カルムside
ヤバいな、これは。
そう思った俺は、キリトと共に、恐怖で動けなくなっているユージオとケントを落ち着かせる為に、氷柱へと引っ張り込む。
引っ張り込んだが、2人は恐怖で呼吸がとても乱れている。
「「はぁ………!はぁ………!」」
キリト「落ち着け、ユージオ!」
カルム「ケントも落ち着け!」
「「はぁ………!はぁ………!はぁ……!」」
ダメだ、恐怖が勝ってるな。
だが、それでも…………。
キリト「聞くんだ、ユージオ、ケント!」
ユージオ「キ、キリト………。」
なんとか2人は正気に戻り、早口で作戦を2人に伝える。
キリト「いいか。俺とカルムで何とかゴブリン達を倒していく。」
カルム「だから、これから俺たちは3つ数えから、前衛の4匹を体当たりで突破する。その隙に、篝火を倒してくれ。」
ユージオ「あ、ああ…………。」
キリト「この洞窟は薄暗い。だから、その草を失くすなよ?篝火が消えたら、床から剣を拾うんだ!」
カルム「そして、ゴブリンたちに隙ができたら、セルカとメアリを連れて急いで村まで逃げるんだ!いいな?」
ケント「だ、だが………あんなに大きいゴブリンを相手にしたら死ぬぞ!?」
カルム「………なら、セルカとメアリを見捨てるのか!?」
「「…………っ!?」」
その言葉に、2人は息を呑む。
カルム「お前らは、アリスとイーディスを助けたくて、青薔薇の剣と雷鳴剣黄雷を必死に持ってきたんだろ!?ここで、セルカとメアリを失いたくない筈だ!」
ケント「だが、俺もユージオも、剣なんて振ったことが無いんだぞ!」
カルム「大丈夫。斧と同じ様なもんさ。それに、俺たちは剣士だ。守ってみせる。」
その言葉に、腹を括ったのか、ユージオとケントの表情から、迷いと恐怖が消える。
キリト「行くぜ………!1、2の、3!」
キリトの合図と共に、俺たちは氷柱から飛び出した。
俺たちは、ゴブリンに体当たりを敢行して、突破する。
篝火を倒して、周囲を暗くする。
キリト「カルム、ユージオ、ケント!」
キリトから剣を投げ渡され、抜刀する。
名を知らないが、力を貸してくれ。
剣を構えて、手下のゴブリンと相対する。
カルム「キリト!手下は俺たちがどうにかする!だから、親玉を倒せ!」
キリト「おう!」
カルム「ユージオ、ケント!振り回すだけでいい!早くセルカとメアリを!」
ユージオ「そんな事言ったって………!」
ケント「来るぞ………!」
俺の指示に困惑するユージオとケント。
その2人に、ゴブリンが近づいてくるが、途端に怯える。
ケント「もしかして、その草の光に弱いかもしれない!」
ユージオ「そうかも………!」
カルム「牽制頼む!」
ウガチ「ちぃぃ!このイウムのガキ共が!この蜥蜴殺しのウガチ様と本気で戦うつもりか!」
キリト「………違う。戦うじゃない……勝つんだ!!」
キリトがウガチというゴブリンと相対している。
俺は、手下のゴブリンを無力化していく。
集団戦は慣れているからな。
武器を剣で弾き、背後からの攻撃を躱し、蹴りでゴブリンを飛ばす。
ゴブリン「こ、この白イウムが!?」
カルム「…………!遅い!!」
ゴブリンの一体の攻撃を躱し、右手を飛ばす。
だが、俺の視界に、血が入った。
ゴブリン「ぎゃぁぁぁぁ?!お、俺の………俺の腕がぁぁ!?」
カルム(血!?という事は、このゴブリンも人工フラクトライトなのか!?)
まさか!?
ただのモンスターって訳じゃなさそうだな!
どうする、手が出せないぞ。
すると。
ユージオ「キリト!」
ケント「大丈夫か!?」
ユージオとケントの叫び声がして、キリトの方を見ると、キリトが左腕を抑えて動けなくなっていた。
どうやら、出血してるな。
ウガチが激昂して、キリトに追撃しようとしていた。
カルム「お前の相手は、俺だ!」
俺はすぐさまキリトとウガチの間に入り、ウガチの大剣を受け流し、ソードスキルを放つ。
よし、ノックバックする筈………!
ウガチ「邪魔だ!」
カルム「何!?ウワッ!!」
ソードスキルを放ってもノックバックせず、そのまま反撃を受ける。
何とか、剣を戻して、直撃は避けられたものの、氷柱にぶつかる。
その時、肺の空気が抜けるかの様な激痛が俺に走った。
カルム「グッ………!(嘘だろ………!?仮想世界なのに、現実世界………いや、それ以上の痛みだ………!)」
余りの痛みに、俺は動けなくなる。
それでも、キリトは動ける様になったが、俺と同じく氷柱に叩きつけられる。
カルム「キリト!逃げろ!!」
キリト「グッ………!?」
不味い、キリトの奴、痛みに悶えてるのか!?
