深澄side
冬馬と和人が、ラフコフの残党に襲われて、病院に運ばれ、緊急手術が行われている。
私と明日奈は、ただ、2人が無事に帰ってくる事を祈るしかなかった。
直葉「明日奈さん!」
侑斗「深澄!」
洋子「深澄ちゃん!」
明日奈「直葉ちゃん………叔母様………。」
深澄「叔母さん………侑斗………。」
そこには、直葉に侑斗、和人のお母さんの翠さんに、冬馬のお母さんの洋子さんがいた。
何で、直葉と一緒に侑斗まで?
そう思うと。
侑斗「丁度、直葉と稽古をしていたら、急に連絡が来て、俺も飛んできたんだ。」
直葉「うん。」
そういう事ね。
私たちは、手術室前の椅子に座って、手術が終わるのを待っていた。
気がつくと、翌朝になっていて、漸く、手術が終わったそうだ。
医師が説明をしてくれる。
医師「2人とも、危険な状態からは脱したと言えるでしょう。」
翠「そうですか………。」
洋子「良かったわ………!」
医師「しかし、心停止が5分強にまで及んだので、脳に何かしらのダメージを負った可能性があります。」
直葉「えっ!?」
侑斗「マジかよ………!?」
医師「思考能力、運動能力、あるいはその両方に障害が残る可能性があります。最悪の場合、このまま目を覚さない可能性も…………。」
その言葉に、私と明日奈は、絶句した。
冬馬が目を覚まさないなんて………。
医師「詳しい事は、MRI検査を行なってみないとなんとも………。早急に、設備が整った大病院に移動させるべきかと。手続きはこちらで。」
翠「分かりました。」
洋子「皆、ちょっと待ってて。」
翠さんと叔母さんは、手続をするため、その医師に着いていく。
私、明日奈、直葉、侑斗は、椅子に座っていた。
侑斗「まさか、こんな事になるとはな……。」
直葉「そうだね…………。」
侑斗と直葉がそんな風に話していると、誰かが近づいてくる。
菊岡「明日奈君、深澄君、直葉君、侑斗君。」
直葉「菊岡…………さん?」
深澄「何でアンタがここに?」
菊岡「その件なんだが、キリト君とカルム君の親御さんはどちらに?」
侑斗「…………?」
菊岡さんの言葉に、私たちは顔を見合わせる。
菊岡さんから提案されたのは、2人の治療に関してだ。
菊岡「和人君と冬馬君の治療について………実は世界で唯一の先端設備の施設があるんです。そこで、2人の治療を行いませんか?」
翠「ほ、本当ですか…………?」
洋子「大丈夫なんですか?息子が、あなたの事を少し胡散臭いと言っていますが。」
菊岡「そんな風に思わせてしまったのは申し訳ない。しかし、2人は私たちにとっても大事な人間です。ここで彼らを失うことは大きな損失に繋がります。」
「「………………。」」
菊岡「桐ヶ谷さん、小野さん。どうか、息子さん達を、私にお任せ頂けませんか?」
菊岡さんの説明を受けて、翠さんは困惑、洋子さんは少し疑っている表情を浮かべる。
すると、2人が、こちらを向いてくる。
翠「あの………結城さん、兎沢さん………あなた達の意見を聞かせてくれる?」
「「…………えっ?」」
洋子「………どうすれば良いのかは、あなた達の意見を聞いてから決めたいの。」
そう言われて、私と明日奈は顔を見合わせる。
明日奈「…………私は、特に反対する理由はありません。」
深澄「………治る可能性があるのなら、それに懸けてみたいです。」
その答えを聞いて、翠さんと洋子さんは顔を見合わせて。
翠「…………どうか、息子をお願いします。」
洋子「………私からも、お願いします。」
菊岡「………分かりました。」
そうして、2人は、所沢の防衛医大病院へと運ばれた。
それからの、6月29日、所沢の防衛医大病院へと、明日奈と共に来ていた。
すると、直葉と侑斗の2人も来る。
直葉「お待たせしました!」
侑斗「悪い、待たせたか?」
明日奈「ううん。」
深澄「それで、翠さんは?」
侑斗「車を停めてくるから、先に面会の手続をしておいてくれだそうだ。」
深澄「そう………。」
明日奈「キリト君とカルム君は、この病院に入院してるのね?」
直葉「はい。昼のうちに、この病院に搬送されたそうです。」
そんな風に話して、中に入り、受付用紙に名前を記入して、直葉と侑斗が受付の人に渡す。
直葉「面会をしたいのですが………。」
侑斗「これで良いですか?」
受付「はい。桐ヶ谷和人さんと小野冬馬さんですね。少々お待ちください。」
