戦姫劍遊紀   作:クロビナ

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相変わらずの亀更新で申し訳ありません!そして評価、感想をくださった方々本当にありがとうございます!なんと当作品の評価バーに色が付きました!
初めての作品で評価バーに色が付くとは思ってもみなかったのでとても嬉しいです!


第七話 爆ぜる想い

小日向と別れて響と鎧の少女を追う翔。

響の性格上、これ以上周りに被害を与えないようにするために市街地からは離れて人気のない場所に向かうと考え、それが程なくしてそれが当たりだという事がわかった。

翔の目の前には対峙する二人の少女。響と鎧の少女の実力差を考えてすぐさま割り込もうとした彼だったが、そんな彼の足を止めたのは今まさに加勢に向かおうとした響の素っ頓狂な言葉だった。

 

「鈍くさいなんて名前じゃない!私は立花響15歳!誕生日は9月の13日で血液型はO型!身長はこないだの測定では157センチ!体重は・・・もう少し仲良くなったら教えてあげる!趣味は人助けで好きなものはご飯&ご飯!あとは・・・彼氏いない歴は年齢と同じぃ!」

 

「な、なにをトチ狂っていやがるんだお前!?」

 

「いや、ほんとにな。何言ってんだお前!?」

 

思わずといった風に翔と鎧の少女が同じような言葉を漏らすがそれも無理はないだろう。自分を狙いに来た鎧の少女に対し、狙われている本人である響がいきなり自己紹介を始めようものなら困惑するのは当たり前だ。

困惑する二人を尻目に響は手を横に広げて続けた。

 

「私たちはノイズと違って言葉が通じるんだからちゃんと話し合いたい!」

 

「なんて悠長!この期に及んで!」

 

そう言って鎧の少女が手に持っている鞭を振ろうとし、翔が響の加勢に入ろうと走り出した時だった。

 

「ほら!神薙さんも早く!」

 

「「はぁ!?」」

 

またしても響の素っ頓狂な言葉で動きを止められる二人。

 

「はぁ!じゃないですよ!次は神薙さんが自己紹介する番です!」

 

「マジで何言ってんだお前響ィ!状況分かってんのか!」

 

「お前ホントふざけてんじゃねぇぞ!アタシを馬鹿にしてんのか!」

 

「状況わかってますし馬鹿になんかしてない!だけど・・・だって私達お互いの事なんにも分かってない!なんで戦うのか、争わなきゃいけないのか・・・ううん、それ以前に同じ人間同士なのに傷付け合うなんて間違ってるから!・・・だからっ!」

 

響の叫びを"甘い"と簡単に吐き捨てることのできる人は大勢いるだろう。命のやり取りをする者達からすれば猶更だ。だが、だからこそ・・・翔と鎧の少女は苦い表情を浮かべて動きを止めた。なんてことはない、なぜならこの二人にとって今の響の言葉はーーー

 

「あー!わかったよ、やりゃいいんだろ!」

 

やけくそ気味に大きな声を出した翔。そのままま大きく息を吸って一気に続けた。

 

「俺の名前は神薙翔。年齢は17歳!誕生日は5月の13日で血液型はO型!身長と体重は最後に測った時には176センチと64キロ!趣味は楽器の演奏に好きな事はご当地物の食べ歩き!あとは・・・彼女いない歴は年齢と同じぃ!・・・言わせんなよこんな悲しいこと!」

 

「よくできました神薙さん!じゃ次はあなたの番!」

 

「お前ら・・・揃いも揃っていい加減にしやがれぇぇぇぇっ!」

 

もう我慢できないと言わんばかりに鎧の少女が鞭を振るう。だがその攻撃を響は難なく避ける。以前に見た時に比べると動きが格段に良くなっている彼女を見て思わず翔が目を見張る。それは鎧の少女も同じだった。

 

(コイツ、何か変わった!?覚悟か!?)

 

「話し合おうよ!"私たち"は戦っちゃいけないんだ!だって言葉が通じていれば人間は・・・っ!」

 

「五月蠅い!」

 

鎧の少女がまるで腹の底から振り絞ったかのような声を叫ぶ。思わず怯む響を強く睨みつけながら彼女は響の言葉を思いを否定した。

 

「分かり合えるものかよ人間が!そんな風にできているものか!気に入らねぇ気に入らねぇ気に入らねぇ気に入らねぇ!分かっちゃいねぇ事をペラペラと知った風に口にするお前がぁ!!!!」

 

「っ・・・」

 

「・・・」

 

強く怒りを滲ませて、まるで目だけで相手を殺さんとする少女の気迫に押される響。それに反して翔は静かに少女の放った言葉を聞き入れていた。

 

「お前を引きずってこいと言われたがもうそんなことはどうでもいい!お前をこの手で叩き潰す!今度こそお前の全てを踏みにじってやる!そこのお邪魔虫もだ!なんだよその顔は!なに分かったかのようなすまし顔してんだテメェ!あぁムカつくムカつくムカつくムカツク!」

