摩訶不思議ハイスクール・ライフ エヴァンゲリオン 杜宮学園物語 作:朝陽晴空
関東では「だるまさんがころんだ」で、関西では「坊さんが屁をこいた」らしいのですが、地方によっては違う呼び方があるようですのでウィキペディアなどを参考にしてください。
<異界化迷宮 隠されし旧路>
杜宮市周辺に出現した異界化迷宮はネルフに察知され、明日香たち適格者に怪異を倒すように出撃命令が下されるが、時には見過ごされてしまう迷宮もあった。
「妙な気配だな……だが門が現れた以上、放置するわけにも行くまい」
白装束を着て顔を隠した小柄な男は、自分の身長ほどある大きな剣をソウルデヴァイスとして取り出すと、迷宮探索を開始した。
怪異を蹴散らして行くと、奥の方で男女の話し声が聞こえる。
「なあ、長門。俺達はさっきまで教室に居たはずだよな? それに何で朝倉がナイフを持って俺に襲い掛かって来るんだ?」
キョンは側に居たユキにそう尋ねていた。
朝倉リョウコはアスカやハルヒ、キョンの居るミサトの担任するクラスの学級委員だった。
「私はね、キョン君を殺すと涼宮さんがどんな反応を示すのか観測したくなったの。だから死になさい」
「あなたは死なないわ、私が守るから」
ユキはそう言ってキョンを守るようにしてバリアーを発生させてリョウコの攻撃を防いだ。
「おい長門、お前もいったい何者なんだ?」
「情報統合思念体によって作られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース、それが私」
「何だ、それならお前がハルヒが言っていた宇宙人なのかよ!? そんな冗談、笑えないぜ」
キョンがそうぼやいた時、リョウコの攻撃がユキの掛けていた眼鏡を弾き飛ばした。
「ほらほら、おしゃべりしている余裕は無くってよ!」
リョウコはそう言って躍動し、ユキに更なる猛攻をくわえる。
このままではやられてしまうのではないかとキョンは思った。
「苦戦しているようだな。怪異では無いようだが、異界の主を排除するため、協力しよう」
「誰!?」
突然現れた白装束の男に、リョウコは警戒して声を上げた。
「ロスト・アルビオン!」
白装束の男が弓を構え、オーラを纏わせた大剣を矢のようにして打ち出すと、リョウコは雷に撃たれたように大きなダメージを受けた。
動きの鈍ったリョウコにユキの攻撃が命中した。
「あーあ、しょせん私はバックアップか」
リョウコがそう言って姿を消すと、異界化は収束し、元の放課後の教室へと戻った。
「異界化は収束したようだな」
白装束の男が持っていた大剣がスッと消えた。
「でも涼宮ハルヒにどのような影響を与えるか分からない」
「私の使命は見届ける事だけだ」
白装束の男はユキにそう答えると、教室から去って行った。
「朝倉にやられた傷は大丈夫か?」
キョンに尋ねられたユキはコクリと頷いた。
「でも、眼鏡の再構成を忘れた」
「眼鏡が無い方が可愛いと思うぞ」
キョンがそう言うと、それからユキは眼鏡を掛けなくなった。
<杜宮市 コウの部屋>
コウは自分の部屋のベッドで、悪夢にうなされていた。
彼は10年前に起きた悲劇、東京大空襲の事を思い出していたのである。
セカンドインパクトの後、国の立て直しに追われた各国の首脳だが、上手く行かず支持率が低下する政府もあった。
とある大国の大統領は、外国に戦争を仕掛けて物資を奪う事で落ち込んだ支持率を上げようと言う愚行に走った。
隣国である日本もその標的となり、国際条約で禁止された爆弾が当時の首都であった東京に落とされた。
その国の軍隊は日本に降伏を迫り、民間人の犠牲者を出す事もためらわなかった。
砲撃を受けて崩れ落ちる集合住宅、地下シェルターを渡り歩く生活。
東京に住んでいた小学生だったコウとシオリは手を繋いで、戦火の中を逃げ回った。
「シオリ……シオリ……お前が居なくなったら、俺は……」
