紅葉色の水平線に勝利を刻むんじゃ!   作:RightWorld

16 / 35
第8夜の後

 

 あたしはお風呂で目を覚ました。

 お風呂じゃなくてドックか。見た目お風呂でしかないけど。

 

 怪我はすっかり治っているようだけど、カウンターを見るとあと1分ある。

 曙はもういない。先に出渠したらしい。結構大破してたけど、あたしよダメージが軽かったんだろうな。

 

 カウンターがオール0になったので、ざばあっと湯船から上がった。脱衣所に行くと、竹籠にバスタオルと、きれいに畳まれた真新しい下着と制服が置いてあった。妖精さんが用意してくれているらしい。戦闘でボロボロになった服も妖精さんが処分してくれる。夕食のおかずとして……。

 

「あたしの着てた服どこ!? 特に下着! 返せ! 食べられてたまるか!」

 

『まあまあ。もうしげんになりましたから、あんしんしてください。げっぷ』

 

「食べたな! もう許さない!」

 

『わー』

『わー』

『にげろー』

 

 見事に四方八方に散らばって、すぐに姿も形も物音もしなくなった。

 

「Gどもめ! ムカつく~」

 

 こんなことしてる暇はない。こうして動けてるということは、紅葉は最後にスマホ版の艦これに入ってから寝たんだろう。ノートPCだとスリープしちゃうからね。せっかく提督が、あたし達が動けるようにしてくれたんだ。次提督がログインしてくるまでに、できるだけ調べてみよう。

 悔しいけど、ここはあのGの力を借りるしかない。

 新しい下着と北上の制服である国防色のセーラー服を着ると、壁に向かって話しかけた。

 

「妖精さん。力を貸してほしいんだけど。出てきてくれる?」

 

 あちこちの隙間や影から、頭がにゅっと出て、こっちを様子見ている。二頭身だからあれで体の半分を晒している事になる。

 

「ここが何処なのか、調べてほしいんだけど」

 

『ここはもみじていとくの、ちんじゅふですよ?』

 

「そうじゃなくて、どこの鎮守府とか泊地、つまりサーバーにいるかとか……」

 

 妖精さん達がどよどよとどよめいて話し合いを始めた。

 そして黄色いヘルメットの金髪と、チョコバナナを持った黒髪妖精さんが出てきた。

 

『あちきに、まかせといて!』

『こ、これは、ちょこばななじゃなくて、とんかちです』

 

「じゃあ調査よろしくね~」

 

『とんかちです! ねーきたかみさん、とんかちですってばー』

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

『しらべてきました』

 

「お、もしかして分かったの?」

 

『ようせいさんはかんぺきです』

 

「さすがだね~。それで、どこのサーバーなの?」

 

『はい。ゆめのしまはくち、です』

 

「……どこそれ。聞いたことないよ。最近追加されたの?」

 

『いいえ。けっこうふるいです。まいづるくらいです』

 

「舞鶴鎮守府? あたしがやり始めた頃に選べたのは、カタカナ名のサーバーしかなかったから、それよりずっと昔ってことか」

 

『ていとくがめんどうみなくなったかんたいが、うつってくるところです。さばいちらんには、でてこないです』

 

「えーと……どゆこと? 面倒見なくなったって、見捨てられた艦隊?」

 

『そうです。きっとそこのようせいさんたちも、あそんでもらってないに、ちがいありません』

『かわいそうです』

『それでも、ていとくかーっ』

『ねーねー、おみまいに、ふぶきちゃんのぶらじゃーをもっていってあげましょう』

 

「なんでそれがお見舞いの品になるのさ! あんたら、どういう感覚してんのよ」

 

 まったく。人の下着を食べてるみたいだし。あ、だからお見舞いの品になるのか。

 って、ダメでしょ!

 そんなの許すわけいかないよ。

 

 それはともかく、あたしは腕を組んで頭をひねる。

 紅葉提督の鎮守府が入ってるサーバーのことを。

 

 提督が面倒を見なくなった艦隊が移ってくるところか。どういう事だろう。

 

 放置をさらに続けると、放置ボイスも超えてどっか違うサーバーに行っちゃうの?

 

 サーバー変わっちゃったら、次ログインするとき困る……てこともないか。ログインした後、いつもの泊地じゃなくても、泊地名の表示が違うだけだから、困る事はないか。あれっ? ては思うだろうけど。

 

 でもそんな事が起きたって話、聞いたことないし。

 そもそもサーバーって何だ?

 

 艦これを始める一番最初の時に、鎮守府サーバーの一覧が出てきて、選択する画面ってのがある。

 空きがないところは満員と表示されていて、空きがあるサーバーしか選べないようになってる。

 

 たぶんサーバごとに登録できるユーザーの数ってのがあるんだろう。サーバーの処理能力とかで決まっているんだ。だから選べないのは、そのサーバーに登録できるユーザ数が満員になってるからだと思った。

 

 だけど妖精さんによると、そもそも『夢の島泊地』なるところは、サーバー一覧画面に出てこないという。

 そしてそこは、提督が面倒を見なくなった艦隊が移ってくるところ……。

 

 それってもしかして、やめちゃった提督の艦隊じゃない?

 

「そうか、やめちゃった提督がいつまでもサーバーに残ってると無駄になっちゃうからか。

 例えば100人処理できるサーバーで、99人が脱会すると、1名だけのためにサーバーを使うことになる。だからやめちゃった99人のデータを別のサーバーに移して99人分の空きを作って、新しい提督向けに解放するんだ」

 

『そうそう、そのとおりです』

『そういおうと、おもってました』

 

「説明下手くそだよ妖精さん」

 

『ぷんすか!』

 

「それで、やめた提督の鎮守府や艦娘とかのデーターを保管しておくところが『夢の島泊地』なんだ。デスクトップのごみ箱みたいだね。あ、だから夢の島か。東京都のごみ最終処分場として、昔埋め立て地だったところ」

 

 問題は選べないはずの夢の島サーバーに、紅葉が鎮守府を作ったってことだ。

 

 ……いや、違うな。

 

 そんなことより解決したいのは、一番最初のマップでさえ勝てないって事だ。

 

 どうしてゴミ箱サーバーに、紅葉が鎮守府を作れたかは確かに不思議だけど、ゲームができているなら別にどこにいても構わない。

 ただ勝てない理由がゴミ箱サーバにいるせいだとしたら、それは問題だけど。

 

「それに、エリートが出てくるなんて卑怯すぎると思うよ。吹雪達も提督と喋れるようになったアップデートの影響なのかな……」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。