紅葉色の水平線に勝利を刻むんじゃ! 作:RightWorld
あたしはお風呂で目を覚ました。
お風呂じゃなくてドックか。見た目お風呂でしかないけど。
怪我はすっかり治っているようだけど、カウンターを見るとあと1分ある。
曙はもういない。先に出渠したらしい。結構大破してたけど、あたしよダメージが軽かったんだろうな。
カウンターがオール0になったので、ざばあっと湯船から上がった。脱衣所に行くと、竹籠にバスタオルと、きれいに畳まれた真新しい下着と制服が置いてあった。妖精さんが用意してくれているらしい。戦闘でボロボロになった服も妖精さんが処分してくれる。夕食のおかずとして……。
「あたしの着てた服どこ!? 特に下着! 返せ! 食べられてたまるか!」
『まあまあ。もうしげんになりましたから、あんしんしてください。げっぷ』
「食べたな! もう許さない!」
『わー』
『わー』
『にげろー』
見事に四方八方に散らばって、すぐに姿も形も物音もしなくなった。
「Gどもめ! ムカつく~」
こんなことしてる暇はない。こうして動けてるということは、紅葉は最後にスマホ版の艦これに入ってから寝たんだろう。ノートPCだとスリープしちゃうからね。せっかく提督が、あたし達が動けるようにしてくれたんだ。次提督がログインしてくるまでに、できるだけ調べてみよう。
悔しいけど、ここはあのGの力を借りるしかない。
新しい下着と北上の制服である国防色のセーラー服を着ると、壁に向かって話しかけた。
「妖精さん。力を貸してほしいんだけど。出てきてくれる?」
あちこちの隙間や影から、頭がにゅっと出て、こっちを様子見ている。二頭身だからあれで体の半分を晒している事になる。
「ここが何処なのか、調べてほしいんだけど」
『ここはもみじていとくの、ちんじゅふですよ?』
「そうじゃなくて、どこの鎮守府とか泊地、つまりサーバーにいるかとか……」
妖精さん達がどよどよとどよめいて話し合いを始めた。
そして黄色いヘルメットの金髪と、チョコバナナを持った黒髪妖精さんが出てきた。
『あちきに、まかせといて!』
『こ、これは、ちょこばななじゃなくて、とんかちです』
「じゃあ調査よろしくね~」
『とんかちです! ねーきたかみさん、とんかちですってばー』
◇◇◇
『しらべてきました』
「お、もしかして分かったの?」
『ようせいさんはかんぺきです』
「さすがだね~。それで、どこのサーバーなの?」
『はい。ゆめのしまはくち、です』
「……どこそれ。聞いたことないよ。最近追加されたの?」
『いいえ。けっこうふるいです。まいづるくらいです』
「舞鶴鎮守府? あたしがやり始めた頃に選べたのは、カタカナ名のサーバーしかなかったから、それよりずっと昔ってことか」
『ていとくがめんどうみなくなったかんたいが、うつってくるところです。さばいちらんには、でてこないです』
「えーと……どゆこと? 面倒見なくなったって、見捨てられた艦隊?」
『そうです。きっとそこのようせいさんたちも、あそんでもらってないに、ちがいありません』
『かわいそうです』
『それでも、ていとくかーっ』
『ねーねー、おみまいに、ふぶきちゃんのぶらじゃーをもっていってあげましょう』
「なんでそれがお見舞いの品になるのさ! あんたら、どういう感覚してんのよ」
まったく。人の下着を食べてるみたいだし。あ、だからお見舞いの品になるのか。
って、ダメでしょ!
そんなの許すわけいかないよ。
それはともかく、あたしは腕を組んで頭をひねる。
紅葉提督の鎮守府が入ってるサーバーのことを。
提督が面倒を見なくなった艦隊が移ってくるところか。どういう事だろう。
放置をさらに続けると、放置ボイスも超えてどっか違うサーバーに行っちゃうの?
サーバー変わっちゃったら、次ログインするとき困る……てこともないか。ログインした後、いつもの泊地じゃなくても、泊地名の表示が違うだけだから、困る事はないか。あれっ? ては思うだろうけど。
でもそんな事が起きたって話、聞いたことないし。
そもそもサーバーって何だ?
艦これを始める一番最初の時に、鎮守府サーバーの一覧が出てきて、選択する画面ってのがある。
空きがないところは満員と表示されていて、空きがあるサーバーしか選べないようになってる。
たぶんサーバごとに登録できるユーザーの数ってのがあるんだろう。サーバーの処理能力とかで決まっているんだ。だから選べないのは、そのサーバーに登録できるユーザ数が満員になってるからだと思った。
だけど妖精さんによると、そもそも『夢の島泊地』なるところは、サーバー一覧画面に出てこないという。
そしてそこは、提督が面倒を見なくなった艦隊が移ってくるところ……。
それってもしかして、やめちゃった提督の艦隊じゃない?
「そうか、やめちゃった提督がいつまでもサーバーに残ってると無駄になっちゃうからか。
例えば100人処理できるサーバーで、99人が脱会すると、1名だけのためにサーバーを使うことになる。だからやめちゃった99人のデータを別のサーバーに移して99人分の空きを作って、新しい提督向けに解放するんだ」
『そうそう、そのとおりです』
『そういおうと、おもってました』
「説明下手くそだよ妖精さん」
『ぷんすか!』
「それで、やめた提督の鎮守府や艦娘とかのデーターを保管しておくところが『夢の島泊地』なんだ。デスクトップのごみ箱みたいだね。あ、だから夢の島か。東京都のごみ最終処分場として、昔埋め立て地だったところ」
問題は選べないはずの夢の島サーバーに、紅葉が鎮守府を作ったってことだ。
……いや、違うな。
そんなことより解決したいのは、一番最初のマップでさえ勝てないって事だ。
どうしてゴミ箱サーバーに、紅葉が鎮守府を作れたかは確かに不思議だけど、ゲームができているなら別にどこにいても構わない。
ただ勝てない理由がゴミ箱サーバにいるせいだとしたら、それは問題だけど。
「それに、エリートが出てくるなんて卑怯すぎると思うよ。吹雪達も提督と喋れるようになったアップデートの影響なのかな……」