すると、受付の人の表情が変わり、上の人に確認をしてくると言って、その場を去り、言われたのは、面会謝絶だと言われた。
翌日、スイルベーンのリーファとハヤトのプレイヤーホームに、私、アスナ、リーファ、ハヤト、シノン、チェイス、ユウキ、シリカ、ヒロミ、リズベット、ラット、ノーチラス、ユナ、フィリア、レイン、パラド、レイモンド、フィリップが集まっていた。
リズベット「会えなかった?」
ラット「どういう事だ?」
アスナ「特殊な機器で治療しているから、回復するまでは、面会謝絶だって………。」
ミト「そう言われたわ………。」
シリカ「でも、そんな事ってあるんですか?」
ヒロミ「家族なのに、面会どころか、顔も見せてくれないなんて………。」
シノン「何だか引っかかるわね。」
チェイス「確かにな。」
パラド「どうなってんだ………?」
シリカ、ヒロミ、シノン、チェイス、パラドがそう言って、私たちも話を再開する。
アスナ「そうなの。」
ミト「私たちもおかしいと思って、調べてみたんだけど………。」
リーファ「データ上は確かに入院をしているんですが………。」
ハヤト「キリトとカルムの2人を乗せた救急車は、その病院には到着してないんだ。」
ノーチラス「何?」
ユナ「つまり、キリトとカルムの2人は、その病院には実際には居ないって事?」
ユウキ「菊岡さんからの連絡は?」
アスナ「電話はずっと圏外だし………メールも返ってこないの。」
ミト「総務省に問い合わせたら、昨日から出張中だって。」
フィリア「それって、絶対おかしいよ!」
レイン「あの人、絶対に何かしてるわよ!」
レイモンド「菊岡誠二郎か………。」
フィリップ「随分と、胡散臭い人だからね。また、2人に何かをさせようとしてるのかな?」
あの人、一体何を企んでいるの?
すると、シリカとヒロミが声を上げる。
シリカ「そんな!」
ヒロミ「2人は、意識不明の重体なんですよ!」
シノン「意識不明………って、外から見た状態よね?」
チェイス「魂その物にアクセスするマシン使えば、行けるかもな………。」
アスナ「それって………!」
ミト「ソウル・トランスレーター……!」
私とアスナの言葉に、シノンとチェイスが頷く。
そういえば、ダイシー・カフェで、シノンとチェイスも話を聞いていたわね。
シリカ「ソウル………。」
ヒロミ「トランスレーター………?」
リズベット「何よそれ?」
ラット「聞いた事ないぞ。」
アスナ「人の魂を読み取る事が出来るフルダイブマシンなの。」
ミト「それを作ったのは、ラースという企業なんだけど………。」
リーファ「ラースって………。」
ハヤト「2人がバイトしてた企業だな。」
その発言に、私とアスナは驚く。
アスナ「2人とも、知ってるの?」
ミト「そうなの?」
リーファ「いや、詳しい事は知らないです。」
ハヤト「ただ、会社自体が六本木に存在してるのは確かだな。」
ユウキ「それじゃ、六本木の何処かに、2人が居るってこと?」
フィリア「可能性としては十分あるわね。」
レイン「そうね………。」
そこに、とあるデータを出す事にする。
アスナ「実は、キリト君とカルム君に繋がっている細い糸が、一本だけあるの。」
パラド「………何だよ、それ?」
ミト「シノンとチェイスにはこの間説明したよね。2人の、これ。」
シノン「ああ………。」
チェイス「例の心拍モニターか。」
レイモンド「何だよそれ?」
フィリップ「………重くないかい?」
レイモンドとフィリップの言葉は無視して、私とアスナは話す。
ミト「ずっと圏外になっているんだけどね………。」
アスナ「遡って解析をお願いしてるの。」
シノン「誰に?」
ミト「カナ、ユイちゃん、どう?」
ユイ「はい!」
カナ「解析結果を報告します!」
チェイス「そうか、2人がいたな。」
そう、ユイちゃんとカナに解析をお願いしていて、ちょうど終わったようだ。
すると、東京の地図を出す。
ユイ「特定出来た発信位置は、3箇所だけでした。」
カナ「まずは、パパ達が最初に運び込まれた、世田谷総合病院。」
ユイ「次に私たちが見つけられたのは、目黒区青葉台3丁目です。」
カナ「予測経路を出すと、次に見つけたのは、港区白金台一丁目です。」
ユイ「そして、最後に確認できたのは港区海岸2丁目の地点になります。」
カナ「ここを最後にパパ達からの信号はずっと途絶えたままです。」
ミト「カナ、ユイちゃん。その港区の住所には、何があるの?」
