ソードアート・オンライン 紫紺の剣士   作:仮面大佐

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今回は剣術大会での話です。


第13話 剣術大会に向けて

カルムside

 

 ルーリッド村を離れて、ザッカリアへと着いた俺たち。

 ここから央都へ向かうには、整合騎士への進むための入り口ともいわれる『帝立修剣学校』へ入学するのが一番の近道であることを、街の人たちから情報収集したことで知った。

 そこで、まずは受験に必要な推薦状を得るため、今度開かれるザッカリア剣術大会へと出場することにした。

 この大会では、東西南北の四つのブロックがあり、それぞれのブロックでの優勝者が、ザッカリア衛兵隊への入隊許可が得られる。

 先日、ルーリッド村の村長の証書を持って、大会の受付で入隊条件を聞いた俺たちは胸を撫で下ろしていた。

 もしかすれば、4人とも同時に入隊できる可能性もあるかもしれないからだ。

 まぁ、出場の申込書に「アインクラッド流剣術」の流派名を書いた時には、受付の男性が困った顔をしているのを見て、俺とキリトが苦笑したのは余談だ。

 そして今は…………。

 

カルム「フッ!ハッ!」

 

 俺は、朝早く起きて、型の練習をしていた。

 剣道をやっていたので、早く起きるのには慣れていて、型も上手くやれている。

 まあ、最終確認だ。

 すると。

 

ケント「こんなに朝早くから練習か?」

カルム「ケント。」

 

 ケントが出てきた。

 どうやら、起きたばっかりのようで、目を擦っていた。

 

カルム「まあな。やっぱり、万全を期す為にも、最終確認はしておきたくて。」

ケント「お前らしいよ。」

 

 俺は最終確認を終え、ケントの隣に来る。

 ちなみに、今の俺たちはザッカリア近郊にあるウォルデ牧場に住み込みを兼ねて働かせてもらっていた。

 ここの牧場の主ウォルデ夫妻を手伝いながら、娘さんたちのテリンとテルルの双子と時々遊んだりする中、剣技や大会の予選で披露する型の練習をしていた。

 流石に牧場や馬の手伝いをするのは初めてだったが、最近ではその手伝いもかなり手際良くなり楽しくなっていた。

 すると、ケントの表情が固いのが気になったので、聞いてみる。

 

カルム「ケント。もしかして、緊張しているのか?」

ケント「バレたか。」

 

 すると、ケントは苦笑して、話し出す。

 

ケント「不安なんだ。これまで、斧しか振ってこなかった俺が、ザッカリアの剣術大会で勝ち上がれるのか。」

カルム「なるほどな………。」

 

 まあ、気持ちは分かるな。

 

カルム「ケントは大丈夫だよ。」

ケント「だが、お前やキリトには一度も勝ったことが無いのに………。」

カルム「そりゃ、師匠として、弟子にそう簡単に負ける訳にはいかないしな。でも、ケントの剣筋は、俺から見ても大分良いしな。」

ケント「カルム…………。」

 

 すると、ケントは持ち前の明るさを取り戻していた。

 

ケント「ありがとうな。」

カルム「良いって、良いって。」

ケント「それで、少し、打ち合いをしていいか?」

カルム「良いぞ。」

 

 俺とケントは、キリトとユージオ、ウォルデ一家を起こさないように、打ち合いの練習をしていく。

 流石に、動きすぎると、明日の大会に影響が出るので、程々にする。

 翌日、俺たちは大会の受付に出場票を提出した。

 今朝、気になる事があったのだが。

 それは後回しにする。

 何と、俺たちは、東西南北のブロックに1人ずつ配置されたので、全員が優勝すれば、衛兵隊に入れる。

 正午、予選が始まった。

 俺が一番最初に型を披露する事になった。

 まあ、余裕だった。

 何せ、剣道をやっているのだ。

 完璧に模倣し切ってみせた俺は、会場中から拍手喝采を受けることとなってしまったのは余談だ。

 その後、ユージオ、ケント、キリトの順番で型をやったのだが、全員が突破出来た。

 

カルム「何とか全員が突破出来たな。」

キリト「ああ!」

ユージオ「キリトは、アレをしでかして、よく言えるよ。」

ケント「何で剣の型で、あんな突風が起こるんだ。」

キリト「ふふん。」

カルム「威張るな。」

 

 キリトを小突く。

 それにしても、リアルの時よりも随分と生き生きしてるな、キリト。

 まあ、同年代の友達は、俺、侑斗、少し年上なのが、英介、鋭二、浩介、年下なのが壮吾など、色々いるが、本当の意味で、ユージオと親友になっているんだろうな、キリトは。

 少し、悔しいかな。

 まあ、俺もケントと親友だけど。

 

