暗殺教室〜彼と死神〜   作:らふ

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Act.2

set2 空白

color. White

 

E組に転入してから、少し時間が経った。予想通り、期待通りのぼっち。

 

ついでに文字通りのぼっちである。

 

決してファッションぼっちでは無い。ない。ないのだが………

 

「ねぇー、比企谷君、起きて」

 

「うぅ……」

 

そう。こいつ。矢田桃花だっけ?めっちゃ鬱陶しい。先生の触手…程ではないが物凄く鬱陶しい。迷惑だとは思えないのがまた厄介だ。

 

「ふふっ、反射解いてるんだね。おきてーよー」

 

「後3時間……」

 

「むぅ……ねぇってば!おきてって…えぇ?」

 

突然俺が立ち上がったからか矢田さん?が少々驚いている。

 

なんだ?200m先に気配があるな。殺気が隠せてない。多方スナイパーで対俺を想定しているならばメタルイーターがいいとこだろう。

 

すると思った通り、200m先の崖の茂みから狙ってきた。

 

馬鹿正直に撃っても当たらない。それは分かってるはずだろ。

 

だから、俺は矢田さん?を遠ざけ視界に映るスナイパーに目を向けた。

 

「ひっ……」

 

粒子加速を600倍まで上昇させ相手方に向ける。馬鹿め。死ね。

 

数秒後、茂みから赤い血飛沫がして大きな悲鳴が聞こえた。因みに何処かで聞いたことのある女性の悲鳴だ。

 

「………」

 

何だか教室内が微妙な雰囲気になっている。なんだ?どうした?空気が重い。

 

「比企谷君っ!先生前にも言いましたよね、殺してはいけませんと」

 

殺せんせーは相変わらず元気だ。今はプンプンになって怒っている。訳が分からんな。不殺とか無理に決まってんだろ。

 

「無駄な殺生は禁物!!殺さない程度に痛めつけて返せとあれほど……」

 

「へいへい。つか、先生って何気に美貌すっよね。そのつぶらな瞳と光沢のある触手は何処から見ても美しい。」

 

「(美しい?)」

 

ふむ。ちょっと柔らかすぎるのが玉に瑕だな。この触手じゃ攻撃出来ないだろう。あと、潮田からの視線が痛い。

 

「もしかすると、この触手は、誰かを傷つける為ではなく……」

 

ふにふにと、触手を触りながら考えた。ま、そんなロマンスはあるわけないか。

 

「やはり比企谷君はよく見ている。先生の触手が気に入って貰えたようで何より……」

 

「触手より気になることがあるんだけどさ、先生って昼食どうすんの?ちゃんと食べてる?最近は明らかに俺に頼むパンの量が減ってるよね?」

 

昨日に比べ先生は少しやつらえているように見える。多分何も食べてない。無駄なもん買いすぎなんだよ。

 

「ふにゅ…それが先日お金が尽きてしまい、給料日まで草を食べるしかないんです……不甲斐ない」

 

見るからに先生が萎んでいる。生徒に情けない姿を見せたくないんだろう。

 

「だと思いました。なので、俺が弁当を余分に持ってきてます。ちゃんと食べてくださいよ。」

 

鞄から重い弁当箱を出して先生を渡す。重箱なのでベクトル変換してなかったら持ち運べない。

 

せんせー重そうだけど大丈夫かな?