 

そして高く飛び上がり以前翼に重傷を負わせた技を二人に向けて放った。

 

「纏めて・・・吹っ飛べぇぇぇぇぇ!」

 

「響!」

 

「!?」

 

放たれたエネルギーが着弾して爆炎が上がる。自分が放った技が起こした影響を目の当たりにする少女。

それでもなお込み上げてくる怒りをぶつけ足りないと再び構えた時だった。

舞い上がった煙の中から響の叫ぶ声。それが聞こえたと同時に翔が刀を構えて一直線に飛び出してきた。

突きの形で向かってくる切っ先を鞭で受け止める少女。一瞬の攻防の中、少女は翔の背後で響が手に集めていた力を暴発させて吹き飛び倒れる姿を見た

 

「この短期間にアームドギアまで手にしようって言うのか・・・!?」

 

「余所見とは余裕だな!えぇ、オイ!」

 

響のやろうとした行動を目にして思わず足が止まる鎧の少女。そんな隙を彼が見逃すはずもなく鞭と鍔迫り合いの状態だった刀を琵琶にすかさず変形。目の前の男が持つ武器が変形するとはわかってはいたが、余程響のやろうとした事への動揺が大きかったのか反応が遅れた。

 

「ぶっ潰れろぉぉぉ!」

 

「ぐぁぁぁッ!」

 

少女の頭部、バイザーに当たる部分に手に持った琵琶をフルスイングして当てる翔。凄まじい轟音と共に大きく少女が吹き飛ぶ。地面を転がり距離を稼いだ所で立ち上がり反撃しようとするが、なぜか直ぐには立ち上がれない。

 

(な、なん、足、力、入らねぇ、頭、痛ぇ、前、見え、気持ち悪・・・)

 

ただの打撃だったのならこうもいかない。そもそもネフシュタンの鎧に通常の兵器等は意味を為さない。では何故か?それは彼が少女に叩き込んだのは衝撃ではなく音そのものであること。そして使っている物が関係している。

 

「テ、テメェ・・・!ア、アタシにナニしやがった!」

 

「音を叩き込こんだ、ただそれだけだ。本当なら即昏倒どころか当たり所のよっちゃ命に関わるのに立てるのか・・・今のを頭に食らって直ぐ立ち上がって喋れる奴はお前が初めてだよ。・・・本当に恐ろしい性能してんなその鎧。」

 

翔の呆れ半分感心半分の声を聞いて、いまだ視界が明滅して足が覚束ない少女は苛立ちを隠さず言った。

 

「カ、カラクリは分かった!もうテメェの今の攻撃を喰らわなきゃそれでいい!」

 

「ああそうだな、それでいい。・・・ところでまた余所見か?」

 

彼が今度は呆れたという感情だけで呟いたのと同時に響が鎧の少女に突っ込んだ。今までと違うのは彼女の右手に凄まじいほどのエネルギー・・・鎧の少女が言っていたアームドギアなる物を形成するための力が蓄えられている事。その響の渾身の力を込めた拳は少女の腹部に突き刺さり、先程の翔が琵琶を当てた時以上の轟音を出し鎧を打ち砕いた。

 

(バ、バカな!ネフシュタンの鎧が・・・!?)

 

そのままの勢いで壁に叩きつけられる少女。砕かれた鎧が少しずつ修復されていくのを感じながら今も歌い続けている響を見る。

 

(な、なんて無理筋な力の使い方をしやがる!この力、あの女の絶唱に匹敵しかねない!食い破られる前にカタをつけなければ・・・!)

 

焦る少女と対照的に落ち着いている響。それを見てまるで自分が馬鹿にされているように感じ少女は叫んだ。

 

「お前・・・馬鹿にしてんのか!このアタシを!雪音クリスを!」

 

「そっか・・・クリスちゃんって言うんだ!」

 

「あぁ?」

 

「ねぇクリスちゃん。こんな戦いもうやめようよ!ノイズと違って私たちは言葉を交わすことができる。ちゃんと話をすればきっと分かり合えるはず!だって私達、同じ人間だよ!」

 

尚変わらない響の歩み寄ろうとする姿勢についにクリスの堪忍袋の緒が完全に切れた。

 

「お前臭せぇんだよ・・・青臭せぇ・・・嘘臭せぇ!」

 

「クリスちゃん・・・」

 

我武者羅に殴りかかるクリス。殴られながらもクリスに手を伸ばす響を見てクリスは叫んだ。

 

「吹っ飛べよ!アーマーパージだ!」

 

「響!」

 

