ウマ娘! 世界を賭けたダービー!   作:マザー・マグナム

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プロローグ前編

 オブジェクト、それはある辺境の島国で開発された戦争と言う概念を変革させうる強力な兵器だった。

 直径50メートルほどの球体型のそれはまさに科学技術が生み出した化け物其の者。

 何層にも重なり合った核の直撃にも耐えうる特殊な装甲であるオニオン装甲に加え、絶縁物質と導体物質をセットで鋼板に焼き付け装甲に回路を設けることで、中心部の動力炉から外装部の砲身までケーブルを一切使わずにレーザープリントされたまるで伝統工芸品かの如く精密なプリント基板式送電装置。そしてそれらに繋がるオブジェクトを他の兵科と乖離させる原因である大電力を無補給で五年もの長い間生み出した続ける事の出来るJPlevelMHD動力炉。これらに接続されるのは100門以上搭載されているレールガンやら電子ビーム砲やらの攻撃兵器がごまんとまるで針山のよう。その圧倒的な戦闘力からこれまでの兵器全てを過去のものし各国が同様の兵器を研究、開発してオブジェクト同士がぶつかり合うクリーンな戦争が巻き起こる新時代の到来……かと思われたが、そんな事はなかった。

 

 今から15年前の事だ、突如複数の連合の征服域である辺境の島国が爆発、消滅した。その所在は衛星や肉眼でもその存在が確認出来ず結果、世界の地図から消えてしまった。

 まぁ、その結果みんな慌てふためいたさ。

 そな出来事はあまりにも突然だっただけに各連合隊は新兵器かと警戒しつつも他の連合と手を組み、原因究明に動こうとした────のだが、少し遅かった。

 

 島国のあった海域が濃い霧に包まれ、潮も荒れ果て近付こうにも近づけなくなってしまったからだ。船がダメならオブジェクトと各連合体は考え、オブジェクトで調査しようとしたが霧は不思議な事に搭載されている最新鋭のレーダーでさえも無効化してしまい、島があったとされる場所からは怪電波が発せられコンピュータによって常時管理されているはずの動力炉を不安定にしてオブジェクトそのものを行動不能とさせる。

 超常現象と一言で言い表すにはあまりにも不自然なそれは調査を続けようとすればするほどに続き結果、各連合は頭を悩ませた。なんだコレはとね。謎の現象続くその海域を解明出来れば他国へのだが切り札となると考えたのはそれぞれ一緒のようでその後半年ほどはその海域が激戦区となってしまった。そんな状態を続けられない出来事が起こる。なんと調査の結果、その現象が起こる範囲が広がっているとわかってしまいさぁー大変。戦争を続け美味い汁をずっと吸っていたいと考える偉さん方は揃ってその現状を止めようと意見が一致し、結果各連合は一時的な停戦を宣言する事に。それぞれ人員を出し合い専用の調査チームを編成するとその原案を研究し始めた。そしてそのチームで作り上げた船にて現地へ趣き、見たのは……消滅したはずの島国の姿だった。

 

 記録によるとその島へと上陸した直後らしい。突如としてその海域を覆っていた不可思議な霧が晴れ、波が治った。それだけ聞くと超常現象が終わっただけかと思うがそうじゃない。その時同時に世界にとってオブジェクト到来以来の大変革が起こっていた。

 その島国────日本から飛び出すは3つの光。当時の衛星に記録されているデータによるとそれはかなりの熱量を持った流星か何かだったらしいその流星達はなんと驚く事にこの世界に存在する全てのオブジェクトを破壊し始めたではないか。それに加えて光が通過した後は通った地域に存在するいかなる媒体に記録してあるデータであろうがオブジェクトに関するモノならば問答無用で消去されている始末。まるで神がオブジェクトを嫌っているかのような超常現象を起したそれに対して勿論防衛はしたが、それの前には歯が立たない。そしてこの瞬間、世界からオブジェクトと言う兵器は消えてしまった。

 

 各連合体は勿論の事に怒り浸透、すぐさま軍隊を結成して光の出て来た日本へと攻め入ったのだがコレもダメ。その日本にはコレまで存在しなかった新たなる人種、()()()が存在していたからだ。

 結果、ウマ娘と呼ばれる種族が用いる圧倒的な身体能力に人間の軍隊は敗退。世界はウマ娘に支配された────訳でもなくウマ娘は和平を持ち掛けたのだった。

 

 そしてそれから十五年、世界の有り方は大きく変わり戦争も変わった。

 

「なぁクエンサー」

 

「ん? どうしたヘイビア?」

 

「何で俺、レーダー分析官なのに芝の手入れしてんだろうな……日本にまで行かされてさ」

 

「そんなこと言ったら俺だって何で軍事技術を学ぶ為に留学してきた身の上で全く軍事技術とは関係ない蹄鉄のメンテナンスやってるだろな……」

 

「「……」」

 

「「はぁー」」

 

 戦争は競争へ、銃火器の炸裂音は観客達の声援にそして、血生臭い戦場を駆ける兵士は土と草の匂い香るターフで走るウマ娘へ。大きく変わった世界仕組みはウマ娘と言う異種族を受け入れた結果、戦争で得られる結果を賭けた(betした)レースで決まってしまう異質であるが死人ゼロの娯楽(ゲーム)へと変貌していたのだった。

 

「でもアイツよりマシか、姉さんに目を付けられた時点で手遅れだとは思うが」

 

「だな。だが、色仕掛けに引っかかってしまうのには男である故仕方ないと思う」

 

「くぅー! 俺もあのドデカイπ乙を揉んでみてぇー」

 

 そして、そんな状況であれば巻き込まれる人も当然ある訳で────

 

「おーいヘイビアにクエンサー、差し入れ持ってきたぞぉー」

 

 ────このトレーナーバッチを付けた冴えない男もその1人である。

 

「どうしたんだ2人とも、いつも以上に冴えない顔して。マグナムのプラン考えるのに二徹した俺よりも酷い顔だぞ」

 

「「……」」

 

「「はぁー」」

 

 お前が言うな。2人はそう心から思ったと言う。


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