戦姫劍遊紀   作:クロビナ

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相変わらずの遅筆で申し訳ありません!
今回は会話文を多めにすることを意識してみました。

一応ですがアニメ1期と同じく全13話を予定としております。
それでは今回もよろしくお願い致します。



第三話 選んだ道

その出会いがなければきっと俺は心が折れて全てを投げ出していた。

絶え間なく自分に降りかかってくる悪意の数々。

そして自分が原因で傷付き悲しむ人。

 

なぜ自分がと何度も思った。

呪うこともあった。

投げ出したかった。

どこか遠くへ逃げたかった。

それでもと言い続けて歩み進んできた。

だけど心がもう駄目だった。

 

諦めよう。

そうやって託されたものを。

背負ったものを投げ捨てようとした時だった。

 

 

"彼"に出会ったのは。

 

 

 

”それで、お前さんは諦めるのか?”

 

「・・・情けない、ですか?」

 

”いいや、そんなこと言わねぇし言えねぇよ。同じ様なモン抱えてる奴にはな。”

 

「だったら・・・!」

 

”だがお前は一度は背負うと決めたんだろう。どんだけ愚痴を垂れようがここまで歩いてきたんだろう。”

 

「それは・・・」

 

”大きな力には大きな責任が伴う。使う使わずに限らずに持ってるだけでも必ず。わかってるはずだ。”

 

「・・・わかってます」

 

”その力の意味やそれに込められた願い、祈り。知っている奴がどうにかしないと駄目ってことも。”

 

「・・・わかってますよ」

 

”何より、それに自分以外の、周りの大切なものを乗せちまった以上、お前は・・・”

 

「わかってますよ!そんなこと!だからだ!」

 

思わず語気が荒くなる。

 

彼だけじゃない。

自分の周りの人々の優しさに。

掛けてくれる気遣いに。

紡がれた言葉に。

そんな人の良心さえも素直に受け取れない自分が次第に嫌いになった。

自分のせいで不幸が降りかかる周りを見るのがもう嫌だった。

 

 

 

「あなたはどうなんですか。逃げ出したいと投げ出したいとも思ったことはないと?」

 

口から出たのは何とも意地が悪い質問。本当に自分が嫌になってくる。

自己嫌悪に陥っている俺を見て彼は苦笑しながら口を開いた。

 

”あるに決まってんだろ、そんなこと。”

 

「じゃあ、なんで!?」

 

”お前と同じだよ。”

 

「同じ?」

 

”俺も自分以外の大切なモンを沢山乗せちまった。”

 

「っ!」

 

”だからって訳でもないが・・・まぁ色々と理由はある。だけど一番はあれだな。”

 

「なんですか?」

 

”遠い過去で誰かが真剣に悩み、精一杯に手を尽くした結果の事だと俺は知った。”

 

「・・・」

 

”だからこれは世界を救ってくれた奴への恩返しだ・・・って俺はそう励む様にした。”

 

「・・・強いですね、あなたは。」

 

 

なぜだろうか。

彼と言葉を交わしていると、内に抱えていた嫌な重さが少し軽くなった。

 

俺はこの人に勇気づけられたのだろうか?

 

・・・今なら素直に他人に感謝の意を伝えられそうな気がする。

 

「・・・ありがとうございます。少しですが気が楽になりました。」

 

”そいつは重畳。それとな、気が少し楽になったっていうのは俺もなんだぞ?”

 

「それってどういう・・・?」

 

”自分と同じ様に大きなモン背負って踏ん張って前に進もうとしてる奴がいる。”

 

”たとえ流れる時間が、住む世界が違っていても同じ志を持って戦ってる奴がいる。”

 

”それを知れただけでどれだけ勇気付けられたか。”

 

”・・・俺の方こそ、ありがとな。”

 

「礼なんて!俺はっ・・・」

 

”だから投げ出さないでほしいってのが俺の本音だ。どうかこの出会いをお前さんが踏ん張る理由の一つにしちゃくれないか?”

