんがばかりに、駆け出していき、ブレイラウザーをぶつける。
男は、炎みたいな装飾がついた剣で受け止める。
鍔迫り合いになる。
だが、俺は動く。
わざと鍔迫り合いを止め、蹴りを入れる。
すると、足にライトエフェクトが発生する。
恐らく、体術スキル、弦月だ。
飛羽真(ええっ!?足が光った!?もしかして、ゲームの必殺技みたいなものか!?)
カルム(そうか!SAO時代のデータだから、ソードスキルも使えるのか!なら………!)
そこから、片手剣ソードスキルで攻撃していく。
その時、男の人が、本をタップする。
すると、一体の赤い竜が現れて、吹っ飛ばされる。
しかも、痛い。
恐らく、ペイン・アブゾーバーが効いてない。
飛羽真(しまった!少しやりすぎたかな?)
カルム「強い………!だけど、勝ちたい……!本気で行くか!」
俺はラウズアブソーバーから、2枚のカード、クイーンとキングのカードを取り出し、アブソーブカプリコーンを装填する。
『absorb queen!』
そして、エボリューションコーカサスをラウズアブソーバーにラウズする。
『evolution king!』
俺は、エボリューションキングを発動して、金色の鎧を纏い、キングラウザーを召喚する。
飛羽真(何だ!?カードが13枚現れて、それが彼と融合した!?しかも、鎧もパワーアップしてるし、剣が増えてる!)
カルム「行くぞ!」
久しぶりの感覚を味わいながら、俺は相手に向かっていく。
ブレイラウザーとキングラウザーの異種の二刀流で、相手の剣を弾きつつ、キングラウザーの重い一撃を叩き込む。
飛羽真(一撃一撃が重い……!)
カルム「これなら、行ける!」
相手も戸惑っているのか、動きが少し鈍くなる。
俺はキングラウザーに5枚のカードを読み込む。
『スペード2、スペード3、スペード4、スペード5、スペード6!』
『ストレートフラッシュ!』
キングラウザーとブレイラウザーにカードの力を宿して、相手を吹っ飛ばす。
カルム(少しやりすぎたか?)
俺は勝利を確信していた。
相手の姿が変わるまでは。
飛羽真side
まさか、あんなに強いなんて……!
倫太郎に賢人、尾上さん、蓮、大秦寺さん、ユーリ、バハトとは違う強さが、彼にはある。
飛羽真「なら、俺も本気を出さないとな!」
俺は待機させていた刃王剣十聖刃を呼び出し、火炎剣烈火のかわりに納刀して抜刀する。
『聖刃抜刀!』
『刃王剣クロスセイバー!創世の十字!』
『煌めく星達の奇跡と共に……!』
『気高き力よ、勇気の炎!』
『クロスセイバー!クロスセイバー!クロスセイバー!!』
『交わる10本の剣!』
俺は、クロスセイバーへと変身して、刃王剣十聖刃と火炎剣烈火の二刀流で、彼と戦う。
彼も、俺の姿が変わったことに戸惑っているみたいだ。
火炎剣烈火で、彼が最初から持っていた剣を弾き、刃王剣で攻撃する。
カルムside
何だよ、アレ………!?
新たな剣が現れて、姿が青くなったと思ったら、二刀流になった……!
しかも、強い………!
