ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、ルーリッドの教会に泊まるまでです。


第6話 悪魔の樹

カルムside

 

 ユージオとケントから、お腹が空いていないかと尋ねられ、お腹が空いていると答えると、2人はパンを出す。

 

ケント「ほら。」

カルム「ありがとう。」

ユージオ「キリトも。」

キリト「ありがとうな。」

 

 どうやら、ユージオとケントは、パンを2個ずつ持っていたようで、一個貰えた。

 何か、アインクラッドの黒パンみたいだなと心で思っていた。

 すると、キリトが小声で話しかける。

 

キリト「(カルム、どう思う?)」

カルム「(どう思うって、ユージオとケントの事か?)」

キリト「(それもあるけど、本当にアンダーワールドなのか?)」

カルム「(分からん。)」

 

 そんな風に話していると。

 

ユージオ「長持ちするしか取り柄がないんだけどね。」

ケント「一応、渡しておく。」

 

 そう言って、ユージオとケントはパンの上でSの字を指で描き、それをタッチすると何かの画面が現れた。

 それを見た俺とキリトは驚いた。

 

キリト「(今のって………。)」

カルム「(多分、ステータス画面の類だろうな。)」

キリト「(これで確定だな。ここは現実世界でも異世界でもない………仮想世界。しかもこのリアリティ度は………間違いない。ここはSTLが作り出したVRワールド、アンダーワールドだ。)」

 

 キリトの言葉に頷きつつ、ユージオとケントの動きを真似て、画面を出す。

 SAOにALO、GGOの物と仕様が異なるが、ステータス画面なのは間違いない。

 

ユージオ「ねぇ、キリト、カルム。まさかとは思うんだけど………。」

ケント「『ステイシアの窓』の使い方を分かっているよな?」

キリト「ス、ステイシア………?ああ。これの事だよな!」

カルム「大丈夫だよ。」

 

 ユージオとケントの2人の問いに動揺しつつも、何とか答える。

 ステータス画面………もといステイシアの窓をタッチして、消す。

 

ユージオ「まだ天命はたっぷりあるから、急いで食べなくて大丈夫だよ。」

ケント「夏だと、とてもこんなに残ってはいないんだがな。」

カルム「へぇ………。(夏は物が腐りやすいのは、リアルと同じか。)」

 

 そんな感想を抱きつつ、キリトと共にパンを食べようとするのだが。

 

「「んん?!かった!?」」

 

 何だこれ!?

 あの黒パンと同等の硬さだぞ!?

 ユージオとケントは、千切って食べているので、俺も2人を見習って、千切って食べる。

 キリトは、こりもせずに齧り付いていたが。

 

ユージオ「美味しくないでしょ、これ?」

ケント「出掛けに村のパン屋で買ってくるんだが、朝早いから前日の残りしかないし、昼に村まで戻る時間もないからな。」

カルム「大変そうだな………。」

キリト「…………うん?それなら家から弁当を持ってくればいいじゃないか?」

「「…………っ!?」」

 

 キリトが何気なく放った一言で、ユージオとケントが絶句していた。

 もしかして、キリトの奴、2人の地雷でも踏んだのか?

 不安になって、2人を見ると。

 

ユージオ「………前は、昼休みにお弁当を持ってきてくれる人達がいたんだけどね………。」

ケント「今は………。」

カルム「………その人たちは、どうしたんだ?」

 

 失礼だろうが、2人に尋ねる。

 

ユージオ「その人達は幼馴染だったんだ。同い年の女の子で、僕たちが小さい頃はいつも一緒に遊んでた。」

ケント「天職を与えられてからも、毎日お弁当を持って来てくれた………。でも………。」

 

 視線を落とし、パンを強く握るユージオとケント。

 その顔には、後悔が浮かんでいた。

 

ユージオ「僕たちのせいなんだ。4人で北の洞窟に出かけた時、間違えて彼女達はダークテリトリーに入ってしまったんだ………。」

ケント「決して、入ってはいけない、禁忌目録に書いてある場所だ。」

カルム(禁忌目録………。)

 

 禁忌目録という単語に俺が引っかかっている中、ユージオとケントは話し続ける。

 

ユージオ「次の日、整合騎士が村にやってきて………彼女たちは央都に連れていかれてしまったんだ。」

ケント「だがな、俺は信じてるんだ。きっとイーディスとアリスは生きてるって………。央都のどこで必ず…………!」

カルム(イーディスにアリス………?俺は、その名前を知ってるのか?)