 

「・・・わかりました。まだ迷いがあるというのが俺の本音です。だけど、もうひと踏ん張りしてみます。」

 

”互いにな。”

 

「はい、お互いに。」

 

 

そう言って笑い合うとお互いの体が揺らめき始めその輪郭がぼやけていく。

時間と世界を超越した不思議な空間での奇跡とも呼べる邂逅。

それが終わろうとしていた。

 

「っと、もう時間みたいですね。」

 

”そうみたいだな。”

 

「ほんの短い間でしたけど、あなたに会えて良かった。」

 

”俺もだよ。もし次があるってんなら互いに背負ってるものを降ろして軽くなった身で会いたいもんだ。”

 

「ははっ、全くです。」

 

 

自分の存在が在るべき場所に戻され始め、視界が目まぐるしく変わっていく中で俺達は笑っていた。

互いに自分が背負う物の重さを改めて知って尚、笑っていた。

 

これからも自分達は多くの悲しみや苦しみを経験するだろう。

 

だけど。

 

それでも。

 

前を向いて進むと。

 

自分達は必ずやり遂げると。

 

俺達はハッキリとした言葉には出さずとも誓い合った。

 

"それじゃ縁があれば、またな。"

 

「はい、縁があれば、また。」

 

 

 

 

 

 

『・・・い!・・・おい!起きろ、翔!』

 

「めい・・・が・・・?」

 

頭が重い。

脳が揺れているような気がして気持ち悪い。

そして頬から感じる鈍い痛み。

そうしてようやく自分は殴られたのだと気づくことができた。

 

『呆けるな、次来るぞ!・・・右だっ!』

 

「少しは・・・休ませてくれよっ!」

 

冥牙の声を頼りに思うように動かない体に力を入れて横っ飛びで突き出された拳を回避する。

瞬間、自分のすぐ横で拳が風を切る音がしてゾッとする。

 

(なんなんだこの人!人間様が出していい威力じゃねぇぞこの拳!)

 

「ほう!結構イイのが入ったと思ったがまだ立てるか、よく鍛えているな!」

 

「そいつはどうも。一瞬意識飛んでたよチクショウ!」

 

愚痴を吐きながらも刀を振るう力、速さに抜かりはない。

抜かりはないのだがそれでも目の前の男から繰り出される拳の嵐にじりじりと押されていく。

 

『痛い、痛い!このおじさんヤバいって!俺壊されちゃう!』

 

「我慢してくれ!」

 

仕切り直すため数度の打ち合いの後、大きく後退して深く息を吸う。

とてもじゃないがまともに戦っていられないし馬鹿らしい。

目的の物も見当たらない以上逃げるのが得策だと判断した。

 

「あんたみたいな化け物相手にしてられないからな。ここらでお暇させてもらうぜ?」

 

『ばいばーい!』

 

両足に気を集中させて大きく後退、この場を離れようとするが。

 

「つれないな!男同士もうすこし語り合おうじゃないか!」

 

大きく跳躍し普通は人が届かない高さまで飛んでいるはずなのにその男は当たり前の様に自分も跳躍して凄い勢いで迫ってきた。

 

「アンタ本当になんなんだ!そこまでいったらもう人間業じゃないだろ!」

 

「そんなことはない!飯食って映画見て寝る!男はそうすれば誰だってこうなるさ!」

 

『「んなワケあるか!」』

 

今度は空中で再び打ち合う刀と拳。

同時に着地して距離を取った後、斬撃を眼前の敵ーーーではなく、その周辺にやたらめったらに飛ばす。

狙いは攻撃ではなく、単なる目くらましだ。

 

「うおっ!」

 

とっさに体の前で腕を交差して防御の姿勢を取る相手を確認して再び逃げの姿勢を取る。

ちょうど辺りに自分が破壊した物で砂塵が舞い相手の視界を遮っている。

 

「待ってくれ!君には聞きたいことが!」

 

思わずといった風に叫ぶ声が背後から聞こえるが、当然それを無視して俺は脱兎のごとく逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

「なんだい、でっかい痣なんか作っちゃって。喧嘩でもしたのかい?」

 

「あんな一方的なの喧嘩だなんて言えませんよ!・・・イテテ」

 

あれから数日、あの場から何とか逃げ出した後、俺は当面の方針を考えていた。

響やあの青い奴はともかく、あの男と再び会うようなことになればいよいよ俺も"覚悟"しなければならない。

 

