チートウマ娘になったので他が霞むくらいのヒールする。 作:カレンチャンの元おに
最近色々なことに悩んでいるのでコチラに逃避することが増えるかも。
来世は自然保護区の大きめな木が理想です。
「ビトレイヤ、面白い映画を見つけたんだ。一緒に見てみないか?」
「最近デスクワークばっかで腰を痛めてさ、少し筋トレを始めたんだ。ビトレイヤも一緒に筋トレどう?」
「ビトレイヤ、お前もトレーニングをしないか?見ればわかる。お前の実力。至高の領域に近い。トレーニングをしろ、ビトレイヤ」
最近トレーナーさんが凄いトレーニングを推してくる。まぁ5月ももう終わりそうなのに全くトレーニングすることの無いウマ娘を見たらそりゃ焦るか。
だが悪いなトレーナー。俺はトレーニングなんてもの必要無いし意味もない。これからも自堕落するぜ!!
.....だがスルースキルがどんどん磨かれて来たせいか日に日にトレーニングを推してストレートに言ってくるトレーナーに、少し魔が差してしまったので、ちょっとばかしイタズラをします。(暗黒微笑)
「良いよ、トレーナー。1回だけトレーニングしてあげる」
「ほ、本当か!?良かっ「ただし!!」....なにかな?」
「今から私がするトレーニングに、一切の口出しやアドバイスをしないでね。見てるだけで居て」
「それで.....全部分かると思うから」
ということで俺は今グラウンドを爆走で走ってはや8時間。もうちょっとで寮に戻れ〜と言われるくらいの時間になって来た。いや〜今日が授業休みで良かったわ。トレーナーを分からせる良い機会だ。
「ビ、ビトレイヤ!!もうやめるんだ!!」
「トレーナー!!私、言ったよね?」
「うっ......で、でも」
「黙って見てろって言ってんのが分からねぇのか!!!」
「っ!?」
「....もうちょっとで終わるから待っててね〜!!」
....おっと、つい口調が悪くなってしましましたわね。おほほ。
8時間ぶっ通しでグラウンドを駆けずり回って空腹がそろそろ限界な俺は、あと15周で終わろうと決めた。これだけ見せつければ分かるだろう。
1、2、3、......9、10、......13、14
「15!!あ〜お腹空いた〜」
「ビトレイヤ!!」
焦って走ってくるトレーナーに指を刺す。
「あのさトレーナー!!トレーニングには口出ししないって約束破ったね!!」
「うっ....で、でも流石にあんな無茶な.....そうだよ!!あんな無茶を....!!ビトレイヤこっち来て!!」
手を引っ張られベンチに座らされてしまい、すぐさま脚を触りまくるトレーナー。
「ちょ、なに!?セクハラなんですけど!?」
「.....えっ?」
脚を触りまくっていたトレーナーの顔から、血の気が引いていくのが目に見えてわかった。その様子を見て理由に気付いた俺は、トドメの一言を添えた。
「.....言ったでしょ?全部分かるってさ」
8時間連続での全速力ダッシュ。身体が強靭なウマ娘でもそんな無茶をすれば選手生命に関わることだろう。脚の筋肉や筋は悲鳴をあげ、熱を持ち、脱水でぶっ倒れたり骨に異常が出ることも当たり前に起こりうる無茶な行い。
その報いを受けているはずの俺の脚には、なんの異常も無かった。
異常がないことが、1番の異常だった。
脚の骨折やヒビなどによる腫れ、筋肉の異常はもちろん、パンプアップや全身の発汗、息切れに至るまで、一切の身体的な変化無し。
最初は脚だけに注目していたトレーナーも次第にその事に頭が回り始め、ウマ娘とは違うなにか別のモノを見るかのような視線を向けてきた。
「....言うの忘れてたんだけどさ、私、別にトレーニングをしたくないとか.....それも大いに有るんだけどさ、一番の理由はこれなんだよね」
「何をしても疲れない。何をしても成長しない。何をしても、意味が無いんだよ」
「私は産まれた時から完全だった。努力なんて無駄なことをせずとも、私は全てで勝利できるんだよ」
「だからトレーナーなんて誰でも良かったんだよ。分かる?ここ最近のトレーナーみたいに、トレーニングトレーニングって言われるのが嫌で、あんたみたいな新米の気が弱そうな人が、一番都合良かったんだよ」
「私のことを思って色々考えてくれてるのは分かるんだけどさ、それ、全部無駄なんだよ。....おわかり?」
至極淡々と、当たり前のように突きつける。ここ最近のトレーナーは、俺の事をよく考えてくれていた。
どうすればトレーニングをしてくれるだろう?