コウは自分が全身汗びっしょりになって目を覚ました事に気が付いた。
「ちくしょう、もうあれから10年も経ったのに、何でガキの頃の事を思い出すんだ?」
コウとシオリの家族は東京から脱出し、杜宮市に移り住むことが出来た。
幼馴染のシオリやリョウタも一緒に杜宮学園に通っている。
それは間違いのない事実だ。
なぜ自分の心がこんなにかき乱されるのか、コウには分からなかった。
時々頭に浮かぶようになった、シオリが何者かに命を奪われるイメージ。
まさかシオリは怪異に殺されるとでも言うのか。
「シオリ、何があっても俺はお前を守ってやるからな」
コウは明日から更なる強さを求めて、九重流柔術の宗家である祖父のコウスケに稽古をつけてもらおうと思うのだった。
<杜宮市 シンジの部屋>
同じ日の夜に子供の頃の悪夢にうなされる人物は他にも居た。
幼い頃に父親と別れる事になったシンジだった。
東京は数日のうちに陥落し、日本は降伏するだろうと思っていた某大国の大統領の計算は甘すぎた。
平和ぼけしていると他国から言われていた日本の軍隊はそれほど弱くは無かった。
決死の抵抗を続ける日本に対して、その国の軍隊は他の大都市への攻撃も始めた。
シンジとゲンドウが住んでいた京都も例外では無かった。
京都には重要な研究所もある。
そのテクノロジーが狙われる可能性も十分に考えられた。
「いいか、これからは長野の伯父さん達の家で暮らすんだ」
「嫌だ、お父さんと離れたくないよ!」
ゲンドウは泣き叫ぶシンジを無理矢理大都市から離れた兄夫婦の家へと疎開させた。
それからシンジは伯父夫婦の家で心を閉ざした少年として生きて行く事になってしまった。
「どうして、今更こんな夢を見るんだろう。もう10年も前の事なのに」
今の自分は、ゲンドウと完全にわだかまりが無いとはいえないが、ミサトやアスカ達と5人でそれなりに充実した家族生活を送っている。
なのにどうしてこんなに悲しい夢を見るのか、シンジが不思議に思ってると、部屋に泣きはらした目をしたアスカが入って来た。
「シンジ……」
「もしかして、アスカも小さい頃の辛い夢を見たの?」
シンジが尋ねると、アスカは驚いた顔をしてシンジを見つめた。
「もし眠れないならさ、僕と一緒に……って別にやましい事を考えては無いからね!」
シンジがそう言うと、アスカはクスリと笑う。
「分かってるって。シンジの背中、貸してもらうわね」
そう言ってアスカはシンジと背中合わせになる。
シンジの背中にアスカの感触を覚える。
それよりもしっかりと感じるのが、下半身に張りのある柔らかさ。
(アスカの、お尻が、お尻が……!)
14歳の時よりもアスカの身体はすっかりと成長していたのだ。
シンジはアスカと正面から抱き合ったら、どんなに気持ちが良いのだろうかと想像すると興奮してしまった。
アスカと正面から抱き合っていたら、アスカにバレてしまっただろう。
「シンジ、起きてる?」
「うん」
「アタシね、頑張ってママに褒められるためにエヴァのパイロットになるための訓練を頑張っていた事を思い出したの。誰よりもテストで良い成績を取って、セカンドチルドレンになってやるって」
「だけど、僕達はもうエヴァに乗る必要は無いと思うけど」
「でもアタシって、負けず嫌いなのよ。それって悪い事かな?」
「それは別に……悪い事だとは思わないけど」
「だから、アタシは自分は怪異退治のプロだとデカい顔をしている明日香センパイには負けたくないのよ!」
「うん、応援しているよ。でも決して無理はしないでね」
シンジの言葉に、アスカは安らぎを感じたようだ。
そしてシンジも興奮よりも、アスカと背中を付けていると言う安心感の方が大きくなっていた。
アスカとシンジは背中合わせになって眠りに就くのだった。
目が覚めると、レイが2人の間に紛れ込んでいて朝はちょっとした騒ぎになった。