(ノイズの出現場所にはアレを持った奴がいつか必ず現れるはず。当たりを引くまで踏ん張るのは最初から決まってるんだ。泣き言は言ってられない。)

 

そう考えてお好み焼きを一切れ、大きく口を開けて豪快に食べる。

・・・ソースが殴られた頬に染みて痛い。

 

「そんなしかめっ面して食べられてもねぇ・・・」

 

「ご、ごめんなさい。ソースがケガしたとこに染みちゃって・・」

 

「あんまり無理して食べるんじゃないよ。」

 

「いえ、沢山食べて沢山寝る。ケガしたときはこれが一番ですから。」

 

何にせよ、ここ最近は動きすぎた。

響やあの青い奴がアレをプロテクターのような形にして纏っているのに対して、こちらはほぼ生身だ。

一撃でも喰らったらそれが致命傷になりかねない。だからこそしっかりとした休息が自分には必要だ。

だが、いつもより心なしか回復が遅い。予想以上にあの男の拳が響いている。

 

(あのおっさん、俺に何か聞きたそうだった。大方ノイズと戦える理由が知りたいって事か。あのおっさんや青い奴、なんかめんどくさい組織に目を付けられちゃったな。)

 

自分のやろうとしていることを考えると今の状況は芳しくない。

これからの方針に悩みながらお好み焼きを口に運んでいると、店の扉が開かれた。

 

「いらっしゃい!・・・おや、今日も一人かい?」

 

「あ、はい・・・。すいません今日のおすすめ一つお願いします」

 

店に入ってきたのは見知った顔。

以前ジェルターで偶然再会し、友人の心配をしていた少女。未来だった。

 

「よう、また会ったな。」

 

「あ、神薙さん。無事だったんですね!・・・どうしたんですかその痣?」

 

「いろいろあってな。ところで響は無事だったのか?」

 

シェルターで彼女たちと別れた後、自分は響と会っていたがまさか自分も響もノイズと戦っていましたなんて言えるはずもなく会っていない体で会話を進めることにした。

 

(響も自分がノイズと戦っているなんて未来に打ち明けてるなんてことはないだろうしな。)

 

そう思案しながら未来に響の事を尋ねる翔に彼女は少しずつ口を開いた。

 

「はい。あの後、無事に会うことができました。でも、その、えっと・・・」

 

「どうした、なんか歯切れが悪いな。まさか怪我でもしてたのかアイツ?」

 

「いえ!そういうのではないんです。でも・・・最近の響、何か変で・・・」

 

「変って何が?」

 

「急に用事が入ったからと言っていなくなることが頻繁にあって。それに最近どこか疲れ気味で何か考え込んでる様なんです。」

 

「あー・・・」

 

(多分というか絶対あのノイズと戦っている組織がらみの事だよな。その点で響の奴も思い悩んでるとこがあるってことか・・・。そもそもアイツはなぜ戦うという選択をできたんだ?)

 

今にして思えば解せないことではある。

いくらノイズという脅威に立ち向かえる力を得たとして、自身の命を懸けて戦うことをそう簡単に決めれるものであろうか。

彼女の性格からしてみんなの為に頑張るとでも言いそうだが、だとしてもそれだけで普通の生活を送っていた奴が命を懸けて戦うことができるというのはあまりに歪だ。

 

「響に何かあったの?って聞いても答えてくれないんです。私は大丈夫とか気にしないでの一点張りで・・・実は今晩、響と一緒に流れ星を見るって約束してたんです。」

 

顔を俯かせ未来が囁くように呟く。

 

「でもさっき急な用事が入ったから一緒にみれそうにないって響から連絡があって・・・一緒に流れ星を見ることができなくなったのは残念ですけど、それよりも今の響が抱えているものが何なのか、私は知りたいんです。そして力になってあげたい。でも響は何も答えてくれない・・・」

 

「・・・」

 

「私じゃ響の力になれない・・・」

 

「それは違う。」

 

未来の言葉を黙って聞いていたが沈黙を破りはっきりと否定の言葉を俺は吐き出した。

俯かせていた顔を上げてこちらを見た彼女の目をしっかりと見返して続けた。

 