俺は剣道をやっていて、お父さんが力加減を誤って、壁に叩きつけられるのはたまにあるのだ。
だけど、キリトは剣道を、小さい頃にしかやってない!
このままじゃ…………!
ケントside
ケント(不味い………!このままじゃ、カルムとキリトが………!だが、怖い………!)
大きいゴブリンの攻撃で吹き飛ばされた二人を見て、俺の体は震えてしまっていた。
隣のユージオも似た様な状況だ。
あの二人でさえ勝てないのに、俺とユージオがどうこうできる相手じゃない。
そう思った時、俺の頭に………6年前のあの光景が蘇った。
イーディスとアリスが連れていかれ、何もできなかった自分の姿が………。
そして。
カルム『お前らは、アリスとイーディスを助けたくて、青薔薇の剣と雷鳴剣黄雷を必死に持ってきたんだろ!?ここで、セルカとメアリを失いたくない筈だ!』
カルムの言葉が蘇る。
ケント(そうだ………。行かないと………!このままじゃ、6年前と何も変わらない!何もできずに、2人を失うなんて………!)
そう思った途端、俺の体は無意識のうちに駆け出していた。
それは、ユージオも同じだった。
ケント「これ以上、何も失いたくない!」
ユージオ「もう絶対に………嫌なんだ!!!」
俺とユージオは見様見真似でゴブリンへと斬りかかった。
ユージオ「キリトーーー!!!」
ケント「カルムーーー!!!」
キリト「ユージオ!?」
カルム「ケント!?来るな!」
ウガチ「ぬぅ!?この………ガキがぁ!?」
俺たちの剣は奴に受け止めれてしまったが、諦めずに何度も撃ち込んでいく。
ユージオ「今度こそ、僕が、守るんだ!!」
ケント「俺は、俺の想いを貫く!!」
絶対に、あの2人を守る!
その想いを貫いてみせる!
だが、剣が折れてしまい………!
カルム「逃げろ、ケント!!」
キリト「逃げろ、ユージオ!!」
ウガチ「死ねぇ!!」
「「がぁ………!?」」
カルムとキリトの叫び声が聞こえたが、俺たちはゴブリンの大剣を躱すことができず、その一撃を受けてしまった。
切られた痛みが体に走り、俺たちは氷柱へと叩きつけられた。
カルムside
ウガチの大剣に薙ぎ払われたユージオとケントは、氷柱に叩きつけられる。
キリト「ユージオ!!」
カルム「ケント!!」
嘘だろ、おい!
俺は咄嗟に氷と剣をウガチに向かって投げて、牽制する。
キリトと共に、ケントとユージオの側へと駆け寄る。
キリト「ユージオ、ケント!しっかりしろ!」
カルム「おい!しっかりしろ!」
傍に駆け寄ったキリトと俺は、ユージオとケントの腹部から流れる夥しい血の量に言葉を失った。
口からも吐血する2人だが、俺たちに向けて必死に手を伸ばそうとしていた。
ユージオの手をキリトが、ケントの手を俺が握る。
キリト「ユージオ、ケント!気を持て!」
カルム「何であんな無茶を……!?」
ユージオ「こ、子供の頃……約束した、ろ?僕たち4人とアリスとイーディスと………。」
ケント「生まれた日は違えども、死ぬ日は一緒だって………!グフっ!…………今度こそ、まも、る、んだ………!」
ユージオとケントは、そう言って気を失う。
すると、脳裏にとある光景が浮かぶ。
それは、幼いケントとユージオとアリスとイーディスと一緒に過ごした事を。
カルム(そうだ!俺もケント達と一緒に過ごしてたんだ!アリスとイーディスが連れて行かれた時に、助けられなかった………!何が守るだ、剣士じゃないケントとユージオに守られるなんて………!俺は、浅はかだったのか……!)
俺はそれを思い出して、立ちすくむ。
すると。
ウガチ「さぁ………お前達も、死ねぇぇぇぇ!!!」
「「っ!?」」
ウガチが迫り、意識を切り替えて、覚悟を決める。
キリト「でヤァァァ!!」
カルム「ハァァァァ!!」
近くに落ちてる剣を拾って、キリトと共にウガチへと斬りかかる。
さっきまでと違う俺たちの動きにウガチは咄嗟に反応できずにギリギリで攻撃を受け止めた。
ウガチ「ちぃ!?白イウムのガキ共が!調子に乗るなァァァ!?」
カルム「煩い!」
俺たちは、一旦距離を取る。
キリト「俺たちは、イウムじゃない!」
カルム「俺たちは、剣士だ!!」
呼吸を整えて、剣を構える。
カルム(確かに、コイツも人工フラクトライトかもしれない!でも、ケントにユージオ、メアリにセルカを、絶対に守る!!)
