紅葉色の水平線に勝利を刻むんじゃ! 作:RightWorld
オレは学校への道すがら、ストパンSSの『水音の乙女』第4部の構想を練っていた。すると遠くから、どがっしゃーん という派手な激突音のようなのが響き、何事かと音のした竹藪の方を向いた。
事故か?
と思った次の瞬間
おお!?
竹藪の、それも結構上の方を、大型トラックが空中を飛翔してるではないか。
大型トラックはいったん竹藪の陰に姿を眩ませた。
「トラックが空飛んでたぜ! すげーもん見ちゃった! おあああ!?」
感激も束の間、そのトラックは藪を突き破ってオレの目の前へと再出現した。そしてあろうことかオレの方へ向かって突入してきた。
「!!」
声を出す暇もなく、オレの視界はぷっつりと真っ黒に塗りつぶされた。
あ、こりゃ死んだわ。
こりゃ即死だわ。
◇◇◇
事切れたはずのオレの意識は、しばらくして真っ白な何も無い空間で目覚めた。
なんだここは?
首があるのかわからないが、左右に振って辺りを見回す。これができるってことは首は繋がっているのかな?
首を振った先に、じじいがこっちへ正面を向いて突っ立つ様に浮かんでいた。
「いや、すまなかった。もう年なんだから乗るなとさんざん言われてたんだが、ワシは15の時から転がしとったから脳みそがなくても運転できるワイと聞きゃあせんとだったが……本当にアクセルとブレーキって間違えるんじゃな」
「……誰だお前?」
「お前さんを轢いた大型トラックの運転手じゃ」
「なんだ……と? 俺を轢いた? アクセルとブレーキ踏み間違えたじじいに轢かれたのか、オレは?」
「轢かれたというより、降ってきた大質量の物体に押しつぶされたって感じかの?」
「な、何てことしてくれたんだ! 待て、15から運転してたのか、大型トラックを!? 藤原とうふ店のドライバーよりひでえぞ、この枯葉マーク!」
「枯葉マークはだいぶ前に変わったんじゃぞ。今はもみじマークと言うんじゃ」
そう言ってじじいは4色の四つ葉のクローバーのようなマグネット標識を出した。
「それ、ウィン〇ウズのマークじゃなかったのか? んで、じじい! お前幾つだったんだ!」
「95かの」
「きゅ……ナニ考えてんだお前は! その歳で大型トラック!? 何年ゆうこと聞かないで運転してんだ!」
「でまあ、ワシが死ぬのは本望じゃが、お前さんはまだ十代。ワシの6分の1しか生きとらん。それがあまりにも不憫での。神様に祈ったのじゃ。生き返らせるは無理にしても、生まれ変わった第2の人生ではどうにかしてやってくれとな。そしたら何とかしてやる、と言うてくれたんじゃ」
「第2の人生!?」
「それじゃあ、ワシは閻魔様の判決を受けに行くきに。達者でなあ~」
「お、おい!」
じじいは、ひゅう~っと上へ吸い上げられるように昇って行き、次第に小さくなり、そして消えていった」
「なんだあれは……」
すると次に現れたのは、横に寝そべって肩ひじついて、ガムか何かをくちゃくちゃと噛んでるガキが上から降りてきた。
「という事だから」
「あ゛!? どういう事だ? その前に誰だお前」
「おじいさんの言葉を聞いてあげた慈悲深い神様だ」
「神様? この品のないガキが?」
「口を慎んだ方がいいぞ。別におじいさんの願いを無理に叶えてやる必要もないんだぞ」
オレは第2の人生をどうにかという、じじいが頼み込んだらしい事を思い出した。
「そ、それで、オレをどうすると?」
「天性輪廻は知ってるか? 死は終わりではない。魂は死ぬことによって六道の世界を渡り歩いて修行するのだ。だから安心して死ぬがよい。お前は次は虫けらになる」
「虫けら!?」
それはいかん。何の虫になるか知らんが、人間の周りに飛び回るようなうっとおしい奴なら、殺虫剤を噴霧されて瞬殺か、その辺の草むらにいる奴になっても、鳥や爬虫類、両生類、小型哺乳類にぱくりとやられて、一巻の終わりだ。さらに短い人生になる。
「……予定だったんだが、人間界での人生が予定より短く終わってしまったので、もう少しやらせてやってもいい。いわゆる転生モノの方法でお前の望むところへ飛ばしてやろう」
「転生モノ!? 転生モノだったら、人間界っていうか、アニメとかゲームとかの世界に行かせてくれるのが普通だろ! そっちじゃダメなのかよ!」
「アニメやゲームも人間が考えたものだ。人間界の一種だからそれでもいいぞ」
「マジか!」
「お前、ストパンの二次小説書いてたんだろ。ならストパンの世界がいいか?」
うーん。どうだろう。
ストパン世界に飛ばされてウィッチになったらあのズボンを履かなくてはいけない。それは堪えられん。女になるのもいやだ。なるならハーレムだ。艦これの司令官がいい。
「……艦これにしてみようかな」
ガキ神様の風船ガムがパンっと割れた。
「相分かった。楽しんでこい。良い人生を」
「え!? 細かいこと決めないの!? 誰になるとか、どんな鎮守府に行くとか、チート能力とか! おわっ!」
底が抜けた。
何もない白い空間に、白いままの足元の支えがなくなり、唐突に落下した。
「わあーーー」
終わりのないフリーフォール。オレは落下の結末を知ることなく、またしても意識が飛んだ。
◇◇◇
「……いててて」
ものすごい長時間寝た後の寝疲れのような目覚めを迎えた。
頭を振って顔を上げると、オレの前に一人の女がオレを驚いた顔で見つめていた。