<杜宮学園 正門>
シンジとアスカとレイが朝登校すると、正門の前でケンスケがカメラを回してピンク色の髪をした女子生徒を熱心に撮影しているのを目撃した。
「全く、朝から何やってるのよ」
「盗撮は犯罪……」
アスカとレイがそう指摘すると、ケンスケは振り返ってシンジ達に向かって説明を始める。
「俺が撮っていたのは玖我山リオン先輩。『SPiKA』のメンバーだよ」
「『SPiKA』って何?」
シンジがそう答えると、ケンスケは大きなため息を吐き出した。
「惣流しか目に入っていない碇は分からないだろうけど、『SPiKA』は今人気沸騰中の5人のアイドルグループさ」
「へえ、そんな凄い子が同じ学校に通っているんだ」
シンジはたいして関心が無さそうにケンスケに答えた。
「いやねえ、相田ってば、シンジがアタシ以外に興味が無いって言ってくれちゃって……」
「誤魔化そうとしてもダメ。許可なく人を撮る事は行けない事だわ」
顔を赤くしてのろけているアスカとは対照的に冷静なレイに言われて、ケンスケは渋々撮影を止めるのだった。
<杜宮市 レンガ通り カフェ『壱七珈琲店』>
ゴールデンウイークの最中、怪異も出現せず、ゆっくと過ごせると思ったSOS団のメンバーはハルヒからの非常招集を受けた。
「遅い! あんたが一番ビリだから団員のお土産代はキョンが全額負担よ!」
「くそう、俺だって急いで来たんだぞ」
一生懸命に自転車をこいだキョンはゼイゼイと息を切らしながらハルヒにそう答えた。
後からキョンが聞いた話によると、ハルヒは一番最初にキョンに電話を掛けたらしい。
それなのにキョンの到着が最後だったので、ハルヒは御立腹という訳だった。
「店長、あんな騒がしいヤツらを連れて来て済まなかったな」
「いえいえ、若い子達に珈琲の美味しさを広めるのも大切なものです」
たまたま派遣でバイトに来ていたコウがそう言うと、黒いエプロン姿の老紳士である店主のヤマオカは穏やかな笑顔でそう答えた。
珈琲に携わるものは、知識に詳しくないと黒いエプロンを身につける事は許されないと言う暗黙のルールがある。
この珈琲店では自家焙煎によるヤマオカが拘った珈琲を出していた。
「明日香センパイがこのお店でアルバイトをしているのは、時坂センパイがアルバイトをしているからですか?」
「違うわ、ここは私の下宿先なの。時坂君がなぜかここでもアルバイトを始める事になったのよ。別に私が望んだ訳でも無いわ」
アスカが尋ねると、明日香はツンとした態度でそう答えた。
「ユキノさんが最近追加した新規の派遣先なんだ。済まねえな、柊」
シンジは名前が似ているだけあって、柊先輩もアスカと同じでツンツンしている所があるなと思った。
でもシンジも時坂先輩には幼馴染の倉敷先輩が居る事を知っているだけに、気の毒に思った。
コウと明日香は危険度が高すぎる異界化迷宮は、シンジやアスカ達を連れずに2人だけで潜る事にしていた。
だから明日香はコウがこの珈琲店でバイトを始める事になって連絡がしやすくなったと、建前上は話していた。
「それでハルヒ、それそろアタシ達を集めた理由を話しなさいよ!」
アスカが苛立ったようにハルヒにそう問い詰めた。
ハルヒが何かを準備をしている間に、レイとユキは腰を落ち着かせて珈琲を飲んで読書を始めてしまっていた。
「問題です、今日5月5日は何の日でしょう!?」
「そりゃあ、子供の日だろう?」
ハルヒがそう言うと、キョンが気だるそうにそう答えた。
「と言う事で、今日は童心に帰って『だるまさんがころんだ』で遊ぼうと思います!」
満面の笑みでハルヒがそう言い放つと、アスカ達からはため息が漏れた。
高校生の集団が公園で小さな子供達に交じって遊ぶのかとあきれ顔になっている。
「今の小さな子供達は公園で平和に遊べているけど、あんた達が小さい頃はどうだった?」