俺は、そう決意する。
すると。
ウガチ「だから、何だ!!」
その声と共に、ウガチが突っ込んできて、2人がかりで大剣を受け止め、受け流す。
ウガチが体勢を崩したと同時に、俺とキリトは、同時にソードスキルを放つ。
キリト「ソードスキル………ソニックリープ!」
カルム「ソードスキル………ホリゾンタル・アーク!」
キリトの一閃は、ウガチの首を飛ばし、俺の2連撃は、右手を斬り飛ばし、腹を斬る。
ウガチの遺体は、そのまま倒れる。
接近してくる手下に対して。
キリト「お前らの親玉の俺たちが討ち取った!まだ挑んでくる奴がいるのならかかってこい!」
カルム「死にたくないのなら、さっさと闇の国へと帰れ!襲ってくるっていうのなら、こっちも手加減はしない!!」
ゴブリン「…………に、逃げろ!?」
指揮官を失い、烏合の衆と化したゴブリン達が、俺たちが入ってきた方とは逆の方向へと去っていく。
ソイツらを無視して、ユージオとケントの元へと向かう。
血は依然として流れている。
キリト「くそっ!どうすれば………!」
カルム「ちょっと待ってろ!!」
俺はすぐさまメアリとセルカの2人の元へと向かい、縄を解く。
カルム「メアリ、セルカ!目を覚ませ!」
メアリ「うん………?」
セルカ「カルム………?」
カルム「起きたばかりで悪いけど、失礼!!」
メアリ「きゃあ!」
セルカ「何!?」
驚く2人を無視して、キリト達の元へ。
セルカ「な、何………!?」
メアリ「どうしたの………!?」
キリト「ユージオとケントが大怪我をしたんだ!」
カルム「急ぐぞ!」
キリトが、どうにか止血をしようとしていた。
状況を把握した2人が見るが。
メアリ「………無理よ………。」
セルカ「こんな傷、私たちの神聖術じゃ………!」
キリト「諦めるな!」
カルム「頼む!!」
メアリ「………でも、私は、お姉ちゃん達じゃない。」
セルカ「姉さま達みたいになれない。私にできることなんて…………。」
そう呟くメアリとセルカに、俺たちは諦めずに声をかける。
キリト「セルカ、メアリ!ユージオとケントは君たちを助けに来たんだ!アリスとイーディスじゃない、君たちをだ!」
セルカ「えっ…………!?」
カルム「頼む!今ここにいるのは、アリスとイーディスじゃなくて、君たちだ!力を貸してくれ!!」
セルカ「…………!メアリ。」
メアリ「うん。これじゃ、普通の神聖術じゃ間に合わない。」
俺たちの叱責に覚悟を決めたセルカとメアリはその方法を教えてくれた。
カルム「どうすればいいんだ!?」
セルカ「危険な高位神聖術を試してみるしかないわ。二人の力を貸して!」
カルム「ああ!」
キリト「どうするんだ!?」
メアリ「カルムは私と、キリトはセルカと手を繋いで!!」
2人の指示に従い、俺はメアリと、キリトはセルカと手を繋ぐ。
セルカ「もし失敗したら、全員命を落とすかもしれない。」
メアリ「覚悟はいい?」
キリト「もちろんだ!」
カルム「やれ!」
「「………システムコール。………トランスファ・ヒューマンユニット・デュアリビティ、ライト・トウ・レフト!!」」
「「・・・ぐっ!?」」
すると、俺とメアリの手からケントに、キリトとセルカの手からユージオに、光が流れていく。
俺たちは、虚脱感に襲われる。
カルム(なるほどな………!これは、確かに危険な高位神聖術だな………!)
セルカとメアリの言葉に納得しつつ、2人の傷跡を見る。
すると、塞がっていく。
セルカ「2人とも………大丈夫?」
カルム「問題ない。もっと2人に天命を送ってやれ。」
キリト「俺も大丈夫だ。」
メアリ「分かったわ。」
そう言ったけど、ヤバい。
これ以上は限界な気がする………!
すると。
???『カルム、ケント、待ってるわ………。』
カルム「………!?」
声が聞こえてきた。
しかも、キリトの方もだ。
この声は、イーディスなのか………?
イーディス『私とアリスは、いつまでも待っているわ。………セントラル・カセドラルの最上階で、………皆を待ってる………。』
声が聞こえなくなった途端、俺は意識を保てなくなり、倒れる。
メアリ「カルム!?」
セルカ「キリト!?」
2人の声を最後に、意識が途絶えた。
???side
とんでもない物を見たな。
まさか、ルーリッドの村の近くにまで闇の軍勢が来ていたとは。
しかも、それを、負傷しながらも、首領を倒したあの2人。
そして、あの2人に呼びかけるかの様に、セントラル・カセドラルの最上階に埋まっているあの2人の欠片が、力を貸すとはな。
???「最高だな。」
どうやら、俺の見立てに狂いはなかった。
アイツらが、あの忌まわしき最高司祭を打ち破り、人界を守る存在に。
ゴブリンを倒した事で、アイツらの権限値は上昇しただろう。
これで、刃王剣が使えるのかを確かめられるな。
俺は、あの2人の少女が村に向かって駆け出すのを見ながら、俺も後にする。
今回はここまでです。
次回で、アンダーワールドの話は一旦終わり、カルムとキリトが失踪した直後のミト達の話です。