今年もよろしくお願いします
成人式の行き帰りで脚に筋肉痛がががが(運動不足)
今日はマンハッタンカフェのトレーニングが夜まで続いた日だった。
トレーニングを終え、寮へ彼女を送った後再び校舎に戻る。
まだ灯を消していないトレーナー室で、今日仕上げる予定だった作業を水筒に淹れられたコーヒーと共に再開した。
保温性の高い水筒から一口、コーヒーを口に含む。
彼女の淹れたコーヒーのお陰で作業の疲れが癒されている気がした。
そして深夜1時、作業が終了する。
帰り支度をしていると、廊下から嫌な気配を感じた。
手を止めて耳をすますと、ぴた、ぴた、っと裸足で廊下を歩く様な気味の悪い音が聞こえる。
本能が、隠れろと囁く。
おそらくその奇妙な音は、こちらに向かっているのだろう。
部屋の電気を消すには入り口の扉に近付かなければならない。
扉から離れた位置でも音が聞こえていることから、扉の直ぐ近くに何かは居る。
電気を消す時間がないと判断し、咄嗟にさっきまで作業していたデスクの下に隠れた。
手で口を押さえ、デスクと床の小さな隙間から扉の様子を伺う。
ヨタヨタと歩く様なその音がくぐもった音になる。
扉の前にいる。
コン、コン、コン、っと何かが扉に当たる音がしてきたかと思うと、直ぐにバンッと何かが扉に張り付いた音がトレーナー室と廊下に反響した。
思わず肩が跳ね上がりかけるが、物音を立てるのは不味いと判断し身体を硬直させて抑える。
その間も外にいる何かは部屋に入ろうとしているのか、扉を引っ掻いている様だ。
そして引戸にうまく引っ掻いていたものが引っ掛かったのか、扉はゆっくりと横にスライドした。
青白い脚。
泥に汚れたボロボロな布切れと地まで届きそうな青白い手。
爪は汚く伸び、血や泥で汚れている様だ。
何かが一歩、トレーナー室に足を入れる。
フラッと揺れる手が気持ち悪い。
この何かはこの世のものではないことは確定だ。
誰かの悪戯だとしたら、ここまで生気のない雰囲気を作ることなど出来ない。
「i……nA……a……I……?」
掠れた様な音。
何かが発した言葉は聞き取れなかったが、踵を返したソレは部屋から去る。
辺りを占領していた嫌な気配が薄れ、何かが去っていったことは分かった。
しかし嫌な予感がしたため、荷物を置いて直ぐにトレーナー室を出た。
◆
学園の玄関。
認証用のカードを翳し、扉の鍵を開ける。
しかし、押しても扉は開かなかった。
何かに固定されている様にビクともしないのだ。
そこに再びあの足音が聞こえてきた。
急いで近くの掃除用ロッカーに隠れる。
その間にも何かの足音が響いている。
ロッカーの隙間から外の様子の把握を試みる。
月光がガラス扉から差し込まれている玄関。
その影から一歩、何かが踏み出す。
月灯りで徐々に照らされる何かの胴。
血痕と、所々破けているところからただれている肌。
そして、横顔が現れる。
黒い長髪。
ウマ娘特有の耳は無いため、ウマ娘関連のものではないことは分かった。
しかし、なぜこのようなものがトレセン学園に現れているのだろうか?