 

 2人が告げた名前を聞いた途端、脳裏に何かが浮かぶ。

 それは、麦わら帽子に金髪の三つ編みの少女に、灰色の髪のポニーテールの少女。

 顔は思い出せないのに、俺は、その2人を知っている気がする………。

 そんな風に考えていたからか、ユージオとケントが話しかけたことに、驚いた。

 

ユージオ「ごめんね。」

「「っ!?」」

ケント「急に変な話をして………。何でだか、2人に初めて会った気がしなくてな………。」

キリト「そっか………。」

 

 俺は、ケントのその言葉に、違和感を感じていた。

 

カルム(………俺も何でだか分からないけど、ユージオとケントと初めて会った気がしない。何でだ?)

 

 そんな風に考えていると、キリトがユージオとケントに話しかけていた。

 

キリト「なあ、そんなに気になるのなら、捜しに行ってみたらどうなんだ?その、央都とやらにさ。」

ユージオ「…………村から央都に行くには、早馬を使っても1週間はかかるんだ。」

カルム「だったら、長旅の用意をすればいいじゃないのか?1週間分なら準備するのもそう難しくはないだろう?」

ケント「…………俺だってそうしたいさ。でも、天職を放り出して旅に出るなんて、禁忌目録に違反してしまう。」

キリト「そ、そうなのか………。」

 

 俺の疑問に悔しそうに俯くケントとユージオ。

 やっぱり、心の奥底では、央都に行ってイーディスとアリスに会いたいと思ってるんだろうな。

 

カルム「その………。アリスさんとイーディスさんが連れていかれたのはいつだ?」

ケント「俺とユージオが11の夏だから、6年ぐらい前だ。」

カルム「ありがとう。」

 

 ケントが水筒を投げてきて、それをキャッチし、礼を言う。

 すると、ケントとユージオが立ち上がり。

 

ユージオ「じゃあ、悪いけど、しばらく待っててね。」

ケント「午後の仕事も終わらせる。」

キリト「仕事………ユージオとケントの………天職っていうのか。」

カルム「それって何なんだ?」

ユージオ「ああ、言ってなかったっけ?」

ケント「言ってないな。」

 

 俺とキリトの疑問に、ユージオとケントは振り返る。

 その視線の先には、斧が置いてあった。

 それを持つのを見て。

 

カルム「ユージオとケントの天職って、樵なのか?」

ユージオ「う〜ん………。ちょっと違うかな。」

ケント「まあ、見てろ。」

 

 俺の言葉に答えながら、ユージオとケントは俺たちがもたれかかっている樹の反対側に回った。

 それを追いかけようと、俺たちは立ち上がり、その後を追った。

 ユージオが斧を振り上げ。

 

ユージオ「ふん!」

 

 大きく息を吸い、切り込みに斧を切りつけるユージオ。

 どうやら、先ほど聞こえてきた音はこの音だったようだ。

 それから数度、ユージオが斧を叩きつけるのを見ていた。

 ちなみに、途中でケントと交代していた。

 

ユージオ「ふぅ………。」

カルム「凄いな………。」

キリト「これが、ユージオとケントの天職なのか?」

ユージオ「そうだよ。僕たちはこのでっかい樹………ギガスシダーを伐り倒す事……。」

ケント「それが、俺たちの天職だ。」

カルム「ギガスシダー?」

 

 ギガスシダーと言えば、ラテン語と英語の造語になるな。

 巨人の杉という意味になる。

 このデカさを見ると、その名前がしっくりとくるな。

 