カナ「どうやら、港区の倉庫のようです。」
ノーチラス「倉庫………!?」
ユナ「何で2人がそこに………!?」
アスナ「港区………。」
ミト「倉庫………。」
私とアスナは、その単語だけを言う。
その後、皆ログアウトして、クラインにも連絡して、港区には、クラインの車で、私、明日奈、直葉、侑斗が搭乗している。
遼太郎「夜だし、道も空いてるからもうちょっとで着くと思うぜ?」
明日奈「すみません、クラインさん。」
深澄「急に車を出してほしいなんてお願いしちゃって。」
遼太郎「気にすんなってさっきから言ってるだろう、アスナ、ミト。」
遼太郎は、快く引き受けてくれた。
遼太郎「それにしても、ついこの間までGGOで一緒だったのに………キリトもカルムも無事だといいんだけどな。」
直葉「本当にお兄ちゃんって巻き込まれてばっかりで…………。」
侑斗「カルムも、巻き込まれすぎだろ。」
深澄「カルム…………。」
遼太郎「………そういえば、ラースって会社は六本木にあるんだろう?そっちも探した方がいいじゃないのか?」
空気が重くなったのを感じた遼太郎が話を切り替えた。
その質問には直葉が答えた。
直葉「はい。そっちの方には、シノンさん達が向かっています。」
明日奈「でも、ラースって分からない事だらけなんです。」
深澄「カナとユイちゃんが色々と調べてくれたんだけど、会社の場所以外全然分からなかったんだって。」
侑斗「ソウル・トランスレーターについても、申請済みの特許を含めて一切の資料を見つけられなかった………。」
遼太郎「人の魂を読み書きするなんて………大発明なのに特許申請もしてないのかよ。秘密主義の徹底しすぎじゃないのか?おっと………もうすぐ着くぜ。」
遼太郎が運転する車は、カルムとキリトが最後に確認されたエリア、品川埠頭へと到着する。
周辺は倉庫しかなく、建物も倉庫を管理するものばかりだった。
何かないかと周囲を探索していると、明日奈のスマホが振動した。
スマホを確認すると、里香からの着信だった。
明日奈「リズ、どうだった?」
里香『ラースはは見つかったんだけど、セキュリティが厳しくて相手にしてもらえなくてさ。』
浩介『一応、ユナのお父さんがラースに来てたらしくてな、ユナとノーチラスの2人が入れないか掛け合っている最中だ。』
そういえば、ユナのお父さんって、その手の教授だったわね。
すると。
詩乃『だめ、幾ら重村教授の娘だからって言って、通す訳には行かないって。』
英介『セキュリティが厳しいな。』
木綿季『それに、ユイちゃんとカナちゃんにも周囲のカメラを確認してもらったんだけど………。』
悠那『キリトとカルムがここに運び込まれた形跡は無かったわ。』
深澄「そう……………。」
鋭二『皆、オーグマーの通信グループを作るから、入ってきてくれ。』
鋭二に言われて、オーグマーを取り出す。
オーグマーとは、カムラ社に移った重村教授とノーチラスの共同開発したウェアラブル・マルチデバイスだ。
左耳に装着する。
このオーグマーを使えば、現実世界でも、カナとユイちゃんと会話が出来る。
明日奈「ユイちゃん、カナちゃん。こっちのカメラはどうだった?」
ユイ「はい、ママ。こちらの防犯カメラも確認しました。昨日の21時20分。あちらの開けた場所からヘリコプターが発進しています。」
「「ヘリコプター!?」」
侑斗「マジかよ………。」
直葉「じゃあ、お兄ちゃんたちは更に遠くに運ばれたってことですか?」
深澄「でもどこに?東京から離れたとしても、GPSなら後を追えるでしょ?」
明日奈「………待って。ここを最後に、もしキリト君達がヘリコプターで運ばれたのだとしたら…………2人の治療のためにどこかの施設に行くはず。そうだとしたら、深澄の言う通り圏外になることなく追えるはず…………。でも、GPSで追えないってことは………。」
ユイ「はい。ママの推測通り、GPSで追えないエリア…………海外に運ばれた可能性があります。」
侑斗「か、海外!?そんなバカな………!」
カナ「でも、状況としては一番可能性が高いと思います。」
遼太郎「だったら、もう追っかけようがねぇんじゃねぇのか………?」
遼太郎のその言葉に、皆が諦めそうになる。
だけど、私は諦めない。
深澄「まだだよ、明日奈。」
明日奈「深澄………?」
