戦姫劍遊紀   作:クロビナ

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前回から時間が空いてしまい申し訳ありません!
書いては消してを繰り返していたらこうなってしまいました・・・。


第四話 孤独という名の鎧

突如現れた鎧を纏う謎の少女。彼女の出現によって場の雰囲気は一変した。

先程までいた3人はそれぞれ別の表情を浮かべている。

翼は驚愕、響は困惑

そして、翔はーーー。

 

(もしかして、コイツは・・・!)

 

自分が探し求めている物ーーーその在処を知っているかもしれない。

もしかしたら今持っている可能性だってあるーーー。

そんな長年の悲願の達成を前にするかのような強い表情を浮かべていた。

 

彼が謎の少女に対して口を開こうとしたその時、先に少女が翼に対して口火を切った。

 

「へぇ・・・ってことはアンタ、この鎧の出自を知ってんだ?」

 

「2年前、私の不始末で奪われた物を忘れるものか・・・!」

 

少女の言葉に対して胸の内から強い後悔を吐き出すかのように翼は言った。

 

「何より私の不手際で奪われた命を忘れるものか!」

 

目の前の"敵"に剣を構える翼。そんな翼を見て先程まで困惑し動けずにいた響が慌てて止めに入った。

 

「やめてください、翼さん!相手は人です、同じ人間です!」

 

「「戦場で何を馬鹿な事を!」」

 

響の言葉に一字一句違えずに返す相対する二人。互いに相手と同じ言葉を発したのに驚いたのか目を合わせた後、両社とも挑戦的な笑みを浮かべた。

 

「むしろあなたと気が合いそうね」

 

「だったら仲良くじゃれ合うかい!」

 

言葉を言い終わると同時に少女が纏っている鎧から延びる紫の鞭のような物が振るわれる。

それを見て翼は自身に抱き着いていた響を突き飛ばし大きく飛んだ。そして空中で大きく剣を振りかぶり、地上にいる少女に対して蒼の斬撃を放った。

しかしその一撃は少女が鞭を一振りするだけで目標に届くことなく霧散した。

自分の技が簡単に対処されたことに驚く翼と、その反応を見て笑みを浮かべる少女。

地面に着地した翼は彼女との距離を詰め、接近戦に切り替えるが繰り出す攻撃の全てが余裕を持って処理されてしまう。そして数度の打ち合いをの末、翼は腹部を蹴られ大きく後方に飛ばされた。

 

「ネフシュタンの力なんて思わないでくれよなぁ!私のテッペンはまだまこんなモンじゃねぇぞ!」

 

翼に対して連続で息つく暇もなく攻撃を行う少女。それに対して大きく動くことで回避する翼。

そんな回避することに全力で攻めに転じれない翼を見てたまらず響が叫んだ。

 

「翼さん!」

 

「お呼びではないんだよ。コイツらでも相手してな!」

 

そう言って腰に据えていた杖を響に向けるとその杖から光が放たれた。

光が響の近くの地面に着弾するとそこにはノイズが出現していた。

 

「ノイズが操られている・・・!」

 

突然のノイズの出現に驚く響。慌ててノイズから距離を取ろうとするが、次の瞬間にはノイズから噴出された粘液のようなもので全身を拘束されてしまい、一切の身動きが取れない状態になってしまった。

 

「そんな!」

 

それを隙と判断したのか翼が少女に対して切り込むが先程と同じく余裕を持って防がれる。

 

「その子にかまけて私を忘れたか!」

 

「全くだな!」

 

翼が駆け出すのと同時に翔もまた少女に向かって駆け出していた。奇しくも同じタイミングで攻撃を繰り出していた翔と翼。そして翼の剣は防がれて、翔の刃は少女に届くかと思われた。

しかし少女の纏う鎧に傷一つ付けることはなく、驚き目を見開く翔。

偶然の連携を見た少女は翼の足を掴み振り回して翔を巻き込み、二人を投げ飛ばした。

 

「お高くとまるな!それとお邪魔虫はどっか行ってろ!」

 

言葉と同時に投げ飛ばした翼の着地位置に高速で移動して彼女の頭を踏みつけ地面に縫いつける少女。

 

「のぼせ上るな人気者!誰も彼もが構ってくれるなどと思うんじゃねぇ!」

 