ユージオ「まぁ、この樹のことを村の皆は悪魔の樹って呼ぶことの方が多いけどね。」

「「悪魔の樹?」」

ケント「ああ。この樹は周りの土地からテラリアの恵みを奪うからな。」

カルム「そういえば、この樹の周りには何も生えていないと思ってたけど、それが原因か?」

ユージオ「それだけじゃないよ。この樹がある限り、僕たちの村は麦畑を広げることができないんだ。」

 

 そういう事か。

 確かに、そういう事情なら、伐採対象になるのも仕方ないな。

 

ユージオ「そこで、あの斧………竜骨の斧を央都から取り寄せて、僕たち専任の刻み手に叩かせることにしたのさ。」

キリト「じゃあ、ユージオとケントは7年間ずっと毎日この樹を…………?」

カルム「な、7年やってこれだけしか刻めてないのか?」

ケント「…………まさか。」

 

 全然刻めていない事はない事にホッとするが、その後にケントが話した言葉に、言葉を失う。

 

ケント「俺たちは、7代目なんだ。」

カルム「え?7代目?」

ユージオ「そう………。300年………代々の刻み手が毎日叩いてやっとここまで来たんだ。」

「「300年………!?」」

 

 300年であれ!?

 どんだけだよ…………。

 そんな風に呆然としていると。

 

キリト「なぁ、ユージオ、ケント。……ちょっと俺たちにもやらせてみてくれないか?」

ユージオ「ええっ!?」

ケント「何っ!?」

カルム「キリト…………。」

 

 まさかのキリトの提案に驚きの声を上げる横で、俺も静かに驚いていた。

 

キリト「弁当を分けてもらったわけだし、その分仕事を手伝うのが筋な訳だろう?」

ユージオ「そ、そうかもしれないけど………。」

カルム「キリトの言う通りだな。禁忌目録には、他者の天職を手伝ってはいけないって決められてるのか?」

ケント「確かに、そんな決まりはないが……。だが、案外難しいぞ。」

 

 心配するユージオとケントを横目に、キリトは竜骨の斧を担ぎ上げる。

 

キリト「やってみないと…………分からないだろう?」

 

 そんな風に自信満々に答える。

 しかし、その直後…………。

 

キリト「………いってぇぇぇぇ!!」

「「アハハハハ!!」」

カルム「キリト、大丈夫か?」

 

 キリトは、見事に斧を打ち外し、両手が受けた反動で悶えていた。

 それを見て、ユージオとケントは爆笑して、俺は苦笑する。

 

キリト「そんなに笑わなくても………!」

ユージオ「ごめん、ごめん!キリトは肩にも腰にも力が入り過ぎだよ。もっと全身の力を抜かないと。」

カルム「次は俺がやって良いか?」

ケント「いいが、大丈夫か?」

カルム「とにかくやってみる。」

 

 ユージオのキリトに対するアドバイスを聞いて、俺も挑戦する。

 肩と腰の力を抜き、息を整え、大きく振りかぶり、切れ目に向かって打ち込む。

 すると、甲高い音がして、ケントから驚いた声が出る。

 どうやら、キリトとは違って、切れ込みにちゃんと入ってるな。

 

カルム「ふぅ………。」

ケント「凄いぞカルム!初めてにしては綺麗な打ち込みだ!」

カルム「ありがとう。」

ユージオ「もしかして、斧を使った事があるのかい?」

カルム「多分な………。それよりも、ユージオのアドバイスが的確だからな。」

 

 すると、後ろから恨めしげな視線が来る。

 

キリト「ったく、お前は前から何でもそつなくこなすよな。」

カルム「揶揄うな。」

 

 そんな風に茶々を入れるキリトに竜骨の斧を渡す。

 

カルム「ほら、お前の番だ。」

キリト「分かってるよ。」

 

 そんな風に、俺とキリトも手伝い、コツを掴んできた。

 そして、日が暮れてきた。

 

カルム「これで、50!」

ケント「よし、これで1000回だな。」

 

 俺が打ち込んだ時に、ケントがそう語る。

 