 

「うぅ……優しい生徒に恵まれて先生冥利に尽きます」

 

先生は涙を流しながら俺から弁当を受け取った。

 

「「「(先生と比企谷君が仲がいい件についてっ!)」」」

 

「あはは。比企谷君って殺せんせーと仲がいいよね。」

 

気になったのか矢田さんが聞いてくる。しかし、教室内は未だ少し重い。

 

「殺せんせーは抜け目がないように見えて穴だらけだからな。殺そうとも思えない」

 

「にゅにゃ。どうして私を殺そうと思えないのですか?先生は何時でも殺してくれて結構ですよ?簡単には殺されませんがねぇ。ヌルフフフフフフ」

 

そういう所だよ。殺せんせー。それと、なんだか、懐かしい気がして。いつか見た、誰かを思い出す。

 

「比企谷君も一緒に殺そうよっ」

 

記憶の面影を必死に探して、少し黙っていたようだが、矢田さんの声で我に帰った。

 

「やだ。つか授業始まんぞ。」

 

返す言葉は、素っ気ない。でも、これでいい。

 

「はーい」

 

流石に授業が始まるからか矢田さんは席に戻って行った。

 

はぁ、何故他の誰も話しかけないにも関わらず矢田さんは俺に構うのだろうか……よく分からん。

 

そして、理科の授業が始まった。

 

ーーー

 

「お菓子から着色料を取り出す実験はこれで終了。余ったお菓子は先生が回収しておきますっ」

 

………先生。俺が弁当あげましたよね。まだ足りないんですか?まだ……

 

「覚悟しておけ……殺せんせー」

 

「比企谷君から殺気がっ!」

 

「殺気?!」

 

俺の前の席の奥田さんがビクッと肩を震わせた。赤羽なんかケタケタ笑ってる。おい小僧。

 

「給料日前だから授業でおやつを調達してやがる。あれ買ったの俺たちだぞっ」

 

「地球滅ぼす奴がなんで給料で暮らしてんのよ」

 

それは多分大人の事情とやらだ。俺が杖を持ってんのも、『学習装置』のチョーカーを首にかけてんのも全部、大人の事情だ。子供は首を突っ込まないように。って、俺も子供だ。

 

奥田さんがが手を挙げて複数の薬瓶を持って席を立った。

 

「毒です!!飲んでください!!」

 

俺は突っ込まんぞ。キャラじゃないからな。

 

奥田さんが殺せんせーに薬瓶を渡した。毒……毒ねぇ……

 

俺は色々考えながらポケットに入れて置いた物を出す。くくっ、準備を始めるか……

 

「あっ、あのあの、わ私みんなみたいに不意打ちとか上手く出来なくて……それに比企谷君みたいな能力もないし」

 

「(それは皆同じだから安心して奥田さんっ)」

 

潮田君?だっけ?奥田さんに気があるのだろうか。じっと見つめている。あと冷や汗を流している。健康に悪いぞ。

 

「でもっ化学なら得意なんで真心込めて作ったんです!!」

 

突っ込まんからな……

 

「それはそれはではいただきます」

 

奥田さんから受け取った薬のうちの1本を飲んだ。あれ?先生の顔色が悪い。効いてるのか?!もしや……

 

にゅ

 

「……」

 

角が生えたな。倒したらそこそこ経験値が貰えそうだ。

 

その隙に用意しておいた生地と生クリームを使い、超スピードでアレを作る。

 

「この味は水酸化ナトリウムですね。人間が飲めば有害ですが先生には効きませんねぇ」

 

「……そうですか」

 

「あと2本あるんですね。それでは」

 

「は、はい」

 

続けざまにもう一本を飲んだ。あれ?殺せんせーの様子がおかしい。進化か??進化するのか???B押していい?

 

「うぐっ、うぐぁっ、ぐぐぐ………」

 

ばさっ

 

今度は羽が生えた。こいつを倒せばレベルアップしそうだな。まぁ、俺がレベル上がれば『絶対能力』とかいうトラウマが蘇るのだが……

 

「酢酸タリウム味ですね。では最後の1本」

 

一応、出来たので先生に持っていく。我ながら言いできだ。殺せるかな

 

と、立ち上がった。その時!!

 

真顔になっていた。

 

落ちを忘れないその心意気やよしっ!