クリスが叫ぶのと同時、纏っていたネフシュタンの鎧が弾け飛んだ。それを見て一瞬で響を抱えて回避する翔。なにが起きたか確認しようとして立ち上がった二人が最初に目にしたのは、いや聞こえたのは歌だった。巻き上がっていた煙が晴れてクリスの姿が現れる。ネフシュタンの鎧と変わって色は真紅。そしてその形状はーーー

 

「見せてやる!イチイバルの力だ!」

 

「クリスちゃん・・・私たちと同じ・・・!」

 

「あれ、シンフォギアってやつじゃないのか!?・・・鎧もそうだがなんであんな物まで持ってんだ!」

 

「わ、私にも何がなんだか・・・」

 

驚く二人。そんな二人にクリスは苛立ちを隠さず叫んだ。

 

「歌わせたな・・・アタシに歌を歌わせたな!教えてやる・・・アタシは歌が大っ嫌いだ!」

 

「歌が嫌い・・・?」

 

それは何故か問い掛けようとする響だったがそうはいかなかった。クリスの右手に武器と思われる物が握られ、そこから弾丸が放たれたからだ。

すかさずその場から飛びのき回避する響と翔。だがクリスは響に狙いを絞って撃ち続け追い詰めていく。響の回避するコースを限定するかのように弾丸を放ち、先回りした地点にて蹴りによる打撃を加えた。

 

「やべぇ!」

 

慌てて響のフォローに入る翔。そんな彼に無駄だと言わんばかりにクリスの両手にはガトリングが握られていた。放たれる弾丸の嵐を前に懸命に琵琶をかき鳴らし音の防壁を張り防ぐ彼だが、クリスが攻め手を緩めることはなかった。彼女の腰に取り付けられた装備が展開しそのまま小型のミサイルを多数発射した。

身構える翔。だがそのミサイル群は彼を狙うことなくーーー彼の背後にいる響に狙いを着けていた。

 

『翔、これは無理だ!響の嬢ちゃんが!』

 

「くそがぁぁぁ!!!」

 

響を助けるため咄嗟に懐に手を入れて目録を引っ張り出そうとする翔。だが遅きに失した。ミサイルが着弾し辺りに爆風が巻き起こった。

 

「響・・・!」

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・!」

 

呆然とする翔と肩を大きく上下して息を整えるクリス。煙が晴れて二人の目の前に映ったのは倒れ伏した響ではなく、巨大なーーー

 

「「盾?」」

 

「剣だ!」

 

突如出現した巨大な物体を盾と判断した翔とクリスの声が重なる。だが直ぐにそれに対して否定の声が上から聞こえた。地面に突き刺された盾だと思われた巨大な剣。柄頭に当たるだろうその場所で声の主、風鳴翼が立っていた。

 

「死に体でお寝んねと聞いていたが足手まといを庇いに現れたか?」

 

「もう何も・・・失うものかと決めたのだ!」

 

倒れていた響が翼の声に気付いて彼女を見上げる。

 

「翼さん・・・」

 

「気付いたか、立花。だが私も十全ではない。力を貸してほしい・・・。そこのお前もだ。」

 

「は、はい!」

 

「おい・・・どういう風の吹き回しだ?」

 

まさか自分にも協力を持ち掛けてくるとは思わなかった翔が思わずといった具合に聞き返す。そうなるのも無理はない。目の前の堅物は事情があったとはいえ遭遇する度、常に自分に斬りかかってきた人物なのだから。

 

「立花の安全を確保し雪音クリスとやらを確保する、それが最優先だ。その為には一時だけ貴様と協力した良いと判断したまで・・・要はただの優先順位というやつだ。他意はない。貴様も確保対象には変わらない。」

 

「あっそう。吹っ切れたような顔してっから少しは頭が柔らかくなったのかなと思えば・・・そう簡単に人は変わらないし、変わらねぇよな。」

 

「だが・・・」

 

「だが、なんだよ?」

 

急に歯切れが悪くなった翼に怪訝そうな表情を浮かべ翔が聞き返す。

 

「前回の戦闘で・・私が重症を負った時、貴様が処置を施したと聞いた。貴様のような不審者に本当なら礼など言いたくはないが・・・助けられたのは純然たる事実、故に貴様は後回しにしてやる。ということだ。」

 

「ということだ、じゃねぇよ。普通に礼を言えよそこは!そもそもそんな事言われて"はい、そうですか"って協力するわけないだろうが!本当に融通利かない石頭の堅物だなお前!」

 

「なんだと!貴様、人の話を聞いていなかったのか!?最優先は立花の安全と雪音クリスの確保だと言っただろう!」

 

「なに妥協してやった感出してんだ腹立つな!なんにも妥協できてねぇよ!せめてこの場は見逃してやるぐらい言えってんだ!何より人の話聞かない云々は絶対にお前には言われたくねぇ!」

 

「ふ、二人とも落ち着いて下さい!争ってる場合じゃ・・・!」

 