深澄「明日奈も、ユウキを見つけ出す為に、諦めなかったじゃない。その見つけ出す対象が、ユウキからカルムとキリトに変わっただけよ。だから、絶対に諦めないで!」
カナ「そうですよ!」
ユイ「ミトさんの言う通りです!」
明日奈「ユイちゃん………カナちゃん……。」
ユイ「アルヴヘイムでママを探していたパパ達はただの一度も諦めたりしませんでした!きっと2人に繋がる手がかりはどこかに残っているはずです!」
カナ「ママとパパ、キリトさんとアスナさんの絆はどんなに離れていたって、きっと繋がってます!」
明日奈「ごめん、深澄、ユイちゃん、カナちゃん………。そして、ありがとう!私もキリト君を見つけ出す為に、絶対に諦めないわ!」
深澄「うん!もし、国が絡んでいるのなら、総理大臣を締め上げましょう。」
英介『それは、普通に捕まるぞ。』
詩乃『ミトって、カルムが絡むと恐れ知らずになるわよね…………。』
そんな突っ込みがされたような気がしたけど、聞こえないな。
何か、見落としていないかを探す。
遼太郎「それにしても、ユナよ、お父さんがラースに来てた時、どんな仕事をしてるのかを聞いてなかったのか?」
悠那『ごめん、聞いてなかった。』
鋭二『僕は聞いたが、はぐらかされたな。』
直葉「あっ、でも、そういえば、お兄ちゃんが言ってたんです。」
深澄「何を?」
侑斗「そういや、カルムも、STLのベースになったのは、メディキュボイドだって言ってたな。」
木綿季『メディキュボイド!?』
深澄「…………それよ!」
侑斗「何が?」
明日奈「………あっ!」
そう、木綿季を引き取りに来た際に、倉橋先生から聞いていたのだ。
メディキュボイドは、神代凛子から、無償提供されたのだと。
つまり………!
深澄「私、神代博士に、メールを送ってみるわ!」
明日奈「お願い!」
神代博士に関する説明は、明日奈に任せて、私は神代博士にメールを送る。
凛子side
米国 カリフォルニア州
私は自身のパソコンに来ていた新着メールを見て、うんざりしていた。
凛子(しつこいわね、この人も………。)
届いたメールの送り主は、『菊岡 誠二郎』とあった。
メールの題名は『プロジェクト』に関連したものでメールボックスの大半を占めていたが、その全てを私は未読のままにしていた。
凛子(空飛ぶ鋼鉄の城………。それを夢見た彼の設計を基礎にしたSTL………だけど、私には………。)
私の脳裏に蘇ったのは茅場君との思い出だった。
鋼鉄の城のことを語る茅場君は………決まってどこか悲しそうな表情をしていたのだった。
凛子「…………嘘吐き………。」
胸のペンダントを握りしめ感慨に耽っていると、新たなメールが届いた。
凛子「また…………?」
しつこいと思い、メール画面を見ると、届いたメールに凛子は疑問譜を浮かべてしまった。
凛子「兎沢深澄…………?」
この子って確か、桐ヶ谷君と小野君と一緒に来てた女の子よね。
確かに、連絡先は渡したけど………。
そのメールを読み進めると。
深澄『突然のメール、失礼します。お久しぶりです、神代博士。実は、折り入って相談があるんです。あなたが医療メーカーに無償提供されたメディキュボイド。それを元に作られたソウル・トランスレーターが、ラースという謎の機関によって開発されているんです。そして、カルムとキリトが、ラースに拉致された可能性が高いんです。お願いします。先生だけが、私とアスナをラースへ、カルムとキリトの所へ導いてくれる唯一の可能性なんです。どうか、力を貸して下さい。』
そう書かれていた。
まさか………菊岡誠二郎からのメールは、それが理由だったと言うの………?
私は、一晩悩み続け、承諾のメールを送った。
それから、しばらくして、私は、2人の助手と共に、ヘリコプターに乗り込む。
深澄side
パイロット「見えてきましたよ、皆さん。あれがオーシャン・タートルです。」
ヘリコプターのパイロットに指さされた方向を私が見た。
そこには、海上に健在しているオーシャン・タートルが見えてきた。
凛子「いよいよよ、二人とも。覚悟はいいかしら?」
「「(コクッ)」」
博士の小声による問いかけに同乗している私たちは静かに頷いた。
ヘリコプターが着陸態勢に入ったところで、博士はオーシャン・タートルに対してあることに気付いた。
凛子「亀で豚………そういえば、不思議の国のアリスにそんなのがいたっけ。」
深澄(………ここがオーシャン・タートル……ラースの本当の居場所………ここに………!)