ハルヒに真剣な表情で尋ねられたシンジ達はハッとした表情になった。
セカンドインパクトの数年後まで続いた世界の大混乱。
挙句の果てに大国の軍隊が日本に侵攻し、バレンタイン停戦条約が結ばれるまでの一ヵ月の間、民間の建物や人にも多くの被害が出た。
戦争が終わった後も、日本国民は経済回復と復興に明け暮れていた。
被害の大きかった東京は旧東京として今も再建が進んでいない。
シンジやコウ達も『だるまさんがころんだ』で遊んだ記憶がほとんどなかった。
「あたしは東京から遠く離れた兵庫県に住んでいたの。その日の甲子園球場は高校野球の試合が行われていて、スタンドにもたくさん人が居た。あたしは父さんに連れてってもらったんだけど、そこに外国の戦闘機がやって来て、爆弾を落とした……」
甲子園球場では投下された爆弾によるもの以外でも、パニックになって出口に押し掛けた人に押し潰されて命を落とした人も居た。
ハルヒの話を聞いたシンジ達は沈んだ表情で下を向いてしまった。
店主のヤマオカでさえ、この時のハルヒの表情は利発な少女に見えた。
「だから、あたし達はその時の青春を取り戻すために! 今、『だるまさんがころんだ』を遊ぶべきなのよ!」
ハルヒがそう力強く演説すると、SOS団に無関係なお客さんからも拍手が巻き起こった。
何だかハルヒをバカにしていた事を恥ずかしく思ってしまうキョン達だった。
「だるまさんがころんだって何かしら?」
帰国子女だった明日香はその遊び自体を知らなかった。
ユキがルールを説明すると、明日香はアメリカにも似たような遊びはあると話した。
「でも、私は動きをパッと止める事についてはプロよ。米国に居た頃は戦闘訓練だけではなく、潜入訓練も受けていたからね」
明日香のこの言葉にカチンときたアスカは『柊明日香プロ』と変なあだ名を付ける事になる。
「ちっちっち、そう簡単には行かないんですよ、明日香先輩!」
ハルヒはそう言うと、くじ引きの箱のようなものを見せた。
さっきから準備していたものはこれだったのかとアスカ達は思った。
「くじ引きを引いて同じ番号になった者同士、ペアになって手を繋ぐ、『ラーブラブだるまさんがころんだ』よ!」
「何だ涼宮、その恥ずかしいネーミングは」
「男同士でもラーブラブなの?」
ハルヒの言葉に、キョンとシンジはツッコミを入れた。
2人の抗議も空しく、くじ引きは行われた。
くじを引いたアスカは、シンジとペアになれてホッとした。
「俺は朝比奈さんとペアですか」
「よろしくお願いしますね、キョン君」
くじ引きの結果を見たハルヒは驚いた顔になり、くじ引きの箱を何度も確認していた。
「何よ、どこかの組織の陰謀!?」
思わずそう漏らしたハルヒを怪しんで、アスカが詰問する。
「アンタ、もしかしてくじ引きの箱に細工をしたんじゃないでしょうね」
「そう疑うのなら、箱を調べて見なさいよ」
ハルヒにそう言われてアスカは箱を調べたが、怪しい点は無かった。
「くじの引く順番に問題があると思うわ」
「な、何を言ってるのかな、レイは?」
ハルヒは目を逸らしてわざとらしく口笛を吹き、くじを引くように促した。
「俺も引くのか?」
SOS団の団員ではないコウもくじを引くように言われて、自分はバイト中だと断ろうとした。
しかし店主のヤマオカにOKを出されたコウも参加させられる事になった。
くじ引きの結果、明日香とペアになった2人は圧倒的に有利になると思われた。
<杜宮市 杜宮記念公園>
杜宮市の西部に大きな池を囲むように遊歩道が整備がされている公園がある。
こちらにもオープンカフェや屋台などもあり、自然豊かな市民の憩いの場となっている。
「よし、この大きな木が良いわね。いかにもゲームに参加したいって自己主張している感じ」
ハルヒは団長の強権を発動して、自分が鬼の役をやると立候補した。