先程までの緊張感は何処へやら。いがみ合い、怒鳴り合い。騒ぐ翔と翼に慌てて響がフォローに入る。

そして自分を蚊帳の外に不毛な争いをしている二人に対して、雪音クリスはーーー

 

「テメェら・・・さっきから何くっちゃべってやがる!アタシの確保!?面白れぇ、やれるもんならやってみやがれ!」

 

怒声と共にクリスが持つガトリングが再び火が吹く。だが翼は襲い来る弾丸の雨を最小限の動きで躱しクリスとの距離を詰める。クリスも負けじと反応するが翼は一歩その上を行く。数度切り払いクリスを足止めし、そのまま彼女の頭上を通り背後を取り、刃を突き付ける。翼が見せた一連の動きに背後を取られた本人であるクリスと傍から見ていた翔は驚きが隠せない。

 

(この女、以前とは動きがまるで・・・!?)

 

(俺が言える立場じゃないけど良い剣振るうようになってやがる。動きに硬さが無い・・・太刀筋が鋭いまま柔軟さを兼ね備えている。この短期間で心境の変化でもあったか?)

 

「翼さん!その子は・・・!」

 

「わかっている!」

 

「ちっ!」

 

響の気遣う声に問題ないと答える翼と苛立ち交じりに舌打ちするクリス。互いに足払いで牽制し合い、距離を取って仕切り直す両者。その間、翔はクリスの背後に周り翼と共に彼女を挟み合う形を作る。

挟み撃ちの形を取られたクリスが二人にそれぞれガトリングの銃口を向けた瞬間だった。

 

それは、来た。

 

前触れなく上空からノイズが飛来。そのまま地上へ自身の体を回転させながら弾丸の形を作りながら落下。それは正確に狙いつけられていて、クリスの両手に形成されていたガトリングを破壊した。

 

「なにぃっ!」

 

「ッ!」

 

予期せぬ自分への攻撃にクリスの足が止まる。そのクリスに対して遅れて最後の一匹が突っ込んでくる。だがノイズが彼女に届くことはなかった。間一髪の所で響が間に入り、代わりに響がその一撃を受けた。ノイズは響に当たると炭化して消滅。響はそのままクリスの胸に倒れ込んだ。

 

「響!」

 

「立花!」

 

「お、お前なにやってるんだよ!?」

 

響の行動に三者の驚きの声が重なる。特に庇われたクリスの動揺が大きい。そんな庇い庇われた二人を守る様に翔と翼が前に出て、周囲の警戒を行う。

 

「ご、ごめん・・・クリスちゃんに当たりそうだったから、つい・・・」

 

「ッ馬鹿にして!余計なお節介だ!」

 

響の本当にそうとしか思っていない言葉に対してクリスが赤面した、その時だった。

 

 

ー命じたこともできないなんて、あなたはどこまで私を失望させるのかしら?

 

突如として聞こえた声に警戒を最大限に引き上げる翔と翼。目線を向けた先には新たにノイズが上空を旋回していた。だが重要なのはノイズではない、その下だ。岬の手すりにもたれ掛る一人の女性と思わしき人物。その人物の手にはなんとソロモンの杖が握られていた。

 

「フィーネ!」

 

(フィーネ・・・終わりの名を持つ者?」

 

クリスが発したその人物の名前だと思われる声を聞いて翼が一瞬思案する。

 

『翔、あの女・・・この前会ったやつだ。間違いねぇ!』

 

「お前がそう言うなら当たりなんだろうな。嫌な感じだ・・・あんな輩に杖を使わせるわけにはいかないってのに!」

 

冥牙の指摘に翔が渋面を浮かべて答える。

 

「こんな奴がいなくたって戦争の火種くらい私一人で消してやる!そうすれば・・・アンタの言う通り人は呪いから解放されてバラバラになった世界は元に戻るんだろう!」

 

抱きかかえていた響を引きはがして翼に押し付けたクリスがフィーネと呼ばれた人物に叫ぶ。

だが彼女の悲痛とも呼べる叫びにフィーネは嘆息し呆れたように返した。

 

ー・・・もうアナタに用はないわ

 

「ッ!な、なんだよそれ!」

 

無慈悲な宣告にクリスが激しく動揺する。そんな彼女を気にすることなくフィーネが手を翳すと散乱していたネフシュタンの鎧の破片が一斉に粒子化してその手に納まった。

 

「しまった・・・回収し損ねた!」

 

自分の間抜けさに気付いた翔が悔恨の声を上げる。突然の展開に呑まれたとしても酷い失態だ。

 

そしてフィーネが杖を翳すと新たにノイズが翔達に飛来してくる。そのノイズにフィーネに近づかんとする翔と、響を抱えながら翼が応戦する。その光景を見ることなくフィーネは夕焼けの中悠々とその場を後にした。

 

「待てよ・・・!フィーネ!」

 

