【 煉獄 奇旅 】 異世界炎聖伝説   作:煉獄杏寿LAW

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第4話

サボンに言われ、ある人物を迎えに行くユーリ
その人物が住む古びた小さな小屋へとたどり着き
ドアをコンコンとノックする…






運命の出会い

 

「ゼノさん! ゼノさん?? いないのー?」

ドアをノックしてユーリが問いかける

 

少し間をおいて静かにドアが開くと

小さな女の子が顔を出す

 

「ゼノ…寝てる…起こす?」

ドアを開けて出てきた小さな女の子

頭には小さな角が生えている

 

その子を見てユーリは微笑み話しかける

「マズルちゃん、ゼノさん起こしてもらってもいい? 」

 

ユーリの言葉にマズルと呼ばれた少女は頷き

部屋の奥へと歩いて行くと固めのベッドに寝ている

初老の男ゼノの身体を揺すって起こす

 

揺さぶられたゼノは目を覚まし

わかったわかったとマズルの頭をポンポンとすると

ゆっくりと起き上がり入り口へ歩いてくる

 

 

「なんだユーリか! どうしたんだ一体?」

まだお爺さんとは言えぬ初老の見た目な男ゼノ

少し眠そうではあるがユーリへと話しかける

 

「サボンさんが呼んでますよ! 私が森でベアードから助けてもらった人が来ていて…たぶんあの違う世界から来た人みたいで…」

ゼノの言葉にユーリがそう答えていると

目を見開きすぐに言葉を遮る

 

「なんだと!? そいつが今居るのか?」

ゼノは驚いて大きな声で聞き返す

それを聞いていたマズルがビクッと驚く

 

「はい今はお礼の食事を終えて話しを聞きたいと! だから詳しいゼノさんを呼んで来てとサボンさんが…」

動揺して聞いてくるゼノにユーリも少し驚いたが

そのままに答えているとまたゼノに遮られる

 

「それを早く言わんか! ちょっと待ってくれ」

ゼノはそう言うと部屋の奥へ行き

魔術師のローブのような服装に着替えると

杖を持ち出て行こうとする

 

「ゼノ!」

そう言ってローブの裾を掴むマズル

そんな小さな少女を優しくゼノは頭を撫でる

 

「大丈夫だ! どこかに行く訳じゃない。 マズルも来るか?」

穏やかに話すゼノの言葉にマズルは頷く

 

「じゃあ行こう!」

ゼノはマズルの手を引いて

先を歩くユーリに着いて行った

 

 

 

煉獄とサボンが先の話しを交えて会話をしていると

ドアが開いてユーリが戻って来る

 

「ただいま戻りました! ゼノさん連れてきましたよ」

その言葉に煉獄とサボンが声の方へ向く

 

「村長! お邪魔するぞ」

ユーリに続いて初老の男が入ってくる

その男の手に引かれて小さな少女が入って来た

 

その少女を見た瞬間、煉獄の表情が変わり

すぐさま傍らに置いていた炎刀を持ち

「ここにも鬼がいるのか!」

 

明らかに豹変した煉獄の有り様を見て

サボンとユーリは驚いて訪ねる

 

「どうなされた?」

「何?どうしたのレンゴクさん」

二人の言葉を聞いても煉獄は少女を睨んでいる

 

「うぅー」

「ほらほら大丈夫だ」

睨みつける煉獄の姿に怖がってゼノの背後に隠れるマズル

それを宥めるようにゼノは言うと

「若いの! その剣を置いてくれないか? なんでマズルに敵意を向けるのかは知らんがこの子は理由あってワシが面倒を見てるんだ」

 

ゼノの言葉を聞くとマズルという鬼の少女を見て

動揺していた煉獄は落ち着きを取り戻す

 

「すまない…俺の居た世界では鬼と戦うことが使命だっただけにその子の角に反応してしまった。」

そう言って煉獄はゼノに頭を下げると

背後に隠れているマズルにも詫びを入れる

 

そう自分がいた世界の鬼とは何かが違うのだ

殺気も感じなければ敵意も感じない

まるで死ぬ前に共に居たあの少年の妹のように

人の温もりさえあるような……

 

 

 

サボンとユーリも一瞬の緊張感が消え去り

ひと安心と息をつく

「お茶を入れてきますね!」

「まあまあみんな座りなされ」

 

サボンの言葉に煉獄は持っていた炎刀を

改めて壁に立て掛けてイスへと座る

 

続けてゼノもイスへと座り

隣にマズルも座らせる

 

すぐにユーリが用意したお茶を飲んで

煉獄は改めてゼノへと挨拶をする

その大きな声に二人は驚き、それを見て二人は笑う

 

「しかしこんな村に来訪者が来るとはな…」

ゼノは煉獄を凝視しながら呟く

先程のことに煉獄を怖がっていたマズルも

今は興味津々と煉獄を見ている

 

 

「来訪者…そう呼ばれるのか。 ゼノさん聞かせてもらいたい! 俺のようなその来訪者は何人も居るのか?」

煉獄はゼノへと問いかける

 

「ゼノでいい! レンゴクと言ったな。 あぁ会ったことは無いが確かに他にも何人か居ると聞いている。 しかも特徴はおまえに似た見たこともない服装と不思議な形の剣と言う話しもある。 その者たちはオールストの各地に居るらしいぞ」

ゼノはそう話しながらマズルの頭を撫でる

 

「では改めてゼノ! その者たちに会いたいんだがどうしたら…」

ゼノの言葉に煉獄はすぐに答えようと話し出す

 

「ゼノ…何か…来る!」

煉獄の話しの途中でマズルが急に喋り出す

 

 

 

マズルの言葉と同時に森やその先から来たのか

大量の鳥たちが村の上を通過していく

 

異変を感じて煉獄は素早く窓を開けると

夜になりかけた空を真っ黒に染めるような

大量の鳥たちが飛び去って行く

 

どこからか地響きに近い

大量な動物たちの移動する足音も響いていた

 

 

「なんだ? 何が起きている?」

煉獄がそう呟くと

「悪い知らせだ! こんなとこに居るはずのないやつが向かって来ている」

ゼノは話しながら持って来ていた杖の先を

クルクルと回して覗き込んでいる

 

「いかんな…村長、アースドラゴンが近づいている。 今ならまだ間に合う! すぐに村の者を連れてここから離れろ」

ゼノの言葉にサボンとユーリは顔が青ざめる

 

「なんだと言っている!」

異変を感じながらも落ち着いて

しかし力強い圧のある声で

煉獄が話しているゼノへ問いかける

 

「ドラゴンだ! レンゴクの世界では…何と言えばわかる? 」

その怖くも熱く漲る煉獄の言葉にゼノは答える

 

「リュウ…」

マズルはレンゴクを見上げて話す

 

「竜? あれは伝説の…いや違うこの世界では存在しているのだな! ふむっ…時間稼ぎが出来るかわからんが俺が行く」

 

煉獄の理解と判断は早かった

話しながらすぐさま炎に見える羽織りをバサッとはらうと

壁に立て掛けてあった炎刀を腰へと差し入れる

 

その華麗な様にマズルは見入ってしまうほどだった

 

 






今回は長くなってしまいましたが
次話を経てプロローグとなる
「炎の申し子」へ繋がります

やっと話しの入り口が開いた感じになり
これからが更に長くなっていきますが
少しでも楽しんで頂けたら幸いですm(_ _)m


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