ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は、ゴブリンとの戦闘の直前までです。


第8話 果ての山脈

 あの後、ユージオとケントの手伝いを終え、教会に戻ってきた。

 俺が先に風呂に入って、上がり、シスター・アザリヤから許可を貰って、この世界の歴史や神聖術に関する本を読み漁っていた。

 

カルム「こんなもんか………。」

 

 どうやら、ステイシアという神がこの世界を創り、ソルスが太陽を創り、テラリアが大地を創って、追い出されたのが、ベクタという事だ。

 何ともまあ、大方予想通りだった。

 ケントが太陽に向かってソルスと言っていた事や、ステイシアの窓が、ステータス画面だったりと、色々と納得する事があった。

 神聖術自体は、ALOと同じく、呪文を述べ、発動する。

 ソードスキルに関しては、秘奥義という名称がついている。

 これに関しては、これ以上は分からない。

 

カルム(神聖術に関しては、ケントかユージオの2人に聞いてみよう。)

 

 使えるのなら、使えても損はないしな。

 問題は、禁忌目録に関してだ。

 

カルム(禁忌目録を作ったのは、公理教会の、最高司祭か………。)

 

 人工フラクトライトが作ったのか。

 もしかしたら、ログアウトする為には、公理教会に行かないと行けないかもしれないな。

 まず、どうやって行くのかは分からないが、最悪の手段として、罪人として連行される事だ。

 そうすれば、すぐに公理教会に行けるが、リスクが大きすぎる。

 その手段は、なるべくは使いたくない。

 

カルム(でも、ケントやユージオの反応を見る限り、禁忌目録が絶対みたいな感じだけど、イーディスやアリスが破っている。人工フラクトライトは、何かきっかけがあると、破れるようになるのか?)

 

 それにしても、謎が多い世界だな、アンダーワールドは。

 すると、部屋のドアが開いた。

 キリトが戻って来たのかと思って、振り向くと、キリトだけではなかった。

 

カルム「あれ?セルカにメアリ?」

セルカ「お邪魔するわね、カルム。」

メアリ「お邪魔します。」

カルム「キリト、まさか………。」

キリト「違うって!俺はただ、セルカとメアリに聞きたい事があったからだ!」

カルム「本当か?」

メアリ「本当よ!」

セルカ「変な事はないから!」

カルム「………分かった。2人が言うなら、本当なんだろうな。」

キリト「なんで、セルカにメアリの言葉は信じるんだよ!?」

 

 どうやら、セルカとメアリは嘘を言っていない。

 信じるとしよう。

 それにしても、キリト、アスナという最愛の人が居るのにも関わらず、女の子をナンパしようというのか?

 俺は、ミト一筋だ。

 一応、片方のベッドにセルカとメアリを座らせて、もう片方に俺とキリトが座る。

 

セルカ「それで、聞きたい事って何?」

キリト「セルカとメアリのお姉さんに関してなんだけど………。」

メアリ「えっ………お姉ちゃんの事?」

カルム「ケントとユージオから聞いたんだけどな。」

セルカ「えっ!?ユージオとケントが話したの!?お姉様の事を!?」

 

 結構食いつくな。

 俺とキリトは驚きつつ、話をする。

 

キリト「アリスとイーディスもこの教会で神聖術の勉強をしていて、6年前に整合騎士に連れていかれたって聞いた………。」

カルム「ユージオとケントはその時、自分は何もできなかったってかなり後悔してるみたいだったけど…………。」

メアリ「………そうなんだ。」

セルカ「ユージオとケント、まだアリス姉さまとイーディスさんのことを…………。」

 

 セルカとメアリは、ユージオとケントが後悔してる事は知らなかったみたいだな。

 2人の表情が少し沈んでいた。

 

セルカ「………ユージオとケントが笑わなくなったのは、やっぱり、アリス姉様とイーディスさんのせいなのね。」

「「ユージオとケントが笑わない?」」

メアリ「うん。いつも暗い顔で、あまり話をしようとしないでしょ?」

キリト「あ、ああ…………。」

カルム(そう言ってる割には、俺たちの前だと結構笑ってるけどな………。)

 

 確かに、ジンクと話している時にも、沈んだ表情を浮かべていたな。

 という事は、村の人の前では笑わないという事か?

 無理してるのかな?