勝ち誇る少女と悔しそうに歯噛みする翼。

そこに体勢を立て直した翔が切り込んできて、少女の鞭と鍔ぜり合いの状態になる。

 

「お邪魔虫なんて寂しい事言わないでくれよ。こっちはお前に用があるんだからなぁ・・・!」

 

「へぇ!こっちはお前に用なんてこれっぽっちもないんだけど?いいぜ、聞くだけ聞いてやるよ!」

 

「お前の持っている杖は・・・!さっきノイズを出現させた杖はソロモンの杖だな!」

 

「お前!なんで"コレ"を知っている!」

 

この場に現れてから初めて少女の顔に驚きの表所が浮かぶ。

先程までの余裕が崩れたそんな少女の反応に気を良くしたのか好機と見て刃を走らせる翔。

 

「っ・・・!なんでこの杖の事を知っているかはこの際どうでも良い!お前の狙いはこの杖か!」

 

「ああ、そうだよ。理解したのならさっさと寄越せ!そんな物騒なモン存在しちゃいけないんだ。使ってるお前なら少しぐらい考えたらわかるだろ!」

 

「う、うるせぇ!お前に・・・"力"を振るうお前にそんな事言われたくねぇ!」

 

少女が翔の言葉に動揺を見せたのは一瞬。だが直ぐに気を取り直して鞭を振るい翔を弾き飛ばした。

 

「お前もこの女も何勘違いしてやがる。お前らはこの場の主役じゃないんだよ!狙いはハナッからコイツを掻っ攫うことだ!」

 

そういってノイズに拘束されたままの響を指差す少女。急に自分が目的だと言われ驚く響を尻目に少女は今も自分の足で踏み続けている翼と吹き飛ばした翔に挑発した。

 

「鎧も仲間もアンタには過ぎたモノだし、そこの男はなんでこの杖を狙っているか知らないけど渡すわけないだろが!アンタらどっちも守りたいものは守れないし、望むものは何一つ手に入らねぇよ!」

 

「繰り返すものかと私は誓った・・・!」

 

「渡さないと言われて、『はい、そうですか』と言えねぇんだよ、俺は!」

 

翼が剣を天に向けると程なくして無数の剣が辺りに降り注ぐ。その剣の雨を回避した少女を追い、翔は降り注ぐ剣に脇目も降らず突貫して立ち上がった翼も少女に向けて走り出した。

地面や周りの樹木を薙ぎ倒しながら振るわれ続ける鞭を回避し続ける二人。

やがて一向に攻めに転じれない苛立ちから翔が叫んだ。

 

「おい、青いの!ヤツの鎧を貫けるぐらいの攻撃は出せるか!?」

 

「貴様!何を言っている!」

 

「お前がそんな強烈な一撃を繰り出せるってんなら俺が援護してやる!」

 

「誰が貴様の援護など!ネフシュタンの鎧を回収したら次はお前だ!」

 

「状況考えろ馬鹿野郎!そんな事言ってる暇は・・・!」

 

予断を許さない状況でつい口論が熱くなってしまう翔と翼。そんな隙を少女が見逃すはずがなかった。

 

「二人仲良く相談とは妬けるじゃねぇか、ええ!」

 

足が止まった二人に対して繰り出される攻撃を翔が翼の前に出て切り払う。

 

「ああ糞っ!行け、堅物!」

 

「ッ!」

 

自分への攻撃が途切れたことに対しての迷いは一瞬。すぐさま駆け出して少女との距離を詰めにかかる翼。

そんな翼を見てその場から動くこともせず、笑みすら浮かべて迎え撃つ鎧の少女。

何度目かの打ち合いの末、自身の攻撃が通用しないと悟った翼が悔しそうに歯噛みする。

 

「鎧に振り回されているわけではない。この強さは本物・・・!」

 

「ここでふんわり考え事たぁ!」

 

鋭い蹴りで翼を後方に下がらせた少女は再び杖を取り出し、大量のノイズを発生させた。ノイズの集団が翼に狙いを定め、彼女も立ち向かう姿勢を取るが何処からか飛んできた斬撃によってノイズ達は崩れていった。翼が驚いて斬撃が飛んできたと思われる方向に目を向けると持っていた刀を琵琶の形にして今も音の斬撃を放ち続け、ノイズの集団を殲滅せんとする翔の姿があった。