「――っ!?」
何かがこちらを向いた。
慌てて口を押さえ息を殺す。
何かの人間の目に当たる部分はぽっかりと空いた穴。
口は開いているようで、歯が所々抜けているのが見える。
ぼさぼさな髪の毛がその口に引っかかっているのが更にこちらの不快感を擽った。
一歩一歩、何かはこちらに近付いてくる。
こんな時、彼女が居ればと考えてしまう。
何かが目の前に辿り着いてしまった。
「イ……t……S……I……h……t……」
そして何か呟きながら、細長い腕が扉を開けようと伸ばされた時、校舎の奥から物音がした。
その音に何かは反応し、その方向を向いたかと思うと、伸ばした腕を下ろして物音のした方へ歩き始めた。
足音がしなくなって数分、やっと口を押さえていた手を離す。
口から思いっきり新鮮な空気を肺に送ったことで、少し落ち着くことができた。
「あれはいったい……」
足音がしなくても、近くに居た場合を考えて小さめに呟く。
しかし、声に出しても元から何かに関する情報は少ないため、疑問がただあるだけだ。
それにしても、トレーナー室を出てどれくらい時間が経ったのだろうか。
体感では5分も過ぎていないと思うのだが、あいにく腕時計は締め付ける感覚が嫌で、必要なない時は鞄の中に仕舞っている。
そしてその鞄はトレーナー室に置いてきた。
「あ、そう言えば」
ここで左内胸ポケットにある物を入れておいていたのを思い出す。
なるべく物音を立てずにその物を取り出す。
出てきたのは以前カフェから贈られた懐中時計。
肌身離さず持ってくれと言われたので内胸ポケットに入れておいていた。
「これは……?」
早速時刻を確認しようと蓋をあけると、そこには紙切れがいつの間にか挟まっていた。
隙間から差し込まれる月灯りに照らしてその紙切れ内容を確認する。
『イトシイヒト ヨザクラ ノ シタデ』
カフェが書いたのだろうか。
しかし、それならいつ仕込んだのだろう。
紙切れを裏返して見る。
裏には簡易的なトレセン学園の地図が描かれていた。
そして中庭の部分に印があった。
「ここに行けばいいのか……?」
そもそもトレセン学園に桜があったかも怪しいが、この状況を打開できるものがある可能性があれば行くべきだろう。
意識を外に向けて何かがいない事を確認する。
いない事を確認すると、意を決してロッカーから出た。
玄関から中庭まではそう遠くはない。
周囲を警戒しながらゆっくりと目的地へ向かう。
深夜のトレセン学園の静寂が心寂しさを感じさせる。
物音がしない校舎に独りと何か。
最後の曲がり角を曲がろうとした時、急に背後から嫌な気配がした。
裸足で歩く音が聞こえる。
「イトォ……シ……ヒトォォオオオオ!!!!」
何かの咆哮。
それと同時にこちらに向かって何かは突進してくる。
慌てて角を曲がり、中庭に出るための扉を押す。
扉は何の抵抗もなく空いた。
しかし、出た場所は中庭ではなかった。
「ここは……」
彼女が現れる夢と同じ感覚。
夜空に浮かぶ月はなぜか満月。
そして、目の前には季節外れに咲く大きな桜の木。
――さん…………さん………………
誰かが呼んでいる。
――ト……さ…………きて…………い…………
夢が醒める感覚。
色も褪せて、四肢の感覚が曖昧になる。
「トレーナーさん……もう朝ですよ、起きて下さい……」
瞼を開けると、彼女が覗き込んできた。
「あ、トレーナーさん……起きました……?」
満月の様な瞳が優しく微笑みながらこちらを見ている。
場所は……校舎の外の様だ。
他の生徒たちが目を輝かせながら見ている。
他の生徒たち?
そう言えば後頭部の感触は、他の所とは違くて柔らかい。
「か、カフェ? あの――」
「あの子ならきっと……もう、大丈夫ですよ……」
見られている事を彼女に伝えようとすると、早とちりした彼女は昨夜の何かについて教えてくれた。
しかし、それどころではない気がする。
「やぁやぁカフェ。朝から見せ付けてくれるねぇ」
「タキオンさん……それは一体どういう事でしょうか……?」
喋るタイミングを逃した気がする。
声を出そうとした時にはもう、アグネスタキオンが今の状況を彼女に伝えていた。
「人の往来がある場所のベンチで、君が自身のトレーナーに膝枕。さらに尻尾の動きが喜びを表している。本当におアツいねぇ……」
状況を理解したカフェの表情は固まり、羞恥心が込み上げてきたのか顔が赤くなってきていた。
「こ、これは昨夜、トレーナーさんが大変な目にあったので、その、疲れていたと思っていたので――」
恥ずかしい気持ちが強く、カフェは思ったように説明できないでいる。
彼女を助けることも含めて起き上がろうと顔を持ち上げる。
すると、赤面しながらもこちらに向かって一瞬だけだが、彼女が寂しそうな顔をした。
それを見てしまったからには、もう少し彼女の膝枕を堪能するとしよう。
目蓋を閉じた時、カフェ何か呟いた気がした。
「
ブクマ・評価・感想、本当にありがとうございます!)^o^(<生きる糧、感謝感じちゃう
この時期になると何故か無性にホラーが欲しくなるんですよね不思議
それにしてもシナリオにたまに登場する怪異、謎じゃ
あとカフェさん、異性に、特に女性から男性へ時計を送る意味知ってそう(小並感)