「自分の事を気にかけてくれる奴が傍にいて何も感じない奴なんていない。たとえどんな事情を抱えていたとしてもだ。本人が言葉にせずともお前という存在は間違いなく響の支えになっているはずだ。」

 

「でもっ!」

 

「確かに抱えているものを打ち明けてもらえないってのは苦しいものがあるだろうよ、俺にも覚えがある。だけどな、苦しい思いをしている奴や悩んでいる奴にとっては帰る場所がある、帰りを待ってくれている人がいるっていう事ほど嬉しいことはないんだよ。」

 

「神薙さん・・・」

 

「響の帰る場所はお前の所なんだろう?いつか話してくれるまで響を信じて待ってやればいい。お前は間違いなく響の力に、支えになれてるさ。そう気を落とすなよ。」

 

「本当にそうかな・・・」

 

「疑り深いな。この俺が言うんだから間違いないぞ。」

 

「その自信はどこからくるんですか!全くもう・・・」

 

明るく自信満々に信じろと言う翔に呆れたように言葉を返す未来。

だがその表情は店に入ってきた時と違い笑顔になっていた。

 

「あんた、落ち込んでる女の子にそんな気遣いできる子だったんだね。それともこの子に惚れたのかい?」

 

「俺は可能であれば誰にでも優しくしますよ。そういったものは巡り巡って自分の元に還ってくるものだと信じてますから。後惚れたってのはないですね。未来は確かに良い女の子かもしれませんけど、なんかちょっと重い気がしますし、俺のタイプではないというか・・・」

 

「あんたねぇ・・・せっかく良いこと言ってたのに台無しだよ。」

 

「神薙さん。重いってなんですか、その点詳しく伺っても?」

 

おばちゃんの呆れた言葉と幾段かトーンが低くなり恐怖を感じる未来の言葉が俺を刺す。

 

「いや、その。言葉の綾というか・・・というか未来、顔も声も怖いぞ。ほら、笑顔笑顔。」

 

「・・・神薙さんってデリカシーなさそうですし、女心分かろうとしないだろうし、異性にモテなさそうですよね。」

 

「んぐっ!そ、そんなことはないぞ、多分。いや絶対・・・うん、ないよな?」

 

「なんで疑問形なんですか・・・」

 

未来の手痛い反撃に翔が呻く。そんな俺に未来は今度は笑顔で力強く告げた。

 

「でもちょっと元気が出ました。神薙さん、ありがとうございます。私、響が話してくれるまで待ってみようと思います。もし大変な事だったらなんで教えてくれなかったのって怒っちゃうかもしれませんけど!」

 

「お、怒るのは勘弁してやってくれないか、うん・・・」

 

(未来って怒らせたらヤバいタイプだろうな。それもとびっきりの。)

 

未来の発言に若干空恐ろしいものを感じながら、いくつか小銭を取り出してカウンターに置き俺は席を立った。

 

「おばちゃん、今日もごちそうさまでした。未来もあんま考え込んで落ち込んだりしないで、響の事信じて待ってやれよ。」

 

「はい、お粗末様でした。喧嘩とか危ないことは程々にね。まぁもう遅いかもしんないけどさ。」

 

「今日は話を聞いてくれてありがとうございました。ところで気になってたんですけど知り合って間もない女の子を名前呼びするのはちょっと。そういう所から直していかないと駄目だと思いますよ?」

 

「あ、はい。ごめんなさい。以後気を付けます・・・」

 

二つの忠告を受けて店の外に出てこれからの方針を考える前に自分が今、最も気になっている事を相棒に尋ねることにした。

 

「なぁ冥牙」

 

『ん、どったの』

 

「俺って女の子受け悪いの?」

 

『そういう質問してる時点で自覚あるんじゃないの?』

 

「そっかー。・・・はぁ。」

 

大層な物を背負っていても俺も男だ。そういったものはやはり気になるのだ。

 

 

 

 

 