 

「雑魚に構うな!ヤツを叩け!」

 

「貴様、なぜ・・・。ッ礼は言わんぞ!」

 

「礼なんて望んじゃいねぇ!」

 

歪ながらも二人の動きが連携と言えるようになった矢先、少女が鞭をこれまでより一際大きく振りかぶるとまさに暴力の塊とも呼べる黒いエネルギー体が現れ、翼に放たれた。

 

「ぐっううううう!」

 

拮抗できたのは僅か数秒。エネルギー体は翼に直撃して彼女を吹き飛ばした。

 

「翼さん!」

 

響が悲痛な声を上げる。響の声に反応してノイズの集団を相手している翔が目を向けると地面に倒れ伏した翼の姿が目に入った。

 

「あいつ・・・!」

 

『おい、翔!急がねぇとあの嬢ちゃんやべぇぞ!』

 

「言われなくても分かってる!」

 

翼の加勢に向かいたいがその為にはノイズが邪魔だ。残りのノイズを少しでも早く片付けようとする翔。

窮地に陥った二人を見て鎧の少女は勝ち誇ったような言葉を吐いた。

 

「お前ら二人そろってまるで出来損ないだなぁ!」

 

「好き放題言いやがってっ・・・!」

 

「弱い奴が集まったってなんにも変わりはしない!私はお前達とは違う!一人でも・・・一人でだって自分のやりたいことをやり遂げることができる!してみせる!」

 

まるで自分に言い聞かせるかのように叫ぶ少女と、ノイズと戦いながら少女の挑発に熱くなる翔。だが自分がここでノイズの殲滅をしないまま加勢に向かってもそれが悪手であることは翔も理解している。そもそも自分たちの攻撃は一切少女には、あの鎧には通用しないのだから。どうするか考えを巡らせるのと同時に出現したノイズを全て撃破し終え、再び少女に対して切り込もうと駆け出した翔を冥牙が止めた。

 

『止まれ、翔!俺の刃じゃあの鎧は無理だ!』

 

「限界まで刃の状態で当たる寸前で琵琶に切り替える!大層な鎧を着てようが内側まで響く音の衝撃には体が耐えられないだろ!」

 

『あの鎧はその衝撃すら通さないかも知れないんだぞ!』

 

「やってみなきゃ分からないだろ!」

 

『そんな無謀な賭け賛成できるか、目録から適した物引っ張り出せ!"蒼黎劍"辺りならヤツの鎧も!』

 

「馬鹿野郎!例え相手がどれほど強くても大して年も変わらない同じ人間だぞ!俺達が持っている物は決して同じ人間に切っ先を向けて良い物じゃないんだ!お前も良く分かってんだろ!」

 

『そんなこと百も承知だ!だけどこのままだと杖は手に入らないし、響の嬢ちゃんは連れて行かれるぞ!何よりあの青い嬢ちゃんがこのままだとやられちまう!目録を使うのを渋って後悔した事なんて一度や二度じゃないだろう。また同じ事を繰り返すのか!』

 

「冥牙・・・」

 

冥牙の強い言葉を聞いて翔の脳裏をよぎる苦い記憶。

翔が手を震えさせながら懐から自分達の"切り札"とも呼べる物を取り出そうした瞬間だった。

 

倒れ伏していた翼が声を上げた。

 

「確かに私は出来損ないだ・・・」

 

「はぁ?」

 

怪訝に笑う少女を無視して翼は続ける。

 

「この身を一振りの剣と鍛えてきたはずなのに・・・あの日無様に生き残ってしまった。」

 

まるで懺悔するかのような言葉だった。

 

「出来損ないの剣として恥を晒してきた・・・!」

 

剣を杖代わりにゆっくりと立ち上がる。

 

「だが、それも今日までの事・・・!奪われたネフシュタンを取り戻すことで、この身の汚名を雪がせてもらう!」

 

「そーかい。脱がせる物なら脱がしてっ・・・!」

 

体の異常に気付いた少女が後方に目を向けると自身の影に一本の剣が突き刺さっていた。

 

(この剣が原因か、体が動かねぇ・・・!こんな物を何時の間に!)