カルム「後は、俺たち全員が、それぞれのブロックで優勝するだけだな。」

キリト「そうだな。」

ユージオ「何でそんなに気楽なの?」

ケント「ユージオ、この2人が気楽なのは、今に始まった事じゃないだろ?」

ユージオ「そうだけどさ………。」

 

 気楽で行った方が良いからな。

 しばらくすると、本戦が始まる。

 そういえば、俺はそれぞれのブロックの優勝者同士で戦うのかと思っていたのだ。

 ウォルデ農場の主、バノーが語ったのは、数十年前まではあったという。

 しかし、ある年の決勝戦があまりにも白熱した結果、血が流れて、取りやめになったそうだ。

 アンダーワールドの人って、血が流れるのを極端に嫌うよな。

 そんな事を考えていると、キリト達全員が、無事に決勝戦に進出できたみたいだ。

 

カルム「良かった。」

 

 俺も決勝戦に進出する事が決まっていて、相手は、イゴーム・ザッカライトという男だ。

 実は、今朝、こいつに殺気を向けられたのだ。

 ソイツは、ザッカリア領主の親族らしい。

 

カルム(つまり、貴族か。大方、俺たちみたいな田舎者がいるのが気に食わないという事になるのかな………。)

 

 そういえば、イゴームの奴、どこに行っていたんだ?

 まあ、気にしなくて良いか。

 俺は、そのまま決勝戦になるまで、待っていた。

 しばらくして、俺とイゴームが呼ばれた。

 それぞれ、会場の入口へと向かう。

 道中、3人が無事に優勝した事を知り、俺は安堵する。

 後は、俺だけだ。

 そして、入り口で衛士から剣を受け取った時だった。

 俺はその剣に違和感を感じた。

 

カルム(アレ?何かおかしいな………。)

 

 そういえば、イゴームはさっき、姿を消していたな。

 なら、ステイシアの窓で天命を確認しますか。

 すると、俺は驚いた。

 

カルム(なるほどね………。さっき姿を消していたのが納得がいく。それなら………。)

 

 覚悟を決めるか。

 この剣でも勝ってやるよ。

 そして……………。

 

審判「これより、北ブロックの決勝戦、イゴーム・ザッカライト対カルムの戦いを始める!両者、構え!」

「「………………。」」

 

 審判の掛け声と共に、対峙していた俺と奴は互いに剣を抜いた。

 

審判「始め!」

 

 その合図と共に、俺とイゴームは剣を切り結んだ。

 鈍い音が響き、鍔競り合いで剣を押し合う。 

 そのままいったん距離を取り、再度剣をぶつけ合う。

 だが、言いたい事があるので、イゴームの顔に近づける。

 

カルム「アンタ、ネジレヅタの匂いがするぞ。」

イゴーム「……………それが、どうした。」

カルム「ネジレヅタには用途は一つしかない。乾かしてから燃やして、その煙で毒虫を麻痺させる。例えば………オオヌマアブみたいな。」

イゴーム「…………!」

 

 図星みたいだな。

 今朝、ザッカリアの西門でいきなり馬が一頭暴れ出したのだ。

 そこに居合わせた俺たちはその暴れ馬に襲われそうになったが、キリトが馬に飛び乗って抑えている間に、ユージオとケントから原因を聞いた俺がオオヌマアブを取り除いたことで事なきを得たのだ。

 偶然かと思っていたが、俺にそのことを指摘され、悪意を隠そうともしない笑みを浮かべるイゴームの態度で確信した。

 奴は全く悪びれてなどいなかった。

 

カルム「………今朝、ザッカリアの西門で馬を暴れさせたオオヌマアブ。………アレを放ったのは、お前だな。」

イゴーム「お前如き宿無しに答える必要はないな。でも、仮にそうだとしても………オレがしたのはただ、人には無害な小虫を1匹、殺さずに放してやった事だけだ。帝国基本法にも、ましてや禁忌目録にも違反しちゃいないぜ。」

 

 なるほどな。

 ジンクみたいな奴か。

 このアンダーワールドで過ごして思った事は、貴族の一部が、法の穴を掻い潜って、悪事をしている事だ。

 少しため息を吐きつつ、問いただす。

 

カルム「何でそんな事をするんだ。関係ない人たちが巻き込まれるのは分かっているはずだ。」

イゴーム「その時はその時さ。それに、気に入らないんだよ。お前らみたいな宿無しの天職なしが、このイゴーム・ザッカライト様と競うだと?衛兵隊に入るだと?許す訳ねぇだろ。大会要項を取りに来やがったときから、絶対潰すって決めてたぜ。」

カルム「………なるほどね。まあ、勝たせて貰いますよ。」

 

 すると、俺の剣からピキッと鋭い音が生まれて、やっぱりと思った。

 

カルム「なるほどな。衛兵を抱き込んだな?」

イゴーム「知らないね。剣の中に一本業物が紛れ込んでて、それを俺が偶然借りちまっても、何の違反にもならないしな。」

カルム「クソが………!」

 

 本当に、悪質だな!