そしてハルヒは鬼にタッチするためのモチベーションを上げるためにルールも変更した。
エンドレスに行われるだけのゲームだけでは、気持ちがダレてしまうと考えたからだ。
まず鬼役のハルヒにタッチ出来たペアには基本の1ポイントが手に入る。
他に捕まって居たペアが居た場合はそのペアの数だけボーナスポイントが加算される。
しかし鬼に捕まってしまうと1ポイントの減点となる。
「シンジ、明日香プロのペアには絶対に負けるわけには行かないわ! ユニゾン特訓で鍛えた実力を見せるのよ!」
アスカは痛いほどシンジの手を強く握って来た。
冷静さを失ったアスカが先走りしなければ良いが、タイミングを合わせる相性の良さでは自分達も自信がある。
コウ・明日香プロのペアも、武術をたしなむ者として、相手の気配で動きを合わせる自信がある。
しかし手を繋ぐのはコウには恥ずかしいものがあった。
さすが明日香プロの表情は、仮面のように冷静だ。
コウは普段の明るく社交的な明日香も、仮面を被っているのではないかと感じ始めていた。
ネルフの指令をこなすため、周囲に好かれるように演技をしているのではないかと……。
「朝比奈さん、無理はしないで行きましょう」
「よろしくお願いしますね」
キョンとミクルのペアは始まる前から危なっかしいものだった。
ミクルは何も無いところで転ぶほどのドジっ子である。
『だるまさんがころんだ』はきっちり10秒とルールを決めていなければ、鬼のハルヒの思うがままである。
案の定、ハルヒは早口言葉で「だるまさんがころんだ」と言ってシンジ達を牽制した。
そんな中、着実に歩を進めていたのはキョンとミクルのペアだった。
「キョン君、次の涼宮さんは5秒でだるまさんがころんだを言い終わります」
「本当ですか?」
予言めいたミクルの言葉に驚いたキョンだが、とりあえず試しに4秒間前進して動きを止めた。
するとハルヒはミクルの言った通り、5秒きっちりでだるまさんがころんだを言い終わった。
「次は1秒だから動かないで下さい」
「次は6秒です」
ミクルの予言に従って動いたキョンのペアは、メリットを最大限に活かして効率良く前進する事が出来た。
「ウソっ、何であの2人があんなに前に進んでいるのよ!」
「はい、アスカ動いた!」
気が焦ったアスカはシンジとのユニゾンが乱れて動いてしまった。
捕まったアスカは悔しがり、シンジを掴む手にも力が入る。
「痛たっ」
「あ、ゴメン、シンジ。アタシもムキになり過ぎたわ」
アスカはせめて余裕ぶった態度を見せようと、笑みを浮かべた。
明日香プロ達に勝ってもらっては困るアスカは、キョン達の応援に回った。
遂にキョンはハルヒの背中にタッチして、1ラウンドが終了した。
その後何回もゲームが繰り返されるうちに、すっかり空はオレンジ色に染まっていた。
「今日はミクルちゃんとキョンのペアの圧勝ね」
ハルヒは不服そうな表情で、ゲームの結果を発表した。
「あれ、アスカってば意外と悔しそうじゃないね?」
「ま、まあ、子供の遊びに負けてもムキになるなんて、それこそ子供っぽい事じゃない」
アスカはこのゲームの間、ずっとシンジと手を繋いだり、時には抱き合う形で動きを止めたりした。
なかなか素直になれないアスカが大っぴらに長い間シンジとスキンシップを取れたのは初めての事だったので、アスカにとっては楽しい時間だった。
ハルヒは解散を宣言すると、アスカ達は家に帰る事になった。
「朝比奈さん、どうしてハルヒがだるまさんがころんだを言い終わる秒数をピタリと当てる事が出来たんですか?」
「実は私、未来から情報を受け取る事が出来る、未来人なんです。涼宮さんには内緒ですよ」
ミクルの答えを聞いたキョンは思い掛けない答えに固まってしまった。
ハルヒは入学した日のホームルームの自己紹介で、宇宙人や未来人と会いたがっていると話していた。
すると碇達は超能力者とでも言うのか?