 

セルカ「だけど、姉さまとイーディスさんが村にいた時はいつでもニコニコしてたの。笑顔でない時を探すのが難しいくらいだったわ。」

メアリ「でも、今の2人は安息日も家に閉じこもるか、森に出掛けるかでいつも一人ぼっち………。」

カルム(………あのユージオとケントにそんな一面があったなんて…………。)

 

 よっぽど、過去の出来事が重くのしかかっているんだろうな。

 赤の他人である俺は、感じ取れなかった。

 

キリト「セルカはユージオが、メアリはケントが好きなんだな。」

セルカ「なぁ!?そんなんじゃないわよ!」

メアリ「何言ってるの!?」

カルム「お前は、もう少しデリカシーを考えろ!!」

 

 セルカとメアリがデリカシーという言葉に首を傾げていたが、気にするなと返した。

 やべぇ、現実でのノリでやっちまった。

 そういえば、ここはアンダーワールドだったな。

 

セルカ「フフフ………でもね。皆、口には出さないけど、私達を見ると、ため息を吐いていたわ。」

キリト「…………え?」

メアリ「私達を見ると、お姉ちゃん達の事を思い出すみたいでね………。何だか堪らないの。」

カルム「気にしすぎじゃね?」

セルカ「そうかもね。でも、ユージオとケントは私たちのことを避けているわ。」

メアリ「偶に会ってもいつも辛そうな顔をするの………。お姉ちゃん達がいなくなったのは私達のせいじゃないのに…………。」

 

 2人は涙を流す。

 俺は近くにあった布を手渡した。

 それを受け取り、涙を拭うセルカとメアリ。

 

セルカ「ごめんなさい、取り乱して……。」

キリト「いや………。それに泣きたい時には泣いた方が良いと思うよ。」

カルム「キリトの言う通りだ。泣き言くらいなら聞くからさ。」

メアリ「うん、ありがとう。少しだけ気持ちが楽になったわ………。人の前で泣いたのは随分久しぶりだったわ。」

 

 セルカとメアリは少しスッキリした表情を浮かべていた。

 良かったな………。

 

キリト「それは良かった。それにしても、セルカは強いな。俺なんかこの年でも泣きまくりだぜ。」

セルカ「…………キリト。もしかして記憶が戻ったの?」

キリト「えっ!?い、いや!なんとなくそうだったかなと………!」

カルム「そ、そんな感じだったってことだよな!うん!」

メアリ「…………そうなの?」

 

 記憶を失っているという設定を忘れていた俺たちは慌てて否定した。

 ヤベェ、時折、その設定を忘れるな。

 訝しむセルカとメアリに誤魔化すために俺は話を強引に変えた。

 

カルム「とにかく!君達は君たちだ。誰も他人にはなれないさ。」

キリト「セルカもメアリも、自分に出来る事をすれば良いんじゃないか?」

セルカ「そうね………。」

メアリ「2人とも、ありがとう。」

 

 俺たちの言葉にどこか納得したセルカとメアリ。

 その時、就寝を告げる鐘の音が聞こえてきた。

 

セルカ「そろそろ戻らないと………。」

メアリ「そうね…………。」

 

 そう言って部屋を後にしようとしたセルカとメアリが立ち止まった。

 どうしたのかと思っていると、セルカとメアリが尋ねてきた。

 

セルカ「ねぇ、2人とも。」

メアリ「二人は整合騎士がどうしてお姉ちゃん達を連れていったのかも聞いたの?」

カルム「えっ?ああ、聞いたけど………。どうしてだ?」

セルカ「私達は知らないのよ。みんな教えてくれなくて………理由は何だったの?」

 

 どうするべきか。

 キリトの方を見ると、キリトは答えるべきだと思ったらしい。

 

キリト「確か………果ての山脈を抜けて、闇の国に入ってしまったから、ってユージオとケントは言ってたぞ。」

セルカ「………そう。果ての山脈を………。」

メアリ「そうなのね…………。」

カルム「…………セルカ?メアリ?」

 

 そう呟く彼女達に、どこか引っ掛かりを覚えるも、すぐに表情を変えたセルカとメアリの言葉に俺は気のせいかと思った。

 

セルカ「明日は安息日だけど、ちゃんと起きるのよ!」

メアリ「カルムがいるから、私達が起こしに来る必要はないんだろうけど。」

カルム「俺は大丈夫だが………そこのソイツは分かんないな。」

キリト「………ど、努力するよ。」

 

 俺がジト目でキリトを見つめ、そんな様子に微笑みながら、セルカとメアリは部屋を後にする。

 この時、気づいていなかった。

 俺たちは、とんでもない大ポカをやらかした事に。

 翌朝。

 教会の裏側にある井戸で俺たちは顔を洗っていた。

 