「・・・って、さっき話したばかりだったんだがな。というわけで正直に話すのは難しいと思うけど未来も・・・じゃなくて小日向も心配してたぞ。本当に自分が戦う必要があるのかどうかもう一度考えても良いんじゃないのか、響・・じゃなくて立花。」

 

「未来がそんなことを・・・教えてくれてありがとうございます、翔さん。ところでなんで急に苗字で呼ぶようになったんですか?」

 

「・・お前の親友に女の子への対応についてありがたいお言葉を頂いたからだ。」

 

「あははは・・・」

 

店を出てすぐにノイズの出現場所に向かった俺だが、そこで見たのは大量のノイズ相手に鬼気迫る様な表情で拳を振るい続ける響の姿だった。

目当ての人物の姿も物もなかったのでその場から離れようとしたが響の姿に見かねるものがあったので、つい乱入してしまって今に至る。

そしてつい先ほど小日向との会話で疑問に思ったことを尋ねることにした。

 

「なぁ立花。お前は何を抱えていて、なんで戦う事を決めたんだ。本当にこんなことしなきゃいけないのか。」

 

「私は・・・私だって・・・」

 

「さっきまでお前の戦いぶりを見してもらっていたけどあんな戦い方続けてみろ。いつか必ず自分の力で自分の身を滅ぼすぞ。」

 

「・・・ごめんなさい。それでも私はっ・・!」

 

地下鉄の駅のホームで大量のノイズを相手に背中合わせで戦いながら問い掛ける俺に何か思いつめたかのような反応をする響。

これ以上の追及は追い詰めることと変わらないと判断して話題を変えることにした。

 

「ところで今日は小日向と流れ星を見る約束してたんだって?」

 

「あ、はい。でもノイズの出現が確認されてそれで・・・」

 

「それってまだ間に合いそうなのか?」

 

「えっと・・・もしかしたら多分ですけど、すいません。ちょっとわからないかもです。」

 

「んじゃ、急いで終わらせたらもしかしたらがあるかもな。」

 

「えっと、翔さん?」

 

「特別だぞ、立花。よく見とけよ!」

 

そういって刀の状態の冥牙を笛に戻す。そして手先で器用に笛を回しながら叫ぶ。

 

「相手が多いし、久しぶりにアレでいくぞ冥牙!」

 

「おうよ!冥牙、解放!」

 

笛が光に包まれてその姿を大きく変えていく。笛から刀への変化とはまるで違う。劇的とも言って良い変化だった。光が収まり俺の元に現れたのは美しく荘厳な黒の琵琶だ。

 

「えぇーーー!!!刀が笛になって笛がギターになっちゃった!」

 

「これはギターじゃなくて琵琶って言うんだよ。んでこっからが見物だ、驚くなよ!」

 

そう言って力強く琵琶をかき鳴らす。すると先程まで俺達を囲んでいたノイズが次々と消滅する。

 

「オラオラオラオラオラオラオラァ!」

 

一心不乱に指を動かし琵琶をかき鳴らす。その琵琶から音が奏でれる度にノイズの数が目に見えて減っていく。

 

「い、いったい何がおきてるんですか、これ!私、全然わからない!」

 

「仕組みは簡単だ。音を出しそれを音圧の刃としてやたらめったに飛ばしてる。そんだけだぁ!」

 

『やっぱりこの姿の方がしっくりくるぜぇ!笛とか刀とか小さい姿になるのは疲れるし窮屈なんだよ!』

 

驚く響を傍目に志気が高揚していく俺と冥牙。やがて乱雑に出されていく音が整い始め一つの曲に聞こえるかどうかとなった時に手が止まっていた響に俺は叫んだ。

 

「立花!呆けてないで早くそっちも手を動かせよ!」

 

俺の言葉に驚いた響の答えを待たず、さらに続けた。

 

「約束したんだろ。ならさっさと終わらせて帰るぞ!」

 

「翔さん・・・ありがとうございます!私、必ず未来と流れ星見ます!」

 

「その意気だ。んじゃ派手にやるかぁ!」

 

『俺も久しぶりに羽を伸ばせて気分が良いぜぇ!ここんところずっと我慢してたからな。今日は大盤振る舞いだ!』

 

 