私はサングラス越しに施設を睨んでいた。
隣の金髪の女性も険しい表情をしていた。
そして、ヘリコプターを降りた3人を出迎えたのは丸刈りでスーツ姿の男性だった。
男性「神代博士、お待ちしていました。そちらのお二人は?」
凛子「私の助手達、マユミ・レイノズルと、ソフィア・イーソンよ。」
「「Nice to meet you.」」
私たちは、挨拶をして、男性は自己紹介を始めた。
中西「私は皆様のご案内を命じられました、中西一等海尉です。さぁ、どうぞこちらに。」
中西さんの案内の元、私たちはオーシャン・タートルの中へと進んだ。
施設の中を進むと、警備員による厳重な審査が待ち構えていた。
顔認証による画像審査まで行われ、博士はあまりの厳重さにうんざりしてしまっていた。
私たちの顔認証まで行うほどなのだから、博士がそう思うのは当然だった。
サングラスを取って、画像認証を終えた私たちと共に先を進むと………ようやく目的地へと辿り着いた。
菊岡「ようこそ、ラースへ」
凛子「………っ!菊岡………二等陸佐とでも呼べばいいのかしら?それに、なんなんですか?その恰好は?」
菊岡「こんな海のど真ん中にずっと居続けてるだ。制服ばかり着ていたら、息が詰まってしまうからね。」
呆れた博士の質問にあっさり答える菊岡。
それが本気の回答なのかどうかは怪しいものだった。
菊岡「いやはや。我らラースに足をお運び頂いて本当に嬉しいよ。ずっと声を掛け続けてきた甲斐があったよ。」
凛子「お役に立てるかどうかは分からないけど………。」
「「……………。」」
私たちの視線が気になったのか、こちらを向いてくるが、意識を博士に戻した菊岡は話を続けた。
菊岡「貴女は、僕がこのプロジェクトに必要だと思った5人のうちの最後の一人なのだからね。これで全員揃ったわけだ。」
凛子「ふーん、なるほどね………。そのうちの2人はやっぱり君だったのね、比嘉君、安田君。」
比嘉「アハハ。どうもッス、凛子先輩。」
安田「重村ラボの一員として、先輩たちの志しは継がないと、と思いまして。」
凛子「相変わらずね、君達は………。それで残りの2人はどこにいるのかしら?」
その、比嘉さんと安田さんがいる事を予想していた博士はあまり驚かず、菊岡さんに残りの2名について尋ねた。
聞かれた菊岡さんは肩を竦めながら答えた。
菊岡「残念ながら、今は紹介できないんだ。折を見て数日中に紹介を。」
明日奈「じゃあ、私達が名前を言ってあげるわ。」
私と明日奈は、変装を解く。
サングラスと金髪のカツラを取ったのは、明日奈で、サングラスと黒髪のカツラを取ったのは、私だ。
菊岡「明日奈君に、深澄君!?どうして君達がここに………神代博士と一緒に?」
驚く菊岡さんを放置して、詰め寄る。
すると、博士が説明してくれる。
凛子「彼女達からメールを貰ったのよ。貴方が桐ヶ谷君と小野君という少年を連れ去り、行方が分からなくなっているってね。………これで、私がここに来た理由は分かってもらえたかしら?」
「「「……………。」」」
博士の説明した理由に、驚いている3人。
だが、菊岡さんが、冷静になった。
菊岡「研究助手の身元確認は大学学籍データベースで多重チェックしたはずだが?」
明日奈「ええ。何回も嫌ってほど、ジロジロと顔を見られたわ。」
深澄「でも、その学籍データが本当に合っているのかまで確認したのかしら?」
菊岡「…………!まさか…………。」
明日奈「ええ。うちには防壁破りが得意な娘がいますから。」
深澄「既に、私たちのものに差し替え済みなので。」
凛子「ちなみに、今頃本物のマユミとソフィアは、どこかのビーチで肌を焼いてるわ。」
私と明日奈は、更に詰め寄る。
明日奈「キリト君はどこ?」
深澄「カルムを出しなさい。」
今回はここまでです。
本気で怒らせたミトとアスナは怖いですね………。
次回、ミト達が、菊岡からアンダーワールドの概要を聞きます。
賢者の孫とリバイスの小説に関しては、3日おきに更新しようと思っています。