キリト「え?もう1000回やったのか?」

ユージオ「うん。僕とケントで500回、キリトとカルムで500回、今日1日で2000回。1日に2000回ギガスシダーを叩く事が、僕たちの天職なんだ。」

カルム「へ、へぇ…………。(毎日2000回も叩くのか!?)」

 

 そんな風に絶句していた。

 途轍もないな………。

 

ユージオ「でも、2人とも筋が良いよ!」

ケント「ああ。おかげで今日は随分と楽だった。」

キリト「いや………俺なんか全然だよ。カルムの方が上手かったし、多分ユージオとケントと3人でやった方がもっと早く終わっただろうな。」

ユージオ「そんな事はないよ。」

ケント「………そうだ。こっちに来てくれ。」

 

 そう言って、ケントはギガスシダーのステイシアの窓を開く。

 その数字を見た俺たちは、さらに絶句する。

 

カルム「えぇ………。」

キリト「嘘だろ………!?」

 

 ギガスシダーの天命を見た俺たちはその数字に思わず声が漏れた。

 天命の最大数が30万を超えているのはともかく、残りの数値がその7割方……23万2316も残っていたのだ。

 

ケント「先月から、50くらいしか減っていないな。」

カルム「えっ!?1ヶ月でたったの50!?」

ユージオ「そう………これで分かっただろう?たった半日、仕事が少しばかり捗らなくてもそんなの全然大したことじゃないんだよ。」

キリト「そうなのか………。」

 

 ケントの呟きに、ショックを受けている俺の横で、ユージオがキリトに仕事の速さなど関係ないのだと説明していた。

 そういうことならとキリトも納得したらしく、そのまま俺たちはユージオとケントの後片付けを手伝うことにした。

 

ユージオ「よし、行こうか。」

ケント「ああ。」

キリト「え?施錠しなくて良いのか?」

 

 近くの山小屋に竜骨の斧を仕舞うが、施錠しない事にキリトが聞くと。

 

ユージオ「なんで?」

キリト「いや、盗まれたりとか………。」

ケント「まさか。盗みをしてはいけないって禁忌目録に書いてあるだろう?」

キリト「そ、そうだったな。」

ユージオ「さぁ、早く村に帰ろう。」

カルム(本当に、禁忌目録が絶対みたいな感じになってるな………。)

 

 この世界の住人の、禁忌目録から絶対に背かない事をそんな風に思いつつ、ルーリッドの村へと向かう。

 村の入り口に着くと、ユージオとケントが立ち止まる。

 俺たちも何事かと思い、2人が見ている方を向くと、1人の男性がいた。

 

???「おい、ユージオ!ケント!そいつらは誰だ?」

ユージオ「………ジンク。彼らはキリトとカルムだ。」

ケント「どうやら、ベクタの迷子でな。」

ジンク「お前ら、本当に記憶がないのか?」

キリト「あ、ああ………。」

ジンク「天職も覚えてないのか?」

カルム「残念ながらさっぱり。」

 

 男性………ジンクは俺とキリトのことをジロジロと見ながら、そう問いかけてきた。

 すると。

 

ジンク「………まあ、大した天職じゃなかったんだろうな。そこのユージオとケントと同じで!!」

カルム「………。」

 

 その発言に、苛ついた。

 横のユージオとケントを見ると、少し沈んだ表情を浮かべていた。

 

ジンク「何の意味もない無駄な仕事をしてたんだろうぜ?その点、俺の衛士という天職は………!」

キリト「剣士。」

ジンク「っ!?」

 

 偉そうに語ってくるジンクの言葉を遮り、キリトは自信たっぷりに語る。

 まあ、俺もだが。

 

キリト「俺たちの天職は………剣士かな?」

ジンク「剣士?そんな細い体でか?」

カルム「人の第一印象でそう決めてかかるなんて、君は案外心が小さい奴だね。」

ジンク「………へぇ。なら、見せてもらおうか?」

カルム「キリト。」

キリト「ああ。」

 

 その提案に、俺とキリトは乗る。

 まず、キリトがジンクという奴から剣を借りて、その後に俺が借り、実力を見せる事に。

 キリトが水平斬りを放つと。

 

キリト「ハァァァァ!!」

カルム「!?(ライトエフェクト!?)」

 

 そう、キリトは、片手剣のソードスキル、ホリゾンタルを放ったのだ。

 まさかの出来事に、疑問を感じながらも、順番が回ってきた俺はキリトから片手剣を受け取り、人形の方へと向かう。

 キリトも先ほどの出来事に疑問を感じたようで少し険しい表情をしていた。

 

カルム(ホリゾンタルが使えたという事は、できるかもな……!)