 

「防人の剣が何もせず何時までも倒れているわけがないだろう。」

 

「こんなモンで私の動きを・・・・」

 

止められると思うな。そう少女が続けようした時、彼女は翼を見て驚いた。

この状況において翼の顔がとても穏やかであったからだ。

それを見て少女は気付く、気付いてしまう。目の前の女が今から何をしようとしているのかを。

 

「まさか、お前っ・・・!」

 

「月が覗いている中に決着を付けましょう。」

 

「歌うのか・・・"絶唱"!」

 

「翼さん!」

 

響が翼を止めようと声を上げるが翼はそんな彼女に一瞥して強く叫んだ。

 

「防人の生き様、覚悟を見せてあげる!あなたの胸に焼き付けなさい!」

 

「やらせるかよぉ!好きに勝手にぃっ・・・!」

 

なんとか動こうとする少女だがその場にまるで縫い付けられたかのように身動きが取れない。

 

翼の"歌"が始まった。

 

響き渡る静かな歌。

ゆっくりと少女に近づいていく翼。

少女が翼に向けて杖を使いノイズを放つが翼はそれに見向きもせず歩みを止めず、そのまま少女の目の前まで来ると彼女に対して静かに微笑んだ。

次の瞬間、凄まじい光が翼から放たれ鎧の少女は叫びながら吹き飛ばされた。

 

翔と響はその光景を見ている事しかできなかった。

 

「翼さん!」

 

「おい、お前!あんな無茶して大丈夫なの、か・・・」

 

翼の身を案じる響の声と先程まで奇妙な共闘をしていた彼女の異常に気付く翔。

程なくして2人の傍で大きな音を立てて1台の車が急ブレーキを掛けて止まった。そして、車から出てき弦十郎は翼の姿を確認して叫んだ。

 

「無事か!翼!」

 

「私とて人類守護の務めを果たす防人・・・」

 

声を掛けられた翼が答える。

 

そして翼がゆっくり振り返り、こちらを見るとその場にいた全員が息を吞んだ。

 

翼は目から、耳から、口から血を垂れ流し静かに笑っていた。

 

「こんなところで、折れる剣ではありません・・・」

 

そう呟いた直後、翼は地面に崩れ落ちた。

 

「翼さん!」

 

響の絶叫が木霊して、弦十郎は直ぐに同乗者であった了子に指示した。

 

「了子君!本部に連絡を急げ!」

 

「ええ!」

 

弦十郎と了子の会話の最中、響は翼の元で泣き崩れていた。

 

「わ、私のせいだ・・・!私が足を引っ張ったから、翼さんが死んじゃう。死んじゃうよぉ!」

 

「泣くな響!、これはお前のせいじゃない!何よりコイツは死なないし、死なせない!」

 

「し、翔さん・・・?」

 

響と翼の2人に駆け寄る翔。そのまま力無く横たわる翼の少し起こして自分の手を彼女の背中に当てた。

 

 

「お前たちの本部とやらまでコイツが持つとは限らない!今この場でできる限りの処置をする・・・!」

 

「君、いったい何を・・・!」

 

翔の行動に驚き駆け付けた源十郎が問うが、翔は彼の返答を待たず翼に触れた手に集中した。

 

(体中の細胞が壊死し始めている・・・!壊死した細胞までは回復できない。ここで食い止める!)

 

翔の額から大量の汗が落ち始めるのと同時に翼に触れている手から光が漏れる。

その光は翼の背中から全身にかけて彼女の体を包んでいく。

やがて光が収まり翔が手を離すと、傷口は塞がってはいないものの出血は止まり心なしか呼吸が落ち着いた翼の姿があった。

 

「はぁはぁ・・・。早く設備が整った場所にコイツを。雑だけど応急処置はできた・・・!」

 

「翔さん・・・!あ、ありがとうございます・・・ありがとうございます!」

 

泣きじゃくりながら礼を言う響を見て翔は苦笑するとふら付きながら立ち上がりその場を後にしようとした。立ち去ろうとする彼に弦十郎は思わず声を掛けた。

 

「待ってくれ!」

 

弦十郎の声に立ち止まる翔。振り返り、彼の目を見て静かにそして力強く言った。

 

「今、アンタがやるべきことは俺の事を追及する事か?違うだろう。俺ができたのはあくまで応急処置だけだ。予断は許さない状況なのは変わらないんだ。そいつの事が大切だったらやるべきことを間違えるんじゃない。」

 