自分に目もくれず、言葉も残さずその場を去ったフィーネを追うようにしてクリスも走り出す。それを見て翼も動き出そうとするが自身の腕の中にいる響を見て逡巡する。そんな翼に対して翔が声を掛ける。

 

「お前は響を頼む。代わりに俺が奴らを追う。お前からして見れば俺は不審者以外の何者でもない。信用も信頼も無理だろう。・・・だけど俺が戦ってる理由は決して杖や鎧を使ってどこうしようと思ってるわけじゃない!・・・あんな物は使ってはいけないと、存在してはいけないと心から思っているだけだ!」

 

「貴様・・・」

 

「・・・悪い。いきなりこんなこと言って都合がよすぎな上、信じろってのが無理な話だよな・・・忘れてくれ。」

 

「・・・貴様の言う通りだ。貴様は自分の目的を話さず、ただこちらに信じろとふざけた要求をしているだけだ。だが、それでも・・・先程も言ったが貴様には借りがある。・・・今の言葉に嘘偽りはないな?」

 

虚偽は許さない。そう強い目線を自分に向けてくる翼に対して翔は真っ向から受け止め返答した。

 

「ない。剣に誓う・・・なんて言うのはカッコつけすぎか?」

 

「そのようなこと互いに柄でもないだろう。」

 

「ま、そうだよな・・・響を頼む。」

 

「言われずとも。・・・次に会う時、貴様の言うあんな物とやらで力を振るい罪なき人々を傷つけるようなことがあればその時は容赦なく貴様を斬る。」

 

「そんな事は絶対にないから安心しろ。」

 

それだけ言って互いに背を向け翔はフィーネとクリスを追う為に翼は響を本部へ移送するため走り出す。

その間、二人は決して振り返ることなく前を見続けた。

 

 

 

(あの二人は俺が追う・・・追うって言ったけどさ、なんだこの状況。どうしてこうなった?)

 

あれからフィーネとクリスを冥牙の力を頼りに追跡し続けた翔。日が落ちて夜に差し掛かったところで、とある公園にてクリスを発見。発見したのだが・・・。

 

「お兄さんもお姉さんもケンカはだめだよ!」

 

「ダメなんだよ!」

 

「「だってコイツが!」」

 

「「ダメだってば!」」

 

「「・・・わかったよ。」」

 

幼い兄妹の言葉に翔とクリスは押し黙る。なんてことはない。彼がクリスを発見した時、彼女はこの兄妹となにやら揉めているようだった。彼女の気性の荒さを少なからず知っていた翔は慌てて間に入るが自分を追ってきたと感づいたクリスが驚き激怒。兄妹そっちのけでそのまま口汚い言葉の応酬で不毛な争いを暫く続けたところで窘められたという形だ。

 

「おい野良猫。お前、こんな小さい子達に叱られて恥ずかしいと思わないのか、ええ!?」

 

「お前も叱られてるじゃねーかお邪魔虫!それになんだ野良猫って!アタシか?アタシのことか!?」

 

「お前以外に誰がいるってんだ野良猫!」

 

「なんだとお邪魔虫!」

 

「やるか!?」

 

「上等だ!」

 

「「だからケンカはダメだってば!」」

 

「「・・・・・・・・・・ふんッ!」」

 

兄妹の再びの指摘に不承不承といった具合でとりあえず矛を収める二人。兄妹は手を繋ぎ、翔は兄の方とクリスは妹の方と手を繋いで傍から見れば兄妹4人で仲良く歩いているように見える光景に翔とクリスの胸中は同じ疑問を占めていた。

 

((本当にどうしてこうなった・・・?))

 

あれから一先ずは兄妹のはぐれたという父親を捜す間だけという理由で一時休戦と決めた翔とクリス。妙な組み合わせで夜の街を行く4人。その道中、クリスが静かに歌を口ずさむと、兄弟と翔が会話を止めて思わずその歌に聞き入る。急に黙った3人に気付いたクリスが顔を少し赤らめながら吠えた。

 

「な、なんだよお前ら!急に黙って気持ち悪ぃ!」

 

「お姉ちゃん。うた好きなの?」

 

「歌なんて・・・大嫌いだ。」

 

「・・・・・」

 

妹の方の質問に否定の答えを返すクリス。苦々し気に歌は嫌いだと答えるクリスに思う所があったのか、先程の言い争いとは違って茶化すことなく聞いている翔。そんな静かにしている翔を疑問に思ったのかクリスが口火を切った。

 

「なんだよ、黙り込んで。本当に気持ち悪いな。どうせ歌なんてお前には似合わないとか思ってんだろう?」

 

「思ってねぇよ。」

 

「・・・本当に気持ち悪いな。・・・なんだってんだよ・・・。」

 