 

「王水ですねぇ。どれも先生の表情を変える程度です」

 

「…………はい」

 

「てか先生真顔薄っ!!顔文字見てぇだな!!」

 

「先生の事は嫌いになっても、暗殺のことは嫌いにならないでください」

 

「いきなりどうした!!」

 

「それとね奥田さん。生徒ひとりで毒を作るのは安全管理上見過ごせませんよ」

 

「………はい。すみませんでした」

 

「このあと時間あるなら一緒に先生を殺す毒薬を研究しましょう」

 

「は……はいっ!!」

 

「それと、比企谷君どうしたんですか?」

 

先生の背後に立っていたのがバレた様だ。俺の気配を見破るとは中々の手練だな。ロブロ先生に教えたら喜ぶかもしれない。………超生物だが。

 

コロコロと台を引いて、先生へ持っていく。

 

 

「先生の為にケーキを作ってみました。」

 

「「「(そんな時間あったか?!)」」」

 

「で、でけぇ…」

 

「う、ウェディングサイズだぁ……」

 

岡野が関心したように、いや、あれは関心じゃない、見惚れてる。作った甲斐があるな。

 

「ヌルフフフフフフ。奥田さん。これですよ。これが……」

 

毒を盛る手本とでも言おうとしたのか、どうでもいいが俺の自信作だ。無駄に金を使ってるんだから毒なんて入ってない。

 

「え?毒なんて入ってねぇよ?つか、殺せんせー生徒からお菓子奪うくらいなら俺に頼めよ。金なら湯水の如く湧いて来るんだからさ」

 

先生もそれは匂いから分かったようだ。まぁ無臭の毒物なんていくらでもあるんだが先生には効かないだろう。

 

俺の言葉に反応しておずおずとケーキを口に含んだ。

 

「は、はい………それにしてもこれはこれは。先生の好みがよーく分かっている……食べた時に蕩ける甘み、高級生地を使っているのかアクのない食感。いや、これはもち米っ!?雪の下の雪のように儚い口溶け………先生天に召されそうです…」

 

「あっ、先生が天に登っている!!今なら殺れんじゃね?」

 

「服は吹き飛ばさなくていいからな。先生が食戟ネタとか結構危ないから。いや、同じ週刊誌だからありか?……」

 

「比企谷君っ、ちょっとメタいよっ!!」

 

茅野?が手をばつにしてダメダメと言っている。何言ってんのこいつ。

 

「喜んでくれたようで何よりだ。甘党は皆兄弟だからな。銀さんしかり、Lしかり、紫原しかり……」

 

俺はうんうんと頷いてその間先生は微動だにしない。大丈夫か?

 

「「「(なんで仲がいいんだあの二人?)」」」

 

茅野が俺に情熱的な視線を向けてくる。も、もしや、お前も?

 

「ねぇ、私も食べていいかな?」

 

「おう、切り分けてあるからな。てか、殺せんせーも泣いてないでさっさと食えよ。このケーキ無駄に費用かけてんだから」

 

「ち、ちなみにどれくらいお金かけたの?」

 

興味があるのか矢田さんが俺の肩に手を置いて尋ねる。

 

「ざっと5~6万くらい?調理器具の金が結構掛かるからケーキ自体はそんなに高級じゃないな。あと、この台も合わせてだ。あ、殺せんせー調理器具は家庭科室に置かせて貰いますね。職員室のamazonのダンボールは面倒なので先生が処分しておいて下さい」

 

「………」

 

呆れてるのか驚いているのか、よく分からん表情をされた。茅野は切り分けたケーキを大事そうに口に運ぶ。キラキラめを輝かせて、口の中でもぐもぐしている。

 

「この食感。癖になゆぅー」

 

「か、茅野~~?!」

 

茅野も天に召されたのかその場に崩れ落ちた。

 

このあとE組で美味しくケーキを頂きました。殺せんせーはいつまで経っても天から戻ってこないのである意味で人を殺すケーキと恐れられた。

 

 

 

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