12月24日、深夜。
自室で
やっと眠りについたと思ったら、イルミネーションで彩られた夜の街に居た。
しかし、不思議なことに人の気配がしない。
たまに見る夢では人間の様なものがあれば人の気配がするのだが、そもそも人影も無いので夢なのかもわからない。
辺りを見回していると、ふと背後からコートを摘ままれ、軽く引っ張られた。
驚いて振り向くと、彼女が居た。
「か、カフェか……びっくりした……」
「驚かせてしまったのならすみません……私もさっき、ここに連れて来られたようなので……」
こちらから少し視線を外しながら彼女はそう言う。
しかし、その頬は少し赤らめていることからこの状況が彼女が望んでいたことだとすぐに分かった。
「それならどこか見て回ろうか」
そう言ってマンハッタンカフェに手を差し伸べる。
彼女は少しお驚いた表情を浮かべると、恐る恐る手を伸ばし、差し出した此方の手を握ってくれた。
途端、場面が切り替わる。
夜の街から一転、とあるレストランのバルコニーのテーブルでマンハッタンカフェと向き合って座っていた。
夜空には星々と額縁が浮かんでいる。
テーブルには湯気がゆらゆらと立ち上っている珈琲とクリスマス仕様のチョコレートケーキが置かれていた。
「これは……食べても問題ないようです」
「それなら折角だし頂こうか」
自分と彼女以外の人の気配がない世界。
少し不思議な感覚だったが、人目を気にする必要がないのか彼女はとても楽しそうだった。
たまにはこういう一時も悪くないと思っていると、彼女がこちらを向いて微笑んできた。
その表情に目を奪われ、呼吸を忘れかけていると、彼女の表情がコロッと羞恥のものに変わった。
「す、すみません、はしゃぎ過ぎました……わ、忘れてください……」
腕で恥ずかしそうに顔を隠している。
ここで小さな悪戯心が湧いた。
「いやだ」
「っ!? ほ、ほんとうに忘れてください……!!」
拒否すると今度はすこしむくれた表情でこちらを睨んでくる。
それが可愛らしくて思わず笑いをこぼしてしまうと、さらに彼女の頬が膨らんだ。
「こんな時『お友だち』がいれば……」
「ごめんごめん、流石に揶揄い過ぎたよ」
「本当ですよ……もう……」
この後彼女と二人っきりの世界を巡ったが、起床した時の状況で覚えていなかった。
「……何この状況」
珍しくアラームの前に自然と目が覚めると彼女が、マンハッタンカフェが隣で寝ていた。
部屋はトレーナー寮の自分の部屋で間違っていない。
しかし隣で、こちらの腕を抱きながら寝間着姿の彼女がすやすやと寝息を立てている。
どうやって侵入されたのか分からない。
だから窓や扉を調べようにも、彼女が腕を抱いている為動くことができない。
心地よさそうに寝ている彼女を起こすのは忍びないが、彼女の肩をゆすった。
「カフェ……カフェ……ちょっと起きてくれないかな?」
「んん……くふぅ……」
穏やかな寝息。
眠りを妨げることに罪悪感を覚えるが、この状況は流石によろしくない。
「カフェ、起きて。カフェ……」
「んん……トレーナー……さん……?」
まだ寝起きで思考が安定していないのか、起き上がった彼女はしばらくボーッとこちらの顔を見ていた。
視点が定まらないのか、顔をこちらに近付けてくる。
「ほん……もの……――本物!?」
やっと気が付いたのか彼女が慌てて離れてくれた。
そして顔を赤くしながらキョロキョロと部屋を見渡すと、急に彼女が謝った。
「ご、ごめんなさい……」
「お、落ち着いて、き、気にしてないから」
とりあえず彼女を落ち着かせ、インスタントものだがコーヒーを淹れる。
それを彼女に差し出し、話を聞くことにした。
「その、毎年この日になると起こるんです……不思議なことが……」
「それは今回みたいなこと……?」
「はい……今回見た夢のようなものを見た後、夢の中で一緒にあった物が朝起きるとあるんです。ですが……」
少し続きを言うのを躊躇う。
しかし意を決して彼女は言った。
「私自身が移動するのは初めて……なんです……その、せ、責任……とってください……」
テーブルの上にはチョコレートケーキ。
その隣に置かれた珈琲からはただ白い湯気が静かに立ち上っていた。
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そろそろ感想に返信したい……
(*ノωノ)でもいざ書こうにも語彙が逃げてく……