言葉少なめに反応する翔に思っていたとは違う反応を返されたクリスが押し黙る。暫くは会話らしい会話がなかったが彼らの目の前に交番が見えた。そこから一人の男性が出てきて彼らを見て驚き声を上げると兄弟もそれに反応した。

 

「父ちゃん!」

 

「お、お前達!どこに行っていたんだ!?」

 

「お姉ちゃんと大きいお兄ちゃんのふたりがいっしょにまいごになってくれたー!」

 

「違うだろ?一緒に父ちゃんを探してくれたんだ!」

 

「そうでしたか・・・すみません。ご迷惑をお掛けしました!」

 

「いや、成り行きだからその・・・」

 

「そ、そうですよ。お父さんが謝られることなんてないですよ!」

 

普段人に感謝される機会があまりないであろう翔とクリスに兄弟の父親からの言葉は些か気恥ずかしすぎた。そんな二人を見て笑みを浮かべた父親は続いて娘と息子を窘めた。

 

「こーら。ちゃんとお姉ちゃんとお兄ちゃんにお礼は言ったのか?」

 

「「ありがとう!」」

 

「おう、どういたしまして。」

 

「・・・仲いいんだな。」

 

兄妹の年相応の可愛らしい言葉に笑みを浮かべる翔とクリス。そんな兄妹にクリスが一つ訊ねた。

 

「そうだ。そんな風に仲良くするにはどうすればいいか教えてくれよ?」

 

「・・・それは俺も知りたいな。」

 

兄妹に笑顔で尋ねるクリスと少し思う所があるのか微妙な表情を浮かべる翔。そんな二人に幼い兄妹はお互いに身を寄せ合いながら答えた。

 

「そんなのわからないよ。いつも喧嘩しちゃうし・・・」

 

「ケンカしちゃうけど、なかなおりするからなかよしー!」

 

「「・・・・・」」

 

それは翔とクリスにとって望んだ答えではなかったかもしれない。だが、それでも思う所がないわけではなかったのだろう。それは二人の兄弟に向けるどこか寂し気な笑顔が物語っていた。

 

 

 

それから帰路に就く兄妹とその父親を見送って、まずはクリスが先に口を開いた。

 

「それで、アタシに何の用だよ?言っとくけどアンタが狙ってるソロモンの杖もネフシュタンの鎧も持ってないぞ?それでもアタシと戦うってか?」

 

「お前が杖も鎧も持ってないなんて百も承知だ。単刀直入に聞く。お前、フィーネってやつの居場所を知ってるな?」

 

「だとしたら?」

 

「連れていけ。」

 

「バッカじゃねぇのか、お前。そんな頼み聞く義理が無いね。第一、それでアタシに何の得があるってんだ?」

 

「お前、手ぶらで帰れるのか?」

 

「・・・何が言いたい?」

 

「お前、フィーネって奴にもう用はないって言われてただろう。帰ったところで話を聞いてもらえると本当にそう思っているのか?」

 

「うるせぇな・・・それが、それがなんだっていうんだ!」

 

「だから俺が手土産になってやるって言ってんだ。」

 

「はぁ!?」

 

翔の思いがけない提案に驚くクリス。そんな反応を見せるクリスに構うことなく翔は続けた。

 

「俺が奴の事を詳しく知らないのと同じ様に恐らくフィーネって奴も俺に関してはそう情報は持っていないはず。お前達が身に纏い使用しているシンフォギアだったか?・・・それと同じ様にノイズとの戦いの術を持っていて、その上ソロモンの杖を狙う得体のしれない餓鬼。連れて行きゃ取り付く島もない・・・なんてことにはならないと思うが?」

 

「・・・お前。仮に、そうだとして無事に済むと思ってんのか?」

 

「なんだ。心配してくれんのか?」

 

「ばっ・・・!ち、違う!アタシが言ってんのはそういうことじゃねぇ!」

 

「じゃあどういうことなんだよ?」

 

「それは・・・・。・・・言っとくけど何が起きても後悔すんなよ?」

 

「当然だ。自分の事は自分で面倒を見る。」

 

最後は断固として自分の提案を通そうとする姿勢を崩さない翔にクリスが根負けした形で取引が成立した。

それからクリスの先導で目的地に向かう道中、相手の思い通りの展開になったことに対して思う所があったのか、恨み言をぶつけるかのようにクリスが言った。

 

「なぁ・・・お前もアイツも。なんでこう、敵に対してお節介をしたがるんだ?」

 

「アイツってのは響の事か?。響は本心から混じりっけないの善意からくるお節介だと思うが俺は違うと言っておくぞ?俺にはちゃんと理由が・・・打算的な考えがあってのことだ。」

 

「なんだよ、お前の考えって?」

 

「お前に言う義理はないな。」

 

「へっ!そうかよ!」

 

ならもう話すことはない。そう言わんばかりにこちらを振り返ることなく歩く速度を速めるクリスとそれを追う翔。

それから目的の場所に付くまで二人の間に会話が交わされることはなかった。

 

