暗殺教室〜彼と死神〜 作:らふ
set3 忘れたくて
color.light Gray
頭がふわふわしてて、気持ちいい。
辺りには、一面の花が咲いていて。
緊張の糸が切れたように、寝転んだ。その拍子に、花弁がふわっと舞い上がって、そのまま花のベットで、優しい陽を浴びる。
ここは、何処だろう。自分は、誰だろう。なにも、分からないけど、ずっとここに居たいと思った。
風が、伝えてる。誰かここに近づいてるって。寝転んだままで、誰が来たのか知りたくて、顔をあげる。
「………また、君か。こんなとこで一体なにを?」
綺麗な黒い髪。呟く声は柔らかくて、見せる仕草は、懐かしい。
誰だろう。知ってる人?
「大方、学校でも休んだんでしょう。いつものことです。べつに注意はしませんよ?」
胸の奥で何かが騒いでる。ふつふつと湧いてくる感情が抑え切れない。あったかくて、なんだか切ない気持ち。
気づくと、彼に抱きついていた。
「どうしたのですか?」
言葉が出ない。出てくるのは僅かな嗚咽だけで、言葉が出せない。
「ちゃんと、言葉にしなきゃ分かりませんよ?」
嫌われた?でも、彼に何を言えばいいんだろう。そもそも、彼は誰だ?私は、彼の"何"なんだ?
「では、私はもう行きます。」
「ま、……ま…って」
ここで彼を行かせてしまったらだめ。いるはずもない、もう一人の自分がそう言っている気がした。
「君、……泣いているのですか?」
「え?」
目頭が熱くて、視界が潤んでいた。そこで、自分が泣いてるんだと気づく。
そこで夢は終わった。
遠い昔の忘れてはいけない夢。けれど、夢が終わると徐々に薄れていって、"俺"は手を伸ばしていた。
「…………比企谷くん。授業が始まりますよ」
せ……ん…せい?あなた、ほんとに、先生ですか?
「あの、一つ聞いていいですか?」
質問していた。まるで穴埋め問題の当てはめのような。
「どうぞ」
先生のいつも笑った顔がちょっと鈍ってる。何が先生をそうさせるのか、知りたい。
「先生は俺達を手放したりしませんよね?」
聴けなかった。貴方は、本当は誰かなんて。きっと、聞いても答えてくれないから。
殺せんせーはいつも通りの笑みで言った。そうだ。俺は、多分これが見たかった。
「はい!勿論です」
胸を占める安堵の心で覆われながら、それだけ聞くと教室へと戻った。
きっと俺には殺せない。未だに夢の続きを瞼の裏で追っている、自分自身がそう言っている。
あれは、夢も、希望も、未来すらなかった頃の。まだ、名前を持たない昔の夢だ。