紅葉色の水平線に勝利を刻むんじゃ!   作:RightWorld

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第7夜 その2

 

≪提督が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執ります≫

 

 視界が明るくなったが、あたしこと軽巡北上は、ふて寝を続けた。

 そこへ吹雪が全速力で駆けてきた。

 

「提督がお呼びです! わたしと旗艦を入れ替えます!」

「え~?」

 

 構わずふて寝を続けるあたしを吹雪は有無を言わさず引きずって行くと、本国艦隊旗艦の位置に投げ込んだ。手をパンパンと叩いて吹雪は2番艦に収まる。3番艦には曙。これで本国艦隊全艦、いや、この鎮守府の全艦である。

 

 CCDカメラの前に紅葉の上半身が映っていた。今日はまだ部屋着だった。

 こっちをじーっと見ている。

 

「あ、北上さん。あと10秒でフタフタマルマルです。秘書艦なので時報お願いします」

 

 後ろの吹雪から言われた。

 

「あれ、あたしって改にならないと時報言わないんじゃないの?」

「でも北上さんのパラメータの時報フラグ、立ってますよ。言えると思います」

 

 おかしいな。ま、いいか。

 すると自然と頭の中で時計のカウントアップがあり、時報セリフも浮かんできた。なるほど言えそうだ。ぴったりだ。

 

 ぽっぽっぽーん。

 

「フタフタマルマル。さっ、そろそろ本日の艦隊勤務もおしまいですよ~。ご苦労様でした~。寝よ寝よ。提督、それじゃ」

 

 言った通りあたしはくるりと後ろ向いてドックへ帰ろうとする。

 

「えいややあ!? ちょちょちょ、今始めたばっかでしょ!」

「だってそういうセリフだもん。ざまぁ」

「なにこの艦娘! 頭にくる。降格よ! 吹雪ちゃん!」

 

 頬をふくらましてぷんすかする紅葉は、艦隊編成画面に切り替えて、再び1番艦を吹雪に入れ替えた。あたしは2番艦になった。

 

「吹雪ちゃん、時報もう1回やって~」

 

 母港画面に戻し、紅葉は涙を滲ませて吹雪をクリックした。

 

「お疲れ様です、司令官!」

 

 残念だったな。

 あたしはにやあっと画面裏で笑ってやる。

 

「ちっ。11時の時報は絶対聞くから」

 

 それも残念だね。改にしないと吹雪は言わないぞ。でもなんであたしの時報フラグ、改でもないのに立ってたんだろ。

 

 不機嫌顔の紅葉は編成画面に切り替えると、またあたしを1番艦の位置に戻した。

 

「あれ、また戻すの?」

「不本意だけど、今日は北上さんに用があるの」

 

 ほー。軽巡を旗艦にしての水雷戦隊か。 やっぱ1-1海域の制覇は、不本意ながらもそういう編成になるよね。

 

「それじゃ提督、今日はこの3隻の水雷戦隊で出撃ってことだね」

 

 紅葉は真面目な顔になる。

 

「北上さん」

「なあに提督」

「北上さんはわたしを助けに来たの?」

 

 どういう事だろう。艦娘は海の平和を取り戻すため、提督の下に現れた軍艦の魂が生まれ変わったものというような設定だった。ただ艦娘だけでは全ての力を引き出せないから、提督の指揮を得て、もっと効率的に、もっと上手く力を使ってもらい、時には死に急がないよう守ってもらう、そんな関係だったろう。そして信頼と強い絆で結ばれていくうちに、思い入れの深い艦には最高レベル99のさらに上へ行かせるための、ケッコンカッコカリというのがある。

 あたしもずっと戦っていけばいずれそこまで行くのかな。しかし女提督とケッコンってどうなの? でもあたし、中身は男だからアリか。いやでも紅葉とだよ? 見た目はそう悪くはないと思うけど、人格に難癖ありそうだからなあ。

 それはさておき、そう考えると紅葉の問いへの答えは……

 

「どっちかってーと、逆じゃないかな。艦娘が提督に助けてもらいたいんだと思うよ。平和を取り戻したい艦娘が、その力を存分にふるうために提督に指揮を執ってもらいたいのさ。あたしらは単独では軍艦、兵器でしからないからね」

「そうか、やっぱりあの時言ってた通りだね。北上さんも国を守るために現れたんだね」

 

 それがゲームの設定だもんね。しかしあの時って、誰に言われたんだろ。

 

「あの時言ってたって、誰が言ってたの? 友達?」

「夢の中に出てくる妖精さん」

「え? 夢? 妖精さん?」

「そ」

「夢の中にまで妖精さんが出てくるなんて、よっぽど艦これが好きなんだねえ」

「艦これが好きだから出てくるんじゃないわ。きっと夢でないと語り掛ける方法がないのよ」

「はえ?」

 

 しまった、紅葉のような奇声で応答してしまった。

 

「毎回妖精さん達の言う事は一貫している。夢に出てくるけど、わたしが作る夢ではなくて、夢を使って語り掛けてくる別の何らかの存在なのよ」

 

 あたしは目をまん丸にして提督を見つめてしまった。あ、口もぽかんと丸く開いてた。

 

 紅葉提督、あんたって……

 

「提督、まだ中二病を患って……」

「違うわよ!」

 

 紅葉は紅葉色になって否定した。

 

「提督、学年いくつ?」

「高2よ、高2」

 

 死ぬ前のあたしと同じじゃん。年下と思ってた。

 

「可哀想に、ゲームばっかりやってて、高校2年にもなってまだ中二病が抜けれないの……」

「だから違うってば!」

 

 紅葉はあたしをカチカチとクリックしまくった。いやあ、棒で突っつきまくられてる感じ!

 

「や、やめて提督。くすぐったいんだけど!」

「ふひゃひゃひゃ、そう、感じるの。お仕置きよ、お仕置き!」

 

 これはひどい! 画面切り替えない限りあたしは逃げられない。拘束されて動けない状態で、棒で突きまくられているのだ。

 母港画面ひどい!

 

 

 

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