 

 

「どうして誰も・・・私の思い通りに動いてくれないのかしら?」

 

そう言ってソロモンの杖を操り、翔とクリスにノイズの群れを差し向けるフィーネ。

クリスの案内でフィーネの潜伏している場所に訪れた二人。来て早々にフィーネに自分の思いをぶちまけたクリスにフィーネは先の言葉を用いて嘲笑した。そんな彼女の対応に胸にあるギアを手に取り悲痛な表情を浮かべるクリスだがフィーネはそれに構わず続けた。

 

「流石に潮時かしら?・・・そうね。あなたのやり方じゃ争いを失くすことなんて出来はしないわ。精々一つ潰して新たな火種を二つ三つばら撒くぐらいかしら?」

 

「アンタが言ったんじゃないか!?痛みもギアもアンタがアタシにくれた物だけが・・・!」

 

「アタシが与えたシンフォギアを纏いながらも毛程の役に立たないなんて・・・そろそろ幕を引きましょうか?」

 

そう言ったフィーネの全身が光り輝く。

 

「私も・・・この鎧も不滅。未来は無限に続いていくのよ。」

 

輝きが収まるとそこには黄金の鎧を身に纏っているフィーネの姿があった。

 

「カ・ディンギルは完成しているも同然・・・もうアナタの力に固執する理由はないわ。」

 

「カ・ディンギル・・・そいつは・・・?」

 

呆然と立ち尽くし、それは何か?そう問い掛けるクリスにフィーネはまるで口の端を上げ、歪んだ笑いを持って告げた。

 

「クリス、アナタは知りすぎてしまったわ・・・そこのアナタもこの場に来て今の話を聞いた以上ここで死んでもらうわ。」

 

「あー・・・別にそんなことはどうでもいいんだが。一つだけ聞いていいか?」

 

「何かしら?命乞いなら聞かないわよ?」

 

「そんなことしねぇよ。俺が聞きたいのは広木さん・・・広木防衛大臣が暗殺された一件にお前が関与しているかどうかだ。」

 

クリスと共にいた翔もこの場で消すと告げたフィーネに翔は一切臆することなく問い掛けた。その問い掛けに対してフィーネは少し笑みを浮かべ、彼を試すかのように答えた。

 

「・・・何でそんなこと聞くのかしら。私が計画したという証拠でもあるのかしら?」

 

「証拠はない。だが俺が広木さんから聞いた聖遺物・デュランダルの移送計画・・・外部におおよそ漏れるはずのない計画なのにこの野良猫は正確に移送経路に強襲しに現れた。そんな野良猫を従えていたお前に加えてあの場にいて説明のつかない不可思議な力を使った""お前"。・・・気になる点が幾つかあってな。それで、どうなんだ?」

 

「あなたが広木防衛大臣と関りがあったというのには驚いたけど・・・それはどうでもいいわね。それよりも"あの場にいて"とはどういうことかしら?あなたと私はこれが初対面のはずだと思うけど?」

 

「いい加減とぼけるのは無しにしようぜ、櫻井了子。」

 

「あら・・・気付いていたのね。いつからかしら?」

 

「お前が破損したネフシュタンの鎧を回収したあの時だ。お前と初めて会った時と感じたドス黒い感覚が同じだった。」

 

「感覚ねぇ・・・随分とアバウトな・・・」

 

『人間の感覚は信用ならないってか?だったら俺が保証してやるよ。』

 

翔の判断に指摘をするフィーネだが、それに冥牙が口を挟むことで閉口する。

 

「・・・あなたもあなたの持つその道具も何なのか気になるところではあるけれど・・・私の計画はもう大詰めだしそんな時に余所者に出しゃばってくれちゃ困るのよ。」

 

「勝手に困ってろ。何よりお前が櫻井了子云々はどうでもいい!それで、どうなんだ!?」

 

「どう、とは?」

 

「広木さんの暗殺に関与しているかどうかを聞いてるんだ!」

 

ついに我慢が効かなくなったのか声を荒げて問い詰める翔。そんな必死さを見せる彼を面白がって笑うフィーネ。ひとしきり笑った後、彼女は翔を小馬鹿にするかのように言った。

 

「ふふふ・・・ご想像にお任せするわ?」

 

「・・・・・決まりだ!」

 

そう覚悟を持って言い切った後、懐から魔剣目録を取り出す翔。全身を怒りで震えさせる彼はフィーネに言った。

 

「前に言ったよな!お前がそのドス黒いものをぶちまけたら滅ぼしてやると!それが嘘偽りではないことを!それが可能であると教えてやる!」

 

「あらあら、怖い。あなたがどんな手段を使って私を滅ぼすのか興味はあるけれど・・・先ずはアナタに消えてもらうわよ、クリス?」

 

