摩訶不思議ハイスクール・ライフ エヴァンゲリオン 杜宮学園物語 作:朝陽晴空
「……一体、何が起こったんだ?」
コウは意識を取り戻すと、自分が遺跡の迷宮の様な場所に居る事に気が付いた。
さっきまで自分は杜宮市の夜の公園に幼馴染のシオリと一緒に居たはずだ。
そして公園では同じクラスの柊明日香が下級生達3人と何か話しているのを目撃した。
確か、3人の下級生のうちの1人はアスカと明日香に呼ばれていた。
アスカ・ラングレー。
ハーフに見える容姿は柊明日香に匹敵する可愛さを誇る1年生だと、2年生の間でも評判になっていた。
「アイツらの事も気になるが、シオリはどこに行った?」
コウは辺りを見回すが、側に居て一緒に門のようなものに吸い込まれた幼馴染のシオリの姿が見当たらない。
「シオリ、聞こえているなら返事をしろ!」
コウは大きな声で呼びかけるが、静まり返った迷宮に響き渡るだけで返事はなかった。
静まり返っているような迷宮だが、コウが耳を澄ますと奥の方から争うような物音が聞こえた。
「ちっ、奥に行くしかないか」
コウは武器を持っていないが、祖父から体を鍛えられて、ケンカの強さには自信がある。
幼馴染のシオリだろうが、柊明日香や下級生達だろうが、助けに行かなくてはいけない。
コウは物怖じせず、迷宮の奥へ向かって走り始めた。
「携帯電話は……やっぱり圏外か」
走りながらコウは携帯電話を使うが、外部との連絡はとれそうになかった。
迷宮だと言っても、石段によるアップダウンがあるだけで、ほとんど一本道だった。
コウが迷宮を進んで行くと、戦闘の音はさらに大きくなってくる。
その内に明日香や下級生達の叫ぶような鋭い声が聞こえて来るようになってきた。
だがシオリの声が聞こえて来ない事にコウは不安を感じた。
まさかシオリの身に何かあったのか?
コウの頭に幼い頃に旧東京を襲った災厄の記憶が蘇った。
戦闘機から爆弾をたくさん落とされて崩れ落ちたビル。
廃墟となった街を、幼いコウとシオリは手を繋いで走り回って逃げていた。
それを思い出したコウは胸が締め付けられた。
「シオリ、無事で居てくれよ……!」
コウが迷宮の最深部の広間にたどり着くと、明日香やアスカ達が手に武器を持って黒い翼を生やした小悪魔の様な怪物の群れと戦っていた。
そして明日香達に守られるように床に倒れて気を失っているシオリの姿があった。
少し時を戻して、明日香に呼び出されたシンジとアスカとレイは自分達がミサトとリツコと5人で同居している家の前で明日香を待っていた。
「どうやら、準備は出来ているようね」
夕暮れの街の中を杜宮学園の制服で姿を現したのは明日香だった。
「今夜、3丁目の公園で時空の揺らぎが大きくなるとMAGIは予測しているわ。すなわち、《異界化》現象が起きると言う事」
「あの、異界化って何ですか?」
明日香の言葉を聞いたシンジが質問をした。
「杜宮市に来て間もないあなた達が知らないのも、無理もないわね」
先輩風を吹かせている明日香に、アスカは反感を抱いた。
明日香はシンジ達より前に杜宮市に潜入している。
「どうしてリツコ達がもっと早くアタシ達に説明しなかったのよ」
アスカはそう呟いて明日香を睨みつけた。
使徒との戦いを終えたシンジ達を第三新東京市にしばらく押し留めたのは、シンジ達に休息を取らせるためでもあった。
「異界化は異世界に住む怪物である《怪異(グリード)》が引き起こしているとされているわ。今までの怪異は私達が抑えていたけど、ここ最近になって活発になっているのよ」
「要するに、怪物退治の人手が足りなくなったから、アタシ達に出番が回って来たわけね!」
明日香の言葉を聞いたアスカは、皮肉めいた口調で言い放った。
しばらくシンジ達の家の前で話していた明日香達だったが、何かの気配に気が付いたのか、目的地である公園へ移動するように促した。
「あら、ラングレーさんと碇君は手を繋いで歩かないの?」
突然明日香に尋ねられたアスカとシンジは、瞬間湯沸かし器のように顔が真っ赤になった。
「な、なんでアタシがバカシンジと手を繋いで歩かないといけないのよ!」
「ミサトさんから、2人は人目を憚らない恋人同士と聞いていたから」
「余計な事をっ!」
アスカはそう言って拳を握り締めた。
レイは明日香が周囲を警戒している事を悟られないようにアスカとシンジを動揺させているように気が付いていた。
「異世界化が活発になったのは、涼宮ハルヒに変化があったと言う事ですか?」
公園に到着すると、レイは明日香にそう尋ねた。
「そうね、杜宮学園に入学してから、涼宮さんは新しい高校生活に期待をしているのか、発せられる力は活性化していると聞いているわ」
「あのハルヒが怪異とやらを産み出しているんじゃないの?」
「アスカ、涼宮さんが悪いって訳じゃないんだから……」