 

 俺は、片手剣を上段で構えて、技を放つ。

 それは、ホリゾンタルと同様、片手剣ソードスキル、バーチカルを放つ。

 人形は、斬れた。

 すると、ユージオとケントが近づいてくる。

 

ユージオ「す、凄いよ!キリト、カルム!」

ケント「ああ!あんな技を使えるなんてな!」

 

 興奮が冷めないユージオとケントは俺たちに賞賛の言葉を送る。

 街の衛兵だったのではないかと言われたが、流石に2年近くも剣の世界で戦い続けてきたというわけにもいかず、苦笑いしてごまかす俺たち。

 

ユージオ「ジンク、もう良いだろう?」

ケント「2人を村に入れるぞ。」

ジンク「あ、ああ…………。」

 

 ユージオとケントにそう言われたジンクはかなりショックを受けていた。

 どうやら俺たちの剣技に圧倒されてしまったらしい。

 その後、教会に向かって行ったのだが。

 

キリト「………疲れた。」

カルム「………俺たちが外の人間だって聞いて、全員話しかけてきたしな。」

ユージオ「ハハハ………。」

ケント「さて、着いたぞ。」

 

 会う村人全員に質問攻めにされ、キリトと俺は疲れ切ってしまっていた。

 そんな俺たちを見て、ユージオとケントは苦笑いしていた。

 

キリト「それにしても、村の人たちは俺たちがベクタの迷子だってことを疑わないんだな。」

ユージオ「えっ?だってそうなんでしょう?」

カルム「そうなんだが………普通部外者がそんなことをいきなり言い出したら、疑うものじゃないか?」

ケント「そうなのか………二人とも変なことを気にするんだな。ともかく、シスターを呼ぶぞ?」

 

 ユージオとケントは首を傾げつつ、ドアをノックする。

 しばらくすると。

 

アザリヤ「………何か御用?」

 

 そう言って、件のシスター・アザリヤが出てきた。

 その後ろには、2人の女の子がいた。

 その2人は、ユージオとケントを見て反応していたが、ユージオとケントは、目を逸らしていた。

 

アザリヤ「………御用は?」

カルム「あっ、すいません。実は俺たち、ベクタの迷子らしくて………ここにいるユージオとケントの紹介で、教会なら泊めて貰えないかと話を聞きまして………お願い出来ませんか?」

アザリヤ「……………。」

 

 アザリヤは、こちらをジッと見てくる。

 少し、俺が苦手な人かもな。

 すると。

 

アザリヤ「…………良いでしょう。私はシスター・アザリヤと申します。彼女達は見習いのセルカとメアリです。セルカ、メアリ。彼らを空いている部屋に案内してあげなさい。」

「「かしこまりました、シスター・アザリヤ。」」

 

 シスター・アザリヤの指示に少女達………セルカとメアリが前に出る。

 

セルカ「セルカ・ツーベルクです。宜しく。」

メアリ「メアリ・リデルです。宜しく。」

キリト「キリトだ。宜しく。」

カルム「カルムです。お世話になります。」

 

 自己紹介を終えて、礼を言うべく、ユージオとケントの方を見る。

 

カルム「ありがとうな。」

ユージオ「ううん………。」

ケント「悪い、もう行く。」

 

 そう言って、逃げるようにその場を後にする。

 不安になりつつも、部外者が口出しは無用だと思い、見送った。

 セルカとメアリに教会を案内してもらい、同じ部屋にあてがわれた。

 