俺達がより一層派手に音を奏でる傍ら、目に精彩が戻った響が力強く歌い出すとまるで共鳴するかのように体の奥底から力が出てくるのを感じる。

そのままノイズ達に叩き付けるかの如く音の刃を飛ばすと先程よりも明らかに威力が違う。

 

 

「すっげぇ、なんだこれ!」

 

『なんかすっごい幸せ感じるんですけど!』

 

「歌に込められたものが私たちに力を与えてくれてる・・・!」

 

全員胸の内から湧き上がるものに高揚感を隠せない。

ノイズ達が数に任せて襲い掛かってくるがまるで恐怖を感じない。

当初に比べて凄まじい速度でノイズを蹴散らしていくと、ほどなくしてノイズの姿は見えなくなった。

 

「お、終わったの?」

 

「みたいだな。ほら、やることやったし帰るぞ。俺は疲れた。」

 

『ひっさしぶりにかき鳴らされて俺は嬉しかった!』

 

「翔さん。今日は本当にありがとうございました!ところで腹話術っていうのは嘘だったんですね。その笛、冥牙って呼んでいましたけど・・・それも聖遺物なんですか?」

 

「聖遺物?あー・・・そうかそういう呼び方か。ま、呼び方はどうでも良いか。」

 

「呼び方?」

 

「いや、こっちの話。気にしなくていいぞ。」

 

「あっ、はい。」

 

「冥牙はそんな大層な物じゃねぇぞ。いろんな形に代わる楽器、そんだけだ。」

 

『酷い!大切な相棒にそれはないんじゃないの?』

 

「とまぁこんな感じで俺の旅のやかましい相棒だ。お前たちの組織が欲しがるような物じゃないさ。」

 

地上までの階段を昇りながら軽口を交えて冥牙の説明をする。道中、俺と冥牙の掛け合いに目を丸くする響は結構見物だった。

 

「ん?」

 

「あれ?」

 

『お?』

 

地上まで戻ってきた俺達の遥か頭上で青い光が強く輝くと、そのままその光は俺達のすぐ近くに降り立った。そこにはここ最近自分に突っかかってくる頑固者の姿があった。

 

「翼さん・・・」

 

「・・・」

 

奴が響の方に目を向けたのは一瞬。

すぐに俺の方を見据え武器を構えた。

今にも斬りかかってきそうな雰囲気に呆れて声を出す。

 

「お前さ、本当いい加減にしてくれよ。こっちにはやらなきゃいけないことがあるんだよ。お前らとドンパチなんか時間と体力の無駄なんだ。」

 

「貴様はなぜノイズの出現場所に現れる、何が目的だ?」

 

「オイ無視かよ。俺、お前ほんっと嫌い。・・・はぁ、探し物だよ探し物。いちいち目くじら立てんな。」

 

「何を探している?」

 

「・・・それはーーー」

 

 

 

「へぇ、なんか面白そうなこと話してんじゃん。混ぜてくれよ。」

 

「「「!?」」」

 

暗闇から第三者の声がした途端、全員に緊張が走る。声からすると響達とそう変わらない少女と判別はできる。だがその姿と雰囲気はあまりにも異質だった。

その乱入者はどこか禍々しさを感じられる鎧のような物をその身に纏っていた。

 

「ネフシュタンの・・・鎧!」

 

「つ、翼さん・・・?」

 

「あれが、ネフシュタンの鎧。なら・・・だったら・・・!」

 

目を大きく開き驚愕する青い奴の動揺を感じ取ったのか気遣うような声を出す響。

だが、驚いているのは俺も同じだった。

 

 

 

こいつはネフシュタンの鎧を持っている。

そしてさっきまでこの場にはノイズが出現していた。

 

つまり、もしかしたら、まさか、こいつはーーーー!

 

必死に自制しようとするが頭の中でもしの可能性が浮かぶ。

違うかもしれない。自分の都合の良い方向に考えすぎなだけかもしれない。

 

だけど。

 

(アレを持っているのはコイツかもしれない・・・!)

 

 

 

そして青い奴と俺の動揺を感じ取ったのだろうか。

 

鎧を纏った少女は小さく、そして妖しく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございました。
是非感想の程をよろしくお願いします!
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