シンジはそう言ってアスカをなだめるが、シンジが他の女子の肩を持つとさらに不機嫌になるのがアスカだった。
「これからすべき事を確認するわ。私達4人は、異界化が発生する時に現れる門を通って異界の迷宮に潜入する。そして異界化の原因になっている怪異を退治すれば異界化は治まるわ」
「対処療法のままでは、事件は解決しないわ」
明日香の説明に対して、レイは冷静に問題点を指摘した。
「レイの言う通りよ! こちらから討って出る事は出来ないの?」
「それは碇君のお父さんたちが頑張っているわ」
アスカに対して明日香はそう答える。
4人が話している間に日はすっかりと沈み、夜の帷が降りていた。
「そろそろ、異界化が起こる時間ね」
明日香の呟きに対応するように、何もない空間にガラスのヒビのようなものが入った。
「えっ、何も無いところにヒビが入った?」
「やっぱり、あなた達チルドレン……今は私たちと同じ【適格者】にも、異界が見えるのね」
シンジが驚きの声を上げると、明日香はそう呟いた。
「今、異界への門を固定させるわ。そのうちに、あなた達も自分で出来るように頑張ってね」
明日香が腕をかざすと、不気味な色の光る門が現れた。
その扉は閉じられているが、門の向こうには怪異が居る異界が広がっているに違いない。
「まだ間に合う、引き返すのなら今のうちよ」
「アタシ達はエヴァに乗って使徒と戦って来たのよ、今更尻尾を巻いて帰らないわ!」
「良い返事ね」
アスカの返事を聞いた明日香は、僅かな微笑みを浮かべた。
「さあ、異界への門を開くわよ!」
明日香が門を開くと、シンジ達は門へと飛び込んで行った。
門に飛び込んだ瞬間、真っ白になった視界が戻ると、アスカ達は遺跡の迷宮のような場所に居た。
「ここが異界なのね……」
レイはあまり表情を変えずにそう呟いた。
シンジとアスカは異界が現存するとは信じられないと言った感じでポカンと口を開いて何度も床を足で踏み付けていた。
「倉敷さん……!?」
驚いた声を上げたのは一番落ち着いていると思われた明日香だった。
明日香の足元には、ピンクのカーディガンを着た高校生と思われる少女が気を失って倒れていた。
「その人も適格者ですか?」
シンジが尋ねると、明日香は首を横に振った。
「この子は倉敷シオリさん。私のクラスメイトよ。たまに一般の人間が異界化に巻き込まれる事があるの。それで帰って来なかった人は、神隠しに遭ったと言われてしまっているの」
神隠しはセカンドインパクトよりもずっと昔からある。
それならば異世界化や怪異は遥かな過去から存在しているのか?
しかし今はそのような事を考えている場合ではない。
「それで僕達はどうすれば元の世界に戻れるんですか?」
自分達がこの異世界に入って来た門が見当たらない事に不安を覚えたシンジがそう明日香に尋ねた。
「この異界を発生させている怪異を倒せば、異界が消滅して元の世界に戻れるわ」
「その怪異とやらは何処に居るのよ?」
「もうすぐ現れるわ。侵入者である私達を排除するためにね」
アスカの質問に明日香はそう答えた。
「【ソウルデヴァイス】! エクセリオンハーツ!」
明日香がそう叫ぶと、白い剣のようなものが出現した。
「何ですか、それ!?」
「適格者だけが異界の中で実体化できる武器、ソウルデヴァイスよ。あなた達もネルフで武器を使った訓練をしたはず、やってみなさい」
シンジの質問に明日香はそう答え、シンジ達もソウルデヴァイスを出現させるように促した。
「ソウルデヴァイス! ソニックグレイブ!」
アスカが大きな声で叫ぶと、アスカの手に弐号機で使い慣れたソニックグレイブが出現した。
「ソウルデヴァイス。ポジトロンスナイパーライフル」
レイが淡々とした口調でそう言うと、銃身の長いライフルがレイの手に現れた。
「ほらシンジ、何をモタモタしているのよ!」
「ソウルデヴァイス、マゴロク・エレメート・ソード」
「バカっ!」
アスカに急かされたシンジは武器の名前を噛んでしまったが、シンジの手にはマゴロク・エクスターミネート・ソードが出現した。
「それがあなた達のソウルデヴァイスなのね」
明日香は3人の持つ武器を見て、感心したように呟いた。
「凄い、本当に武器が出た……」
シンジは驚いた表情で、自分の手に現れた刀のような武器を見つめた。
「出て来たわよ、怪異が。みんな、倉敷さんを守るように円陣を組んで戦いなさい!」
明日香達の居る広間に通じる通路から、黒い羽根を生やした小悪魔のような怪物が姿を現した。
「ハァッ!」
前に踏み込んだ明日香が剣を横に薙ぎ払うと、3匹の怪異は真っ二つに斬り割かれ、煙のように姿を消した。
その様子に勇気づけられたアスカは、握り締めたソニックグレイブの穂先を怪異に向かって振り下ろす。