「えっ・・・」

 

対峙していた翔とフィーネの間で呆然自失の状態でどうすべきか迷っていたクリスに突如ノイズが差し向けられる。反応が遅れたクリスはそのままノイズが起こした衝撃に外へ吹き飛ばされた。

 

「おい、野良猫!何やって・・・」

 

思わずクリスに駆け寄った翔が声を掛けるが途中で口を噤む。彼女は泣いていた。

 

「ちきしょう・・・ちきしょう!」

 

悔恨の声を漏らすクリスを見てまるで獲物を絞め殺す蛇を思わせる笑みを浮かべるフィーネ。彼女がソロモンの杖を向けてさらなるノイズをクリスに差し向けた時だった。

 

『翔!』

 

「選んでる時間はない!」

 

次の瞬間、クリスに差し向けられていたノイズが。フィーネが潜伏していた建物の入り口付近が跡形もなく爆散し、辺り一面が火の海と化した。

 

「なっ!なんだこれは!どうなっている?貴様いったい何をした!」

 

先程までの余裕が消し去り大きく動揺するフィーネ。彼女がここまで動揺する理由はノイズが消え去ったことではなく、周辺が燃え盛るかのような惨状になっていることでもない。自身が纏うネフシュタンの鎧。それまでもが今の一瞬で少なからず損傷して再生をしていることだ。

 

(それになんだ、このあらゆる物を焼き尽くさんとする異常な熱は!この私が・・・ネフシュタンの鎧を纏うこの私がこれほど感じるなど・・・ありえない!」

 

一体、この熱を発生させたのは、この惨状を作り上げたのは何か。フィーネがそれを確認しようとその原因を作ったであろう翔を見る。あまりの熱で歪んで見えたが、フィーネには確かに見えた。

気絶したであろうクリスを抱える手とは反対の手。美しい装飾が施され、一目見ただけで計り知れない力が宿っていると分かる赤色の剣を翔は握っていた。

 

(あれは・・・まさか!?)

 

フィーネの中で一つの疑問が解けかけるのと同時に翔がもう一度その剣を振るった。再び巻き起こる炎の渦と爆炎がフィーネを襲う。それを耐え凌ぎ、フィーネが再び翔とクリスのいた位置を見ると二人は消えていた。

 

(クリスを気遣って逃げたか・・・?怒りに呑まれているかと思えば意外と冷静さは持っているか・・・)

 

改めて翔によって引き起こされた辺りの惨状を見たフィーネ。そんな彼女は先程の出来事を思い返しながら訝し気に呟いた。

 

「久しく見ていなかったが・・・あれは神誨魔械に間違いない。だが・・・解せないな。」

 

「あの小僧が・・・"護印師"という風には見えなかったが・・・」

 

フィーネ以外に誰もいないこの場所で、その問いに答える者は当然存在しなかった。

 

 

 

『咄嗟に引き抜いたのがよりによって"灼晶劍"だなんて・・・外れの部類だな。大丈夫か、翔』

 

「・・・あの場、あの状況じゃ、まだ、当たりの、部類、だろう?」

 

『そんな腕になってもそんなこと言えるなんてな・・・痛み以外の感覚がないだろうに・・・』

 

冥牙が気遣う翔の左腕。灼晶剣とやらを持っていた左手は指先から肘の辺りまで、まるで酷い火傷を負ったかのように赤黒く変色してしまっている。

 

『・・・これから、どうすんだ?』

 

「本当に・・・どうしような・・・」

 

冥牙の問いに息も絶え絶えで答える翔。あれから追撃に差し向けられたノイズをクリスを庇いながら逃げる事自体は成功したものの今の負傷した状態に加えて、クリスも意識を取り戻していない。これ以上の移動は難しいと判断せざるを得ない。だがーーー。

 

「畜生、降ってきやがった・・・」

 

何とか転がり込んだ路地裏で降ってきた雨に悪態を吐いて空を見上げる翔。このままでは二人とも雨によって体の熱を奪われて休息もままならない。そう判断して雨を凌げる場所に移動しようと思うようにならない体に鞭打って動き出そうとした時だった。

 

「あの・・・誰かそこにいるんですか・・・?」

 

大通りから外れた路地裏なら人目も避けれると考えていた翔にとって急に聞こえてきた声は二つの衝撃を彼に与えた。一つはこの場を見られた時にどう言い繕うかということ。だが、これに関してはいざとなればなんとでもなると彼は踏んでいた。彼が真に驚いたのはその声の主が最近知り合った者の声であったことだ。

 

「え・・・神薙さん?・・・なんで・・・?」

 

「・・・久しぶり・・・というわけでもないか。」

 

彼の目の前に現れた少女。その少女の大切な親友が抱えている秘密を知りながら黙っていたことで彼が傷付けてしまった少女。

 

小日向未来が彼の前に立っていた。

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