キリト「ふう………早起きもいいもんだな。」

カルム「だろう?休みだからって、寝ているだけなんてもったいないからな。」

 

 俺は、剣道の朝練で早く起きる事が多いので、問題はない。

 すると。

 

アザリヤ「おはようございます。」

カルム「ん?シスター・アザリヤ、おはようございます。」

キリト「えっと………おはようございます。」

 

 シスター・アザリヤがやってきて、慌てて挨拶する俺たち。

 俺たちに用かと思い、シスターの言葉を待った。

 

アザリヤ「キリトさん、カルムさん。セルカとメアリを見ませんでしたか?」

キリト「いえ。今朝は見てませんが。」

カルム「セルカとメアリの2人がどうしたんですか?」

アザリヤ「朝から姿が見えないものでして……礼拝にも来ず、部屋にもいなくて。こんなこと一度もなかったものでして………。」

カルム「そうなんですか?」

キリト「それは………変ですね。」

 

 シスター・アザリヤの言葉に思わず首を傾げる俺たち。

 決まりを遵守する傾向があるこの世界の住人からすれば確かに考えにくいことだ。

 

アザリヤ「もし見かけたら、教えてくれますか?」

カルム「分かりました。」

 

 そう言って、シスター・アザリヤは再びセルカを探しに行ったようだ。

 俺たちも心配になり、捜しにいくことにした。

 すると、着替えを終えて教会を出たところでユージオとケントにばったり出会った。

 

ユージオ「あっ、キリト、カルム。」

キリト「ユージオ、ケント。セルカとメアリを見なかったか?」

カルム「何か、朝から姿が見えなくて、探しに行こうとした所だ。」

ケント「何?そういえば、見てないな。どうしたんだ?」

 

 どうやらユージオとケントも見ていないらしい。

 ともかくセルカとメアリが行きそうな場所を探すしかないようだ。

 

キリト「ユージオ、ケント。セルカとメアリが行きそうな場所を知らないか?」

ユージオ「………最近、話してないから。」

ケント「俺もだ。」

カルム「そういえば、そんな事を………。ん?待てよ………まさか!?」

 

 昨日の会話を思い出すと、違和感があったのだ。

 まさか………!

 

カルム「ケント、ユージオ!果ての山脈はどこにあるんだ!?」

ケント「果ての山脈………?」

キリト「そういえば、そんな話をしたな……!言われてみれば、様子が変だった………!」

ユージオ「まさか、果ての山脈に!?」

カルム「もしかしたらだけど………!」

ケント「なら、早く連れ戻さないと!」

 

 昨日の会話を思い出したキリトに答える俺の姿に、ユージオとケントも事情を理解したようで走り出した。俺たちも2人の後を追った。

 ユージオとケントの先導の下、川を辿りながら果ての山脈を目指す俺たち。

 その時、何かに気付いたユージオとケントが立ち止まり、俺たちも足を止めた。

 

ユージオ「この草、踏まれた跡がある……。」

ケント「天命も少し減ってるから、しばらく前に誰かが通ったのは事実みたいだな。」

カルム「やっぱりセルカとメアリは果ての山脈に………!」

キリト「急ぐぞ!」

 

 そう言って、俺たちは再び走り出した。

 岩場を超え、川が流れ出る洞窟へと到着した。

 

ユージオ「ここだよ。………ここが、果ての山脈だ。」

ケント「昔、イーディスとアリスと一緒に来た洞窟だ。」

キリト「…………これが果ての山脈なのか。」

カルム「随分と切り立ってるな。」

 

 胸騒ぎがするな。

 

ユージオ「僕たちも初めてここに来た時には、驚いたよ。」

キリト「この先が闇の国なのか?」

ケント「ああ。急ぐぞ、2人が危ない!」

 

 そう言って、ユージオとケントは懐から草を取り出すと。

 

「「システムコール………ジェネレート・ルミナス・エレメント・アドヒア。」」

 

 ユージオとケントが呪文を唱えると、持っていた草に光が灯った。

 

キリト「ユ、ユージオ、ケント………それって!?」

カルム「神聖術か?」

ユージオ「そうだよ。」

ケント「と言っても、かなり簡単な方だがな。」

 

 ていうか、気になる単語が聞こえたぞ!