 勝ち誇った顔で、イゴームは剣を押し込んでくるが、俺はわざと試合場に倒れ込みつつ、イゴームの股下を潜る。

 イゴームの剣は、大理石に当たり、強張ってる最中に、俺は距離を取る。

 

カルム「言っとくけど、相手の股を潜るなって、規則にはないからな。」

イゴーム「潰す………!」

 

 今度は俺が勝ち誇った顔で言い放ち、イゴームの顔が怒りに染まる。

 すると、イゴームは、右手で剣をゆっくり振り上げて、刀身が光る。

 アレは、スラントの構えだ。

 

イゴーム「…………ザッカライト流秘奥義、《蒼風斬》。」

 

 なるほど、秘奥義と来たか。

 なら…………!

 俺は剣を構え直して、アインクラッド流の秘奥義を放つ事にする。

 剣を左手から外し、左脇に抱え込むように構える。

 刀身に、紫色の光が宿る。

 

イゴーム「キエアアアア!!」

 

 そんな、どこか鳥を思わせるような掛け声と共に、俺とイゴームは駆け出す。

 

カルム「フッ!」

 

 イゴームの斬撃に、紫の曲線を刻む。

 左から右へ、右から左へと。

 すると、澄んだ金属音が、ザッカリア市街の隅々にまで届かんと響き渡る。

 すると、イゴームの剣先が、大理石に突き立つ。

 イゴームは、呆然としていて、俺は秘奥義の名前を言う。

 

カルム「アインクラッド流二連撃技、《スネーク・バイト》。」

 

 俺はそう言って、イゴームの首元に、剣を突きつける。

 

審判「そこまで!勝者、カルム!」

 

 俺が剣を突き付けたところで審判が勝利宣言をし、会場が一気に盛り上がった。

 声援を送ってくれる観客に俺が手を振る一方で、イゴームは地面に座り込んでしまっていた。

 俺は奴の傍に近寄った。

 

イゴーム「そんな………。俺が、負ける?あんな田舎者に………!?」

カルム「負けた理由を教えてやろうか?」

 

 呆然としている中、俺ににそう言われ、我に返ったのか、奴は怒りと憎悪の目を向けてきた。

 

イゴーム「貴様、一体何をした!?まさか、卑怯な手を………!!」

カルム「お前と一緒にすんな。まあ、二連撃技を使っただけさ。」

イゴーム「貴様………!」

カルム「それに、俺は、そんな卑怯な手を使ってでも勝とうとする奴が気に食わなくてね。勝ちたいなら、ちゃんと鍛えろ。」

 

 悔しげな表情を浮かべるイゴームを置いて、俺は去っていく。

 すると、キリト達が近づいてくる。

 

キリト「良くやったぜ!」

カルム「ああ。」

ユージオ「これで、4人揃って、衛兵隊に入れるね。」

ケント「ああ。俺たちの目標が、一歩近づいたな。」

 

 こうして、全てのブロックで、北の村からやってきた無天職の俺たちが優勝した。

 俺たちはザッカリアの衛兵隊の許可証を貰えた。

 

???side

 

 まさか、全員が優勝するとはな。

 それに、あの刃王剣を手に入れたあの男は、二連撃技を使った。

 この世界の秘奥義は、技の見栄えを重視した物が多い。

 それでは、いずれ来るであろう闇の軍勢の侵略に立ち向かえない。

 しかし、一部の流派は、実戦的な秘奥義を持つ物もあるが、それでも少数だ。

 アインクラッド流と言ったな。

 

???「やはり、俺の見立てに間違いは無かったな。」

 

 まあ、相手が卑怯な事をしたので、俺が介入しようと思ったが、杞憂だったな。

 俺は、コイツらの行く末を見届けたいな。

 ただ、セントラル・カセドラルに着いたら、覚悟が必要だ。

 何せ、ユージオとケントが追い求めている少女達は、既に、最高司祭の手により、変えられているのだから。

 まあ、どうにかして、こちら側に招き入れたいが。




今回はここまでです。
少し短めです。
次回、カルムの先輩のキャラが出ます。
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