シンジも少し怯えながらも怪異に向かって刀を斜めに振り下ろす。
レイは空を飛ぶ怪異をスナイパーライフルで的確に撃ち抜いてた。
「何だ、大した事の無い雑魚の集まりじゃない」
「油断しないで、第2波が来るわよ!」
明日香はそう言ってアスカを戒めた。
異界が消滅していないと言う事は、異界を発生させている怪異がまだ残っていると言う事だ。
そしてアスカ達が何回目かの怪異の襲撃の波を乗り越えた時、広間に乱入者が現れた。
「シオリっ!」
「時坂君!?」
突然飛び込んで来たコウに、明日香は驚きながらもコウに襲い掛かろうとした怪異を切り裂き、シンジ達もその場に居た怪異を殲滅させた。
すると異界に白い光が満ちあふれ、シンジ達の視界は入って来た時と同じように真っ白に染まった。
「目が覚めたかしら、時坂君」
「柊……?」
異界から戻った明日香達6人は元の夜の公園に居た。
シオリはまだ気を失ったまま倒れている。
「なあ、さっきまであった事は夢だよな? 柊達が変な怪物達と戦って……」
「そう、一夜限りの悪夢よ。時坂君と倉敷さんにとってはね」
明日香はコウに対してそう答えると、コウに向かって麻酔銃を撃った。
そして横たわるシオリにも。
「麻酔銃なんか撃って、大丈夫なんですか?」
「記憶が消える以外副作用は無いから安心して」
シンジの質問に、明日香はそう答えた。
どこからともなく、ネルフの諜報部員が現れてコウとシオリを運んで行く。
「明日の朝から再びあの2人は日常に戻れるわ。あなた達も明日から楽しみなさい、非日常と隣り合わせの日常にね」
明日香は髪をかき上げると、シンジ達に向かってそう言い放った。
その明日香の態度が気に食わなかったのか、アスカはにやけた表情を浮かべて明日香に声を掛ける。
「ところで明日香センパイは、時坂センパイの事が気になるんじゃないですかぁ?」
「ど、どうしてそう思うのよ」
アスカの言葉に、クールな明日香の表情が少し崩れた。
「そんなの明日香センパイが時坂センパイを見つめる目を見たら分かりますよぉ」
「それは……あんな危険な状況なのに、助けに入って来る時坂君の度胸に感心しただけよ」
「否定しなくても良いんですよ。幼馴染がライバルだと大変だと思いますけど頑張って下さい」
アスカは恋愛に関しては自分は勝っていると明日香に余裕を見せつけた。
「アスカ、柊先輩を怒らせたらやりにくくなるよ」
シンジがそう言ってアスカを抑えようとするが、明日香の反応は意外なものだった。
「時坂君には倉敷さんがお似合いよ。誰も入り込む余地なんて……」
元気を無くした様子で呟く明日香を見て、さすがにアスカも悪い事を言って明日香を傷付けてしまったと胸が痛んだのだった。
自分もシンジと出会う前に、シンジとレイが結ばれていたら同じ立場になっていたのかもしれないのだ。
リツコもゲンドウと出会うのが遅すぎたと悲し気に呟いていたのを思い出した。
恋は時には残酷だ。
「コウくん、起きてってば、遅刻しちゃうよ!」
次の日の朝、コウは自分の部屋のベッドで目を覚ました。
すると守宮学園の制服を着たシオリがコウを覗き込んでいた。
「シオリ……何でお前が俺の部屋に居るんだよ?」
「おじさんから鍵を預かってるの、インターホンを何度押しても返事が無いから心配になっちゃって」
そう言ったシオリは少し怒った顔になってコウが制服のままベッドで寝ていた事を指摘する。
「昨日は夜遅くまでバイトしていたんでしょう、制服のままで寝るなんてだらしなさすぎるよ」
「馬鹿を言うなよ、俺は昨日シオリと一緒に帰って……あれ?」
「コウくん、何を言っているの? 私はずっと自分の家でコウくんの帰りを待っていたけど、待ちくたびれて寝ちゃったんだよ」
シオリの話を聞いて、コウは昨日の夜の不思議な出来事は夢だったのかと思った。
しかし夢にしてはリアルすぎる気がした。
「さあ早く着替えて私の家に来て。コウくんの分までご飯を作って待ってるんだよ」
「だから余計なお世話だっての!」
そうは言いながらもコウの食費が助かっているのは確かである。
コウは自分の記憶に違和感を覚えながらも、制服に着替えてシオリの家へと行くのだった。
少しずつですが、更新して行きます。
分かりにくい点がありましたら、伏線となる質問以外ならお答えいたします。
柊明日香と倉敷栞の三角関係を原作通りにするか悩んでいます。
ここでアンケートは取りませんが、御意見がありましたら感想欄以外でお願いします。
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この作品で足りない部分は外伝で補完して行きます。足りないと思う部分を教えて下さい。
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