 

キリト「お、お前ら………システムとか、意味は知ってるのか?」

ユージオ「意味?………意味なんてないよ。」

ケント「式句だからな。神様に呼びかけて、奇跡を授けて下さるように呼び掛ける言葉なんだ。」

カルム「………一種の呪文の扱いってことか。」

 

 そんな風に納得して、俺たちは洞窟の中へと入って行く。

 中は寒かった。

 

キリト「ううう、寒いな………本当にセルカとメアリはここを通って行ったのかな?」

ユージオ「それは………見て!この氷………。」

ケント「誰かが踏んだ跡か………。」

カルム「セルカとメアリがここを通ったのは間違いないみたいだな。」

 

 セルカとメアリがこの先に進んだことは間違いないようだ。

 確信した俺たちは慎重に進み始めた。

 

キリト「なぁ、ユージオ、ケント。もしセルカとメアリが闇の国に入ったら、その場で整合騎士が捕まえにくるのか?」

ユージオ「………いや。多分、整合騎士は翌日の朝にやってくると思う。」

ケント「6年前もそうだったからな……。」

キリト「なら、最悪の場合でもセルカとメアリを助けるチャンスはまだあるんだな。」

カルム「そうだな………。そうなる前に2人を連れ戻せるのがベストだが、最悪の可能性も考慮しておくべきだろうな。」

 

 まさか、昨日考えていた事を実行しそうになりそうだな。

 すると、ユージオとケントが足を止める。

 

ユージオ「……二人とも、何を考えてるの?」

カルム「単純な話さ。もしセルカとメアリが禁忌目録を破ったとしても、一日は猶予があるわけだろう?」

キリト「整合騎士が来る前に、2人を連れて村からさっさと逃げるんだよ。そうすれば、整合騎士から逃げ切れるかもしれないしな。」

ケント「………そんなこと…………できるわけがない。天職だってあるし…………。」

キリト「元々は俺が口を滑らしたのが原因だ。その責任は取るさ。」

カルム「そういうこと。逃げるのなら俺たちだけで逃げる。ユージオとケントには迷惑を掛けない…………2人がそれでいいっていうのなら、だけどな。」

「「………………。」」

 

 俺の問いかけに押し黙るユージオとケント。 

 2人もそれが本心ではないのだろうが、禁忌目録に逆らうべきではないという考えが捨てきれていないのだ。

 その時だった。

 

「「きゃぁぁぁぁぁ!!!」」

カルム「今の声………!?」

ユージオ「セルカ?!」

ケント「メアリ?!」

 

 悲鳴に反応したユージオとケントが駆け出し、慌てて追う俺たち。

 すると、開けた場所へと出た。

 周りのいたるところに氷があることから、ここが昔、ケントたちが来たという白竜の巣だと理解した。

 

キリト「3人とも、隠れろ!」

 

 キリトに促され、俺たちも隠れる。

 そこには、ゴブリンが居た。

 

キリト「ゴブリンだな。」

カルム「しかも、多いな………。」

 

 キリトの言葉に頷きながら、俺はゴブリンの様子を窺っていた。

 どうやらどこかを襲ってきた後らしく、略奪した品を整理していたり、持っている鉈から血が滴り落ちていた。

 すると、奥の荷車に誰かが載せられているのが見えた。

 

カルム(あのシスター服………。もしかして、セルカとメアリか?)

 

 俺が、セルカとメアリを見つけた事を、伝えようとするが、ユージオとケントが飛び出してしまった。

 

ユージオ「セルカ!!」

ケント「メアリ!!」

カルム「待て!」

キリト「おい!」

「「「「「!?」」」」」

 

 しまった、ゴブリンズに見つかった。

 どうしようかと頭を巡らせていると。

 

ゴブリン「おい、見ろよ!また白イウムのガキが4匹も転がり込んできたぜ!」

ゴブリン「どうする?こいつらも捕まえるか!ゲヒヒ、イーヒヒヒ!」

カルム(流暢に喋る!?ただのモンスターじゃないのか!?)

 

 すると、ヤバい気配を感じる。

 

親玉「あぁ!?男のイウムなんぞ、連れて帰っても売れはしねーよ!!面倒だ………ここで殺して、肉にしろ!!!」

カルム(アレがボスか………!)

 

 他のゴブリンたちよりも二回り背丈が違う、大剣を背負ったゴブリンが洞窟の奥から姿を現した。

 俺たちを見て、ゴブリンたちに指示を下し、指示を受けたゴブリンたちは戦闘態勢を取り始めた。

 

カルム「キリト、行けるか?」

キリト「ああ。ユージオとケントはどうだ?………ユージオ、ケント?」

 

 ケントとユージオを見ると、2人は、恐怖で動けなくなっていた。

 

キリト「ユージオ!」

カルム「ケント!!」

 

 事態はどんどんと悪化していった………。

 




今回はここまでです。
次回、アンダーワールドで初の戦闘です。
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