紅葉色の水平線に勝利を刻むんじゃ! 作:RightWorld
ピココン!
スマホのメール着信通知音が鳴る。
クラスの人からのチャットメッセージだ。開いてみると、
≪これ、お前?≫
そんなメッセージと共にリンクが貼ってある。
この子とはそんな親しくはない。それに仮にも女子のくせして、この言葉遣いはどうかと思う。
リンクのURLは比較的短かった。
わたしはパソコンの検索サイトを開くと、そのURLを検索してみる。
なんだか一杯ヒットした。色んな人がメッセンジャーやメールで受け取っているらしい。コンピューターウィルスに感染するページに案内されるらしい。
「あの子も授業の題材にされたいみたいね。っていうか、あの子が送り付けてるとは思えないから、チャットメッセージのアカウント盗み取られたんじゃない? まあどっちにしても、わたしのレポートで発表してあげるから、皆の笑いものになるがいいわ」
そういえばテレビのニュースでやってたけど、防衛省の職員が変なメールを開いたせいで、大事な情報が流出したかもしれないとか言ってたな。わたしにも怪しいメールが来てたけど、流行りなのかな。
そしてデスクトップに作ってある艦これのショートカットをダブルクリックする。
≪提督が鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執ります≫
「お疲れ様です! 司令官」
秘書艦の吹雪が元気に迎えた。
「吹雪ちゃん! 体調はどう? 傷は直った?」
「はい! いつでも出撃できますよ」
紅葉提督は、ぱあっと笑顔になった。
「今日は勝てるかなあ」
「その前にちょっといいかねぇ、提督」
「北上さん?」
あたしはヘルパーチャットボットではないかと思われる割り込み優先権を使ってかしらんけど、秘書艦でもないのに母港画面へ横から割り込んで、昼間の妖精さんの調査で分かった事を報告するのだった。
「ゲームを一番最初に始めた時のサーバーを選ぶ画面? 1個しかなかったから、それを選ばざる得なかったけど」
「……絶句。もうその時点から提督の環境はおかしいよ。ニセゲーム会社にログインしてないだろうね?」
「そしたら北上さんもニセゲーム会社のニセキャラクターってことですけど」
「ギク! ホントだ。妖精さーん! あたし達大丈夫?」
『だいじょうぶです。みなさんは、せいしきなかんこれがかってる、さばのなかにいます』
「正式な艦これが飼ってる鯖?」
「運営会社管理下の正式なサーバーね」
「あ、そういうこと」
「妖精さんの世界観は難しいんだよ。とにかくよかった。焦ったよ」
提督もニセ会社に個人情報を渡してないと分かり、ホッとしていた。そしてあたしに問いかけてくる。
「それで北上さん。これからどうするの?」
「そうだねえ。ゲームシステムの中の調査は妖精さんに引き続きやってもらってるから、あたし達は正面からゲームの海域攻略をやっていくよ」
「分かったわ」
「それじゃ建造の結果から見ていこうか」
「うん。昨日は最低レシピのオール30で2隻作ってみたわ」
「それでいいよ。駆逐艦は確実、あわよくば軽巡が出るかもだからね。とにかく1隻でも多くほしいから」
「うん。えーと、工廠行ってと」
工廠画面へ行くと、2つのドックで
「できてるできてる。それじゃ、GET、GET!」
「特型駆逐艦『曙』よ。って、こっち見んな! この糞提督!」
「特型駆逐艦『曙』よ。って、こっち見んな! この糞提督!」
「ひいいい!」
「……」
ダ、ダブル曙かい。提督は悲鳴、あたしは黙りこくってしまったよ。
「こ、これは、才能だねぇ、提督の……」
「い、いいのよ。だんだんこの毒舌にも慣れてきたわ」
とは言いつつも青ざめている提督。
「今日は吹雪と合成して、吹雪を強化しようか」
「うう……吹雪ちゃんが毒舌になったりしないかしら……改装の……近代化改修……操作、操作」
きらきらーん。
吹雪がもじもじしながら口を開けた。
「こ、こんだけ? た、たいしたこと……ないわ……って曙ちゃん! このセリフひどいよお」
「ちょっと吹雪ー! せっかくあたし要素が入った吹雪で提督をびっくりさせる作戦なのに!」
「ごめんなさい提督、もっとがんばりますからー」
どうやら吹雪に曙の改修時のセリフを言わせようとしたみたいだった。しかし、紅葉は上を向いて白い目をして泡を吹いていた。
「あー、『こんだけ?』のところでもう気絶してたよ」
「「わああ、ごめんなさい、ごめんなさい!」」
提督の目が覚めるまで待って、次に達成できるかはともかく、デイリー任務も上から任務遂行中にした。
「装備開発でもやっとく? 失敗しても資材入るし」
「そうね。どれくらい資材つぎ込んだらいいの?」
「最低レシピでいいよ。どうせペンギンだろうから」
「言ったわね。見てなさい」
きらりーん、ぱっ
「北上さん、なんか出た!」
「え? なになに?」
「三式爆雷投射機ですって! 爆雷ってなに? 強そう! これで強くなる!?」
「強くはなるけど、それ潜水艦相手の武器だから、1-5海域まで使えないなぁ」
「えー? じゃあ、もう1回やっていい?」
「出撃できなくなっちゃうよ」
「任務達成したから元取ったもん。あ、新しい任務で3回開発しようってのが出た! これやる」
「はいはい。最低レシピでね」
きらりーん、ぱっ
「なんか出た!」
「え!?」
「三式ソナー! 強くなる?」
「それも対潜水艦用の装備だなあ。強くはなるけど、今使えなーい」
「将来への投資ね。次つぎー! ボーキサイト余ってるから、これ少し追加してみよ……」
「そういや空母いないから、補給でボーキ減らないもんね」
きらりーん、ぽよぽよ。
「また出た!」
「え!?」
「零式水上観測機! なにこれ、気象観測用?」
「偵察機。史実では遠距離砲戦での着弾観測をする目的の水上飛行機。ゲームでは索敵で敵を先に発見して戦闘を有利にできるんだけど、積めるのは軽巡以上で、あたしは改造しても装備できない軽巡なんだよねぇ。それにしてもレア度の高いのばかりよく引くなぁ」
「そんじゃ最後ね」
きらり、ぽよよ~ん
「うひょひょーまた出たよ!」
「え! なにそのくじ運!」
「零戦52型! 知ってる、ゼロ戦ってのだよね!? 強い戦闘機、やったあ!」
「空母手に入れるまで使えませーん。てか秘書艦が空母でなくても出るんだっけ?」
恐ろしいほどのペンギン回避率で、入手しにくい装備ばかりを最低レシピで当て続けたものの、全て今保有の艦と対象海域では使えないものばかりだった。これはくじ運良いといえるのだろうか。
「じゃ、出撃しまーす」
「がんばってね! 鎮守府正面海域……決定っと!」
「みんな、準備はいい?」
「いってらっしゃーい」
そして今日も、1-1-A海域にて、ロ級のエリートが出てきて、砲撃戦で曙大破、雷撃戦で北上大破、相手にはカスダメしか与えられずのD判定で、撤退して帰ってきたのであった。
1-1-A海域 ロ級1隻のパターン2(ただしなぜかエリート)
旗艦:吹雪
MVP:吹雪
累積EXP:
吹雪 228
曙 97
北上 37