さっきまでの戦法が通じない。
形勢は、あっという間に相手に傾いた。
相手の炎の装飾がついた剣でブレイラウザーを吹き飛ばされ、俺はキングラウザーで攻撃するが、相手が煙になった。
カルム「え……!?グッ!」
すると、背後から痛みがして、振り返ると、いつの間にか背後を取られていた。
疲労とダメージが重なり、俺は膝をつく。
カルム(………これは、勝てないな。強すぎだろ。)
俺は負けを確信していたが、諦めたわけではない。
カルム「(………でも、最後に1発、本気の一発をあの人に叩き込む!)ハァァァァ!!」
飛羽真「まだ動けるのか!?なら!」
俺は、ラウズカードをキングラウザーに5枚装填する。
相手も、何か操作をしている。
剣に付いてる装飾を動かしていた。
『スペード10!ジャック!クイーン!キング!エース!』
『ロイヤルストレートフラッシュ!』
『刃王必殺リード!』
『既読十聖剣!』
『刃王クロス星烈斬!』
どうやら、お互いに大技を叩き込もうとしているみたいだ。
エネルギーを溜めて、俺と相手は駆け出していく。
「「ハァァァァ!!!!」」
お互いの気迫と共に、大技がぶつかろうとした次の瞬間。
「「!?」」
俺が相手をすり抜けて、相手の攻撃は俺をすり抜ける。
どうなっているんだと戸惑っていると、俺が段々薄れていく。
いまいち状況を飲み込めずにいると。
飛羽真「誰かは知らないけど、ありがとうな。」
カルム「ありがとうございます。」
俺は、意識を失った。
すると、比嘉さんの顔が見えた。
どうやら、ログアウトしたようだ。
その後、謎の剣士と戦った事を、比嘉さんには伝えずに、そのまま報酬を受け取って帰る。
ちなみに、何度ログインしても、あの剣士とは会えなかった。
深澄「冬馬?」
冬馬「あ、悪い。」
深澄「考え事なんて、珍しいわね。」
冬馬「そうかな?」
深澄「どうしたの?」
深澄が顔を覗き込む。
冬馬「実はな、この前、滅茶苦茶強い剣士と戦って、ボロ負けしそうになった。」
深澄「え?冬馬が?」
冬馬「それを思い出してた。」
深澄「それは、ゲーマーとしての血が騒ぐわね。どこの誰?」
冬馬「分からん。多分、会えないしな。」
深澄「え?」
冬馬「まあ、その話は終わり!それで、渡したい物があるんだ。」
深澄「何?」
俺は、バッグから箱を取り出す。
それを深澄に渡す。
深澄「これって?」
冬馬「開けてみてくれ。」
深澄「うん………。」
開けると中には、指輪が入っていた。
深澄「これって………!?」
冬馬「うん。指輪だよ。色が紫で、深澄っぽかったから、買ったんだ。」
深澄「くれるの………?」
冬馬「ああ。」
深澄「…………ありがとう!」
最高の笑顔を浮かべ、俺が深澄にその指輪をつける。
予想通り、似合ってる。
深澄「大事にするね!」
冬馬「ああ。」
その後、デートをして、GGOでのチェイスとシノンからの依頼についても話し合った。
冬馬(そういえば、名前が表示されていたな。確か………《TOUMA KAMIYAMA》………カミヤマトウマ。フルネームをアバター名にするなんて、珍しいな。)
飛羽真side
俺は、ワンダーワールドから帰還して、あの出来事を思い出していた。
すると、芽依ちゃんが話しかける。
芽依「飛羽真?どうしたの?」
飛羽真「いや、とある事を思い出していたんだよ。」
倫太郎「とある事?」
賢人「何だ?」
倫太郎と賢人も話しかけてくる。
飛羽真「実は、ワンダーワールドに居た時、違う世界の剣士と会ったんだよ。」
芽依「そうなの!?」
飛羽真「ああ。」
倫太郎「その人は、聖剣やワンダーライドブックを使ったんですか?」
飛羽真「いや、ワンダーライドブックは使っていなかったな。」
賢人「なるほどな。」
飛羽真「すっごく強かったんだよ!」
倫太郎「ぜひ、一度手合わせしてみたいですね!」
飛羽真「ただ、その出来事以降、彼は現れてないんだよ。」
賢人「そうなんだな。」
名前は分からなかったけど、強い剣士なのは間違い無いな。
どこか危うい一面がありそうだったけど。
俺は、そんな事を思いつつ、小説を執筆していく。
今回はここまでです。
カルムは、神山飛羽真が見せた刃王剣十聖刃の戦い方を、アンダーワールドでもやってくれると思います。
ちなみに、書いてはいませんが、ノーチラスと重村教授の2人は、既にオーグマーを開発しています。
いよいよ、アリシゼーションへと入っていきます。