「でも、誤差の無いほぼほぼ確定した未来は極めて短い期間です。だから、例えば今日の晩御飯を私が何を食べるかは、私の考えで変わってしまうので予言できません」
「はあ、そのようなものなんですか」
キョンは抜け殻のようにミクルにそう返事をするしか出来なかった。
ハルヒは解散した後、キョンの側に行こうとしたが、2人で親しそうにコソコソ話をしている姿を見て、胸がざわつくのを感じた。
そしてハルヒはすぐに帰ろうとせずに池の側でたたずんでいるシンジ達に興味を持って近づいた。
「そう言えば、カヲル君と会ったのもこんな色になった池のほとりだったな……」
「誰、そのカヲル君って?」
ポツリと漏らしたシンジの呟きを、ハルヒが聞きつけた。
「僕の大切な友達だよ。遠い所に行って会えなくなったんだ」
シンジはハルヒにカヲルは死んだと言う直接的な表現を使わずにそう話した。
「何よ、まだアイツの事を気に掛けているの? アイツは勝手に姿を消したのよ」
アスカもハルヒの前ではシンジが初号機でカヲルを殲滅したと言う言い方を避けた。
「ううん、渚君はきっとずっとリリンとして私達と一緒に居たかったんだと思う。私もそう思うもの」
レイの話を聞いたハルヒは何か考え込むような表情になった。
「時坂君、今度の異界化は規模も怪異も驚異的なものになりそうよ」
「涼宮がとんでもない事を起こそうとしていると言うのか?」
明日香に耳打ちされたコウが尋ねると、明日香は真剣な表情で頷いた。
<杜宮市 九重神社>
ハルヒたちと別れて、バイトの報告をユキノに終えたコウはその足で祖父のソウスケの居る九重神社の道場へと向かった。
「わっ、こんな時間にコー君が道場に来るなんて珍しいね!」
コウの従姉であるトワが驚いた顔で道場に来たコウを迎えた。
「祖父ちゃん、俺に稽古をつけてくれ!」
「お前の方からそう言って来るとは、遂に本気で愛する女が出来たか」
ソウスケがコウに向かってそう言うと、トワは驚いた顔で叫んだ。
「えーっ、やっぱりシオリちゃん? それとも最近やって来た明日香ちゃん?」
「そんなの関係ねえ、俺は守りたいものを守る力が必要なんだよ!」
「ふむ、それならばまず、この者と手合わせをしてみろ」
そう言ってソウスケがコウと引き合わせたのは、空手の胴着を着たショートカットの黒髪の少女だった。
「お久しぶりです、時坂先輩!」
「うーん、誰だったか……」
「先輩が覚えていないのも仕方ないのかも。この道場で会うのも数年振りですもんね。私、郁島ソラです!」
「お前、まさかソラ坊か!?」
ソラが名乗ると、コウは驚きの声を上げた。
彼女は九州から上京し、杜宮学園の1年生として通う事になったのだと言う。
空手部に入部したソラは、古流空手『郁島流』の師範を父親に持ち、九重流柔術の道場にも修行に来ていた。
「コウ、お前も長い間修行をサボっていただけあって、妹弟子相手でも油断は禁物だぞ」
「分かってるって!」
ソウスケの言葉にそう答えたコウはソラと向き合って試合を始めた。
涼宮ハルヒは今までにない程の事を起こそうとしている。
その代償として引き起こされる異界化は大きく、怪異も手強いものになる。
コウは守りたい者を守れる力を欲していた。
そのためにコウは勘を取り戻そうと、遠のいていた道場での修行を再開した。
「そこまで!」
ソウスケがそう言うと、ソラとコウの練習試合は終了した。
「はぁっ、はぁっ、この俺が防戦一方だとは、大した強さだ。高1の次元とは思えないぜ」
「ありがとうございました、時坂先輩!」
コウが肩で息をしているのに、ソラはまだ余裕がありそうだった。
「さすがソラちゃん、空手部でも期待の星と言われてるよね!」
「はい、ありがとうございます……」
道場に入って来たトワにそう言われたソラはそう答えたが、どことなく元気が無さそうだった。
「ソラのやつ、何か悩み事でもあるのか?」
「お前も気付いたか。技に迷いが生じている」
コウの呟きに、ソウスケはそう答えた。
「学校でも、ソラちゃんの事を気遣ってあげてね」
「ああ、分かったよトワ姉」
頼まれ事をすると引き受けてしまう自分の性格はどうにかならないものか、とコウはため息を吐き出した。
その後コウは自分を探しに来たシオリと商店街の肉屋でハンバーグ用のひき肉と、リョウタの八百屋で付け合わせの野菜を買ってシオリの家に帰るのだった。
3つの作品のクロスですが、LAS要素を入れて行くように頑張ります。
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この作品で足りない部分は外伝で補完して行きます。足りないと思う部分を教えて下さい。
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新世紀エヴァンゲリオン(LAS)
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涼宮ハルヒの憂鬱(日常)
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東京ザナドゥ(バトル)