そう言い切った後、弦十郎の返答を待たず翔は鎧の少女が吹き飛ばされた方向に向かって走りだした。

 

 

 

「冥牙、奴の気配は追えるか?」

 

『・・・駄目だな。この辺りで途絶えちまってる。』

 

「そうか・・・」

 

力が抜けたかのように近くの壁にもたれ掛かる翔。息は荒く、疲労の色が濃く顔に現れていた。

 

『仮に追えたとしても今のお前さんじゃ勝ち目は万に一つもねぇよ。攻撃が通じない以前にあの青い嬢ちゃんに自分の気を殆ど渡したんだから。』

 

「そうでもしないと危なかったからな。それに強烈な一撃を叩き込めって焚きつけたのは俺だ。俺にも責任の一端はあるからな・・・」

 

『優しいのか甘いのか、いやこの場合は悪い癖か?そんなお前さんにお客さんだぞ、翔。』

 

「は、客?」

 

冥牙の言葉に怪訝に聞き返す翔。すると足音が近づいてくるのが彼にも分かった。どうやら自分達に接近してくるものに対してここまで近づかれないと気付けない程に自分は疲弊しているらしい。そう自分の置かれている状況を飲み込んだ時、彼らの目の前に現れたのは息を切らしここまで走ってきたと思われる弦十郎だった。現れた弦十郎に対して翔は呆れて声を出した。

 

「アンタさ、ついさっき俺が言ったこと忘れたのか?こんなことしてる場合じゃないだろうが。」

 

「翼は先程本部に緊急搬送された。重傷だが命に別状はないとの事だ。・・・君のお陰だ。本当にありがとう・・・!」

 

「・・・礼はいらないからさっさと自分がいるべき場所に戻れよ・・・。」

 

呆れたように言う翔に対して弦十郎は一瞬迷ったものの意を決して提案を持ちかけた。

 

「俺達はお互いの事を深く知らない。だからこそ話し合う必要がある。そしてその先、手を取り合うこともできるはずだ!・・・君は響君と翼を助けてくれた。俺達も君を助けたい!力になりたいんだ!」

 

そう強く言う弦十郎をまるで眩しいものを見るかのように目を細める翔。

短い沈黙の後、翔が小さく笑って口を開いた。

 

「アンタはとても良い人なんだろうな。それが本心からの言葉だって。嘘を付いていないってハッキリ分かるよ。」

 

「では・・・!」

 

「だけど駄目だ。・・・ああ、気を悪くしないでくれ。原因は俺の方にある。俺の事情を知ったらアンタみたいな人の立場だったら俺を放ってはおけないだろうし・・・まぁ、今でも放ってないんだけど。」

 

自嘲気味に呟く翔。

 

「だから・・・ごめんなさい。」

 

そう言って謝る翔は弦十郎にはとても小さく今にも泣きだしそうな小さな子供に見えた。だからだろうか、拒絶の意志を見せる翔に対して問い掛けずにはいられなかった。

 

「その原因とはなんだ。君が戦う理由に関係あるのか?」

 

「そんなところです。飛び切りの厄介モン背負ってますから、自分。」

 

「・・・君の背負っている物を俺達も一緒に背負うことはできないのか。」

 

「アンタって本当に良い人だな。でもこれは俺が託された事でやらなきゃいけないことだから。」

 

「それは一人でなくては駄目な事なのか!?」

 

悲壮感を出す翔に思わずいった形で声を上げる弦十郎。自分を気遣ってくれる目の前の力強い大人に自分の気持ちをぶつけたい衝動を必死に抑えて翔は答えた。

 

「一人じゃなきゃ駄目なんだ。そうしないとアンタ達までこの因果に巻き込まれる。もう俺のせいで周りが壊されるのは・・・耐えられないんだよ。」

 

そう言った直後、弦十郎に背を向けて走り出す翔。

静止するよう呼びかける弦十郎の声を無視して速度を上げる彼に冥牙が声を掛ける。

 

『なぁ、翔』

 

「・・・どうした?」

 

『これで、良かったのか?』

 

「・・・良いんだ。これで。」

 

小さく自分に言い聞かせるかのような声だった。

 

「これで、良いんだ。」

 

後ろからはまだ翔を呼ぶ弦十郎の声がする。

 

 

 

だが、彼がもう振り返ることはなかった。




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