どうすればあまり嫌な思いをせずに....
どうすれば、どうすれば、どうすれば......
どうすればレースを楽しんでくれるだろう。
そんなことを考えて、色んなトレーナーやウマ娘にまで色々聞いて回るトレーナーの姿は.....とても痛々しかった。
全く無意味な行為だと知らずに、時間と体力を削りに削って色々と試行錯誤しているそんな姿を思い出して、今回のことを思いついたのだ。
「良い?トレーナー。私は無駄なことが嫌いなの。トレーニングも、レースも、私にとっては基本無駄なの。お金を稼ぐための場所でしか無いの。これで分かった?これからは私のトレーニングのことを考えたり、レースのことを考えないようにしなよ?全部無駄なんだからさ。....あ、でもレースの日程とかはよろしくね?」
座り尽くすトレーナーにまくし立てるように言って、その場を去る。
......いや、これは良い判らせだったんじゃないか!?最高にヒールっぽいよな!?私は無駄なことが嫌いなの(キリッ)....え、恥ずかし。思い出すと恥ずかし。ただこれで、トレーナーへの悪い仕打ちのノルマがまたこなせたな。これが噂なりなんなりに乗って流れてくれれば、俺のイメージがどんどん固まってくれる。そしてそのままデビューすれば、マスメディアや週刊誌も俺をヒールにするよう流れていくだろう。1歩ずつそういう方向に近づくんだ。
.....あぁ、だんだん楽しくなってきたぞ!!
俺の口は、自然と三日月の形になっていた。
《トレーナー》
それとなくビトレイヤにトレーニングを催促する日々が続いていた時、突如ビトレイヤの方から条件付きで、自分で決めたトレーニングを今日1日すると言って貰えた。
最初は安堵した。どれだけ彼女が完成されていようと、トレーニングをしないとなると身体が鈍るだろうし、こう言ってはなんだが外聞も悪い。
彼女の悪い噂が少し流れて来た時、僕はとても焦った。このままでは彼女のデビューにも影響が出てしまうかもしれない。そうすれば彼女はますますレースを憎んでしまう。それだけは避けたかった。
だから今回のトレーニングはまさに僥倖だった。これで少しは彼女の悪い印象を晴らす足がかりになるかもしれないと。
「ビ、ビトレイヤ!!もうやめるんだ!!」
それがまさかこんなことになるなんて。
「トレーナー!!私、言ったよね?」
朝から夕方まで全速力での走り込み。1度の水分補給も、休憩も無しで続けている現状に、もう自分を抑えられくなっていた。
「うっ.....で、でも」
釘を刺されてもなお動こうとした口が、彼女の逆鱗の触れたようだった。
「黙って見てろって言ってんのが分からねぇのか!!」
普段の飄々とした態度とは真逆のような、牙をむき出しにした獣のようなその形相と声に、踏み出そうとしていた脚が止まり、伸ばしかけていた腕が行き場を無くした。
「.....もうちょっとで終わるから待っててね〜!!」
普段の調子に戻った彼女を見て、遅れて背筋をつららに貫かれたかのような悪寒が全身を覆った。
やっと足を止めた彼女に駆け寄り、文句を言われながらもすぐさま近くのベンチに座ってもらい、傷付いているであろう脚の状態を見て処置をしようとした時、異変に気が付いた。
筋肉の疲労やパンプアップ、発熱や発汗さえも見受けられない。まるで何も起きてなかったかのようなその状態を見て、全てを察した自分の顔から血の気が引いていく感覚がした。
彼女は完成されたウマ娘。
もうこれ以上成長の必要が無い....成長が
全てが繋がった。これまでのトレーニングを避けるような行動は、自身にトレーニングが必要ないことを知っていたからなのだと。レースは彼女にとって成長や達成感を感じられるような物ではなく、ただの作業にしかならない。レースを作業として行うことしか彼女には許されていないのだと、気付いてしまった。
彼女の言葉が何一つ耳に入ってこない。どんどん声が遠くなっていく。
彼女にレースの楽しさを知ってもらうという目的が、理想が、ガラガラと音を立てて崩れていくのを幻視した。
放心した自分の横を通り過ぎる彼女の足音だけが、僕の頭の中にとても虚しく響いていた。
異例の更新速度(当社比)
生きるのってなんて疲れる行為なんでしょうね。本当に。
今回は少し長めになりましたね。(少しくどいかも)
まぁ修正なんて後からできるしママエアロ。
好意的なコメントが本当に多くて励みになってます。やっぱ自分の作ったものを褒めてもらうのって嬉しいね。
素敵だね。