セルカ「はい、枕と毛布。」

キリト「ありがとう。」

メアリ「朝のお祈りが6時で、食事は7時よ。一応見に来るけど、なるべく自分で起きてね。お祈りに遅刻すると………シスター・アザリヤは怖いわよ?」

カルム「ああ。」

 

 あの人、怒らせたら絶対怖い人だ。

 そんな風に思っていると。

 

セルカ「消灯したら外出は禁止だから気を付けて………。」

メアリ「そこのあなたたちもよ!」

子供「あっ!見つかった………!」

子供「逃げろ!」

「「………アハハハハ。」」

 

 セルカとメアリの注意に、興味で俺たちをのぞき見しに来ていた子供たちが蜘蛛の子のように逃げ出した。

 その姿に思わず笑みが零れた。

 

セルカ「全く………。他に分からない事はない?」

キリト「大丈夫。色々とありがとう。」

メアリ「そう………。じゃあ、おやすみなさい。ランプの消し方は分かる?」

カルム「大丈夫だ。」

 

 セルカとメアリの問いに、俺たちは答える。

 

「「おやすみ。」」

「「おやすみなさい。」」

 

 少し微笑んでそう返したセルカとメアリは部屋を後にした。

 2人が部屋から離れて行くのを足音で確認した俺たちは大きく息を吐いた。

 

キリト「取り敢えず、教会のお世話になれて良かったよ。」

カルム「そうだな。だが、問題はこれからだ。」

 

 俺たちは、今後をどうするのかを話し合う事にした。

 

キリト「ここは現実世界じゃない。ステイシアの窓のように、あんなことができるのは仮想世界だけだ………。そして、このクオリティの高いVRワールドは、STLが作り出す『アンダーワールド』………で間違いないよな?」

カルム「そうだと思う。」

キリト「それに、この村。この村の人々は全員NPCじゃない………。あんなに表情豊かなNPCが大勢いるとは考えにくい。」

カルム「だが、あんな大勢の人数がこの世界に来れるほどSTLがあるとも考えにくいだろう?」

キリト「………これは俺の推測だけど………。ユージオとケントの話からすると、このアンダーワールドじゃ、内部時間にして300年以上が経っていることになる。そして、あの2人は少なくとも6年以上はここで過ごしていることになる………もしこの話が全て本当なら、そんなことができるのはただ一つ………STLのFLAシステムによるものじゃないかって思うんだ。」

カルム「それじゃあ、この村の人たちは、全員フラクトライトで作られたのか?」

 

 俺がそんな風に質問すると、答えが返ってきた。

 

キリト「ユージオたちはこの世界で一から育ったんじゃないかと思うんだ。多分、生まれたばかりの人………赤ん坊の魂とかをコピーして、この世界の中で成長させたんじゃないのか?………言うなれば、人の手によって作られたフラクトライト………そうとしか考えれば色々と納得がいくんだ。」

カルム「………人の手によって作られたフラクトライト………人工フラクトライトね。」

キリト「信じられないことだけどな………。それに何の目的でこんなことを………見当がつかないな。」

 

 あの菊岡は、何を企んでいるんだ?

 その後、FLAやもし天命が全損した場合にはどうなるかを話し合い、寝る事にした。

 そんな中、俺はとある事を思っていた。

 

カルム(現実世界じゃ、ほんの少ししか経ってないんだよな。ミトは、どうしてるんだろ?)

 

 愛する人の事を考えながら、俺は眠った。

 

???side

 

 まさかな。

 ギガスシダーの刻み手を見守ってきたのだが、今日現れたあの2人は何だ?

 聞いた限りでは、ルーリッドの出身ではないが。

 

???「もしかしたら、あの剣を使えるのかもしれないな。」

 

 俺はそう言って、右手に持つ光剛剣最光と、左手に持つ刃王剣十聖刃を見つめる。

 刻み手の方は、青薔薇の剣と、雷鳴剣黄雷を手に入れている。

 もしかしたら、アイツらがこの現状を打破し得る存在かもしれないな。

 




今回はここまでです。
最後の方に現れた謎の人物。
この人物は、いずれ明かされます。
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